交通事故で家族が意識不明に。これからすべきことを全解説
「家族が交通事故で意識不明になった…どのくらいで回復するのだろうか」
「この先、どうしたらいいの?」
あなたは今、大切な家族が交通事故で意識不明になって、病院の待合室で不安と戦っている状態かもしれません。
ただただ、早く意識が戻り、回復することを願いながら、この記事をご覧になっているのでしょうか。
そんなあなたにお伝えしたいのは、交通事故で意識不明になった場合、「6時間以内に目覚めると回復する可能性が高い」ということです。
特に、2〜3時間以内で意識が回復した場合は、脳震とうである場合が多く、後遺症も残らないケースも多いでしょう。
6時間以上経過しても目覚めない場合は、さまざまな後遺症が残ったり、最悪の場合、死亡する可能性も考えられます。
▼回復の時間による後遺症の可能性
意識不明が長く続くということは、脳に重大な損傷を受けている可能性が高いです。
けれど、家族としては、いつ意識が戻ってもいいように、できる限りのことは準備しておきたいですよね。
そこで支えの一つとなるのが、相手からの慰謝料などの賠償金です。
しかし、精神的に辛いからと何となく相手からの示談交渉を受けてしまうことは危険です。
保険会社の多くは、被害者の弱みに付け込んで、最低限の金額を提示してくる可能性があります。
たった少しのことを見落とすだけで、慰謝料の金額は何百万円単位で異なるため、これからの生活に大きく影響してしまうでしょう。
そこで、この記事では次のことを解説していきます。
この記事で分かること |
・交通事故で意識不明になったら今後どうなるのか、病状などを徹底解説 ・家族がやるべき4つのことをくわしく説明 ・意識不明になった場合に受け取れる慰謝料などの示談金をすべて解説 |
今はまだ、受け入れることはできないかもしれません。
しかし、記事を読むことで症状への心構えができ、家族としてやるべきことも分かるでしょう。
意識不明になった方や、ご家族がこれから不安なく暮らせるようになる慰謝料の請求方法も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢
弁護士法人サリュ
大阪弁護士会
交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
相談だけで解決できることもありますので、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
目次
1.交通事故で意識不明になったら今後どうなるの?
大切な家族が交通事故で意識不明になったら、「いったい、いつ目が覚めるのだろう…」と、とても不安になりますよね。
意識障害は、強い衝撃による脳へのダメージで、外部からの刺激に対して反応がない、あるいは反応が弱い状態を指します。
早く目覚めると回復の可能性が高くなりますが、時間が経つにつれて、脳の障害や後遺症のリスクが増します。
そのため、たとえ目が覚めても、元のように元気になるのか、後遺症は残るのかなど、心配になりますよね。
そこで、この章では、交通事故で意識不明になった場合、回復した時間によって、どのような事が起きる可能性があるのかを解説していきます。
ただし、事故の状況や怪我の程度などは人によって大きく異なりますので、あくまで参考程度と考えてくださいね。
1-1. 6時間以内(早ければ2〜3時間のことも)に目覚めれば回復する見込みが高い
2〜3時間位内 | 回復する可能性が高く、後遺症も残りにくい |
6時間以内 | 回復の見込みがある |
個人差はありますが、基本的に6時間以内に意識が戻る、または刺激に反応するなどすると、回復する見込みが高いと言えるでしょう。
基本的に、意識不明になってから、2〜3時間以内に目が覚めた場合、「脳震とう」であることが考えられます。
脳震とうは、頭部への強い衝撃で、脳が揺さぶられて生じる、一過性の意識障害(記憶障害)です。
脳自体の破損の可能性は小さく、短時間で症状が回復するケースが多いでしょう。
2〜3時間以内に眼が覚めなくても、6時間以内に、音、触覚などの刺激に反応し始めると、回復する見込みは高くなります。
そのため、慰謝料などを請求する場合に必要な「後遺障害等級」は、意識不明の状態が6時間以上継続することが、目安の一つとなっています。
なお、意識が回復しても、次のような症状が1年以上継続する「脳震とう後症候群」となることもあるので、経過の観察は必要でしょう。
症状が長期間続く「脳震とう後症候群」 |
脳震とうは、基本的に脳に破損はない可能性は高いのですが、次のような症状が長く続くことがあります。 ・頭痛、めまい、疲労感、不眠 ・物忘れが多くなる ・事故の記憶があいまい ・ぼんやりする ・人格の変化(怒りっぽくなる、気分がコロコロ変わる) これらの症状が長期間続く場合は、「脳震とう後症候群」の可能性があります。 「脳震とう後症候群」が長く続き、精神障害や労務が制限される場合される場合は、交通事故の賠償に含むことも可能です。 とはいえ、CTなどで判断出来ず、診断が難しいことから、日頃から症状の詳しい記録をつけておくことをおすすめします。 |
1-2. 6時間以上経過しても目覚めない場合は後遺症が残ったり数ヶ月後死亡する可能性がある
6時間以上 | 後遺症(高次脳機能障害)が残りやすい |
3ヶ月以上 | 遷延性意識障害(植物状態)と診断される 数カ月後、死亡する可能性が高くなる |
交通事故で意識不明になってから、6時間以上経過した場合は、後遺症が残る可能性が高くなります。
また、植物状態に陥ったり、死亡することもあります。
ただし、6時間以上経過してから目が覚めた場合でも、長期的な治療やリハビリなどで、多少回復する可能性もあります。子供や若い人は、脳の自己修復で回復するスピードも早くなるでしょう。
ただし、次のような、
・脳挫傷
・びまん性軸索損傷(DAI)
・脳出血
・頭蓋内血腫
などの脳障害が起きている場合、後遺症が残るリスクが高くなります。
【脳障害による後遺症】
高次機能障害 | 高次脳機能が傷害を受け、後遺症が酷く、社会復帰が困難な状況 |
意識障害遷延性意識障害 | 脳挫傷などによって動作や発声が困難になる状況 遷延性意識障害になると意昏睡状態(植物状態) |
身体性機能障害 (運動障害) | 身体の一部分や全身が麻痺 |
記憶障害 | 記憶力や学習能力が低下 |
言語障害 | 聞く・話す・読む・書くなどの動作が不自由な状態 |
注意障害 | 脳の損傷によって、注意力や集中力が低下している状態 |
遂行機能障害 | 前頭葉部位の損傷で、物事を計画して行動することができない状態 |
社会行動障害 | 脳の破損により、感情や欲求をその場の状況に合わせてコントロールできない状態 |
感覚障害 | 視覚・嗅覚・味覚・聴力などの感覚機能が低下している状態 |
後遺障害については、下記の記事も参考にしてください。
後遺障害認定されたら正しい慰謝料請求を!被害者がすべき3つのこと
交通事故で脳挫傷となり意識不明に|症状・後遺症・慰謝料を解説
交通事故に遭い症状固定と言われたら|今すべき対処法を弁護士が解説
2. 交通事故で意識不明になったら家族がすべきこと4つ
今、家族がいつ目覚めるかも分からない状況で、何も手が付けられないかもしれません。
しかし、少しずつでもいいので、ぜひやっておいてほしい事や手続きなどがあります。
この先、安心して治療を受けてもらうために、ご本人様やご家族にとって重要な事柄です。
家族がするべきことは次の4つです。
それぞれ解説していきましょう。
2-1. 適切な治療ができる病院を探す
運ばれた病院に、脳障害の専門医がいない場合は、適切な治療ができる病院を探しましょう。
交通事故で救急搬送された場合、病院を選ぶことは出来ません。
もちろん救急病院では、生命維持に必要な処置はされるはずです。
しかし、意識不明の場合は、脳挫傷や脳内出血など、命に関わる症状である可能性が高いため、脳神経外科医など、専門の医師にみてもらう必要があります。
運ばれた病院に専門医がいない場合は、その病院で紹介状をもらい、専門医のいる病院へ転院することをおすすめします。
意識不明の場合は病院に運ばれた時点で弁護士に相談することをおすすめ |
家族が病院に運ばれた時点で、弁護士に相談することも考えておきましょう。 というのも、あなたはこれから、入院の準備や手続き、警察への対応などやるべきことが多くなるはずです。 その間に、保険金の請求や、相手側の保険会社との話し合いなどにも対応しなくてはなりません。 しかし、心労で正常な判断が出来ない状況のなか、保険会社に言いくるめられて示談交渉に応じてしまい、後で大きく後悔するケースもあるのです。 弁護士は、あなたに代わって保険金請求のための書類集めや、保険会社との示談交渉も行ってくれます。 特に、示談交渉は、専門家の立場で進めてくれるので、金額も増額する可能性が高くなります。 いつ意識が戻ってもいいよう、少しでも側にいてあげたい場合は、早い段階から弁護士に依頼することをおすすめします。 |
2-2. 治療の経過を細かく記録しておく
交通事故に合った直後から、意識不明になった方の様子や治療の経過を細かく記録しておきましょう。
この記録は、あとで後遺障害認定を受けるときや、保険会社との示談交渉の際に、重要な証拠となる可能性が高くなります。
というのも、病院での検査によっては、病状が特定出来ない場合があるからです。
脳の異常が診断されなかったにもかかわらず、事故前と比較して異常が発生している場合には、後遺障害等級認定の参考となります。
たとえば、「びまん性軸索損傷」は、頭部の外傷によって脳の神経組織全体が損傷を受ける病気です。
目に見える損傷や出血を伴わないことからCTやMRIなどの検査では、診断することが難しいと言われています。
そのため、後遺障害を立証するには、事故直後から本人の病状や反応などを、詳しく観察し、記録しておく必要があるでしょう。
観察で記録しておくと良いこと |
・家族が気づいた変化 ・体温 ・脈拍 ・血圧 ・呼吸数 ・SpO2(酸素飽和度) ・四肢の動き・痛み刺激への反応 ・治療内容(投薬内容・処置内容・検査内容とその結果) ・合併症の有無 ・反応や改善の様子 ・主治医、看護師のコメント |
病院によっては、独自の観察記録フォーマットがある場合があるので、担当の看護師などに相談して、アドバイスを受けるとよいでしょう。
なお、意識が戻った後でも、高次機能障害などの症状が出る可能性があります。
上記のうち「家族が気づいた変化」は毎日、続けて記録しておくと良いでしょう。
2-3. 加入している保険会社へ連絡する
意識不明になった家族が、保険に加入している場合は、保険会社に連絡しましょう。
怪我の状況や、加入している保険の種類・条件にもよりますが、次の保険で請求できる可能性があります。
【交通事故の怪我で請求できる保険】
・任意保険※ ・生命 ・医療 ・傷害保険 ・国民健康保険 ・社会保険 ・勤務先の労災保険 |
※下記の保険が該当します。
・人身傷害補償保険(特約)
・搭乗者傷害保険
・自損事故保険
・無保険車傷害保険(特約)
保険が利用できるかどうかの判断は、一般の方には難しいでしょう。まずは電話をして、くわしく聞いてみることをおすすめします。
その際、保険にもよりますが、伝える内容は次のとおりです。
【交通事故で保険会社に伝える内容】
・契約している保険の証券番号 ・氏名、生年月日、連絡先電話番号 ・免許証番号、契約者との関係 ・事故発生の自動車のナンバープレート番号 ・怪我の具合および自動車の損傷状況 ・事故発生の日時、場所、道路状況 ・事故発生の状況(自動車の動き方など) ・相手側の情報(住所氏名、連絡先、ナンバープレートなど) |
なお、保険の内容によっては、弁護士費用特約が付いている場合があります。
損害賠償請求を弁護士に依頼する際の費用のほか、弁護士への相談費用も補償してもらえるので、必ず確認しましょう。
2-4. 示談交渉や手続きを代わりに行う
交通事故に遭った本人が意識不明である場合、家族が示談交渉やその他の手続きを行います。
まずは、家庭裁判所で「成年後見人の申立て」を行うことが必要です。
成年後見人とは、意識障害などで、判断能力が不十分な成人に代わって、法的手続きを行う権限を持つ人を指します。
【成年後見人ができること】
・保険会社に事故の報告と請求手続き (加害者側の任意保険会社、被害者自身の任意保険会社、自賠責保険を扱う保険会社) ・本人の財産管理(治療費などの支払い) ・本人に代わって契約の締結 など |
ただし、法的な手続きが必要な損害賠償請求や、本人口座からの治療費の支払いなどは、家族であっても勝手に行うことは出来ません。
また、家族であれば誰でも手続きができるわけではありません。
下記のように、配偶者や4等身以内の親族であることや、必要な書類を集めて家庭裁判所で手続きを行える人に限定されています。
自分で成年後見人の申立を行うには |
申立を行う場所:家庭裁判所 申立ができる人:本人、配偶者、4等身以内の親族など 申立費用:約10,000円〜 ・申立手数料800円(収入印紙) ・登記手数料2,600円(収入印紙) ・診断書発行費用、書類(戸籍謄本など)収集費用、郵便切手代、など 必要な書類: ・後見開始申立書 ・申立事情説明書 ・親族関係図 ・親族意見書 ・後見人等候補者事情説明書 ・財産目録 ・収支予定表 ・本人の判断能力に関する資料(医師の診断書・本人情報シートなど) ・戸籍謄本 ・登記されていないことの証明書 など ※裁判所のホームページ「後見開始の申立」に記載例がありますので参考にしてください。 ※裁判所の判断によっては、希望している人が成年後見人に指名されないケースもあります。 参考:裁判所「成年後見制度に関する審判の申立書」 |
なお、成年後見人の申立にかかった費用は、事故による損害として、加害者側に請求することができます。
とはいえ、このような成年後見人のための書類収集や手続きには、手間も時間もかかります。
意識不明になっているご家族への心配やケアで、このような手続きなどが辛いと感じた場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
3. 意識不明になった場合に受け取れる慰謝料やその他の損害賠償
交通事故で意識不明になった場合に受け取れる慰謝料などの損害賠償を見ていきましょう。
意識が戻ったとしても、高次脳機能障害や身体の麻痺などの後遺症が残ってしまう可能性は高いため、これから先の生活を考えると不安になります。
お金ですべて解決できるわけではありませんが、この先少しでも安心して暮らせるように、慰謝料(事故による身体的および精神的な苦痛を補償するもの)や、損害賠償(受けた損害を金銭で補償するもの)を請求しましょう。
【慰謝料】
入院慰謝料 | 入院による精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことへの精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
死亡慰謝料 | 死亡したことの本人と遺族に対する慰謝料 |
【損害賠償】
逸失利益 | 事故に遭わなければ得られたはずの将来の収入分 |
休業損害 | 仕事を休んだことによる収入の減少を補填 |
治療費 | 治療にかかったほぼすべての費用 |
注意しなければならないのは、相手側の保険会社の提案を鵜呑みにして、示談に応じてしまうことです。
重い後遺障害を負ったにもかかわらず、低い金額を提示され、十分な賠償が得られないということになりかねません。意識不明になった本人だけではなく、サポートする家族のためにも、1円でも多く請求し、将来に備えましょう。
請求できる慰謝料や、損害賠償について、詳しく解説していきましょう。
【注意!】同じ怪我でも、算定基準で慰謝料や損害賠償の金額は変わる |
同じような怪我でも、算定方法によって、慰謝料や損害賠償の金額は大きく変わります。 慰謝料を計算するには3つの算定基準があります。 ・自賠責基準:被害者救済のための最低限の補償 ・任意保険基準:任意保険会社ごとの算定基準で補償 ・弁護士(裁判)基準:過去の裁判所の例を元に算定 基本的に、自賠責基準が一番安く、弁護士基準が一番高額となります。 そのため、安易に示談交渉に応じるのではなく、一度弁護士に相談することをおすすめします。 参考:財団法人日弁連交通事故相談センター「交通事故損害額算定基準」 |
3-1. 入院慰謝料
入院慰謝料は、交通事故による痛みや、日常生活での支障、通院の煩わしさなどの精神的損害を補填するものです。
金額は、入院期間の長さや傷病の程度によって金額が異なります。
例として、軽度(打撲や捻挫など)と重度(複雑骨折など)の場合の、およその金額を見てみましょう。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
軽度 ※約一週間入院 | 6万円 | 約8万円 |
重度 ※約一ヶ月入院 | 26万円 | 約53万円 |
※任意保険基準は、保険会社によって異なるため割愛
このように、自賠責基準と弁護士基準でも大きく差が出るため、まずは弁護士に相談することも考えておきましょう。
入院をした場合には、入院慰謝料の他にも、入院雑費、また別途、退院後の治療費や通院費も請求することができます。
3-2.後遺障害慰謝料
後遺傷害慰謝料は、交通事故が原因で後遺障害が残ったことによる、被害者の身体的・精神的苦痛を金銭的に補償するものです。
後遺障害慰謝料は、次の条件で請求することができます。
・交通事故が原因であると医学的に証明できる ・病状が自賠責保険で定められている等級(自動車損害賠償保障法)に該当している ・後遺障害等級の認定を受け、症状が固定している |
慰謝料の金額は、自賠責保険で定められている等級で区分され、怪我をした部位や程度によって1〜14級までの等級に分けられます。
なお、同じ怪我でも、病状や加害者の対応、事故の状況によって金額が異なります。
【自賠責保険で定められている等級と、基準額の目安】
後遺障害等級 | 主な症状 (脳が原因となるなものを抜粋) | 自賠責保険基準 | 裁判所基準 |
第1級 | ・遷延性意識障害(植物状態) ・視覚障害 | 1,150万円(1650) ※別表第Ⅰの場合 | 2,800万円 |
第2級 | ・脊髄損傷 ・視覚障害 | 998万円 | 2,370万円 |
第3級 | ・視覚障害 | 861万円 | 1,990万円 |
第4級 | ・視覚障害 ・聴覚障害 | 737万円 | 1,670万円 |
第5級 | ・外傷性てんかん ・脊髄損傷視覚障害 | 618万円 | 1,400万円 |
第6級 | ・視覚障害 ・聴覚障害 | 512万円 | 1,180万円 |
第7級 | ・外傷性てんかん ・脊髄損傷 ・視覚障害 ・聴覚障害 | 419万円 | 1,000万円 |
第8級 | ・視覚障害 | 331万円 | 830万円 |
第9級 | ・外傷性てんかん ・脊髄損傷 ・視覚障害 ・聴覚障害 ・臭覚傷害 | 249万円 | 690万円 |
第10級 | ・視覚障害 ・聴覚障害 | 190万円 | 550万円 |
第11級 | ・視覚障害 ・聴覚障害 | 136万円 | 420万円 |
第12級 | ・外傷性てんかん ・脊髄損傷 ・視覚障害 ・聴覚障害 ・臭覚傷害 | 94万円 | 290万円 |
第13級 | ・視覚障害 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | ・聴覚障害 ・臭覚傷害 | 32万円 | 110万円 |
※任意保険基準は、保険会社によって異なるため割愛
また、後遺障害等級の認定を受けるには、症状が固定していると認められる必要があります。
症状の固定とは次の通りです。
慰謝料を受け取るために必要な「症状の固定」とは |
症状の固定とは、治療において、「これ以上治療を続けても症状が変わらない」という段階のことです。 リハビリなどで一時的な症状の回復は考えられるとしても、これ以上の治療は終了ということになります。 症状の固定が行われると、後遺障害等級認定の申請が可能になり、認定された等級に応じて、慰謝料などの賠償金の請求が可能になります。 一方で、回復できる症状でも治療が打ち切りになる場合があり、入通院慰謝料の計算が症状固定日までで終了してしまう(日数が少なく計算される)というデメリットもあるでしょう。 また、もっと治療を続けてほしいという家族に取っては、受け入ることが困難かもしれません。 症状の固定は、今後の補償などにも大きく影響するため、医師や弁護士などに相談し、慎重に対応しましょう。 |
3-3. 死亡慰謝料
交通事故の死亡慰謝料は、事故に遭った人が死亡した場合に、被害者本人と遺族に対して支払われる精神的苦痛に対する賠償金です。
この算定方法も自賠責保険・任意保険・弁護士(裁判所)で、それぞれ異なる基準が採用されています。
自賠責基準 | 弁護士基準 |
本人:400万円 | 被害者が一家の支柱である場合:2,800万円 |
遺族:550万円〜950万円 ※遺族の人数などに応じて変動 | 被害者が母親・配偶者である場合:2,500万円 その他の場合:2,000万円~2,500万円 |
自賠責基準は、政令で上限が固定されており、任意保険基準や弁護士基準と比較して、金額は低くなっています。ただし、公的な救済措置であるため、支払いが比較的迅速に行われます。
一方、弁護士基準は、裁判所の目安とされる基準です。そのため、交通事故の内容や遺族の状態によっては、基準以上の慰謝料が認められる場合もあるでしょう。
保険会社からの示談に応じる前に、弁護士に相談することをおすすめします。
3-4. 逸失利益
後遺障害が残った場合に、事故に遭わなければ得られたはずの将来の収入分として、逸失利益を請求することができます。これは、死亡の場合にも請求することが可能です。
計算方法は、基本的に将来の収入を現在の価値に割り戻して算出します。
【逸失利益の算出方法】※後遺障害が残った場合の算定方法
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 中間利息控除率(ライプニッツ係数) |
ただし、傷害の程度や年齢、職業などに応じて算出するため、一般の方が正しく計算することは困難です。
相手側の保険会社から提示された場合、金額は最低の基準で算出されることが多いため、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
逸失利益について、さらに詳しく知りたい方は、「【早見表付き】後遺障害の逸失利益はいくら?ケースごとの金額を解説」を御覧ください。
3-5. 休業損害
交通事故で意識不明になったことが原因で、仕事を休んだことによる収入の減少を補填するものです。
計算方法は、基本的に次のようになります。
【休業損害の算出方法】
1日あたりの収入額 × 休業日数 |
なお、休業損害は会社員や自営業者だけではなく、学生や専業主婦、無職の人も請求できる場合があります。
詳しくは、「主婦などの家事従事者の休業損害【交通事故】相場や計算方法を解説」を参考にしてください。
3-6. 治療費
交通事故で、病院で治療を受けた際にかかった下記の費用を請求することができます。
・薬剤費: 処方された薬の費用 ・治療費:診察料、検査料、手術などの費用 ・医療器具費: ギプスやサポーターなどの費用 ・入院費:入院に必要な費用 ・介護費:介護が必要な場合の費用・通院費:病院への往復の交通費 |
保険会社が直接病院に支払う方法と、被害者が建て替えて、後から請求する方法があります。
「治癒」または「症状固定」と診断されるまでの治療費が請求可能です。症状固定後の治療費は、原則請求できません。
その他、入院や通院、退院にかかった交通費も請求することができます。
4. 家族が意識不明になり弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど良い
家族が意識不明になった場合、弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど有利になります。
症状と事故との因果関係を証明できないと、後遺障害として認定されない場合や、実際よりも等級が低くされてしまう可能性があるからです。
弁護士に相談すれば、いつ、何を行うべきかを的確にアドバイスしてくれるため、必要な証拠が揃いやすくなります。
これまでお伝えしてきたように、家族が自力で示談交渉などを行うことは困難です。
ただでさえ、意識不明となった方のお世話などで精神的、体力的に大きな負担がかかっている状態。
そのような中で、相手側の保険会社が不当に安く金額を提示してきても、反論することはできないでしょう。
実際に、私たち弁護士法人サリュの事例で次のようなものがあります。
相手側は、事故から3ヶ月後であることを理由に、事故と被害者様の死亡との因果関係は認められないと、示談に応じませんでした。 そこで、ご依頼を受けた私たちサリュは裁判を起こし、事故と死亡の因果関係を立証しました。 被害者様が治療を受けていた病院に話を聞きに行き、主治医から医療照会回答書を得た結果、既に支払われたものを除いて、総額3,000万円の和解が成立しました。 |
この場合でも、最初から弁護士が入っていた場合、証拠を早くから揃えることができたといえます。
そのため、裁判なしに早期に解決できたといえるでしょう。
お読みになっている方の中には、弁護士に依頼するのは費用がかかる、とお考えの方も多いかもしれません。
しかし、「3. 意識不明になった場合に受け取れる慰謝料やその他の損害賠償れる慰謝料やその他の損害賠償」で解説したように、慰謝料が「弁護士基準」となるため、結果的に得られる金額は多くなります。
今はそれどころではないかもしれませんが、相手側の保険会社から連絡があった場合、弁護士に相談することを思い出してくださいね。
無料で最初の相談に応じてくれる弁護士もいるので、利用するとよいでしょう。
5. 不安を一人で抱え込まず、とにかく誰かに相談しましょう
「ある日突然、大切な家族が交通事故に遭い、意識不明の事態になった…」
「回復するのかな、前のように元気になるのかな、それとも、もう回復しないのかも…」
これをお読みになっているあなたは今、一人でたくさんの不安を抱えているかもしれません。
どうか、ご自身を責め、これ以上思い詰めないでください。
そのうえで、少しでも楽になるなら、とことん誰かに話し、不安を言葉にしましょう。
まずは、他の家族や友人に、不安な気持ちを聞いてもらいましょう。
意識不明になった家族の病状が心配なら、医師や看護師さんにとことん相談しましょう。
あなたが元気でいることが、今は一番大切なことです。
一人で抱え込まず、とにかく周りに助けを求めましょう。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか。
今はまだ先のことが考えられないかもしれません。
少しでも動けるようになって、何からすればいいのだろうと思った時に、ぜひこの記事を思い出してくださいね。
ここで、この記事のおさらいをしていきましょう。
◯交通事故で意識不明になったら今後どうなるの?
目覚めた時間 | 症状 |
2〜3時間位内 | 回復する可能性が高く、後遺症も残りにくい |
6時間以内 | 回復の見込みがある |
6時間以上 | 後遺症(高次脳機能障害)が残りやすい |
3ヶ月以上 | 遷延性意識障害(植物状態)と診断される 数カ月後、死亡する可能性が高くなる |
◯交通事故で意識不明になったら家族がすべきこと4つ
・適切な治療ができる病院を探す ・治療の経過を細かく記録しておく ・加入している保険会社へ連絡する ・示談交渉や手続きを代わりに行う |
◯意識不明になった場合に受け取れる慰謝料やその他の損害賠償
【慰謝料】
入院慰謝料 | 入院による精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことへの精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
死亡慰謝料 | 死亡したことの本人と遺族に対する慰謝料 |
【損害賠償】
逸失利益 | 事故に遭わなければ得られたはずの将来の収入分 |
休業損害 | 仕事を休んだことによる収入の減少を補填 |
治療費 | 治療にかかったほぼすべての費用 |
この記事を参考に、ご家族が何をしたらよいのかを知り、安心して治療を受けられますことを願っております。