交通事故で脳挫傷となり意識不明に|症状・後遺症・慰謝料を解説

交通事故で脳挫傷となり意識不明となった場合、突然のことで家族は大きな心配、不安を抱えることになるのではないでしょうか。被害者が少しでも回復することを願うばかりですが、これからの補償のこともきちんを知っておくことが重要です。

今回は、交通事故で脳挫傷となった方やその家族向けに、脳挫傷後の症状、後遺障害等級や慰謝料のことについて解説します。

この記事の監修者
弁護士 平岡 将人

弁護士法人サリュ銀座事務所
第一東京弁護士会

交通事故解決件数 1,000件以上
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虚像のトライアングル(幻冬舎MC・2015)
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東京高裁平成28年1月20日判決(一審:さいたま地裁平成27年3月20日判決)
「障がい者の事故被害救済」 日本経済新聞夕刊 掲載日2015年4月8日(許諾番号30040811)

1 脳挫傷とは

まずは脳挫傷とはどのような病気でしょうか。脳挫傷とは、交通事故で衝撃を受けた頭蓋骨を超えて、内部の脳にまで怪我が及んだ状態です。つまり、頭部を打撲・骨折するなどして脳の一部分に衝撃が加わったり、または脳全体が強く揺さぶられたりして、脳の組織や血管が損傷した状態のことです。

脳挫傷は、衝撃が加わった部位の反対側(例えば右側頭部を打った場合には左側頭部)に生じることがあります。また、脳全体が強く揺さぶられたりした場合には、頭蓋骨自体に怪我がなくても脳に損傷が及ぶことがあります。

交通事故による外傷では、「脳挫傷」のほか、脳が損傷した部位や出血部位によって「急性硬膜下血腫」「外傷性硬膜外血腫」「びまん性軸索損傷」「外傷性くも膜下出血」などの傷病名が併せて診断書に記載されます。

2 脳挫傷の症状

(1)身体症状

脳挫傷後に身体に出る症状としては以下のものがあります。

頭痛、嘔吐、麻痺、感覚障害、けいれん発作

脳を受傷すると、言語障害や認知障害といった精神症状だけではなく、直接怪我をしていない「身体」の部分に麻痺や感覚障害といった障害が出ることがあります。症状は、受傷直後にわかることがほとんどですが、交通事故から一定時間経過後に明らかになることもありますので、受傷からしばらくの間は体の状態をよく観察し、少しでも異常を感じたら早めに医師に伝えるようにしましょう。

(2)精神症状・高次脳機能障害

脳挫傷後に出てくる身体症状以外の症状として、以下のものがあります。

・失行(うまく体を動かすことができない)
・失語(うまく話せない)
・失認(物の形が分からない、区別できない)
・認知機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害)

このうち、脳の損傷による認知機能障害は総称して、「高次脳機能障害」と呼ばれます。人間特有の高度な脳の働きに障害があるということです。

「高次脳機能障害」はあくまで総称ですので、実際にどのような具体的な症状が出現しているのか把握することが重要です。なお、他の脳血管障害と比較して、頭部外傷による脳挫傷では、記憶障害と行動情緒障害(社会的行動障害)が多いと指摘されています。

認知機能障害を細かくみていくと、以下のとおりです。

  1. 記憶障害:何度も同じことを言う。人の名前が覚えられない。迷子になる。予定を忘れる。
  2. 注意障害:集中できない(周囲の音や他人の動きに気を取られて動作を継続できない)。飽きやすい。疲れやすい。
  3. 遂行機能障害:優先順位がつけられない。計画が立てられない。自分から行動できない(人から詳細に指示されないと行動できない)。最後までやり遂げられない。
  4. 社会的行動障害:怒りやすくなる、興奮しやすくなる、暴力をふるう、自己中心的になる、こだわりが強くなる、欲求が抑えられないなど、感情がコントロールできない。

(3)回復の可能性

交通事故後の脳挫傷の場合、救急病院での入院期間といった急性期を経て、リハビリテーション病院に転院してから本格的なリハビリテーションが開始されることが一般的です。

脳機能の回復を目指すリハビリテーションとして、学習や訓練によって失った脳の機能の再建を目指したり、失った能力を代替するような補助手段を利用するといった方法があります。このリハビリテーションにより、残っている脳の機能を働かせることで、脳の機能は一定程度回復します。

治療としてのリハビリテーションは、一般的には、医師、言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士、心理療法士などがチームとなって、被害者の状態に適したリハビリテーションを考案、指示します。

ただし、残念ながら一般に成人では、急速な急性期の症状回復が進んだ後は、明確な回復がみられなくなることが多いとされています。

もし、事故前の状態に戻ることなく症状が残存してしまった場合には、必要な書類を揃えて自賠責保険に対する後遺障害申請を行う必要があります。

3 交通事故で脳挫傷となった場合の初期対応

(1)病院との対応

交通事故による脳挫傷は時間が経ってから認められる場合があるため、事故当日の診断書に「脳挫傷」との記載がない場合でも、脳挫傷後の症状が出現しないかどうか、経過観察が必要です。

特に、歩行中に乗用車に衝突された、自転車やバイクを運転中に交通事故に遭い相手車両に衝突したとか、転倒した、というような場合には、頭部を強く打っている可能性があります。医師にはしっかり交通事故当時の状況を説明するようにしましょう。

なお、交通事故による損害賠償においては、自賠責保険における後遺障害等級認定が重要ですが、後遺障害認定の手続きでは、自賠責保険担当者や自賠責保険顧問医師などが被害者と面談をして脳挫傷の有無やその症状を確認するという手続きはありません。

診断書や画像といった資料のみで判断されてしまいますので、頭部外傷の有無、脳挫傷の有無をしっかり診断書に記載してもらうようにしましょう。

(2)意識不明となったか否かが重要な理由

意識不明となったことは、何を示すのでしょうか。
交通事故による脳挫傷の場合、特に意識不明となったか否かは重要な事実です。

脳幹と言われる部分の損傷による意識消失、意識障害は、脳外傷の程度判断の指標になるとされます。外傷後健忘と言われる記憶障害も同じく脳外傷の程度の指標となります。

また、意識障害は、脳の機能的障害が生じていることの指標であり、脳外傷に起因する意識障害が重度で持続が長いほど、高次脳機能障害が生じる可能性が高いとされています。事故直後から意識障害が生じる場合もあれば、頭蓋内の出血や脳腫脹が増悪することで時間が経ってから意識障害が生じる場合もあります。

意識障害のレベルは、一般的にJCS(ジャパン・コーマ・スケール)やGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)という検査の測定値で判断されます。JCS(0~300点)は点数が高いほど重傷となり、GCS(1~15点)は点数が低いほど重傷となります。

このように、後遺障害等級認定においては、脳の画像と併せて意識障害の程度と期間が重要となります。脳挫傷が画像上認められていても、意識障害が記録上認められない場合には、脳挫傷による症状が後遺障害として認定されない可能性が高くなりますので、後遺障害申請の場面では、救急搬送先の病院で、当時の診療録をもとに「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書類を正確に記載してもらう必要があります。

(3)脳挫傷後に早めに実施すべき検査

交通事故後の救急搬送時には、基本的に撮影時間が短くて済むCT検査が実施されます。CTでは、頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、外傷性硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが診断できます。

しかし、脳挫傷は、時間の経過とともに増大すると言われています。12時間後に出血量が最大になるとか、遅発性出血は受傷後3~4日が最大になるとの報告もあります。

また、損傷を受けた脳細胞は、「腫脹」(「浮腫が起こる」)する傾向があるとされていますので、出血が確認できない場合でも、脳自体が腫れている様子が確認できることがあります。これも受傷後2~3日に最大になるとされています。

このような場合、入院している場合には医師が数日間に亘りCT撮影をして出血や腫脹の有無を確認しますが、万が一受傷翌日に退院してしまった後に脳挫傷の増大や腫脹の進行により症状が出現した場合、症状を裏付ける証拠が残らないことになってしまいます。

救急搬送時は、急性期に合併する骨折等他の外傷の治療のため、医師によっても頭部外傷が見落とされたり、被害者本人の意識障害により事故当時の状況を説明できなかったりしますので、このようなケースが起こり得るのです。

交通事故で頭部を受傷したのに入院していない場合で、数日後に少しでも交通事故前と違う症状が出てきた場合には、再度通院してCTを撮影してもらうべきでしょう。

また、微細な脳損傷の確認にはMRIのほうが適しているといわれています。脳の神経線維が多発的に断裂した状態の「びまん性軸索損傷」の場合、受傷から3~4週間で脳の萎縮(脳室の拡大)が生じるとされますが、この萎縮がCTで確認できないような程度の場合、同じくCT検査では把握できなかった微細な出血が後日消失してしまい脳挫傷が存在したことを証明できなくなってしまいますので、念のため、医師に対してMRI撮影も依頼するようにしましょう。

MRIの撮影条件としては、T2、T2*、FLAIR、DWIなどが望ましいとされています。

自賠責保険においては、先ほどの「意識障害の有無とその程度・長さの把握」と併せて「外傷後ほぼ3か月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見」が脳挫傷による高次脳機能障害認定の重要なポイントとされています。

(4)家族にできること

脳挫傷後の症状は、頭痛、嘔吐、麻痺、感覚障害、失行(うまく体を動かすことができない)、失語(うまく話せない)、失認(物の形が分からない、区別できない)、けいれん発作、認知機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害)、意識障害などですが、記憶や注意といった認知機能が低下していることは、なかなか被害者本人は自覚できません。

本人の見た目に変化がないため、後に詳述する「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」といった障害は、家族や職場の人にも把握することは困難です。また、大きな交通事故に遭って集中治療室に入って入院してようやく退院できたわけですから、「良くなっている」という評価が勝ってしまい、日常生活での認知障害が「見落とされる」「気付かれない」という状態になってしまうこともあると指摘されています。

被害者の家族としては、出来る限り冷静に、交通事故前と交通事故後の被害者の「記憶能力」「注意能力」「遂行機能能力」「社会的行動能力」を見て、違いがあればメモをするなど詳細に記録しておくことが重要です。この「交通事故前後の差」は、入院後しか診ることができない主治医のカルテに記載されることは期待できません。

この交通事故前後の差が、自賠責保険における後遺障害等級認定において重要になります。自賠責保険が家族として注意してみるべきと列挙している項目は、後遺障害申請の際に必要書類とされる「日常生活状況報告」に記載されていますので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

4 治療期間(症状固定時期)はいつまで?

(1)完治するまでの治療費を加害者に負担させることは難しい

被害者の中には、症状が残っている限り治療は必要であって、元に戻らない限り加害者はずっと治療費を負担すべきだと考える方も多いです。しかしながら、賠償法的には、原則として「事故と因果関係のある治療期間」についてのみ、加害者は治療に関する賠償義務を負担します。そして、その「事故と因果関係のある治療期間」とは、事故日から症状固定日までとされています。

症状固定日とは、「一般的な治療方法では、これ以上症状の改善が見込まれない時期」のことを言います。

交通事故の治療期間については、以下の記事をご覧ください。

治療期間について
もっと詳しく

(2)交通事故の脳挫傷の場合の一般的な症状固定時期

脳挫傷となった場合、年齢や損傷の程度にもよりますが、1年から1年半程度の治療期間を経て、症状固定となるケースが多いです。

また、てんかん発作が発生した場合、抗てんかん薬を処方して経過観察する必要がありますので、治療期間は長期化する傾向にあります。

なお、将来において出費が想定される治療費についても、後遺障害の程度によっては交通事故と因果関係のある損害として賠償の対象となるケースもあります。

5 治療期間中に行うべきその他の検査(神経心理学的検査)

後遺障害認定においてはMRIやCT検査ほど重要ではありませんが、症状の重症度を把握するためには、治療中から以下の神経心理学的検査を実施することが有益です。

(1)記憶検査

全般的記憶検査:WMS-R(日本版ウェクスラー記憶検査)

言語問題と図形問題で構成された13の検査項目によって、「言語性記憶」「視覚性記憶」「注意・集中力」「遅延再生」といった、記憶の各側面を評価する検査。16歳から74歳まで適用できる。正常値は、100±15。

言語性記憶検査:三宅式記銘力検査

有関係と無関係二種類の対語を10ずつ覚えてもらい、3回のテストでどれだけ想起できるかを調べる検査。平均は、健常の場合で有関係対語10点、無関係対語4.6点。

視覚性記憶検査:ベントン視覚記銘力検査

単純な幾何学模様を提示し、後でそれを同じサイズ・同じ場所に描かせて、視覚認知や視覚記憶などを調べる検査。

日常記憶検査:RBMT(日本版リバーミード行動記憶検査)

姓名、持ち物、約束、絵、物語、写真、道順等を覚えさせて時間を置いて質問する検査。
0~9点:重度記憶障害
10~16点:中等度記憶障害
17~21点:軽度記憶障害
22~24点:正常 

認知機能検査:HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール)

30点満点の認知機能の検査。20点以下で認知障害疑い。

認知機能検査:MMSE(ミニメンタルステート検査)

30点満点の認知機能の検査。27点以下で軽度認知障害疑い。23点以下で認知障害疑い。

(2)注意障害

Trail Making Test(TMT)(A)

数字を順番に線で結んでいく検査(①→②→③→・・・)
平均値は、年齢により異なるが20歳代で約1分~、60歳代で約2分程度とされている。

(3)遂行機能検査

Trail Making Test(TMT)(B)

数字と言葉を順番に線で結んでいく検査(①→あ→②→い→③→う→・・・)

平均値は、年齢により異なるが20歳代で約1分半~、60歳代で約3分半程度とされている。

なお、ある一つの神経心理学的検査により、全ての認知機能の状態を把握することは不可能とされています。そのため、一つの検査で正常であったとしても、他の検査で異常がわかることもあります。正確に認知機能を測るためには、複数の神経心理学的検査を組み合わせて検討することが重要です。

6 交通事故で脳挫傷となった場合の後遺症と後遺障害等級

リハビリテーションを継続しても残ってしまう可能性のある症状として、以下のものがあります。

(1)身体性機能障害

  後遺症

交通事故で脳挫傷となると、麻痺、感覚障害が残存することがあります。脳の損傷部位に応じて、体の一部分のみの麻痺が生じることもあれば、全身麻痺となることもあります。麻痺の種類については以下のとおりです。脳挫傷による麻痺については、通常、四肢麻痺、片麻痺又は単麻痺が生じ、対麻痺になることはありません。

四肢麻痺

脳挫傷などにより両上肢両下肢に麻痺(運動障害及び感覚障害)を残す状態

対麻痺

脳挫傷などにより両上肢または両下肢に麻痺(運動障害及び感覚障害)を残す状態

片麻痺

脳挫傷などにより片方の上肢・下肢に麻痺(運動障害及び感覚障害)を残す状態

単麻痺

脳挫傷などにより1つの上肢・下肢に麻痺(運動障害及び感覚障害)を残す状態

  後遺障害等級

後遺障害等級は、身体機能の残存の程度に応じて以下の通りとなります。

別表1
第1級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表1
第2級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
別表2
第3級3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
別表2
第5級2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2
第7級4号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2
第9級10号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

(2)高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳に損傷を受けたことにより、認知、記憶、思考、注意の持続等、「高次脳機能」に障害が生じた状態のことをいいます。

  後遺症

  1. 失語:うまく話せない
  2. 失認:物の形が分からない、区別できない
  3. 記憶障害:何度も同じことを言う。人の名前が覚えられない。迷子になる。予定を忘れる。
  4. 注意障害:集中できない(周囲の音や他人の動きに気を取られて動作を継続できない)。飽きやすい。疲れやすい。
  5. 遂行機能障害:優先順位がつけられない。計画が立てられない。自分から行動できない(人から詳細に指示されないと行動できない)。最後までやり遂げられない。
  6. 社会的行動障害:怒りやすくなる、興奮しやすくなる、暴力をふるう、自己中心的になる、こだわりが強くなる、欲求が抑えられないなど、感情がコントロールできない。

  後遺障害等級

高次脳機能障害の場合は、身体性機能障害と同様、以下の表のとおりとなります。なお、高次脳機能障害と身体性機能障害が残存している場合は、全体病像を総合的に判断して、後遺障害等級を判断します。

別表1
第1級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表1
第2級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
別表2
第3級3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
別表2
第5級2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2
第7級4号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2
第9級10号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

(3)遷延性意識障害

  後遺症

脳の中でも、呼吸・循環などの生命維持に必要な機能の障害は免れたものの、上部脳幹・視床下部・視床・大脳半球の広範囲に不可逆的な損傷が生じ、その結果、下記の1から7に当てはまる場合を遷延性意識障害(植物状態)と言います。

  1. 自力移動不可能
  2. たとえ声を出しても、意味のある発語は不可能
  3. 簡単な命令にはかろうじて応じることはあるが、それ以上の意思疎通は全く不可能
  4. 眼でかろうじて物を追うことがあっても、それを認識することは不可能
  5. 自力接触不可能
  6. 糞・尿失禁がある
  7. 以上の状態が、治療にかかわらず3カ月以上続いていること

  後遺障害等級

遷延性意識障害となった場合、その多くが介護を要する状態となるため、後遺障害等級も以下のとおり、上位の等級となります。

別表1
第1級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表1
第2級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

なお、遷延性意識障害については、以下のページでさらに詳しく解説しておりますので、こちらもご覧ください。

遷延性意識障害について
もっと詳しく

(4)外傷性てんかん

  後遺症

外傷性てんかんとは、以下のような症状が発作的に生じることを指します。

  1. けいれん
  2. 意識障害
  3. ぼーっとする

脳波の検査でてんかん性の異常波の有無を確認します。

  後遺障害等級

自賠責保険では、「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」の頻度、抗てんかん薬で発作が抑制されているかによって後遺障害等級が認定されます。

別表2
第5級2号
1か月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し状況にそぐわない行為を示す発作」であるもの
別表2
第7級4号
転倒する発作等が数か月に1回以上あるもの又は転倒する発作等以外の発作が1か月に1回以上あるもの
別表2
第9級10号
数か月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの又は服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの
別表2
第12級13号
発作の発現はないが、脳波上に明らかなてんかん性棘波を認めるもの

なお、1ヶ月に2回以上の発作がある場合には、通常は高度の高次脳機能障害を伴っているため、脳の高次脳機能障害にかかる3級以上の認定となります。

7 適切な後遺障害等級を獲得するための必要書類

自賠責保険の後遺障害認定手続きは、自賠責保険担当者や自賠責保険顧問医師などが被害者と面談をして脳挫傷の有無やその症状を確認するということはなく、書面審査によって等級が決まります。診断書や画像といった資料のみで後遺障害に該当するのか、該当するとして何級なのかなどが判断されてしまいますので、被害者の状況を正確に反映した書面作成が重要です。

(1)後遺障害診断書

主治医に傷病名、自覚症状、残存症状、症状固定日、症状推移の見込みなどを記載してもらいます。

(2)頭部外傷後の意識障害についての所見

救急搬送先の病院に依頼して、事故後の意識障害の有無、程度、期間を記載してもらいます。

(3)神経系統の障害に関する医学的所見

画像所見、脳波、神経心理学的検査、運動機能、身の回りの動作能力、てんかん発作の有無、認知・情緒・行動障害(及び症状が社会生活・日常生活に与える影響)などを主治医に記載してもらう書面です。主治医は診察の時しか被害者を診ていませんので、実際の症状と適合しているか注意が必要です。次の「日常生活状況報告」を利用するとよいでしょう。

(4)日常生活状況報告

脳挫傷など頭部外傷があった場合に特有の自賠責保険の書式です。被害者の同居の親族など、身近な人に記載してもらう書面です。他人の視点で、被害者の状態が、交通事故前後でどのように変化したかを記載してもらいます。事前に作成しておいて、主治医に「神経系統の障害に関する医学的所見」を作成してもらう際、持参して参考資料として見てもらう、というのも有効です。

8 交通事故で脳挫傷となった場合の慰謝料・損害賠償金

(1)治療費

交通事故から治療終了(症状固定)までの間に発生する治療費は、過失割合に応じて加害者に負担してもらうことができます。ここで重要なのが、「過失割合に応じて」という点です。もし、被害者に過失が少しでも発生する場合は、自己負担が発生します。自己負担額を軽減させるため、ケースによっては健康保険や労災保険を利用することで、被害者に残せる賠償金を増やすことができます。

また、例えば、交通事故で脳挫傷となり重度の後遺障害が残存した場合で、症状固定後も症状悪化を防ぐために必要と判断される治療費については、賠償の対象となる場合があります。

(2)入通院慰謝料(傷害慰謝料)

交通事故から治療終了までの間、脳挫傷による症状を抱え続けながら日常生活を送った精神的苦痛、時間を割いて病院に行かざるを得なかった精神的苦痛を補填するものです。一般的には、傷病の程度、リハビリテーション期間を含めた入通院の期間等により計算されます。入通院期間は、交通事故から症状固定日までになります。

算定の基準には、低い方から自賠責保険基準、任意保険基準、そして最も高い弁護士基準があります。

慰謝料については、詳しくは以下の記事をご覧ください

交通事故の慰謝料について
もっと詳しく

(3)休業損害

休業損害とは、交通事故による脳挫傷といった傷害のために、休業を余儀なくされ、本来得べかりし利益を得られなくなったことによる損害をいいます。会社員の方であれば、仕事を休んだ日について給料がもらえなくなるので、仕事を休んだ日数や事故前の給料の金額について会社に証明してもらい、減収分について事故の相手方に請求していくことになります。

高次脳機能障害や外傷性てんかんが出現している場合、仕事に対する影響は多大です。しっかりご勤務先にもご協力いただき、休まざるをえなかった理由を確認しておくことが重要です。

なお、主婦の休業損害について、以下の記事をご覧ください。

主婦の休業損害について
もっと詳しく

(4)後遺障害逸失利益

被害者に脳挫傷による後遺障害が残り、労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少のことをいいます。

休業損害は現実に生じた収入の喪失ですが、逸失利益は、将来発生するであろう収入の喪失である点で両者は異なります。

基礎収入額に、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数(ライプニッツ係数)を順次乗じて算出します。

重度後遺障害の後遺障害逸失利益については、以下の記事をご覧ください。

後遺障害逸失利益を
もっと詳しく

(5)後遺障害慰謝料

交通事故による脳挫傷の後遺障害が残存した場合に、将来にわたって残り続ける高次脳機能障害などによる精神的苦痛を補填するものです。原則として後遺障害等級の認定を受けた場合にもらうことができます。また、金額は、後遺障害の等級ごとに算出されます。入通院慰謝料と同じく、算定の基準には、低い方から自賠責保険基準、任意保険基準、そして最も高い弁護士基準があります。

弁護士基準と自賠責基準の後遺障害慰謝料の差

  自賠責基準 弁護士基準
別表第1 別表第2
1級 1650万 1150万 2800万
2級 1203万 998万 2370万
3級   861万 1990万
4級   737万 1670万
5級   618万 1400万
6級   512万 1180万
7級   419万 1000万
8級   331万 830万
9級   249万 690万
10級   190万 550万
11級   136万 420万
12級   94万 290万
13級   57万 180万
14級   32万 110万

 詳しくは以下の記事をご覧ください。

関連記事:後遺障害慰謝料【交通事故】等級相場・計算方法・もらい方を解説

(6)介護費用

交通事故で脳挫傷となった被害者に高次脳機能障害等の後遺障害が残ってしまった場合、リハビリテーション病院を退院した後に、自宅での介護が必要となることがあります。その場合、医師の指示又は症状の程度により必要があれば、介護のための費用も被害者の損害として認められます。

この場合の費用は、日常生活全般にわたり常時介護を必要とする場合には、原則として職業付添人は実費全額、近親者付添人は日額8000円とされています。

日常生活全般にわたる常時介護を必要としないものの、例えば、食事、排泄行為、着替え、入浴等の日常生活における動作の一部についての身体介護や介護としての看視・声掛けのみを要する場合には、具体的な介護の内容、介護のために必要な時間等に応じて上記基準額から減額されることになります。

近親者が介護するか、介護事業者が介護するかでも、賠償額は変わります。仮に近親者が介護するとしても、365日近親者が対応することは現実的ではなく、たとえば土日のみ介護業者に依頼するといった介護を前提にした賠償を受けることも可能です。

なお、保険会社から「介護保険を利用できるから、実質的な自己負担額は低いはずだ」と主張されることもありますが、介護保険制度が一生続く保証はありませんので、そのような主張は受け入れるべきではありません。

介護費用は高額になることが多く、介護の実態を正確に保険会社に伝えないと、適切な賠償を受けることはできません。介護の必要性や金額の妥当性については、専門的な知識や経験が必要になりますので、適切な賠償金を獲得するためには、弁護士への相談・依頼が重要です。

(7)家屋改造費、車両改造費

交通事故で脳挫傷となった被害者に高次脳機能障害等の後遺障害が残ってしまった場合、自宅内における移動や基本的な生活動作を行うため、例えば、車いすによる移動のための玄関のスロープの設置や自宅内の段差解消、手すりの設置、トイレや浴室の改造等が必要となります。自宅内にエレベーターを設置する必要性があるケースもあります。

自動車の車両改造費としては、保有する車に障害者用の車いすのリフト等を装備することなどがあります。

家屋改造費や車両改造費を相手保険会社に請求する際には、必要性を立証しなければなりません。リハビリテーション病院退院前に、医師や病院と相談し、自宅に戻った場合の不具合や家屋改造の必要性についてしっかり相談するようにしましょう。

(8)その他の介護雑費

介護雑費は、特に麻痺や遷延性意識障害が残存した場合の自宅介護で必要となるものです。購入の必要性を含めて病院としっかり話し合いましょう。

主なものとして、①車いす(手動・電動・入浴用)、②折り畳み式スロープ(段差解消のため)、③歩行訓練器、④歩行補助器具(松葉杖など)⑤電動ベッド、⑥ポータブルトイレ、⑦介護用浴槽、⑧入浴用椅子などが考えられます。

将来において複数回買い替えが必要となることを前提に賠償金を算定することが重要です。

9 脳挫傷後、交通事故を原因として死亡した場合

たとえば、交通事故による脳挫傷後、入院中に亡くなってしまった場合は、死亡事故として賠償金を算定します。死亡事故の損害計算を行う場合、後遺障害事案と異なる損害項目があります。また、死亡による逸失利益の算出は、後遺障害事案と異なる計算がなされます。

(1)死亡慰謝料、近親者慰謝料、死亡までの入通院慰謝料

 ア 死亡慰謝料

死亡慰謝料の相場は、以下のとおりです。

  • 一家の支柱 2800万円
  • 母親・配偶者 2500万円
  • その他 2000万円~2500万円

 イ 近親者慰謝料

民法711条では、生命侵害の場合に、「被害者の父母、配偶者及び子」には、固有の慰謝料請求権があることを規定しています。そのため、近親者も慰謝料を請求することができます。しかし、実務上多くのケースで、上記アの本人固有の慰謝料に近親者固有の慰謝料を含むものとして、慰謝料額が認定されています。

 ウ 入通院慰謝料

交通事故から治療期間を経て死亡したような場合には、その期間について入通院慰謝料が認められます。

(2)死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、交通事故によって被害者が死亡した場合の、将来の得べかりし利益のことを指します。稼働による得べかりし利益と、高齢者特有の年金分の得べかりし利益があります。
また、後遺障害に関する逸失利益と異なり、死亡事故特有のものとして「生活費控除」があります。被害者が死亡すると、存命であれば将来にわたって得られたであろう収入を喪失する反面、死亡後の被害者自身の生活費の支出も免れますので、その支出を免れることになる生活費を控除するのが「生活費控除」です。生活費控除率の相場は以下のとおりです。

① 一家の支柱
・被扶養者が1人の場合 40%
・被扶養者が2人以上の場合 30%

② 女性(主婦、独身、幼児等を含む) 30%

③ 男性(独身、幼児等を含む) 50%

ア 稼働分の死亡逸失利益の計算式
稼働分の死亡逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

(基礎収入額)×(1-生活費控除率)×(67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

※死亡時18歳未満の場合は、18歳になるまでの期間に対応するライプニッツ係数を控除します。具体的には「賃金センサス × (1-生活費控除率) × (67歳までの労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 – 18歳までの期間に対応するライプニッツ係数)」です。
※67歳を超える被害者の場合、平均余命までの年数の1/2の年数に対応するライプニッツ係数となります。また、67歳までの年数が平均余命の1/2の年数よりも短くなる被害者については、平均余命の1/2の年数に対応するライプニッツ係数を乗じます。

イ 年金分
年金分の死亡逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

(年金年額)×(1-生活費控除率)×(平均余命年数に対応するライプニッツ係数)

高齢者など仕事をしながら年金も受領している場合、稼働分と年金分の両方を請求することになります。

令和2年4月1日以降に発生した交通事故に適用するライプニッツ係数(クリックすると開きます)

(3)葬儀費用

葬儀関係費とは、葬祭費、供養料のほか、墓碑建立費、仏壇費、仏具購入費等です。香典返しは被害者の損害として認められません。

葬儀関係費用の基準額は、150万円とされています。ただし、これを下回る場合には実際に支出した金額となります。

10 交通事故で脳挫傷となった場合に弁護士に相談すべき理由

(1)被害者や家族だけで賠償手続きを進めるには困難を伴う

交通事故で脳挫傷となった場合、もちろん完治すればよいのですが、そうでなく後遺障害が残ってしまうようなケースも多くあります。後遺症に相応する後遺障害等級を獲得できれば、何ら問題ありませんが、自賠責保険の後遺障害認定においては、思うように後遺障害等級を獲得できないことも少なくありません。また、仮に適切な後遺障害が認定されたとしても、その後も保険会社の担当者との賠償金交渉が待っています。
専門家をいれずに、被害者本人や家族のみで賠償手続きを進める際、特に以下の点に困難が伴います。

  1.  後遺障害認定に必要な検査資料を十分に揃えることができるか
  2.  医証上、被害者の症状が適正に反映されているか
  3.  自賠責保険に提出する書類が過不足なく揃っているか
  4.  賠償実務の知識がある保険会社の担当者と適切なやり取りができるか
  5.  妥当な賠償金を獲得するための法的手段を適切に検討できるか

医師や病院関係者のサポートがあったとしても、これらの場面ひとつひとつにおいて問題を乗り越えるためには、賠償実務の知識が必要となりますので、被害者本人や被害者のご家族様だけで進めることには相当の困難が伴うと考えられます。

脳挫傷の事案は、数多くの事案を経験しなければ、適切な時期に適切な資料を集め、自賠責保険で適切な後遺障害等級を認定してもらい、相手保険会社と適切な交渉を行い、適切な賠償を獲得することは困難です。

そのため、脳挫傷事案の経験豊富な弁護士に依頼されることをお勧めします。

(2)弁護士費用を考慮しても費用倒れとなる可能性は低い

もしご加入の保険契約に「弁護士費用特約」を附帯していれば、弁護士費用の多くはその保険で賄えます。

また、「弁護士費用特約」を附帯していなくても、脳挫傷の事案の場合、過失割合が少なければ、被害者がもらえる賠償金は高額になることが予想され、弁護士費用を考慮しても赤字となる可能性は低くなります。さらに、着手金が無料であり、報酬などの弁護士費用を賠償金回収「後」にお支払いいただく方法を採用している弁護士事務所であれば、初期費用の心配や費用倒れとなる心配はありません。

費用面のご不安がある場合には、まずはこのような弁護士事務所にお問い合わせされることをお勧めします。

関連記事:交通事故の弁護士費用相場はいくら?費用倒れとならない4パターン
関連記事:交通事故の弁護士特約とは?賢い使い方とメリット・デメリット

(3)早めの相談・依頼が賠償額を左右する

「交通事故で頭を打ったのに、後から病院でもらった診断書に頭部外傷の記載がない」「交通事故直後に生じていた微細な脳内出血が消えてしまったために、脳挫傷の症状が残ってしまったのに裏付けとなる画像がない」

「主治医作成の後遺障害診断書や神経系統の障害に関する医学的所見の記載が、本来自分で考えているより軽症とされている」

「自分の状況を把握して日常生活状況報告を書いてくれるような同居の親族がいない」

などの場合で、そのまま自賠責保険の手続きを進めてしまうと、適正な後遺障害等級を獲得することが難しくなります。

自賠責保険の後遺障害等級は、賠償額算定の前提となる重要なものです。

早めに経験豊富な弁護士にご相談・ご依頼いただければ、随時適切な対応をご案内し、適切な賠償金獲得に向けた準備を行うことができます。

11 弁護士法人サリュの脳挫傷に関する解決実績

以下で、弁護士法人サリュの脳挫傷に関する解決実績(一部)をご紹介します。詳細は、リンク先の記事をご覧ください。

 事例311:硬膜下血腫後の高次脳機能障害で7級認定、約3000万円の賠償獲得

(以下抜粋)
サリュは、Mさんの後遺障害等級認定にむけて、後遺障害診断書や神経系統に関する書面、意識障害についての所見の作成をご案内し、また、ご家族の方には日常生活状況に関する書類を依頼しました。
そして、出来上がった書類を精査し、主治医の所見をもとに、ご家族にはさらに詳細な日常生活に関する書類を記入していただくことにしました。
そして、後遺障害の申請を行った結果、Mさんは、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として、後遺障害等級7級4号が認められました。認定理由には、ご家族の作成された日常生活状況に関する書面の内容についても言及されており、事故後の具体的状況の変化が認められる旨記載されていました。
さらに、後遺障害の認定をもとに、相手方保険会社と示談交渉を進めたところ、慰謝料や逸失利益等を裁判基準の金額で認めさせることができ、後遺障害の認定から1ヶ月以内に示談に至りました。
最終的に、自賠責保険金を含め3000万円近い賠償金を獲得することができました。

 事例152:提示額から2倍以上増額。1400万円で示談成立!

(以下抜粋)
Kさんは、保険会社から提示された金額が妥当なものかどうか分からなかったため、サリュの無料相談にお越しになりました。
Kさんからお話をうかがったサリュは、相手方の対応の遅さ、Kさんが大学を卒業できなかった無念さ、複視の症状の辛さなどのお気持ちを汲んで、少しでもKさんの不安や無念を晴らすため、ご依頼を受けさせていただくことになりました。

事故発生から5年以上が経過していましたが、サリュは各種資料の収集、徹底した調査を行い、事故後Kさんが被った損害の算出を慎重に行いました。そして、保険会社との交渉においては、主に逸失利益・慰謝料増額を中心に交渉を行った結果、最終的には818万円増額させ1400万円で示談を成立させることができました。

Kさんからは、「自分で対応して、保険会社の提示どおりに示談に応じていたら、実際に受領した賠償金の半分以下の賠償しか受けることができなかったと思います」と仰っていただけました。

 事例89:遷延性意識障害の将来治療費を認めさせて、賠償金5500万円増額

(以下抜粋)
サリュは、自由診療を前提とした計算による将来治療費でNさんの損害額を計算しなおし、保険会社と示談交渉を始めましたが、将来治療費の計算方法については最高裁判例のない難しい問題であり、交渉は難航しました。しかし、サリュは、できる限り早期に解決したいというNさんのご家族の意向に添えるように示談交渉での解決を目指し、類似の裁判例等を指摘するなどして粘り強く交渉を続けました。

その結果、サリュは、相手方に自由診療での将来治療費が妥当であることを認めさせ、治療費等の既払金を除いて、総額8800万円で示談が成立しました。Nさんのご家族からは、示談での早期解決と大幅な示談金の増額に大変満足していただけました。

 事例84:高次脳機能障害|専門医の検査を勧めて、後遺障害7級認定

(以下抜粋)
サリュは、Eさんのお話を聞いて、高次脳機能障害ではないかと考え、専門医のいる病院へEさんとともに行くことにしました。事故から約1年半が経過していましたが、お医者様は親身にお話を聞いてくださり、必要な検査等をしていただけることになりました。
検査の結果、Eさんは、事故による脳外傷に起因する高次脳機能障害であろうと判断されました。そこで、サリュは、これらの検査結果を元に後遺障害の申請を行い、高次脳機能障害については、7級が認定されました。

その後の示談交渉については、高額案件ではありましたが、スムーズに進み、自賠責からの回収額を合わせて、合計5075万円を獲得することができました。

事例69:高次脳機能障害5級 収入の減少なくとも7000万円賠償

(以下抜粋)
Kさんやご家族は、このままの状態ではいずれ職を失いかねない、そうなったときに備えてきっちりと補償を受けておかないとという思いで、サリュに依頼されました。

サリュは、高次脳機能障害5級といえども、職場に復帰した上に、収入が減少していないということだと、賠償金が大幅に減額されかねないと考え、Kさんの会社に赴き、Kさんの収入を減額していない理由を聞いて陳述書にまとめたり、退職金の減額の可能性、雇用延長がなされない可能性等を証明書にしてもらうなどして丁寧に立証していき、7000万円での和解を成立させました。

Kさんには、「サリュの先生が当初説明していたとおりの結果になりましたね」との言葉を頂きました。

 事例20:高次脳機能障害なのに8年で回復? 示談金額を2000万円増額

(以下抜粋)
サリュは、①Iさんが高次脳機能障害のために物事を忘れやすくなっており、事故後の収入が事故前よりも減少していることに着目し、Iさんの労働能力喪失期間は少なくとも67歳までは続く、②基本的に鎖骨の変形は労働能力には直接関係しないものの、Iさんが鎖骨に痛みや違和を感じていることから労働能力の喪失に多少なりとも影響を及ぼしている、として示談交渉を行いました。

最終的には、逸失利益の計算額は、サリュの主張がほぼ認められる形となり、結果、当初の保険会社提示の額から2000万円増額の3300万円で示談が成立しました。