• 後遺障害

脊髄損傷

脊髄損傷について

脊髄とは?

脊髄は、脊柱管に収納されている中枢神経系をいい、太さ約1cm、長さ約40cmの円柱状の器官です。

診断書に頚髄損傷、胸髄損傷、腰髄損傷、中心性脊髄損傷といった傷病名がつけられることがありますが、いずれも脊髄損傷にあたります。
脊髄損傷になると、ひどい場合は死に至り、死に至らなかったとしても、四肢の麻痺、運動障害や知覚消失、尿路障害など様々な症状が生じ、交通事故によって生活が一変してしまいます。

脊髄損傷事例

後遺障害等級認定獲得のポイント

①まずは画像の撮影を

脊髄損傷であることの立証は容易ではありません。たとえ後遺障害診断書に「脊髄損傷」と書いてあっても、たとえ複数の医師が口を揃えて脊髄損傷と診断していても、必要な立証ができていなければ、損害保険料率算出機構から脊髄損傷としての後遺障害認定を受けることができないのです。
脊髄損傷が生じていることを立証するためには、まずはX-p画像、MRI画像、CT画像を撮影して必要な画像所見を得なければなりません。受傷後の急性期でなければ写らないMRI画像所見もあるので、手遅れになる前に画像を撮影するよう注意が必要です。
また、解像度の高いMRIを使用しなければ撮影されない所見もあるので、できるだけ設備の充実した病院を選び、解像度の高いものを使用するように病院に働きかけなければなりません。

②症状の記録化

さらに、当然のことながら、脊髄損傷に由来する神経症状が生じていることもきちんと記録化しなければなりません。そのためには、有意な検査をしてもらう必要があります。
例えば、病的反射とは、膝などをゴムハンマーで叩き、身体の反射をみる検査をいい、脊髄損傷を立証するうえで非常な有用な検査です。脊髄が損傷すると、人が本来有している脳からの反射抑制作用が阻害されるため、病的反射が亢進します。
徒手筋力テストとは、筋力がどの程度低下しているかをみる検査です。脊髄損傷が生じると、麻痺が生じ、筋肉を使用しなくなります。時間が経つにつれ、筋力の不使用により筋力が低下していきます。
筋委縮検査は、左右の手足の筋力の周囲径を測定するテストです。脊髄損傷に伴う麻痺により、筋力が低下し、筋肉がやせ細っていきます。
もっとも、ただ検査をすればよいというものではありません。脊髄損傷に由来する神経症状は多様で、個人個人によって異なります。一般的な検査をして事足れりとするのではなく、各人に応じた所見をもらう必要があります。

サリュがお手伝いした案件

①特殊な脊髄損傷?中心性脊髄損傷

脊髄には神経線維が存在していますが、上肢を支配する神経線維は脊髄の中心部付近に、下肢を支配する神経線維は脊髄の外側付近に存在するなど、脊髄の内部には各支配領域に応じて神経線維が配置されています。
中心性脊髄損傷は、その名のとおり、脊髄の中心部付近が損傷されたケースです。脊髄の中心部が損傷された場合、上肢を支配する神経線維付近が損傷され、結果として下肢に比べて上肢に重い症状が生じることがあります。中心性脊髄損傷も脊髄損傷に変わりありませんので、脊髄損傷としての後遺障害認定を受けることになります。

しかしながら、中心性脊髄損傷の場合、下肢の症状がそれほどでなく、自力歩行も十分に可能なことから、その症状は軽く見られがちです。

サリュでお手伝いした方も、自力歩行が可能で、頑張っても7級までかなと思われました。しかしながら、サリュの弁護士が、主治医の先生とお話をするうちに、この方の症状が多様であることが明らかとなり、また、その説明も十分にして頂くことができました。

そこで、通常の脊髄損傷では、あまり実施されていない検査を実施してもらい、従来は後遺障害診断書に記入してもらうこともなかった症状も記入してもらって、5級の認定を受けることができました。

なお、この方のケースは、主治医の先生が素晴らしい先生でよかったのですが、中心性脊髄損傷の場合、骨折を伴わないような軽微な外力が加わったことでも生じることがあり、また、下肢に症状が出にくいことから、安易に頸椎捻挫と診断され、十分な検査・証拠の記録化がされないまま頸椎捻挫として診断されるおそれがあります。こうなっては、後で脊髄損傷としての後遺障害認定を受けるのは一苦労です。中心性脊髄損傷が疑われたら、早めに専門医の診断を受けるなど適切な対応をするべきでしょう。