事例108:死亡事故で、人身傷害保険を利用し被害者の過失分を含め全額回収

Dさんは道路を歩行中、後ろから来たバイクにはねられて重傷を負い、数日の入院の後、意識が戻らぬまま、ご親族の願いもむなしくお亡くなりになりました。Dさんは少し前に夫に先立たれていましたので、Dさんの相続人はお子さんであるEさん、Fさんのお二人でした。

事故の状況から、Dさんにも何割かの過失があり、加害者側から支払われる賠償金が削られることが予想されました。一方Dさんは、自分で人身傷害保険を掛けていました。

相続人であるEさんたちは、加害者に対する憤り、加害者側保険会社の担当者が遺族の気持ちをわかってくれない辛さ、そして、味方であるはずの人身傷害保険の担当者にまで、保険金の支払いを渋るような態度を取られ、疲労困憊してサリュを訪れました。

サリュはEさんたちのご依頼を受けて、加害者からの賠償金からDさんの過失割合分が差し引かれることを見越して、まずは人身傷害保険金を請求して保険金を受け取り、不足分を相手方に請求するのが最善の方法だと考え、その手続を進めました。

ところが、人身傷害保険金を受け取った後に加害者側保険会社に残りの損害賠償を請求したところ、支払を拒まれてしまったのです。

保険会社は、被害者に保険金や賠償金を支払った後、支払った金額に応じて自賠責保険金を受け取ることができます。Dさんの件では、人身傷害保険の保険会社と加害者側保険会社との間で、どちらがいくら自賠責保険金を受け取るべきかが問題になっていました。これは本来保険会社間の問題ですので、保険会社が被害者に支払いを拒む理由にはなりません。

そこで、サリュは、加害者に対して訴訟を提起し、正当な賠償金の支払いを求めました。また、自分で事故の状況を説明できないDさんに代わり、刑事訴訟記録の検討や現場検証を踏まえて、Dさんの過失割合ができるだけ低くなるよう主張しました。その結果、過失割合についてDさん、ひいては相続人であるEさんたちに不利な結論になることもなく、裁判所は弁護士費用や支払日までの遅延損害金を加えた和解案を出し、加害者側もこれに応じて和解に至ることができました。

これによって、Eさんたちは過失割合による減額なく、損害の全てを保険金と賠償金で受け取ることができました。

EさんやFさんとしては、いくら賠償金や保険金を受け取っても、Dさんが帰って来る訳ではありませんから、悲しみが癒えることはありませんし、加害者に対する怒りもなくなるわけではありません。けれども、そのうえ保険会社の対応に翻弄されたり、保険会社の不適切な説明を信じて、気付かぬうちに正当な保障を受けられなくなったりといった不利益を受けることは免れることができました。最終的に賠償金を受け取った段階で、お子さんたちも気持ちに一区切りつけることができたと仰っていただきました。