【早見表付き】後遺障害の逸失利益はいくら?ケースごとの金額を解説

後遺障害逸失利益(いっしつりえき)とは、事故による後遺障害が残らなければ将来得られたはずの「将来の利益」のことです。

交通事故加害者が事故を起こさなければ手にできていたはずの収入が、事故により絶たれてしまったり、減少してしまったりする訳ですから、加害者はその金額を補償しなければなりません。

しかしながら、一概に後遺障害逸失利益といっても、以下のように金額はケースによって大きく異なります。金額の計算式、根拠などは後ほど説明します。
※あくまで概算です。前提状況が異なれば金額も変わります。

具体的には、被害者の収入(原則として事故前年度の実際の年収がベース)と後遺障害のレベル(等級)、症状固定時の年齢によって、後遺障害逸失利益の金額が決まります。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

加害者の保険会社が金額を計算して提示してくれるのですが、自分でも金額の妥当性を確認しないと、適切ではない金額に納得してしまい、後悔することがあります。

例えば、保険会社が「主婦には逸失利益は払いません」と言ってきたり、基礎収入を低く見積もって計算して低額な後遺障害逸失利益を提案してきたりするケースが存在するので、注意が必要なのです。

そこでこの記事では、後遺障害逸失利益とは何か詳しく解説するとともに、後遺障害逸失利益の計算例、自分で計算する方法なども詳しく解説します。

損しないためには、保険会社の提案額を鵜呑みにせず、自分でも正しく後遺障害の逸失利益を理解して、計算しておくことがとても大切です。

交通事故で奪われた適正な収入との差額の賠償を加害者に求めたい方は必見です。この記事を通じて、ぜひ後悔のない行動を取るための知識を得てください。

この記事の監修者
弁護士 山田 洋斗

弁護士法人サリュ千葉事務所
千葉県弁護士会

交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した

1. 後遺障害逸失利益とは

後遺障害逸失利益の意味や位置づけについて解説していきます。

1-1. 後遺障害が残らなければ将来得られたはずの収入のこと

後遺障害逸失利益とは、事故による後遺障害が残らなければ将来得られたはずの収入のことをいいます。

本来なら手にしていたはずの収入が失われたのは、事故を起こした加害者のせいなので、後遺障害逸失利益を交通事故加害者に請求することができるのです。

30歳男性の会社員(年収800万円)に後遺障害等級2級の障害が残った場合
後遺障害逸失利益の金額は、約1.7億円
30歳女性の専業主婦に後遺障害等級14級(むちうち)の障害が残った場合
後遺障害逸失利益の金額は、90万円

詳しい計算方法や計算例は後述しますが、後遺障害逸失利益は、被害者の年収・後遺障害の程度(等級)、症状固定時の年齢で金額が決まります。

1-2. 後遺障害逸失利益を請求できる条件

示談交渉において後遺障害逸失利益を請求できる条件は、以下の条件が揃った時です。

(1)自賠責保険が認定している「後遺障害等級」の1級~14級に該当すること
(2)働けなくなって収入がゼロになった、または減収したこと
(3)事故に遭わなければ、この先も働く意欲があったこと

(1)自賠責保険の後遺障害等級1級~14級に該当すること

重要なのが「後遺障害等級のいずれかに該当していること」です。ただ単に後遺症が残っていても、原則として後遺障害逸失利益はもらえません。

自賠責保険の「損害保険料率算出機構」という認定機関に「後遺障害等級」の認定申請を行い、太鼓判をもらう必要があります。後遺障害等級認定では、被害者が主張している後遺症を裏付ける医学的根拠の有無や、本当に交通事故が原因で残った後遺症なのかどうかなどが精査されます。

「後遺障害等級」の1級〜14級に該当すれば、「後遺障害」が認定された状態となり、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料を請求できるようになるのです。

(2)働けなくなって収入がゼロになった、または減収したこと

後遺障害で働けなくなって収入がゼロになったり減収したりしたことも条件となります。以前と同じ給料・待遇で働けている場合には、原則として逸失利益がないと判断される場合もあります。

ただし、例外もあります。詳しくは、「6. 後遺障害逸失利益についてよくある質問」をご覧ください。

(3)事故に遭わなければこの先も働く意欲があったこと

事故に遭わなければこの先も働く意欲があったことが条件となります。

例えば、事故時点で無職だった方でも、求職活動をしていた場合には、「今後就職して収入を得ていた可能性が高い」とされるため、後遺障害逸失利益が認められます。

なお、給料を得ていない専業主婦(主夫)にも逸失利益は認められます。職業などケースごとの詳細は後述します。

1-3. 後遺障害逸失利益は損害賠償金の一部(治療費や慰謝料とは別に請求できる)

後遺障害逸失利益は「損害賠償金」全体の一部であり、後遺障害逸失利益は、治療費や慰謝料とは別に請求できるものです。

そのため、交通事故の加害者には、後遺障害逸失利益だけでなく、損害の内容に応じて別の損害賠償金もしっかりと支払ってもらいましょう。

2.【年齢・等級別】後遺障害逸失利益の早見表

後遺障害逸失利益はいくらぐらいもらえるのかを知りたい方に向けて、年齢別・等級別の後遺障害逸失利益の早見表を作成しました。

この早見表では、25歳・35歳・45歳・55歳・65歳の平均年収を基にして、後遺障害等級別に、逸失利益の金額を掲載しています。

逸失利益は基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数で計算します。
これらの数字が高ければ高いほど、後遺障害逸失利益の金額は高くなります。
下記早見表では、以下を前提にしています。
基礎収入
25歳:男性5,549,100円・女性:3,943,500円
(※令和4年の全学歴、全年齢、男女別の平均収入を前提)
35歳:男性5,600,500円・女性4,111,400円
45歳:男性6,360,800円・女性4,317,100円
55歳:男性6,740,100円・女性4,280,700円
65歳:男性3,857,500円・女性2,975,500円
(※令和4年の全学歴、年齢別、男女別の平均収入を前提)

労働能力喪失率こちら
労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数はこちら

【後遺障害逸失利益の早見表(年齢・等級別)】

・男性

等級 25歳男性 35歳男性 45歳男性 55歳男性 65歳男性
第1級~第3級 13152万 11419万 10137万 7168万 3003万
第4級 12100万 10505万 9326万 6595万 2763万
第5級 10390万 9021万 8008万 5663万 2373万
第6級 8812万 7651万 6792万 4803万 2012万
第7級 7365万 6395万 5677万 4014万 1682万
第8級 5918万 5138万 4562万 3226万 1352万
第9級 4603万 3997万 3548万 2509万 1051万
第10級 3551万 3083万 2737万 1935万 811万
第11級 2630万 2284万 2027万 1434万 601万
第12級 1841万 1599万 1419万 1004万 420万
第12級
むちうち
663万 669万 760万 805万 420万
第13級 1184万 1028万 912万 645万 270万
第14級 658万 571万 507万 358万 150万
第14級
むちうち
127万 128万 146万 154万 88万

・女性

等級 25歳女性 35歳女性 45歳女性 55歳女性 65歳女性
第1級~第3級 9346万 8383万 6880万 5377万 2962万
第4級 8599万 7712万 6330万 4947万 2725万
第5級 7384万 6622万 5435万 4248万 2340万
第6級 6262万 5616万 4610万 3603万 1984万
第7級 5234万 4694万 3853万 3011万 1659万
第8級 4206万 3772万 3096万 2420万 1333万
第9級 3271万 2934万 2408万 1882万 1037万
第10級 2524万 2263万 1858万 1452万 800万
第11級 1869万 1677万 1376万 1075万 592万
第12級 1309万 1174万 963万 753万 415万
第12級
むちうち
471万 491万 516万 511万 355万
第13級 841万 754万 619万 484万 267万
第14級 467万 419万 344万 269万 148万
第14級
むちうち
90万 94万 99万 98万 68万

※2024年3月現在
※実際には、個々の状況により金額は変わります。上記金額が確実にもらえるわけではないことに注意してください。
※被害者が交通事故に遭った前年に得た年収を基準に後遺障害逸失利益を算出します。特に30歳以上の方について、年齢別の平均年収と実際の年収が乖離している方は、金額が大きく異なる可能性があるので注意してください。

自分で後遺障害逸失利益を計算する方法については、「4.保険会社との交渉時に自分でも「後遺障害逸失利益」を計算してみよう」で後述しています。

3. 後遺障害逸失利益の計算例4パターン

ここからは、給与所得者・自営業者・家事労働者・子どもの4パターンについて、後遺障害逸失利益がいくらになるか、計算例を紹介していきます。

実際には被害者の個別の状況によって金額は変わりますが、例として参考にしてみてください。

3-1. 給与所得者の後遺障害逸失利益の計算例(会社員・アルバイト)

基礎収入
事故前の1年間の収入(手当・ボーナスを含む)
労働能力喪失率
第1~3級:100%/第4級:92%/第5級:79%/第6級:67%/第7級:56%/第8級:45%/第9級:35%/第10級:27%/第11級:20%/第12級:14%/第13級:9%/第14級:5%
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
症状固定時の年齢に応じて0.971(102歳以上)~25.502(18歳)
※高齢者の場合、性別により平均余命に差があるため、実際は上記と若干異なる場合があります。

 

会社員やアルバイトなど給与所得者の後遺障害逸失利益を求める場合、基礎収入は「事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)」が基本となります。

※ただし、30歳未満の若年者で平均よりも賃金が低い場合には、将来的により多い収入を得られる可能性が認められれば、賃金センサスの全年齢の平均賃金額を基礎収入として計算できるケースがあります。

以下に、さまざまな基礎収入・年齢・等級ごとの後遺障害逸失利益の金額例を紹介します。

基礎収入800万円・50歳・後遺障害等級2級の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)800万円
・労働能力喪失率:100%(後遺障害等級2級)
・労働能力喪失期間:50歳の場合、17年(67歳-50歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:13.166(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×100%×13.166=1億532万円
基礎収入600万円・40歳・後遺障害等級6級の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)600万円
・労働能力喪失率:67%(後遺障害等級6級)
・労働能力喪失期間:40歳の場合、27年(67歳-40歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:18.327(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=600万円×67%×18.327=約7,367万円
基礎収入400万円・30歳・後遺障害等級9級の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)400万円
・労働能力喪失率:35%(後遺障害等級9級)
・労働能力喪失期間:30歳の場合、37年(67歳-30歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:22.167(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=400万円×35%×22.167=3103万円
基礎収入350万円・28歳・後遺障害等級12級の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)350万円
・労働能力喪失率:14%(後遺障害等級12級)
・労働能力喪失期間:28歳の場合、39年(67歳-28歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:22.808(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=350万円×14%×22.808=約1,118万円
基礎収入350万円・28歳・後遺障害等級12級(むちうち)の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)350万円
・労働能力喪失率:14%(後遺障害等級12級)
・労働能力喪失期間:10年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:8.530(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=350万円×14%×8.5302=約418万円
基礎収入600万円・55歳・後遺障害等級14級の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)600万円
・労働能力喪失率:5%(後遺障害等級14級)
・労働能力喪失期間:55歳の場合、12年(67歳-55歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:11.296(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=600万円×5%×11.296=約339万円
基礎収入600万円・55歳・後遺障害等級14級(むちうち)の場合
・基礎収入:事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)600万円
・労働能力喪失率:5%(後遺障害等級14級)
・労働能力喪失期間:5年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:4.579(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=600万円×5%×4.5797=約137万円

3-2. 自営業者の後遺障害逸失利益の計算例

基礎収入
前年度の確定申告収入-経費
労働能力喪失率
第1~3級:100%/第4級:92%/第5級:79%/第6級:67%/第7級:56%/第8級:45%/第9級:35%/第10級:27%/第11級:20%/第12級:14%/第13級:9%/第14級:5%
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
症状固定時の年齢に応じて0.971(102歳以上)~25.502(18歳)
※高齢者の場合、性別により平均余命に差があるため、実際は上記と若干異なる場合があります。

 

自営業の方の後遺障害逸失利益は、事故前年度の確定申告の「収入-経費」をベースに計算していきます。それ以外は、給与所得者と同様に計算します。
なお、減価償却費については、単に税金の計算時に売上から控除することが認められているに過ぎず、交通事故被害者の稼働能力を把握する後遺障害逸失利益の計算の場面では控除すべきではないと考えられています。そのため、減価償却費については、所得に加算することができます。以下では、わかりやすくするため、単に「収入-経費」として説明します。

基礎収入800万円・50歳・後遺障害等級2級の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:100%(後遺障害等級2級)
・労働能力喪失期間:50歳の場合、17年(67歳-50歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:13.166(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×100%×13.166=1億532万円
基礎収入800万円・40歳・後遺障害等級6級の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:67%(後遺障害等級6級)
・労働能力喪失期間:40歳の場合、27年(67歳-40歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:18.327(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×67%×18.327=約9,823万円
基礎収入800万円・30歳・後遺障害等級9級の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:35%(後遺障害等級9級)
・労働能力喪失期間:30歳の場合、37年(67歳-30歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:22.167(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×35%×22.167=約6206万円
基礎収入800万円・35歳・後遺障害等級12級の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:14%(後遺障害等級12級)
・労働能力喪失期間:35歳の場合、32年(67歳-35歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:20.389(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×14%×20.389=約2284万円
基礎収入800万円・35歳・後遺障害等級12級(むちうち)の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:14%(後遺障害等級12級)
・労働能力喪失期間:10年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:8.530(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×14%×8.5302=約955万円
基礎収入800万円・55歳・後遺障害等級14級の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:5%(後遺障害等級14級)
・労働能力喪失期間:55歳の場合、12年(67歳-55歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:11.296(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×5%×11.296=約452万円
基礎収入800万円・55歳・後遺障害等級14級(むちうち)の場合
・基礎収入:前年度の確定申告の「収入-経費」800万円
・労働能力喪失率:5%(後遺障害等級14級)
・労働能力喪失期間:5年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:4.579(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)
=800万円×5%×4.579=約183万円

3-3. 家事従事者の後遺障害逸失利益の計算例(専業主婦・主夫)

基礎収入
賃金センサスの女性の全年齢平均賃金(令和4年の場合、3,943,500円)
労働能力喪失率
第1~3級:100%/第4級:92%/第5級:79%/第6級:67%/第7級:56%/第8級:45%/第9級:35%/第10級:27%/第11級:20%/第12級:14%/第13級:9%/第14級:5%
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
症状固定時の年齢に応じて0.971(102歳以上)~25.502(18歳)
18歳未満の家事従事者は、年齢に応じて、25.730~28.733
※高齢者の場合、性別により平均余命に差があるため、実際は上記と若干異なる場合があります。

 

家事従事者(専業主婦・主夫など)の後遺障害逸失利益は、賃金センサスの女性の全年齢平均賃金(令和4年の場合、3,943,500円)が基礎収入となります。基礎収入は原則として年齢や性別に左右されず固定となりますが、高齢者の場合は、年齢別の賃金センサスを利用するケースが多いです。

後遺障害等級9級の場合(被害者の年齢が30歳の場合)
・基礎収入:3,943,500円(令和4年の賃金センサスの女性の全年齢平均賃金)
・労働能力喪失率:35%(後遺障害等級9級)
・労働能力喪失期間:30歳の場合、37年(67歳-30歳)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:22.167(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=3,943,500円×35%×22.167
約3059万円
後遺障害等級12級(むちうち)の場合
・基礎収入:3,943,500円(令和4年の賃金センサスの女性の全年齢平均賃金)
・労働能力喪失率:14%(後遺障害等級12級)
・労働能力喪失期間:10年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:8.530(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=3,943,500円×14%×8.530
約471万円
後遺障害等級14級(むちうち)の場合
・基礎収入:3,943,500円(令和4年の賃金センサスの女性の全年齢平均賃金)
・労働能力喪失率:5%(後遺障害等級14級)
・労働能力喪失期間:5年(むちうちで制限される年数)
・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:4.579(法定利率3%)
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=3,943,500円×5%×4.579
約90万円

3-4. 子ども(18歳未満)の後遺障害逸失利益

基礎収入
高校生以下の子どもの基礎収入は、原則として賃金センサスの学歴計・男女別全年齢平均をもとに算定
令和4年:男性5,549,100円、女性3,943,500円
※ただし、女子年少者(中学生以下)は賃金センサスの全労働者の平均賃金を使用
※大学進学が確実視される場合は、賃金センサスの大卒・男女別全年齢の平均賃金を用いることが可能
労働能力喪失率
第1~3級:100%/第4級:92%/第5級:79%/第6級:67%/第7級:56%/第8級:45%/第9級:35%/第10級:27%/第11級:20%/第12級:14%/第13級:9%/第14級:5%
労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
症状固定時の年齢に応じて、14.980(0歳)~24.759(17歳)
18歳未満の家事従事者は、年齢に応じて、25.730~28.733

 

高校生以下の子どもの基礎収入は、原則として賃金センサスの学歴計・男女別全年齢平均をもとにします。令和4年のデータでは、男子が5,549,100円、女子が3,943,500円です。
子どもの場合は、就労開始までに期間があるため、その期間を控除して、実際に就労を開始すると思われる時期以降のライプニッツ係数を計算する必要があります。

後遺障害等級2級の場合(症状固定時に10歳の男子の場合)
・基礎収入:5,549,100円(令和4年の学歴計・男性の全年齢平均賃金)
・労働能力喪失率:100%(後遺障害等級2級)
・労働能力喪失期間:49年(67歳-18歳)
※高校卒業から働くと仮定して計算・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:20.131(法定利率3%)
※「18歳未満の者に適用する表」の10歳を参照
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=5,549,100円×100%×20.131
約1億1,170万円
後遺障害等級6級の場合(症状固定時に10歳の女子の場合)
・基礎収入:3,943,500円(令和4年の学歴計・女性の全年齢平均)
・労働能力喪失率:67%(後遺障害等級6級)
・労働能力喪失期間:49年(67歳-18歳)
※高校卒業から働くと仮定して計算・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:20.131(法定利率3%)
※「18歳未満の者に適用する表」の10歳を参照
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=3,943,500円×67%×20.131=約5,319万円
後遺障害等級9級の場合(症状固定時に17歳の女子の場合)
・基礎収入:3,943,500円(令和4年の学歴計・女性の全年齢平均)
・労働能力喪失率:35%(後遺障害等級9級)
・労働能力喪失期間:49年(67歳-18歳)
※高校卒業から働くと仮定して計算・労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:24.759(法定利率3%)※「18歳未満の者に適用する表」の17歳を参照
後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)=3,943,500円×35%×24.759
約3,417万円

なお、子どもにむちうちの後遺症が残った場合には、就労を開始する年齢に達するまでの間に、期間の経過により疼痛などが回復する可能性があるため、逸失利益が認められない可能性があります。

4. 保険会社との交渉時に自分でも「後遺障害逸失利益」を計算してみよう

ここからは、保険会社から示談の提案があった場合に、自分でも後遺障害逸失利益を計算できるようにするメリットを説明していきます。

自分でも後遺障害逸失利益を計算すべき理由としては、保険会社は後遺障害逸失利益を低く見積もって金額を提示してくる可能性が高いからです。

保険会社からの後遺障害逸失利益の提案額が低いケースには、以下のような例があります。

後遺障害等級7級・27歳男性・会社員

後遺障害等級7級・27歳男性・会社員
・保険会社は、高校卒27歳男性の後遺障害逸失利益について、交通事故の前の年の年収(300万円)を基に計算をしていた
後遺障害逸失利益=300万円×56%(7級)×23.115(就労可能年数40年)
=約3,883万円
交渉して後遺障害逸失利益をアップ
・おおむね30歳未満の方の場合、年齢や属性に応じた全年齢の平均賃金をベースに計算できるケースがある
・令和4年の高卒男性の全年齢の平均賃金は4,829,900万円
・より年収が高い企業への転職活動をしていたこともあり、高卒男性の平均賃金を採用した後遺障害逸失利益の金額を得ることができた
後遺障害逸失利益=4,829,900万円×56%(7級)×23.115(就労可能年数40年)
=約6252万円

後遺障害等級12級・30歳女性・専業主婦

後遺障害等級12級・30歳女性・専業主婦
・保険会社は、被害者が専業主婦であることを理由に、後遺障害逸失利益の支払を拒否
後遺障害逸失利益の提案額
=0円
交渉して後遺障害逸失利益を認めさせた
・専業主婦であっても、後遺障害逸失利益は請求できる
・家事従事者の基礎収入は、賃金センサスの女性の全年齢平均賃金を基に算出
・令和4年だと、3,943,500円
後遺障害逸失利益=3,943,500円×14%(12級)×22.167(就労可能年数37年)
=約1,223万円

保険会社からの提案額を鵜呑みにせず、正当な金額かどうか自分でも計算してみるのがおすすめです。

「でも計算が難しそう」という方のために、次章で後遺障害逸失利益の詳しい計算方法を4ステップで紹介します。

5. 後遺障害逸失利益の計算式・計算方法4ステップ

後遺障害逸失利益の計算方法について解説していきます。計算の仕方は職業、年齢、後遺障害の等級ごとに異なるなど結構ややこしいのですが、ひとつずつステップを踏んでいけば、自分でも出すことはできるでしょう。

後遺障害逸失利益の計算式の通りです。

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

3つの項目について、被害者の状況ごとに異なる数字が入るので、まずは一つずつ確認していきましょう。

5-1. ステップ1:(1)基礎収入を計算する

まずは、計算式の3つの項目で最初に登場する項目「基礎収入」を計算していきます。

基礎収入とは、交通事故に遭う前に得ていた収入のことです。原則として「事故の前年の1年間の収入」が基準になります。

ただし、家事従事者(主婦・主夫)など実際には収入を得ていない方については、平均賃金を使用して計算します。

基礎収入をどう求めるかは、被害者の職業や性別、年齢、属性などによって変わるのでしっかり確認していきましょう。それぞれの基本的な基礎収入の求め方を解説するので、確認してみてください。

【被害者の属性別・基礎収入の求め方】

職種・属性など
一般的な基礎収入の求め方
給与所得者
(会社員など)
基礎収入=事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)
源泉徴収票などの「支払金額」や「総支給額」に記載されている金額
自営業者・個人事業主
基礎収入=事故前年度の確定申告収入額から経費を差し引いた金額
専従者控除や青色申告特別控除などの税制上の優遇を受ける前の所得金額
(この所得金額に、減価償却費を加算できる場合もあります)
高齢者
基礎収入=事故前の1年間の収入(年金以外に収入がある方のみ)
家事従事者
(主婦・主夫)
基礎収入=原則として賃金センサスの女性の全年齢平均賃金
(高齢主婦・主夫の場合は年齢別の賃金センサスが適用される場合もあります)
子ども・学生
基礎収入=賃金センサスの男女別の全年齢平均賃金
(大卒となる可能性が高い場合は、大卒前提の賃金センサスが適用できる場合もあります)
失業者
基礎収入=原則ゼロ(逸失利益は認められない)
もっとも、就職活動をしており既に内定を得ている等、近い将来、収入を得られる高い可能性があった場合は、
「将来得られたであろう収入」を立証して基礎収入とできる場合があります。

表内に多く登場する「賃金センサス」とは、労働者の性別・年齢・学歴などの属性ごとに平均収入をまとめた資料です。毎年厚生労働省が発表しています。

一般的な求め方を表にまとめましたが、一部例外もあるので、それぞれの項目を確認してください。

給与所得者(会社員など)の基礎収入

給与所得者(会社員など)の基礎収入は、「事故前の1年間の収入(手当やボーナスも含む)」が基本となります。源泉徴収票などの「支払金額」や「総支給額」に記載されている金額に記載されている金額と考えるとわかりやすいでしょう。

ただし、30歳未満の場合、若いが故に低賃金となっているだけの場合もあります。このように、将来的に平均賃金程度の収入を得られる可能性がある場合は、直近の収入を基礎とするのは不当と考えられます。この場合、賃金センサスの平均賃金額を基礎収入として計算できるケースがあります。

基礎収入の求め方の例
事故に遭った前年の年収が500万円の会社員の場合、基礎収入=500万円となります。

自営業者・個人事業主の基礎収入

自営業者・個人事業主の基礎収入は、「事故前年度の確定申告の収入額から経費を差し引いた所得金額」が基本です。この所得は、専従者控除や青色申告特別控除などの税制上の優遇を受ける前の所得金額を採用します(この所得金額に、減価償却費を加算できる場合もあります)。

ただし、確定申告額が赤字の場合など、特別な事情で実際の収入とあまりにかけ離れている場合には、賃金センサスの平均賃金を参考にした金額を基礎収入にできるケースがあります。

基礎収入の求め方の例
事故に遭った前年の専従者控除前の所得金額が800万円の自営業者の場合、基礎収入=800万円となります。

高齢者の基礎収入

収入がある方は、事故前の1年間の収入が基礎収入となります。

※収入が年金のみの場合は、後遺障害逸失利益は認められません。事故に遭うことで年金がもらえなくなる訳ではないためです。
※年金のみ収入がある高齢者は、死亡逸失利益は認められて、後遺障害逸失利益は認められないので、注意しましょう。

家事従事者(主婦・主夫)の基礎収入

家事従事者(主婦・主夫)の基礎収入は、賃金センサスの女性の全年齢平均賃金が基本となります。ただし、高齢主婦・主夫の場合は年齢別の賃金センサスが適用される場合もあります。

ただし、兼業で働いて収入がある主婦(主夫)の場合は、実際の収入を基礎収入とすることも可能です。どちらか多い方を基礎収入にします。

基礎収入の求め方の例
令和4年の場合、女性の全年齢平均賃金は3,943,500円なので、家事従事者(主婦・主夫)の基礎収入は3,943,500円となります。

18歳未満の未就労者の基礎収入

18歳未満で収入のない子ども・学生は算出しようがないため、賃金センサスの学歴計・男女別全年齢平均を基礎収入とするのが一般的です。

【被害者の属性別・基礎収入の求め方】

職種・属性など
一般的な基礎収入の求め方
18歳未満の男子
賃金センサスの学歴計・男性の全年齢平均賃金を用いる
18歳未満の女性
賃金センサスの学歴計・女性の全年齢平均賃金を用いる
大学進学が確実視される場合
賃金センサスの大卒・男女別全年齢平均賃金を用いることが可能
女子年少者(中学生以下)の場合
賃金センサスの全労働者の平均賃金を使用する
※逸失利益の金額に男女間で格差が生じることへの問題意識により

 

基礎収入の求め方の例(10歳の男の子の場合)
令和4年の場合、賃金センサスの学歴計・男性の全年齢平均賃金は5,549,100円なので、子ども・学生(18歳未満)の基礎収入は5,549,100円となります。
基礎収入の求め方の例(7歳の女の子の場合)
令和4年の場合、賃金センサスの学歴計・男女全年齢平均は4,965,700円なので、子ども・学生(18歳未満)の基礎収入は4,965,700円となります。

大学在学中だった方や大学入試に合格していた場合は、より高額な大卒者の平均賃金を基礎収入として計算できるケースもあります。

失業者の基礎収入

事故当時に働いておらず収入がなかった方は、基本的に後遺障害逸失利益は認められません。

ただし、求職活動中だった場合など、事故に遭わなければ将来的に働けると判断される場合(意欲・能力があり、就職先が見つかる可能性が高い場合)には、後遺障害逸失利益が認められます。

後遺障害逸失利益が認められる場合の失業者の基礎収入は、過去に得ていた収入、学歴、再就職先の勤務条件等から、再就職によって得られるであろう収入を推認して基礎収入とします。

5-2. ステップ2:(2)労働能力喪失率を確認する

次に、計算式の2つ目の項目「労働能力喪失率」を確認します。

労働能力喪失率とは、後遺障害の影響で事故前と比べて「労働能力がどの程度失われたか」ということです。

認定された後遺障害等級に応じて、以下のように目安となるパーセンテージが決まっています。

【労働能力喪失率】

後遺障害等級労働能力喪失率
第1級100%
第2級100%
第3級100%
第4級92%
第5級79%
第6級67%
第7級56%
第8級45%
第9級35%
第10級27%
第11級20%
第12級14%
第13級9%
第14級5%

上記はあくまで目安となる割合なので、実際の後遺障害の部位や程度、被害者の年齢・職業などを考慮して増減できる場合があります。

※参考:事例206:顔面の醜状障害で労働能力喪失率25%認定!提示額の2倍以上の金額を獲得

5-3. ステップ3:(3)労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を確認する

計算式の3つ目の項目「労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」を確認します。

労働能力喪失期間とは

労働能力喪失期間とは、後遺障害による労働能力の低下が続く年数をいいます。原則、症状固定となった日から67歳までの期間となります。

労働能力喪失期間(年数)=原則として症状固定日から67歳までの期間
労働能力喪失期間の例
症状固定日に40歳だった場合、労働能力喪失期間=67歳-40歳=27年

ただし以下のように、被害者の年齢・状況に応じて、例外的に期間を計算するケースも多いので注意しましょう。

【状況別の労働能力喪失期間】

被害者の年齢・状況
労働能力喪失期間
18歳未満の子ども
49年(67歳-18歳)※高校卒業から働くと仮定して計算
大学生
45年(67歳-22歳)※大学卒業から働くと仮定して計算
高齢者
次のいずれか長い方
(1)平均余命の2分の1の年数
(2)67歳-症状固定次の年齢
むちうちの場合
14級は5年程度、12級は10年程度

 

むちうちの場合は、症状固定になった年齢に限らず、「14級は5年程度、12級は10年程度」に制限されることが多いです。他の後遺障害と比べて程度が低く、症状が軽快する可能性があるからです。

ただし、労働能力喪失期間は個別の具体的症状に応じて判断するべきです。労働能力喪失期間について争いたい場合にはサリュにご相談ください。

ライプニッツ係数とは

ライプニッツ係数(中間利息控除)とは、後遺障害が残ったことにより長期的に発生する介護費用や就労機会の喪失・減少分の逸失利益など、長期的に発生する賠償金を前倒しで受けとる際に控除する指数のことです。本来、将来得られるはずの収入の減少分を現時点でもらうことになるため、その分の運用利益を調整するものと考えるとわかりやすいでしょう。

ライプニッツ係数は「年3%」と定められており、これを労働能力喪失期間ごとに対応させたパーセンテージを、「(1)基礎収入」と「(2)労働能力喪失率」に掛け合わせることで、後遺障害逸失利益を計算できます。

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(法定利率3%)をまとめたのが、以下の表です。
※ただし、以下の表のうち、52歳以上のライプニッツ係数については、「男又は女の平均余命のうちいずれか短い平均余命の1/2の年数」を採用していますが、実際には性別ごとの平均余命の1/2の年数を採用します。女性の方が平均余命が長いため、同じ年齢でも女性の方がライプニッツ係数が高くなることが多いでしょう。

出典:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」

18歳以上の方は労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数を、18歳未満の方は事故当時の年齢に該当するライプニッツ係数を確認して、計算式に当てはめましょう。

5-4. ステップ4:(1)×(2)×(3)を計算する

4-1から4-4でそれぞれの要素に入る数字を確認できたら、最後に乗算して、後遺障害逸失利益を算出します。

例えば、事故に遭う前年の年収が800万円の会社員が、50歳の時に症状固定となり、後遺障害等級2級の症状が残った場合の後遺障害逸失利益を計算しましょう。

(1)基礎収入=事故に遭う前年の年収800万円です。
(2)後遺障害等級2級の症状が残った場合の労働能力喪失率は、100%です。
(3)症状固定時の年齢が50歳なので労働能力喪失期間は17年、労働能力喪失期間(17年)に対応するライプニッツ係数は13.166です。

これを計算すると、

後遺障害逸失利益(基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

=800万円×100%×13.166=1億532万円

となります。

自分で後遺障害逸失利益を計算できたら、加害者の保険会社から提案されている示談書の内訳と比較してみましょう。計算の過程や前提条件などに違いが無いか、計算が合致しているかなどしっかりチェックすることをおすすめします。

もし、不利な条件で後遺障害逸失利益が計算されているなど、納得できない場合には、サリュにお気軽にご相談ください。

6. 後遺障害逸失利益についてよくある質問

最後に、後遺障害逸失利益についてよくある質問とその答えを掲載します。気になる方は目を通しておくことをおすすめします。

6-1. 後遺障害が残った後に減収がないのですが逸失利益は認められますか?

原則として、事故後に減収が無い場合には後遺障害逸失利益は認められません。しかしながら、特段の事情がある場合には、後遺障害逸失利益が認められるケースがあります。

・本人の努力により、事故前と同じ水準の収入を維持できている
・勤め先の配慮や温情があったおかげで、減収しないでもらえている
・減収はしていないが、将来的に昇進や昇給などに影響する可能性がある
・後遺障害による業務への支障が出ている
・後遺障害が原因で、将来的に退職・転職をせざるを得ない可能性がある
・日常生活において、後遺障害による支障が出ている

このようなケースでは、加害者側との交渉が必要となるので、専門家に相談することをおすすめします。

また、14級の場合には労働能力喪失率が5%とされる場合が多いところ、この5%の労働能力喪失が収入減少にわかりやすく現れるわけではないことから、収入減少が明らかでなかったとしても、実際には逸失利益が認められるケースが多いです。

6-2. 求職中で収入がなかったのですが逸失利益は認められますか?

後遺障害逸失利益は、被害者の事故前の収入を基に計算するため、事故当時に求職中で無職だった方は逸失利益が認められないことがあります。

しかしながら、労働能力および労働意欲があり「就労の蓋然性」があれば、逸失利益は認められる可能性があるといわれています。

「就労の蓋然性(がいぜんせい)」とは、交通事故がなければ実際に就職していた可能性が高かったかどうかということです。求職中だった場合には、就労の蓋然性を何らかの形で立証(例えば内定通知書等)できれば、逸失利益を主張することができるでしょう。

難しい争点なので、一度、弁護士に相談することをおすすめします。

7. 後遺障害逸失利益について迷ったら弁護士に相談しよう

後遺障害逸失利益は、状況によっては1億円以上の金額が認められるケースがあります。しかしながら、保険会社はできるだけ金額を低くしたがるため、提示額が低額すぎてサリュに相談に来られるケースも多くあります。

自賠責保険の支払額の上限があることもあり、加害者側が後遺障害逸失利益を認めなかったり、低額な金額を提示してきたりするのはよくあることです。

もし「後遺障害逸失利益が低すぎる」と感じた場合には、ぜひ気軽にサリュにご相談ください。

サリュの解決事例ページには、後遺障害逸失利益に関する事例も多く掲載しています。ぜひ事例も参考に、適正な金額の後遺障害逸失利益を払ってもらえるよう交渉していきましょう。

8.まとめ

本記事では「後遺障害逸失利益」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

後遺障害逸失利益とは

・後遺障害が残らなければ将来得られたはずの収入のこと
・保険会社との交渉時に自分でも「後遺障害逸失利益」を計算してみるのがおすすめ

後遺障害逸失利益の計算式・計算方法4ステップ

・ステップ1:(1)基礎収入を計算する
・ステップ2:(2)労働能力喪失率を確認する
・ステップ3:(3)労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を確認する
・ステップ4:(1)×(2)×(3)を計算する

適正な後遺障害逸失利益を受け取るためには、加害者側の示談額をうのみにせず、自分で計算してみることが大切です。

ぜひ今回紹介した事例も参考に、適正な金額の後遺障害逸失利益を払ってもらえるよう交渉していきましょう。