びまん性軸索損傷の後遺症一覧|残る可能性や受け取れる賠償金

交通事故に遭った家族が、びまん性軸索損傷と診断された。後遺症は残る?治る?

この記事を読んでいる方は、ご家族がびまん性軸索損傷と診断され、つらい思いをしていることでしょう。

「はっきりとはいえないが、後遺症が残る可能性がある」と医師に言われたら、今後の生活に漠然とした不安を抱えるのは当然です。

なかには、ご自身が事故で頭部外傷を負い、びまん性軸索損傷と診断された方もいるかもしれません。

びまん性軸索損傷と診断された方に残る可能性がある後遺症は、下記のとおりです。

 びまん性軸索損傷の後遺症例
意識障害・意識が戻らない(遷延性意識障害)
・意思疎通できない
高次脳機能障害・さっき食べたものが何か思い出せない
・物をどこにしまったか忘れる
・温厚な性格だったのに怒りっぽくなる
・何をするにもやる気が出ず家にひきこもる
・長時間の作業は途中で飽きてしまう
・複数人のグループで会話できなくなる
・計画を立てられない
・やるべきことに優先順位をつけられない
・指示されないと行動できない
・話したいのに言葉が出てこない
・考えていることと違う言葉が出てしまう
麻痺・体の片側だけが麻痺して動かしにくくなる
・両手両足が麻痺して動かしにくくなる
・歩行時にふらつく
・食べ物を食べづらい
その他・臭いがわからない
・目が見えづらくなる
・手が動かしにくい
(文字が書けない、両手でボタンをとめられない)
・物との距離感がうまくつかめない

今は被害者本人が目を覚ますこと、そして後遺症が残らないことを願うことしかできないため、ご家族はもどかしいでしょう。

後遺症が残る可能性があるという事実だけでもつらいですが、びまん性軸索損傷の後遺症は認められづらいのが実情です。

さらに、もし被害に遭った本人が目覚めなかったら、加害者が嘘の主張をしたとしても反論できません。
これから長い闘いになる可能性が、非常に高いのです。

加害者に、同じ思いをさせたいと思うのは、おかしなことではありません。

しかしそれができないなら、「せめてお金で償ってほしい」と考える方も多いでしょう。

そこでこの記事では、びまん性軸索損傷の後遺症や賠償金を受領する流れ、正当な金額を受け取るために重要なことなどをお伝えします。

大切な家族に異変が現れた際にすぐ気づくためにも、まずは後遺症によって残る可能性がある症状について学んでいきましょう。

この記事の監修者
弁護士 松葉 想

弁護士法人サリュ名古屋事務所
愛知県弁護士会

交通事故解決件数 1,500件以上
(2025年9月時点)
【獲得した画期的判決】
【加害者責任否認案件において加害者の過失を85パーセントとし、症状固定時41歳男性の労働能力喪失期間を73歳までと認定した判決】(大阪地裁平成27年7月3日判決(交通事故民事裁判例集48巻4号836頁、自動車保険ジャーナル1956号71頁))
・自賠責保険金を含んだ回収額が3億9000万円となった裁判上の和解
・自賠責保険における等級認定が非該当であった事案において、後遺障害等級5級を前提とする裁判上の和解
・死亡、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害等の示談や裁判上の和解は多数
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例334:事前認定後遺障害非該当に対し、諦めずに異議申立て。後遺障害第14級9号を獲得した事例
事例355:本業の休業がなくても、副業を全休し収入が減少。訴訟手続きにより、副業の休業損害の多くを判決で勝ち得た事例
事例374:足首の両果骨折の賠償金が当初の相手方提示金額より2.3倍になった事例

弁護士法人サリュは、交通事故の被害者側専門で26,000件以上の解決実績を誇る法律事務所です。

交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
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1. びまん性軸索損傷の後遺症で残る主な症状一覧

まずは、びまん性軸索損傷の後遺症で残る、主な症状を紹介します。

記事冒頭でもお伝えしたとおり、びまん性軸索損傷の後遺症は複数あり、どの症状が現れるか予想することはできません

ここで紹介するような後遺症のどれかが現れる場合もあれば、複数現れる場合もあるでしょう。

後遺症を大きく分類すると、3つになります。

・意識障害
・高次脳機能障害
・麻痺
・その他

それぞれ、くわしく見ていきましょう。

1-1. 意識障害

意識障害の症状例
・意識が戻らない(遷延性意識障害)
・意思疎通できない

意識障害は、びまん性軸索損傷の後遺症の中で、最も重いものです。

治療を続けても目を覚まさず、植物状態になってしまう可能性もあります。

また、目を覚ましたけれど意思疎通ができなかったり、随時介護が必要になったりする可能性もあるでしょう。

1-2. 高次脳機能障害

高次脳機能障害の症状例
・さっき食べたものが何か思い出せない
・物をどこにしまったか忘れる
・温厚な性格だったのに怒りっぽくなる
・何をするにもやる気が出ず家にひきこもる
・長時間の作業は途中で飽きてしまう
・複数人のグループで会話できなくなる
・計画を立てられない
・やるべきことに優先順位をつけられない
・指示されないと行動できない
・話したいのに言葉が出てこない
・考えていることと違う言葉が出てしまう

高次脳機能障害は、事故による脳損傷が原因で、記憶や言語などの認知機能に異常が出る状態のことです。

脳のどの部位を損傷するかによって、現れる症状が異なります。

高次脳機能障害は症状の幅が広いため、本人も、側で支えるご家族もすぐに気づけないことがあります。

「事故前と人が変わってしまったようだ」「以前はできていたことができなくなっている」などと感じるなら、高次脳機能障害の可能性が高いでしょう。

1-3.麻痺

麻痺の症状例
・体の片側だけが麻痺して動かしにくくなる
・両手両足が麻痺して動かしにくくなる
・歩行時にふらつく
・食べ物を食べづらい

びまん性軸索損傷で脳にダメージが加わったことで、麻痺の症状が現れる場合もあります。

麻痺が残れば、自力で歩けなくなったり、日常生活を一人で送れなくなったりすることもあります。

麻痺は、リハビリを継続すれば緩和する可能性がある後遺症です。

しかし、必ず治るとは断言できないため、少しでも後遺症を残さないために、リハビリすることが大切です。

1-4. その他

その他の症状
・臭いがわからない
・目が見えづらくなる
・手が動かしにくい(文字が書けない、両手でボタンをとめられない)
・物との距離感がうまくつかめない

びまん性軸索損傷になると、小脳の機能に障害が残り、上記のようなさまざまな後遺症が現れる場合もあります。

一見、びまん性軸索損傷とは関係なさそうな症状も、後遺症の可能性があるのです。

周囲の人は、被害者に少しでも変化が起きたら、すぐに後遺症を疑い病院を受診してください。

2. びまん性軸索損傷の後遺症が残るかどうかを予測するのは難しい

1章では、びまん性軸索損傷と診断された方に残る可能性がある後遺症を紹介しました。

ここで気になるのは、どのくらいの確率で後遺症が現れるのか、ではないでしょうか。

正直にお伝えすると、びまん性軸索損傷は、脳の損傷具合の個人差が大きいため、「何%の確率で後遺症が出る」と予想するのが難しいです。

そして後遺症が残ってしまったら、完治を目指すのは難しい傾向にあります。

そのため、症状が出たらすぐに病院に行って診てもらい、リハビリを続けて回復を目指すしかありません。

ただ、まだ退院できる見込みがない場合は、ここから半年~1年以上入院する可能性もあるはずです。

その場合、入院費や治療代、収入が途絶えた分のお金について、不安に思うでしょう。

次の章では、びまん性軸索損傷を負った方が受け取ることのできる可能性のある賠償金について、くわしく解説します。

3. びまん性軸索損傷で後遺症が残ったときに受け取ることのできる可能性のある賠償金

びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまったら、高額な賠償金を受け取れる可能性があります。

後遺症が残り、後遺障害認定を申請してその症状が事故によるもの(後遺障害)だと証明できれば、後遺障害等級が認定されます。

後遺障害等級が認定されれば、受け取れる賠償金項目が増えます

後遺障害認定と等級について
後遺障害認定とは、治療後に残った症状が交通事故によるもの(後遺障害)だと認めてもらうこと。
症状の重さによって1~14級が認定され、数字が小さいほど症状が重いことを意味する。

3章では、受け取れる可能性のある賠償金について、見ていきましょう。

【受け取れる可能性のある賠償金】
<後遺症(後遺障害)が残らなくても受け取ることができる可能性のあるもの>
・治療費
・休業損害
・入通院慰謝料  

<上記にくわえて、後遺症(後遺障害)が残ると受け取ることができる可能性のあるもの>
・後遺障害慰謝料
・後遺障害逸失利益
・将来の治療費
・将来の介護費など

3-1. 治療費

まずは治療費をみていきましょう。治療費に該当するのは、

・診察代

・検査代

・手術代

・薬代

・リハビリ代

・入院雑費

などです。

3-2. 休業損害

交通事故により、仕事を休んだ場合は、休業損害を受け取ることの可能性があります。

休業損害とは
怪我の治療が原因で仕事を休んだ場合に発生する損害

休業損害は、原則「休業日数×1日あたりの基礎収入」で計算するもので、事故当時の職業によって計算方法が異なります。

会社員やアルバイトの方を例に挙げて計算した場合の休業損害は、下記の通りです。

休業日数×1日あたりの基礎収入【事故前3ヶ月の給与合計額÷稼働日数(出勤日数)】
・事故前3ヶ月の給与合計が900,000円
・稼働日数が75日
・事故による怪我で会社を休んだ日数が90日  

1日あたりの基礎収入:900,000円÷75日=12,000円
休業損害:90日×12,000円=1,080,000円

また、毎月一定の収入がない専業主婦や専業主夫も、休業損害を請求することは可能です。

職業別の休業損害の計算方法は、以下の記事でくわしく解説しています。

3-3. 入通院慰謝料

続いて、入通院慰謝料です。

入通院慰謝料とは
怪我の治療による入通院期間に生じた精神的損害に対するお金

入通院慰謝料は、入通院した期間と怪我の程度で金額が変わります。

びまん性軸索損傷と診断された方は、別表1の表を用いることが適切な場合は、入院・通院期間によって下記の金額を受け取ることができる可能性があります。

例えば、入院期間が6ヶ月、通院期間が6ヶ月の場合は、縦軸「6月」と横軸「6月」が交わる部分を見ます。

よって、入通院慰謝料は282万円です。

別表1】単位:万円

 入院123456
通院 53101145184217244
12877122162199228252
25298139177210236260
373115154188218244267
490130165196226251273
5105141173204233257278
6116149181211239262282

3-4. 後遺障害慰謝料

びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまったら、後遺障害慰謝料を受け取ることができる可能性があります。

後遺障害慰謝料とは
後遺障害が残り、精神的苦痛を感じたことに対して支払われるお金

後遺障害慰謝料は、等級(症状の重さ)ごとに金額が決められています。

下記が、後遺障害慰謝料の金額一覧です。

※単位=万円

後遺障害等級後遺障害慰謝料 (弁護士基準)
12,800
22,370
31,990
41,670
51,400
61,180
71,000
8830
9690
10550
11420
12290
13180
14110

例えば、びまん性軸索損傷の後遺症で高次脳機能障害になり、常に介護が必要な状態になり、後遺障害1級が認められたら、2,800万円受け取れる可能性があります。

3-5. 後遺障害逸失利益

びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまったら、後遺障害逸失利益を受け取ることができる可能性があります。

後遺障害逸失利益
事故に遭い怪我をしていなければ、本来受け取れたはずの労働に対する利益

もし、このまま目を覚まさず意識障害が残ったら、もう働くことができません。また、高次脳機能障害の症状が原因で、以前と同じ職に就くことが難しくなる場合もあるでしょう。

このように、事故に遭わなければ将来得られたはずのお金を、事故当時の収入や年齢・どれだけ労働能力を失ったか・ライプニッツ係数などをもとに計算し、逸失利益を出します。

以下に、後遺障害逸失利益の一例をまとめたので、参考にしてください。

基礎収入
25歳:男性5,549,100円・女性:3,943,500円
(※令和4年の全学歴、全年齢、男女別の平均収入を前提)
35歳:男性5,600,500円・女性4,111,400円
45歳:男性6,360,800円・女性4,317,100円
55歳:男性6,740,100円・女性4,280,700円
65歳:男性3,857,500円・女性2,975,500円
(※令和4年の全学歴、年齢別、男女別の平均収入を前提)

【男性】

後遺障害等級2535455565
1~3級1億3152万1億1419万             1億0137万             7168万 3003万
51億0390万            9021万 8008万 5663万 2373万
77365万 6395万 5677万 4014万 1682万
94603万 3997万 3548万 2509万 1051万
121841万 1599万 1419万 1004万 420万
14658万   571万   507万   358万   150万

【女性】

後遺障害等級2535455565
1~3級9346万 8383万 6880万 5377万 2962万
57384万 6622万 5435万 4248万 2340万
75234万 4694万 3853万 3011万 1659万
93271万 2934万 2408万 1882万 1037万
121309万 1174万 963万   753万   415万
14467万   419万   344万   269万   148万

ただ、この金額はあくまで参考です。上記の金額から大幅に増える可能性も、減る可能性もあります。

くわしい金額を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

3-6. 将来の治療費・将来の介護費など

びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまったら、将来の治療費や介護費などを受け取れる可能性があります。

将来の治療費や介護費とは、症状固定後に発生する可能性があるお金のことです。

症状固定後に発生するお金を受け取れた例
・意識が戻らない男性を母親が将来介護する費用として、被害者の平均余命までの46年間分、1億4456万円が認められた
・後遺障害が残った小学生の、介護用自動車購入費や交換費1,542万円が認められた
・後遺障害が残った60代女性の、自動車改造費437万円が認められた

びまん性軸索損傷のように重い怪我を負い、後遺障害等級が認められた方は、今後何年も治療を続けることになります。

そのため、これから発生する可能性がある入院費や検査費、その他かかるお金を加害者側に請求し認められれば、受け取れます。

4. びまん性軸索損傷で後遺症(後遺障害)が残ったら認定される可能性のある後遺障害等級

3章では、びまん性軸索損傷で後遺障害が残り、後遺障害等級が認められた方が受け取れる賠償金を紹介しました。

実は、怪我の種類や後遺症によって、認定される等級が決まっています

びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまった場合に認定される可能性がある等級は、下記のとおりです。

後遺障害等級認められる基準
1・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3・一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になつたもの
・咀嚼又は言語の機能を廃したもの
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5・一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になつたもの
・神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7・一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になつたもの
・神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9・両眼の視力が0.6以下になつたもの
・一眼の視力が0.06以下になつたもの
・両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
・咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
・神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12・局部に頑固な神経症状を残すもの
14・局部に神経症状を残すもの

参照:国土交通省自賠責保険・共済の限度額と補償内容

後遺障害等級は、書類上の証拠のみ(医師が書いた診断書やMRIの結果画像など)で、審査されます。

「言語に関する後遺症が残ったから3級」「手にしびれが残ったから12級」などと簡単に決まるわけではありません。

例えば、3級だと思っていたのに7級になったり、12級だと思っていたのに非該当となったりすることも、珍しくないのです。

正当な賠償金を受け取るためには、いかに事前準備をして後遺障害認定を申請し、症状に見合う等級を認めてもらえるかが、重要となってきます。

どのような症状で何級が認定されるのか、くわしい解説は以下の記事をご覧ください。

5. びまん性軸索損傷の後遺症が残った方の今後の流れ

びまん性軸索損傷の後遺症が残ったら、症状に見合う後遺障害等級を認めてもらわないと、正当な賠償金を受け取れません。

症状に見合う後遺障害等級を認めてもらえるかどうかは、後遺障害認定の申請に向けてどれだけ準備できるか、にかかっています。

今現在は後遺症が出ていなくても、この先後遺症を疑う症状が現れたらすぐに病院を受診し、後遺障害認定を申請してください。

5章では、賠償金を受け取るまでの具体的な流れを見ていきましょう。

1.症状が現れたらすぐに主治医に相談する
2.医師の指示どおりに治療、検査、リハビリを続ける
3.症状固定の診断を受ける
4.後遺障害診断書を作成する
5.後遺障害認定を申請し等級を受ける
6.加害者側と示談交渉する
7.慰謝料を含む賠償金を受け取る

ご家族の意識が戻らず、退院できない可能性がある方は、「5-3.症状固定の診断を受ける」から読み進めてください。

5-1. 症状が現れたらすぐに主治医に相談する

1.びまん性軸索損傷の後遺症で残る主な症状一覧」で紹介したような後遺症が現れたら、すぐに主治医に相談しましょう。

びまん性軸索損傷による症状は、早期のリハビリで回復が期待できる場合もあります。

また、症状が出たタイミングで診察・検査すれば、以前は見つからなかった血腫や脳挫傷が見つかるかもしれません。

例えば下記のように、「これも後遺症なの?」と思うような症状にも注意してください。

・さっきごはんを食べたのに「ごはんまだ?」と聞いてくる
・家族に対して敬語で話しかけてくる
・自分の家であることを理解していない(こんなところに閉じ込められててつらい……などと言う)
・昨日の出来事を忘れてしまう(昨日楽しかったねと聞いた際、何のこと?と言う)
・温厚な性格だったのにキレやすくなった

びまん性軸索損傷による症状は多岐にわたるため、本人も家族も「これが後遺症だ」と判断するのが難しいです。

そのため、少しでもびまん性軸索損傷によると思われる症状が出たら、すぐに病院を受診しましょう。

5-2. 医師の指示どおりに治療、検査、リハビリを続ける

症状が現れたら、医師の指示に従いながら、治療や検査・リハビリを続けましょう。

医師の指示に従って通院を続けるべき理由は、治療の記録を残すためです。

後遺症が残った場合、どのくらいの頻度で通院していたか、いつどのような症状が現れていたのかなどが、後遺障害認定で重要となってきます。

自己判断で通院頻度を調整したり、リハビリを途中でやめたりすると、後遺症が残っても「適切に通院していなかったから後遺症が残った」と加害者側に疑われるでしょう。

そうなれば、びまん性軸索損傷が原因の後遺症であることを証明できず、後遺障害等級を獲得するのが難しくなります。

治療記録や後遺症を証明する証拠を残すためにも、医師の指示通りに通院を続けてください。

5-3. 症状固定の診断を受ける

治療を続けてもこれ以上症状の改善が見込めなくなったら、主治医から症状固定の診断を受けます。

症状固定とは
交通事故において治療終了を意味すること

症状固定の診断を受けると、そのタイミングで治療終了となり、後遺障害認定の申請準備に入ります

5-4. 後遺障害診断書を作成する

次に、後遺障害診断書の作成に入ります。

後遺障害診断書を作成できるのは、医師だけです。後遺障害診断書をコピーして主治医に渡し、記入してもらいましょう。

後遺障害診断書のダウンロードはこちら

後遺障害診断書の重要性
後遺障害認定は、後遺障害診断書の内容をもとに審査されます。  

そのため、びまん性軸索損傷による後遺症が残ったことを、書類上の証拠のみで証明しなければなりません。  

医師が記入する診断書の書き方、内容に不備があり、正当な等級が認定されないケースもあります。
医師に記載してもらった診断書の内容に不備がないか確認するには、交通事故に強い弁護士への相談がおすすめです。

後遺障害診断書のもらい方や提出する方法については、以下の記事をご覧ください。

5-5. 後遺障害認定を申請し等級認定を受ける

主治医に後遺障害診断書を書いてもらったら、後遺障害認定を申請します。

後遺障害認定の申請方法は2種類ありますが、等級を認めてもらうためには「被害者請求」を選択するのがおすすめです。

申請方法特徴
事前認定加害者の保険会社経由で申請書類を出す方法。
保険会社が申請手続きを行ってくれる。
被害者請求自分で直接提出する方法。
診断書以外の証拠も自分で集める必要がある。

被害者請求は、自分で後遺障害を証明する証拠を集めなければなりません。しかし、認定に有利な証拠を集めて提出できる点が大きなメリットです。

後遺障害認定のくわしい申請方法については、以下の記事で解説しています。

5-6. 加害者側と示談交渉する

後遺障害認定を申請し、結果が出たら、加害者側との示談交渉がはじまります。

示談交渉で話し合うこと
・賠償金の種類、金額(入通院慰謝料〇円、後遺障害慰謝料〇円、など)
・過失割合
・支払い方法、支払期日 など

双方が納得いく内容で話し合いがまとまれば、示談成立となります。

しかし、加害者側が提示してくる示談書の内容は、加害者に有利になっており、不当な可能性が高いです。

提示された内容に納得いかない場合は、交渉次第で示談内容を変更できる可能性があるため、受け入れてはいけません。

納得いかない場合の対処法は、以下の記事で解説しています。

5-7. 慰謝料を含む賠償金を受け取る

示談が成立したら、慰謝料を含む賠償金を受け取れます。

示談交渉が長引いた場合は、賠償金を受け取れる時期も遅くなります。

賠償金をもらえる時期については、以下の記事も参考にしてください。

6. 【要注意】びまん性軸索損傷の後遺症は認められづらい

4章、5章と、びまん性軸索損傷の後遺症で認定される可能性がある後遺障害等級や、後遺障害認定を受けて賠償金を受け取るまでの流れをお伝えしてきました。

ここで、注意しなければならないことがあります。

それは、びまん性軸索損傷の後遺症は認められづらい、ということです。

主治医からも説明があったと思いますが、びまん性軸索損傷は、神経細胞の一部が損傷した状態にもかかわらず、 CTや一般的なMRI撮影では異常が発見されにくい状態です。

そのため、後遺障害認定の申請に必要な画像証拠を残すのが難しい傾向にあります。

特に、高次脳機能障害は、目に見えない症状が多い後遺症です。

加害者の保険会社は、証明しづらい後遺症が残ったことを利用して、「大したことがない症状だろう」と言い、賠償金を不当に減額してくることもあるでしょう。

そのような状況で後遺障害認定を受けるには、

・びまん性軸索損傷の後遺症を証明する証拠をかき集める

・必要事項が記載された後遺障害診断書を用意する

などをしなければなりません。

ただ、これらすべてを、交通事故の知識がない状態で進めるのは、難しいのが実情です。

7. 認められづらい後遺症を認めさせるには入院直後から弁護士の力が必要

びまん性軸索損傷の後遺症は、日常生活に大きな影響を与える可能性が高いものです。

それにもかかわらず、後遺障害認定で症状に見合う等級を獲得するのが難しい傾向にあります。

認められづらい後遺症を認めさせるには、入院直後から弁護士の力が必要となってきます。

特に重要なのは、交通事故に強い弁護士に依頼することです。

交通事故に強い弁護士の特徴
・交通事故案件の解決実績が多い
・医療や後遺障害認定に関する知識がある
・顧問ドクターと連携している

交通事故に強い弁護士は医療の知識もあるため、びまん性軸索損傷の後遺症を証明するためにどのような証拠が必要か、知っています。

例えば、後遺障害認定に必要な検査結果や書類が足りない場合、弁護士が気がついて、追加の資料収集のために動くこともできます。

入院中から、後遺症が残ってしまった場合を考えて準備を進めておくことが、被害者本人やご家族のためになります。

ぜひ、弁護士を頼ってください。

びまん性軸索損傷の後遺症に不安を感じている方は弁護士法人サリュにご相談ください

サリュは交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。
解決実績は26,000件以上を超えており、多くの案件を解決に導いてきました。  

私たちにご相談いただければ、初回相談の時点で、症状固定時期や通院に関するアドバイスや、認定される可能性がある後遺障害等級について、お伝えできます。  

また、全国対応をしている顧問ドクターがいるため、証明しづらい「びまん性軸索損傷の後遺症」を証明する証拠を、徹底的に集めることも可能です。  

加害者のせいで人生が大きく変わってしまった被害者の痛み、つらさは、何をしても消えません。 だからこそ、加害者に有利な内容で示談成立させることは、絶対に避けるべきなのです。

示談交渉が始まっている場合でも、示談成立前であれば、交渉可能です。
原則着手金もかからないため、ぜひ私たちにご相談ください。  

【サリュの事例】
事例203:びまん性軸索損傷、脊髄損傷などの重傷を負った家族のために、裁判で戦う。
事例269:左片麻痺、高次脳機能障害で2級を獲得し、1億4500万円の示談金を得た事案    

メールで無料相談する方は、下記をクリックしてください。

電話で無料相談する方は、下記をクリックしてください。

8. まとめ

本記事では、びまん性軸索損傷の後遺症について解説しました。

重要なポイントをまとめます。

〇びまん性軸索損傷の後遺症で残る主な症状一覧

 びまん性軸索損傷の後遺症例
意識障害・意識が戻らない(遷延性意識障害)
・意思疎通できない
高次脳機能障害・さっき食べたものが何か思い出せない
・物をどこにしまったか忘れる
・温厚な性格だったのに怒りっぽくなる
・何をするにもやる気が出ず家にひきこもる
・長時間の作業は途中で飽きてしまう
・複数人のグループで会話できなくなる
・計画を立てられない
・やるべきことに優先順位をつけられない
・指示されないと行動できない
・話したいのに言葉が出てこない
・考えていることと違う言葉が出てしまう
麻痺・体の片側だけが麻痺して動かしにくくなる
・両手両足が麻痺して動かしにくくなる
・歩行時にふらつく
・食べ物を食べづらい
その他・臭いがわからない
・目が見えづらくなる
・手が動かしにくい
(文字が書けない、両手でボタンをとめられない)
・物との距離感がうまくつかめない

〇びまん性軸索損傷の後遺症が残るかどうかを予測するのは難しい

〇びまん性軸索損傷で後遺症が残ってしまったら高額な賠償金を受け取れる可能性がある

〇びまん性軸索損傷で後遺症(後遺障害)が残ったら後遺障害等級「1・2・3・5・7・9・12・14級」が認定される可能性がある

〇びまん性軸索損傷の後遺症が残った方の今後の流れ

1.症状が現れたらすぐに主治医に相談する
2.医師の指示どおりに治療、検査、リハビリを続ける
3.症状固定の診断を受ける
4.後遺障害診断書を作成する
5.後遺障害認定を申請し等級認定を受ける
6.加害者側と示談交渉する
7.慰謝料を含む賠償金を受け取る

〇びまん性軸索損傷の後遺症は認められづらい

後遺症が残らないことが何よりですが、残る可能性が高いからこそ、早めの準備が大切です。

気になる症状が現れたら、迷わずすぐに病院を受診してください。 そして、示談交渉に向けて準備を進めていきましょう。