後遺障害の慰謝料とは?等級ごとの相場や算定基準をわかりやすく解説
「後遺障害の慰謝料って、一体どんなものなの?」
「慰謝料が受け取れるならどれくらいの金額になるのか知りたい」
この記事を読んでいるあなたは、そんな疑問を抱えていませんか?
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残ってしまった被害者に対して支払われる、精神的苦痛を補償する賠償金です。
後遺障害とは、交通事故で負った怪我が完治せず、身体や精神に影響が生涯にわたって残ったことが医学的に証明できる状態のことを指します。
この、後遺障害が残っているという認定を受けることで、加害者側に請求できる慰謝料が後遺障害慰謝料です。
慰謝料の金額は、後遺障害の等級と、算定するときの計算基準によって異なり、相場は32万円~2800万円です。
相場にかなりの幅があるように感じた方が多いと思いますが、それには理由があります。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級と計算基準によって金額が決定するのですが、
「どの等級に認定されるか」
「どの計算基準で算出するか」
によって、金額は大きく異なるからです。
後遺障害には1〜14級の等級があり、症状にあった等級で認定されます。
症状が重い1級では常に介護が必要となる一方、軽い14級では身体の一部に痛みやしびれが残る程度と、等級によって大きく症状が異なり、補償される金額も変わります。
また、請求時の基準が、相手が提示する「自賠責基準」「任意保険基準」なのか、こちらが弁護士を立てて請求する「弁護士基準」なのかによっても、金額は大きく異なります。
同じ怪我で、同じ後遺症が残っても、適正に認定が行われなかったり、請求時の基準が弁護士基準ではなかったりすることで、受け取れる慰謝料が少なくなるケースがあるのです。
この記事では、交通事故で後遺障害が残ってしまい、慰謝料を請求したい方が適正な慰謝料を手にできるよう、下記の内容をわかりやすく伝えていきます。
この記事でわかること ・後遺障害慰謝料がどんなものなのか具体的にわかる ・後遺障害慰謝料の金額がどのように決まるのかわかる ・後遺障害慰謝料の「弁護士基準」「自賠責基準」それぞれの相場がわかる ・後遺障害慰謝料をどのような流れで請求するのかわかる ・適切な後遺障害慰謝料を受け取るための重要なポイントがわかる ・交通事故で後遺障害が残ったとき、慰謝料以外にも受け取れるお金のことがわかる |
正しい知識を知らないと、自分の後遺障害に対して、不当に低い慰謝料で解決してしまう可能性があります。
これらの内容を参考に、後遺障害慰謝料の知識を身につけ、適正な金額の慰謝料を手にしてください。
この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢
弁護士法人サリュ
大阪弁護士会
交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
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目次
1.後遺障害慰謝料は「事故の後遺障害による精神的苦痛に対する賠償金」
後遺障害慰謝料は、交通事故によって後遺障害が残ってしまった被害者の精神的苦痛を補償する賠償金です。
交通事故に遭ったときは、加害者側に色々な賠償金を請求できますが、その中の1つが後遺障害慰謝料です。
交通事故で負った怪我が完治せず、機能障害(動かしづらさ)や神経症状(痛み、しびれなど)が残って労働能力の低下や喪失が認められた場合、後遺障害等級の認定を受けることになります。
その後、下記のような流れで慰謝料の請求を行います。
※症状固定とは、怪我について、治療を続けても症状の改善が見込まれないと医師が判断すること
このように、後遺障害等級の認定を受けた場合に請求できるもので、自身が「後遺症が残っている」と思っているだけでは請求できないので、注意が必要です。
請求した後遺障害慰謝料は、基本的に加害者の加入する保険会社から支払われます。
冒頭でもお伝えしましたが、後遺障害慰謝料の金額は、認定された等級と慰謝料の計算基準によって変わります。
金額の出し方についての詳しい内容は、2.後遺障害の慰謝料の金額は等級と計算基準に応じて変わるで解説するので、こちらを参考にしてください。
2.後遺障害の慰謝料の金額は等級と計算基準に応じて変わる
後遺障害の慰謝料の金額は、認定された後遺障害等級と計算基準の2つの要素によって決まります。
それぞれの要素について、詳しく解説します。
2-1.後遺障害の等級
後遺障害は、症状に応じて等級が決まります。
等級の認定には、下記のような特徴があります。
・後遺障害の慰謝料は、どの等級に認定されたかによって変わる ・後遺障害の等級は1級~14級に分かれていて、数字が小さいほど症状が重い ・症状の重い等級に認定されるほど、慰謝料は高額になる |
どの等級に認定されるかは、残った後遺障害の内容によって決まります。
また、複数の後遺障害が残った場合、「併合●級」として、合算した結果となる場合もあります。
どのような症状で何級に認定されるのかは、下記の表を参考にしてください。
【介護を要する場合の後遺障害等級】
等級 | 後遺障害 |
第2級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
第1級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
参考:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「自動車損害賠償保障法施行令 別表第1」
【介護を要さない場合の後遺障害等級】
等級 | 後遺障害 | 認定された事例・症例 |
第14級 | 1.一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2.三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3.一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4.上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5.下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6.一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7.一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8.一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9.局部に神経症状を残すもの | ・頚部打撲、腰部打撲、胸背部打撲等の怪我、頚部痛や上肢のしびれ等の症状が残存 |
第13級 | 1.一眼の視力が0.6以下になったもの 2.正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3.一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5.五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6.一手のこ指の用を廃したもの 7.一手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8.一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの 10.一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | ・事故の影響で片目の視力が落ちた ・片足の長さが1センチ以上短くなった |
第12級 | 1.一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4.一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5.鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8.長管骨に変形を残すもの 9.一手のこ指を失ったもの 10.一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 11.一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの 12.一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13.局部に頑固な神経症状を残すもの 14.外貌に醜状を残すもの | ・右肘骨折の怪我。右肘に痛みが残る |
第11級 | 1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4.十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6.一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7.脊柱に変形を残すもの 8.一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの 9.一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | ・右膝の内側側副靭帯損傷、左膝の外側側副靭帯損傷等の怪我、左右の膝に神経系統の障害が残り、併合処理の結果11級 |
第10級 | 1.一眼の視力が0.1以下になったもの 2.正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3.咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4.十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7.一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 8.一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 10.一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 11.一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | ・右上腕骨を骨折、右肩に可動域制限が残る |
第9級 | 1.両眼の視力が0.6以下になったもの 2.一眼の視力が0.06以下になったもの 3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9.一耳の聴力を全く失ったもの 10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12.一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの 13.一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 14.一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの 15. 一足の足指の全部の用を廃したもの 16.外貌に相当程度の醜状を残すもの 17.生殖器に著しい障害を残すもの | ・左手舟状骨骨折、右肩腱板断裂、右手TFCC損傷という重傷。両手に痛みや灼熱感、機能障害等CRPSの症状が残る |
第8級 | 1.一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの 2. 脊柱に運動障害を残すもの 3.一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの 4.一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 5.一下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8. 一上肢に偽関節を残すもの 9.一下肢に偽関節を残すもの 10.一足の足指の全部を失ったもの | ・脳挫傷、骨盤骨折、脊椎骨折及び腓骨骨折等の重傷、複視や骨折による痛み、高次脳機能障害が残存。併合8級 |
第7級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 2.両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4.神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5.胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6.一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの 7.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 8.一足をリスフラン関節以上で失ったもの 9.一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10.一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11.両足の足指の全部の用を廃したもの 12.外貌に著しい醜状を残すもの 13.両側の睾丸を失ったもの | ・頭部及び股関節を受傷、高次脳機能障害が残る |
第6級 | 1.両眼の視力が0.1以下になったもの 2.咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5.脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6.一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 8.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの | ・硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血と診断、高次脳機能障害7級・嗅覚脱失12級相当の後遺障害が認定され、併合6級 |
第5級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4.一上肢を手関節以上で失ったもの 5.一下肢を足関節以上で失ったもの 6.一上肢の用を全廃したもの 7.一下肢の用を全廃したもの 8.両足の足指の全部を失ったもの | ・神経や精神に障害が残り、簡単な仕事しかできなくなった |
第4級 | 1.両眼の視力が0.06以下になったもの 2.咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力を全く失ったもの 4.一上肢をひじ関節以上で失ったもの 5.一下肢をひざ関節以上で失ったもの 6.両手の手指の全部の用を廃したもの 7.両足をリスフラン関節以上で失ったもの | ・食事や話すのが難しいほど障害が残った |
第3級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 2.咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 5.両手の手指の全部を失ったもの | ・食事や話すことが全くできなくなった |
第2級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 2.両眼の視力が0.02以下になったもの 3.両上肢を手関節以上で失ったもの 4.両下肢を足関節以上で失ったもの | ・びまん性脳損傷の怪我、左片麻痺、高次脳機能障害が残る |
第1級 | 1.両眼が失明したもの 2.咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3.両上肢をひじ関節以上で失ったもの 4.両上肢の用を全廃したもの 5.両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6.両下肢の用を全廃したもの | ・頚髄損傷の傷害で四肢体幹機能障害、感覚障害、膀胱直腸障害等の症状が残存 |
参考:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「自動車損害賠償保障法施行令 別表第2」
後遺障害慰謝料は、この等級によって金額が変わります。
自分の後遺障害に対し、適正な認定が行われないと、実際の症状に対して少ない慰謝料しか受け取れない可能性があるのです。
後遺障害等級の認定は、必要書類の書き方や症状の伝え方によって、適正な認定が行われない可能性があります。
医師や弁護士などの、専門的な知見を持つ人によく相談し、納得のいく結果認定が行われるようにしてください。
後遺障害認定については、下記の記事で詳しく解説しています。
後遺障害認定で納得の結果を得るための重要知識と手順【弁護士解説】
2-2.後遺障害慰謝料の計算基準
後遺障害慰謝料には、「弁護士基準」「任意保険基準」「自賠責基準」の3つの計算基準があります。
基本的に、相手の保険会社は自賠責基準か、それよりも少し高い程度の任意保険基準の慰謝料を提示し、その金額で交渉を進めようとしてきます。
これらの金額は、弁護士基準と比較して非常に低額なのが特徴です。
例えば、いくつかの後遺障害等級ごとの慰謝料の基準額を比較すると、下記のように差があることがわかります。
【ヘルニアで後遺障害等級12級に認定されたケース】
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
後遺障害慰謝料 | 290万円 | 94万円 |
【腕の機能障害で後遺障害等級9級に認定されたケース】
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
後遺障害慰謝料 | 690万円 | 249万円 |
【高次脳機能障害で後遺障害等級2級(介護を要する場合)に認定されたケース】
弁護士基準 | 自賠責基準 | |
後遺障害慰謝料 | 2370万円 | 1203万円 |
具体的な金額の相場については、
弁護士基準の相場は3.【弁護士基準】後遺障害慰謝料の相場は110万円〜2800万円で、
自賠責基準の相場は4.【自賠責基準】後遺障害慰謝料の相場は32万円~1650万で詳しく解説しています。
3.【弁護士基準】後遺障害慰謝料の相場は110万円〜2800万円
まずは、弁護士基準で計算した後遺障害慰謝料の相場です。
弁護士基準の慰謝料の相場は110万円~2800万円です。介護を要するか否かで、被害者本人の慰謝料の金額に変化はありません。
それぞれの等級の相場は、下記の表のようになっています。
弁護士基準の後遺障害慰謝料 | |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
弁護士基準は、裁判基準とも呼ばれる正当な算定基準です。
過去の裁判の判例をもとに、後遺障害に対して適正な慰謝料であると認められていて、他の算定基準と比べて高額なのが特徴です。
被害者が自分で請求することも可能ですが、相手方が受け入れないパターンが多く、スムーズに獲得するためには弁護士への依頼が必要となります。
4.【自賠責基準】後遺障害慰謝料の相場は32万円~1650万
自賠責基準の慰謝料の相場は、32万円〜1650万です。
自賠責基準では、等級に加えて介護を要するか否かで金額が異なります。
それぞれの金額の相場は下記の通りです。
【介護を要する場合の後遺障害慰謝料】
自賠責基準の後遺障害慰謝料 | |
1級 | 1650万円 |
2級 | 1203万円 |
【介護を要さない場合の後遺障害慰謝料】
自賠責基準の後遺障害慰謝料 | |
1級 | 1150万円 |
2級 | 998万円 |
3級 | 861万円 |
4級 | 737万円 |
5級 | 618万円 |
6級 | 512万円 |
7級 | 419万円 |
8級 | 331万円 |
9級 | 249万円 |
10級 | 190万円 |
11級 | 136万円 |
12級 | 94万円 |
13級 | 57万円 |
14級 | 32万円 |
自賠責基準は、自賠責保険が定める最低限の補償です。
保険会社は被害者に対して、この自賠責基準か、それに一定程度、任意保険持ち出し分を上乗せした任意保険基準で計算した金額を提示します。
そのため、弁護士基準があることを知らず、相手の言う金額をそのまま受け入れてしまった被害者は、受け取れる慰謝料の金額がかなり低くなってしまうのです。
このように、同じ後遺障害が残っても、算定基準によって慰謝料の金額は大幅に変わってしまいます。
5. 後遺障害慰謝料を請求する流れ
ここまでで、後遺障害慰謝料の慰謝料の相場をお伝えしてきました。
ここからは、実際に請求するときの流れを、4ステップで解説していきます。
後遺障害慰謝料の請求は、下記のような流れで行います。
それぞれのステップで何をすればいいのか、詳しく解説していきます。
5-1.【STEP1】症状固定
まずは、症状固定が認められるところからスタートです。
症状固定とは、怪我の治療を続ける中で、痛みやしびれなどの症状は残っているものの、これ以上治療を続けても効果が期待できなくなった状態のことを指します。
医師による「症状固定」の診断を受けることから、後遺障害認定の申請準備がスタートします。
5-2.【STEP2】必要な書類の収集
次に、必要な書類の収集を行います。
被害者請求の方法によって、後遺申請をする場合に必要な書類は、主に下記のとおりです。
【必要書類一覧】
必ず必要な書類 | ・保険金支払請求書 | 保険会社のサイトからテンプレートをダウンロードして自身で記入する (※自動車保険会社によって異なる) |
・交通事故証明書 | 警察に申請し、交付してもらう | |
・事故発生状況報告書 | 保険会社などに問い合わせてテンプレートを入手し、自身で記入する | |
・後遺障害診断書 | 保険会社などに問い合わせてテンプレートを入手し、担当医師に記入してもらう | |
・印鑑証明書 | 役所やコンビニなどで交付してもらう (※事前に印鑑登録を済ませておく必要あり) | |
事例により必要な書類 | ・休業損害を証明する書類 (休業損害証明書、前年度の源泉徴収票、確定申告書など) | 保険会社などに問い合わせてテンプレートを入手し、勤務先に作成してもらう (※個人事業主などの場合は自身で作成する) |
・レントゲン写真等症状を証明する書類 | 担当医に問い合わせて交付してもらう |
5-3.【STEP3】後遺障害認定
必要な書類を集めたら、保険会社に提出し、後遺障害等級の調査を待ちます。
もし、結果が通知され、その内容が不服だった場合には、異議申し立てをすることも可能です。
5-4.【STEP4】示談交渉
後遺障害等級の認定が受けられたら、示談交渉へと進みます。
示談交渉は、相手の保険会社が提示する条件と、こちらが望む条件(示談金額、過失割合など)のすり合わせを行う話し合いの場です。
ここでお互いに納得できれば、そのまま慰謝料の請求へと進んでいきます。
もしも交渉が決裂した場合には、訴訟を起こし、裁判で決着をつけることになります。
7.交通事故で後遺障害が残った場合、請求できるのは慰謝料だけじゃないでも紹介しますが、後遺障害慰謝料は、示談金として受け取れる中の一部です。
後遺障害が残ったことを前提に、他の金銭面もしっかりと交渉を行ってください。
示談交渉は被害者本人が行うことができますが、弁護士に依頼して代わりに交渉をお願いすることも可能です。
6.適正な後遺障害慰謝料を受け取るための2つのポイント
後遺障害慰謝料の請求の流れをお伝えしましたが、適正な慰謝料を受け取るためには、2つの大きなポイントがあります。
それが、下記の2つです。
・適正な後遺障害等級の認定を受ける ・弁護士基準で慰謝料を請求する |
このポイントを知らないと、自分の後遺障害の症状に見合った慰謝料が受け取れない可能性があります。
示談の後で後悔しないよう、しっかりと確認しておいてください。
6-1.適正な後遺障害等級の認定を受ける
ひとつ目のポイントは、適正な後遺障害の認定を受けることです。
後遺障害慰謝料は、等級によって金額が異なります。
重い症状が残っているのに、実態よりも軽い等級に認定されると、受け取れる慰謝料は低額になります。
また、そもそも非該当になってしまった場合には、後遺障害慰謝料を受け取ることができなくなってしまうのです。
そんな事態を防ぐためにも、適正な後遺障害の認定を受けてください。
適正な認定を受けるためには、後遺障害等級の知識を持った医師や弁護士など、専門家に相談するのが効果的です。
6-2.弁護士基準で慰謝料を請求する
ふたつ目のポイントは、弁護士基準で慰謝料を請求することです。
2-2.後遺障害慰謝料の計算基準でお伝えした通り、同じ後遺障害が残っても、慰謝料の算定基準によって受け取れる金額は大きく異なります。
基本的に、相手は自賠責基準での最低限の補償に近い金額を提示してきます。
「保険会社が言っていることだから」
と、そのまま鵜呑みにしてしまうと、本来ならば受け取れるはずだった慰謝料よりも、はるかに低い金額で示談になってしまうケースが少なくありません。
適正な慰謝料を受けとるためには、相手の言葉をそのまま受け入れるのではなく、こちらから弁護士基準で請求を行いましょう。
弁護士基準での慰謝料の請求は、自分でも行えますが、確実にスムーズに交渉を進めるには弁護士への依頼が必要です。
7.交通事故で後遺障害が残った場合、請求できるのは慰謝料だけじゃない
ここまで、後遺障害慰謝料についてを解説してきましたが、交通事故で後遺障害が残ってしまった場合に請求できるのは、後遺障害慰謝料だけではありません。
主に、下記のような費用についても、加害者側に請求することが可能です。
【後遺障害が残った際に加害者側に請求できるお金】
傷害慰謝料 | 通院したことに対する慰謝料 |
逸失利益※ | 認定された後遺障害が将来の収入獲得に与える影響に対する補償 |
休業損害 | 事故で会社を休んだ場合などの補償 |
諸経費 | けがの影響で必要になった治療費、入院費、通院のための交通費、診断書などの作成費用など |
このように、慰謝料の他、事故による怪我の影響で仕事ができなかった場合の休業損害や、通院・治療にかかった費用なども合わせて請求できるのです。
ただ、これら全てをあなた自身が請求するには膨大な手間がかかります。
慣れない中で請求を進めれば、本来もらえるはずの金額よりも少ない金額で決着するものも出てくる恐れがあります。
つまり、後遺障害慰謝料の他にも慰謝料や賠償金を請求できるという点においても、弁護士のサポートによって適正価格で漏れなく請求を進めていくことが重要になってくるのです。
※逸失利益とは、後遺障害の影響で、将来の収入に影響が出ると仮定した場合の補償です。 詳しくは下記の記事で紹介しているので、具体的にどれくらいになるのか知りたい方は、こちらも参考にしてください。 【早見表付き】後遺障害の逸失利益はいくら?ケースごとの金額を解説 |
8.後遺障害認定と適正な慰謝料の獲得には、交通事故に強い弁護士のサポートが必須
6.適正な後遺障害慰謝料を受け取るための2つのポイントでもお伝えした通り、後遺障害認定と、適正な慰謝料の獲得には、弁護士のサポートが必須です。
なぜなら、弁護士に依頼せずに進めた場合、下記のような不利益が生まれる可能性が高いからです。
弁護士に依頼せずに後遺障害認定・慰謝料請求を進めた場合の不利益 |
・後遺障害認定に対する知識がなく、「非該当」や症状よりも軽い等級の認定になってしまう ・弁護士基準での慰謝料請求ができず、裁判の相場よりも低額な慰謝料で解決してしまう ・示談交渉が長引き、すべて自分で対応する必要があるので疲れてしまう ・法的知識がないため交渉がうまくいかず、相手に丸め込まれてしまう |
これらの事態を未然に防ぐためにも、後遺障害が残る交通事故の解決には、医学的な知識があり、交通事故解決の経験が豊富な弁護士によるサポートが必須なのです。
後遺障害の認定や、慰謝料のことで後悔を残したくない方は、まずは弁護士に相談してみましょう。
また、
「弁護士費用が心配で依頼に踏み切れない」
という方は、相談無料の弁護士事務所へ問い合わせてみてください。
費用倒れのリスクや、自身のケースでは増額の見込みがあるのかなど、疑問を解消した上で依頼をするかどうか決められます。
サリュでは、ご相談時に納得がいかないお客様に無理に依頼を進めるようなことはいたしませんので、お悩みの際はぜひお気軽にご相談ください。
適正な後遺障害慰謝料を受け取りたい方は、サリュにご相談ください サリュは、交通事故被害者の救済に特化して、これまで20000件以上の事故を解決に導いてきた法律事務所です。 サリュの創業者は損害保険会社の弁護士を務めていたことがあり、被害者に対して理不尽な条件を提示する現場をいくつも見てきました。 「これ以上苦しむ交通事故被害者は見たくない」 そんな気持ちから、被害者を救済するために立ち上がったのです。 サリュでは、損保会社側の知見も活かしながら、事故の被害者が納得できる解決に至れるよう、さまざまなサポートを提供しております。 また、医学的な知識が豊富な顧問医師が在籍しているため、後遺障害認定などの専門的なアドバイスも可能です。 交通事故の対応でお悩みの方は、ぜひ一度サリュにご相談ください。 |
9.まとめ
この記事では、後遺障害慰謝料について解説しました。
内容のまとめは、以下の通りです。
〇後遺障害慰謝料は事故によって後遺障害が残ってしまった被害者の精神的苦痛を補償する賠償金のこと
〇後遺障害の慰謝料の金額は等級と計算基準に応じて変わる
〇後遺障害慰謝料の相場は、弁護士基準で110万円〜2800万円、自賠責基準で32万円~1650万
〇後遺障害慰謝料を請求する流れは下記の通り
〇後遺障害が認定されたら、慰謝料以外にも下記のお金を加害者側に請求できる
傷害慰謝料 | 通院したことに対する慰謝料 |
逸失利益 | 認定された後遺障害が将来の収入獲得に与える影響に対する補償 |
休業損害 | 事故で会社を休んだ場合などの補償 |
諸経費 | けがの影響で必要になった治療費、入院費、通院のための交通費、診断書などの作成費用など |
〇適正な後遺障害の認定を受けるには、「後遺障害等級の認定を適正に受ける」「弁護士基準で慰謝料を請求する」の2つがポイント
以上の内容を参考にして、後悔なく後遺障害の慰謝料を受け取ってください。