事例289:8級事案で高齢を理由に適切な支払いを拒まれたが高等裁判所まで戦い勝訴

 Zさんは、追突事故に遭い、腰椎を骨折してしまいました。Zさんは、交通事故時73歳と高齢ではあったものの、夫の農業の手伝いや家事をしていました。治療費は保険会社から払われていましたが、農業ができなくなったことへの補償や、家族の介護について補償が出るのか心配し、サリュに相談に来られました。
 サリュはZさんの手術担当医師と面談し、交通事故によって、どのような支障が生じたか調査をしました。しかし、医師は、画像を見て、交通事故前から背骨の変形があるため交通事故前から腰が曲がらなかった可能性を指摘していました。サリュは、Zさんが交通事故前には農業を支障なく行っていたこと、手術後は腰が全く曲がらなくなり、8級相当の後遺障害が残存していることを医師に伝え、後遺障害の申請を行いました。
 ところが、自賠責は、可動域制限が交通事故前後でどう変わったかについては何ら判断をせず、もともと脊柱に最高等級の6級相当の変形障害があるから、可動域制限がひどくなっても、自賠責保険の後遺障害には該当しないという理由で非該当の判断をしてきました。これは、いわゆる「加重」と言われる制度で、同一部位に後遺障害がある場合には、それを超えた部分しか後遺障害と認めないというものです。
 変形障害とは、文字どおり、骨が変形していることで、可動域制限とは全く異なる後遺障害です。しかも、骨が弱ってくる高齢者であれば、何かのきっかけで元々腰の骨を圧迫骨折している人は少なくありません。それなのに、変形障害がもともとあるという理由で、非該当という判断は到底納得できず、サリュとZさんは訴訟提起をしました。
 被告は、医師の意見書を何枚も提出し、Zさんには、骨の欠損、骨粗鬆症、前縦靭帯骨化症、椎間関節の癒合等が認められるので、交通事故前から腰が曲がらなかったはずだ、素因減額されるべきだと争ってきました。しかし、サリュは、サリュの顧問医とサリュスタッフの医療知識で対抗し、被告が提出した意見書が信用できないことを立証しました。
裁判は高等裁判所まで続きましたが、高等裁判所は、サリュの主張を認め、交通事故前に運動制限はなく本件事故で8級相当の後遺障害が生じたこと、骨粗鬆症等は年齢相応なので素因減額の対象にはならないことを認め、1083万円の支払いを被告に命じました。
 交通事故前にどれだけ体が動いていたかなんて、レントゲン等の画像を見るだけでは分かるはずありません。Zさんの事案は、自賠責の書面審理の弊害をまさに実感した事案でした。
 事件解決後、Zさんは家族を連れてサリュを訪れ、感謝の言葉を下さいました。