事例284:事故で重篤な怪我をし、自殺。裁判で事故と自殺との因果関係を認めさせた

Eさん(70代女性)は、日課の散歩をしている時に、突然後退してきた大型トラックに轢かれ、救急車で病院に運ばれました。診断の結果、Eさんは頭蓋骨骨折、脳挫傷、両足骨折等の複数の怪我を負い、しばらく入院せざるを得ませんでした。その後、Eさんは退院しましたが、徐々に気分が塞ぎ込むようになってしまい、病院への通院以外に外出をすることもなくなってしまいました。そして、Eさんは突然自宅マンションから飛び降りて亡くなってしまいました。
残されたEさんのお子さんは、「母がどうして自殺しないといけなかったのか。交通事故さえなければ母は自殺しなくて済んだのに。」という語りつくせない無念を抱えておられました。
そのような辛い状況に追い打ちをかけるように、加害者の任意保険会社はEさんのお子さんに対して、「Eさんの自殺は交通事故とは何の関係もないので、支払いができるのは今まで通院された分に対応する治療費と慰謝料のみで100万円程です。」という非情な連絡をしてきました。
サリュは、Eさんが入通院を行っていた病院の主治医と面談し、Eさんが交通事故で頭部外傷による高次脳機能障害を発症した後でうつ状態に陥り、自殺を図ったのであるから、Eさんの自殺は交通事故によるものである、との意見を取り付けました。
主治医の意見を基に加害者の任意保険会社と交渉を行いましたが、保険会社は交通事故とEさんの自殺との関係を否定するという態度を崩しませんでした。Eさんは交通事故に遭う前は社交的で社会活動にも積極的に取り組んでいました。また、野球が大好きでテレビを欠かさず見ていました。ところが、交通事故に遭ってからは人が変わったように外出を拒むようになり、あんなに好きだった野球の試合も一切見なくなってしまいました。また、Eさんは自殺の前によく「元の体に戻してほしい。」という発言を繰り返していたそうです。
そんなEさんの自殺が交通事故と何の関係もない訳がない。サリュはEさんのお子さんと協力して加害者を相手に訴訟を提起しました。
裁判になっても、加害者はEさんの自殺と交通事故の関係を強行に否定してきましたが、サリュはEさんのお子さんに交通事故前後のEさんの生活状況を細かく聴取し、事故がなければEさんはうつになって自殺することはなく、今も元気に生活していただろうということを主張しました。主張にあたって、サリュは様々な文献の内容を踏まえ、交通事故によってEさんが高次脳機能障害を発症してうつ状態に陥り、自殺に至ったことは医学的にも十分に説明が可能である旨を粘り強く主張し続けました。
その結果、過失相殺等はされたものの裁判所からは、交通事故との因果関係を認めた約1500万円の支払いを認める和解案が出て、和解が成立しました。
Eさんのお子さんからは、「母の自殺が交通事故によるものだと認められて、これで母の無念が少しでも張らせたのかなと思います。」とのお言葉を頂きました。