事例247:確定申告で過少申告をしていた自営業者の休業損害、逸失利益を、裁判の結果、和解で勝ち取った事案

Hさん(男性42歳)は、自家用車を運転中、右前を先行していた自動車が不意に車線変更してきたため停止したところ、後方から来た別の自動車に追突され、さらに前の車にも追突することとなり、頚椎捻挫・腰椎捻挫を受傷しました。Hさんは、自らが弁護士費用特約に加入していたので、「早い段階から専門家に依頼して間違いのない対応をしてもらおう」と思い、交通事故発生の2日後にサリュの無料相談に行くことにしました。
無料相談では、弁護士から通院の仕方、検査の受け方等についてアドバイスを受け、万が一症状が残って後遺障害申請をする際の注意点も聞くことができました。また、Hさんは個人事業主として不動産関係の仕事をしていましたが、その収入について節税で過少申告をしていたため、その点が相手方保険会社との交渉や裁判をする際のネックになるという説明を受けました。かなり複雑なことになると判断したHさんは、サリュに依頼することにしました。
その後、相手方保険会社から治療費対応の打切りをされましたが、Hさんはサリュの助言を受けながら、交通事故後約6か月間の治療を受けることができました。しかし、残念ながらHさんの頚部痛・腰痛等の症状は完治しませんでした。そこで、自賠責保険に対する後遺障害申請をすることにしました。後遺障害診断書の書き方、画像検査の資料の取寄せ、その他必要書類の手配等については、サリュの適切なアドバイスを受けていたため、スムーズに進めることができました。そして、サリュがHさんの代理人として後遺障害申請を行い(被害者請求)、その結果「併合14級」という等級が認定されました。
サリュは、この認定結果を踏まえて、相手方保険会社との示談交渉に臨みました。しかし、相手方担当者はHさんが過少申告をしていたことを指摘して、非常に低額な回答を出してきました。特に休業損害・逸失利益については0円という回答でした。ただ、交通事故によって受傷したことがHさんの仕事上の支障になっていたことは明らかであったため、0円という回答が不当なものであると考えたサリュは、Hさんと打ち合わせた上で、訴訟提起に踏み切ることにしました。なお、被告側からの申出もあり、事故当時Hさんの右前を走行していた車両の運転手も訴訟当事者に巻き込む形で訴訟手続きが進みました。
 個人事業主の場合、収入状況を立証する資料として税務書類が非常に重視される傾向にあることから、訴訟上もHさんが不利な状況にあることは変わらず、最悪の場合には、休業損害・逸失利益0円という結論が変わらない可能性も否定できない状況でした。しかし他方で、Hさんは、実際に同居するご家族もおられ、一定以上の日常生活を送っておられるわけで、この点を具体的に立証していけば、裁判官を説得することができる可能性もありました。サリュでは、この後者の可能性に賭けて訴訟手続を進めました。
この方針で進めていく中では、Hさんにも証拠収集には協力してもらいました。仕事の契約書・領収証一式、過去3年分の銀行口座通帳のコピー、家計収支表、日常生活で支出した各費用に関する領収証一式など、Hさんの仕事や日常生活に関する詳細な資料を提供してもらいました。それらを踏まえてHさんに有利な主張内容を考え、書面として裁判所へ提出しました。サリュではひとつひとつの書面について、相手方の反論等も考慮しながら慎重に検討して提出していきました。
 訴訟提起してから約11か月間にわたって原告・被告・参加人からの主張のやりとりが繰り返されましたが、その後、裁判所から和解案が提示されました。具体的には395万円余り(自賠責保険金75万円を含む。このうち休業損害・逸失利益は計190万円余り)の賠償金がHさんに支払われるという内容でした。三当事者はこの和解案に応じ、訴訟上の和解で事件終結となりました。事故発生から実に2年3か月が経過していました。
 Hさんのように個人で事業を営まれる方の場合、節税として過少申告をされている方がおられます。損害賠償を受けるにあたっては、税務書類をもって自らの収入状況を証明することが求められますので、過少申告をしているということは、その分だけ受領できる賠償金も少なくなってしまうのが通常です。もっとも、一定以上の基準で日常生活をされている方で、その具体的な生活状況を立証するだけの証拠がすべて揃い、その立証が成功できた場合には、例外的ではありますが、Hさんのように適正な賠償を受けられる可能性もゼロではありません。サリュでは、このように可能性が低い状況であっても、少しでも見込みがあれば、その点は徹底的に検討し、できる限り交通事故の被害者の方が適正な賠償を受けられるよう努力をさせていただいています。