交通事故の慰謝料はいつもらえる?最短で獲得する方法を解説
「交通事故に遭ったけど、慰謝料っていつもらえるのだろう」
「慰謝料を早くもらいたいけど、どのくらいかかるの?」
交通事故の被害に遭った場合、これからの生活を考えると、慰謝料がもらえるタイミングがわからないと、今後の見通しも立てられず不安ですよね。
結論から申し上げますと、慰謝料の受取りは事故後、むち打ちなどの軽症なら事故から最短で約1か月〜2か月、重症ならケガの状態などによっては1年から2年以上かかる場合もあります。
【慰謝料を受け取るまでの目安】
基本的に慰謝料の受け取りは、大きな怪我であるほど治療期間も長くなるので、時間がかかります。
また、怪我が大きくなると、賠償金全体の額も大きくなることから、保険会社も支払いに慎重になり、示談交渉が長引くことで、長期化します。
怪我のために仕事をすることが困難になると、治療費や生活費などが大きな負担になりかねません。
そういう方の救済のために、示談前に賠償金の一部分だけを受け取る法的手段を利用する方法もあります。
とはいえ、実際にいつごろ慰謝料が入ってくるのか、目安だけでも知りたいでしょう。
そこで、この記事では、次のことを解説します。
この記事で分かること |
・交通事故で慰謝料がもらえる最短の受取日数を解説 ・あなたがもらえるまでに必要な期間の計算方法を徹底解説 ・一部分でも慰謝料を早く受け取るための5つの方法を紹介 |
この記事を読めば、交通事故で慰謝料がどのくらいの日数でもらえるのか、目安が分かります。
たとえ、治療や示談が長期化した場合でも、一時的に受け取れる方法も分かるでしょう。
ぜひ参考にして、安心して治療に専念してください。
交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
目次
1. 交通事故の慰謝料がもらえるのは最短で事故後約1か月
交通事故の慰謝料がもらえるのは、早ければ事故後、約1か月後です。
場合によっては1〜2年程度かかるケースもあります。
【慰謝料受け取りに必要となる日数の目安】
慰謝料などの賠償金は、基本的に入通院期間の長さにより金額が異なります。長ければ長いほど、痛みを感じていた期間も長くなり、慰謝料の金額は上がっていきます。つまり、治療が継続している間は、慰謝料の正確な金額は確定しません。
また、完治せずに後遺症が残存した場合、これを賠償の対象に含めるために、後遺障害認定を受ける必要があります。そのため、後遺障害慰謝料を含めた損害賠償金全体は、後遺障害認定後に確定することになります。
そうすると、慰謝料の受取日数の出し方は、基本的に次のようになります。
入院・通院:治療のために必要な通院や入院の日数(※症状固定まで) (後遺障害申請をする場合)後遺障害認定:診断書作成や自賠責の審査にかかる日数 示談交渉:示談交渉にかかる日数 振込み:示談が成立した後の手続きや振込み作業の日数 |
※症状固定とは、治療を続けても症状の改善が見込めない状態をいいます。
治療期間や示談交渉にかかる日数によって、慰謝料の支払いまでの日数は大きく異なります。
そこで、例として次の3つの状況で、最短で慰謝料を貰える日数を見ていきましょう。
・通院のみ2ヶ月(後遺症なし)の場合 ・入院2ヶ月+通院5ヶ月(後遺症あり)の場合 ・死亡事故の場合 ※以下では、示談交渉は、3ヶ月とします。 (示談交渉にかかる期間は、保険会社や担当者の対応の早さによっても変わります。争点が少ない場合は、保険会社の賠償金提示から早くて1週間〜3週間程度で示談が成立するケースもあります。) |
1-1. 例1【通院のみ2ヶ月(後遺症なし)の場合】最短約半年後
交通事故でのケガが、打撲やむちうちなどの軽症程度なら、最短で約半年で受け取れる可能性があります。
(争点が少なく、示談が早く成立すれば、もっと早く受け取れる可能性があります。)
【通院のみ、軽症の場合の最短振込み目安】
通院 | 2ヶ月 |
診断書・診療報酬明細書などの医療記録の取付 | 1〜2週間 |
示談交渉 | 3ヶ月 |
振込 | 2週間程度 |
合計 | 6ヶ月程度 |
軽症の場合、治療が終了した時点で、相手方保険会社が病院から診断書や診療報酬明細書を取り付け、慰謝料を含めた賠償金全体額を計算します。その後、示談交渉を行います。
病院の診断書や診療報酬明細書の作成に遅れが生じると、保険会社の被害者に対する賠償金の提案も遅れます。
示談交渉は、むち打ちなどの軽症事案で、休業損害がなく、かつ、追突事故等で過失割合も争点とならない場合は、慰謝料の金額のみの交渉となる場合があります。その場合、数週間から1か月で示談が成立するケースもあります。
ケガの具合が悪く、通院が長く続く場合や、示談交渉が難航した場合は、さらに長くなります。
1-2. 例2【入院1ヶ月+通院3ヶ月(後遺症あり)の場合】最短10ヶ月後
入通院が4ヶ月程度で、後遺症ありの場合は、慰謝料を最短で10ヶ月程度で受け取れる場合があります。
【入院➕通院(後遺症あり)の最短振込み目安】
入院➕通院 | 4ヶ月 |
後遺障害診断書・診療報酬明細書などの医療記録の取付 | 約1ヶ月 |
後遺障害認定 | 約2ヶ月 |
示談交渉 | 3ヶ月 |
振込 | 1週間 |
合計 | 10ヶ月程度 |
後遺症がある場合は、症状固定にしたうえで、後遺障害認定を受ける必要があります。
症状固定とは、交通事故などのケガや病気の治療において、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態になったことを指します。
症状固定後、後遺障害認定にかかる期間については、「(後遺障害申請をする場合)後遺障害認定にかかる日数」をご覧ください。
後遺障害は、傷病の内容によっては、後遺障害等級認定の申請から認定を受けるまでに、3ヶ月以上かかるケースもあります。
1-4. 例3【死亡事故の場合】最短8ヶ月後
死亡事故の場合、多くの場合は交通事故に遭ったその日または数日後に死亡という結果が確定することが多く、重傷事案とは異なり、長期間の入通院を経ないことになります。
また、死亡事故の場合、遺族の精神的負担や葬儀などの手続きを考慮し、四十九日が過ぎてから、示談交渉を開始することが多いです。
死亡事故の場合は、慰謝料を含めた賠償金全体が高額になるため、争点も多くなり、示談交渉もむち打ちなどの軽症事案に比べて長引く傾向にあります。過失割合などの争点の内容にもよりますが、最短で8ヶ月程度で慰謝料を受け取れる可能性があります。
【死亡事故の最短振込み目安】
四十九日 | 49日 |
示談交渉 | 6ヶ月 |
振込 | 1週間 |
合計 | 8ヶ月程度 |
死亡事故の場合、慰謝料の算定や死亡逸失利益(被害者が死亡しなければ将来得られたであろう収入や利益)の計算が複雑となるため、時間がかかります。
そのため、1年以上かかるケースもあります。
死亡逸失利益については以下の記事もご覧ください。
死亡逸失利益とは|金額目安と1円でも多く獲得したい方への全知識
2. あなたの場合はどれぐらい?交通事故の慰謝料がもらえるまでに必要な期間を計算しよう
これまで、慰謝料を最短でもらえる日数の目安を解説しました。
とはいえ、
「自分の場合はいつ慰謝料をもらえるのか、おおよそでもいいから期間を知りたい」
という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この章では、受取日数の目安を解説しましょう。
受取日数は、先ほど解説した通り、次のように計算します。
・入院・通院:治療のために必要な通院や入院の日数 ・(後遺障害申請をする場合)後遺障害認定:診断書作成や自賠責の審査にかかる日数 ・示談交渉:示談交渉にかかる日数 ・振込み:示談が成立した後の手続きや振込み作業の日数 |
それぞれの受取日数の目安の出し方について解説していきます。
2-1.通院・入院にかかる日数
交通事故で通院や入院になった場合、ケガの程度によって日数は変化します。
まずは、担当医師に「どのくらいで治療が終わるのか」を聞くとよいでしょう。
基本的に、治療が終了した後に示談交渉が行われるので、治療が長引くほど、慰謝料の受取りは遅くなります。
次の表は、交通事故による代表的な症状の入通院の日数の目安です。
【症状別 入院・通院の日数目安】
主な病状 | 入通院の目安 |
打撲・ねんざ・むちうち | 通院期間:1週間〜半年程度 |
靭帯損傷 | 入通院期間:2週間〜1年程度 |
骨折 | 入通院期間:1ヶ月〜半年程度 ※部位や骨折の程度による |
脱臼 | 通院期間:1ヶ月〜半年程度 |
脳挫傷や脊髄損傷 | 3ヶ月〜2年程度 |
※リハビリのための通院も、入通院慰謝料に含む。
なお、通院期間が長くなると、相手の保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合があります。
しかし、すぐに提案を受け入れ、治療をやめるのは危険です。
慰謝料を受け取る日数は早くなりますが、それ以降の治療は自費になります。何よりも、慰謝料の金額が少なくなるのです。
「治療が長期化しても通い続けよう」でも解説しますが、慰謝料の受取りが多少先になっても、治療が必要であれば、治療を継続するべきです。また、最終的に受け取れる慰謝料も多くなるのですから、デメリットはありません。
完治したり、これ以上病状が改善しないと判断されるまでは、定期的に治療を続けることをおすすめします。
2-2.(後遺障害申請をする場合)後遺障害認定にかかる日数
治療を受けていても、後遺症がある場合や、これ以上病状が改善しないと診断された場合、「症状固定」となります。そのうえで、残存した症状を賠償の対象にしてもらうため、後遺障害認定を受ける必要があります。
そのため、症状固定後は、以下の手続きに要する期間が生じます。
・担当医が後遺障害診断書を作成する期間:症状固定の日から2週間〜3週間 ・自賠責保険調査事務所が後遺障害を審査する期間:1〜2ヶ月程度 =1ヶ月半〜2ヶ月、待たなければならない! |
【症状固定】
症状固定の判断をされるまでにかかる期間は、症状によって大きく異なります。
3ヶ月程度で症状固定になるケースもあれば、高次脳機能障害などの場合は2年ほどかかる場合もあるでしょう。
症状固定を迎えることで、賠償金全体の金額が確定し、慰謝料などの交渉もできるようになります。
ただし、症状固定を迎えると、基本的にそれ以降に病院に通ったとしても、慰謝料算定の通院期間としてカウントされません。
そのため、妥当な慰謝料をもらいたい場合は、治療が必要な期間はしっかり通院し、改善の見込みがあるタイミングで治療を終了しないようにしましょう。
関連記事:交通事故に遭い症状固定と言われたら|今すべき対処法を弁護士が解説
2-3.示談交渉
示談交渉に必要な日数は、事故状況やケガの症状、また加害者の状況、証拠の収集状況によって大きく異なります。
早い場合は1週間〜1ヶ月ですが、長引く場合は1年以上かかるケースもあります。
「示談交渉が難航し長期化した」でも説明しますが、過失割合の争いや、後遺障害等級の争い、被害者の基礎収入の争いなどのほか、加害者が無保険である場合も長期化するでしょう。
また、示談交渉が決裂した場合、裁判へと移行することで、更に日数がかかります。
関連記事:【早見表付き】後遺障害の逸失利益はいくら?ケースごとの金額を解説
2-4.振込み
示談が成立し、実際に慰謝料が振込こまれるまで、1週間〜2週間程度かかります。
流れとしては次のようになります。
【示談の成立後、振込みまでの流れ】
相手の保険会社から被害者へ示談書の送付 ↓ 署名・押印して返送 ↓ 相手の保険会社の支払い手続き ↓ 示談金の振込み |
この流れがスムーズに行われると、1〜2週間程度で振込みが完了します。
3. 一部分でも慰謝料を早く受け取るための5つの方法
これまでの解説で、慰謝料を受け取る期間について解説し、治療や示談が長期化すれば1年以上かかることをお伝えしました。
しかし、治療を続けている間には、多額の費用がかかります。
特にケガで仕事ができない場合、この先の収入や生活を考えると、不安になるのではないでしょうか。
そこで、この章では、治療中、または、示談交渉前に、慰謝料の一部を受け取ることのできる方法をご紹介します。
利用することで、金銭的負担が軽減されて、安心して治療を受けましょう。
【治療中や示談交渉前に利用できるの5つの方法】
※項目をクリックすると説明に飛ぶことができます。
それぞれ解説していきましょう。
3-1. 相手の任意保険会社に「内払金」を請求する
「内払金」は、示談成立前に、加害者側の任意保険会社から先払いしてもらった一部の損害賠償金のことを言います。
事故によって治療費や生活費などの支払いが困難な場合に、支払われる可能性があります。
請求先 | 相手の任意保険会社 |
請求の範囲 | ・治療費 ・休業損害 ・慰謝料 ・通院交通費 等 |
請求できる回数 | 制限なし |
請求できる金額 | 制限なし |
必要書類 | ・傷病名、症状、検査結果などがわかる資料(診断書、診療報酬明細書、画像資料等) ・休業損害証明書、源泉徴収票、給料明細など ・タクシーの領収書等 |
申請から受け取れるまでの期間 | 保険会社によって異なる |
内払金は、必ずしも支払われるわけではありません。保険会社によって制度や支払いの基準が異なるため、まずは問い合わせてみましょう。
特に、慰謝料は、本来、精神的苦痛に対する補償の趣旨で支払われるものであり、生活補償の意味合いはありません。事故後に生活費などが不足する場合は、休業損害などの名目で支払われることが一般的です。
そのため、事故後に休業損害が発生していない場合は、慰謝料のうち払いに応じない任意保険会社も多いです。
また、内払金は示談交渉の際に、賠償金全体額から既払額として控除されます。
3-2.被害者の任意保険の「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」を利用する
「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」は、交通事故によってケガをした場合や死亡した場合、示談交渉なしに、補償を受けられる自働車保険の特約です。
人身傷害保険に関しては、以下の表の通りです。
請求先 | 被害者の任意保険 |
請求の範囲 | ・治療費 ・休業損害 ・慰謝料 ・通院交通費 等 ※契約内容によって異なる |
請求できる回数 | 制限なし ※契約内容によって異なる |
請求できる金額 | 治療費や休業損害、通院交通費などは実費 慰謝料の金額は保険契約の内容により異なる |
必要書類 | ・保険金請求書 ・傷病名、症状、検査結果などがわかる資料(診断書、診療報酬明細書、画像資料等) ・休業損害証明書、源泉徴収票、給料明細など ・タクシーの領収書等 ・その他保険会社が指定する書類 |
申請から受け取れるまでの期間 | 保険会社によって異なる |
事故の過失割合に関わらず補償を受けることができるため、相手との示談交渉などを待たずに、治療中から安心して利用できます。
ただし、相手方の任意保険会社(対人賠償責任保険会社)に内払い請求するのと同様に、慰謝料に関して、治療中に支払われるかどうかについては、保険会社によって異なります。
前記の通り、慰謝料は、本来、精神的苦痛に対する補償の趣旨で支払われるものであり、生活補償の意味合いはありません。事故後に生活費などが不足する場合は、休業損害などの名目で支払われます。
そのため、人身傷害保険であっても、慰謝料はあくまで治療が終了してから支払われるというのが一般的です。
契約内容(特約)によっては、次のような費用も補償されることがあります。
【人身傷害保険の補償内容の例】
・ホームへルパー ・介護ヘルパーの雇用費用 ・ベビーシッター ・ペットシッターの雇用費用 ・差額ベッド費用(個室) ・転院移送費用 ・福祉機器等取得費用(福祉車両・電動車椅子など) ・住宅改造費用(バリアフリーに改造するなど) |
まずは加入している保険会社に、どのような補償があるのか、問合せてみることをおすすめします。
3-3. 相手の自賠責保険会社に「被害者請求」をする
相手が任意保険に加入していない場合や、任意保険会社に加入していても、任意保険会社が内払い請求を拒否している場合は、自賠責保険へ「被害者請求」をすることで自賠責保険分の賠償金を受け取ることが可能です。
被害者請求とは、加害者を介さずに、被害者が直接、相手の自賠責保険会社に損害賠償請求する方法です。
【被害者請求の概要】
請求先 | 相手の自賠責保険会社 |
請求の範囲 | 治療費、休業損害、慰謝料 |
請求できる回数 | 上限内なら制限なし |
請求できる金額 | 自賠責保険の限度内 ・傷害:120万円 ・死亡:3000万円 |
必要書類 | ・交通事故証明書 ・診断書 ・領収書等(治療費、休業損害、交通費等を証明するもの) ・診療報酬明細書 ・休業損害証明書 など |
申請から受け取れるまでの期間 | 1ヶ月程度 |
任意保険会社との交渉が不要なので、任意保険会社が支払いを渋っている場合には有効です。
ただし、被害者が自分で多くの必要書類を用意する必要があるため、手間はかかります。
手続きが複雑になる場合もあるため、状況に応じて弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。
3-4. 相手の自賠責保険から「仮渡金」を受け取る
「仮渡金」は、当面の治療費や生活費の工面が必要な場合に、賠償金の一部を早期に受け取ることができる制度です。
金額は、ケガの程度にもよりますが、当面の治療費などに充てることができます。
【仮渡金の概要】
請求先 | 相手の自賠責保険会社 |
請求の範囲 | 治療費、休業損害、交通費など |
請求できる回数 | 1回 |
請求できる金額 | ・軽度のケガ(11日以上の治療を要する):5万円 ・中程度のケガ:20万円 ・重度のケガ:40万円 ・死亡:290万円 |
必要書類 | ・仮渡金請求書 ・交通事故証明書 ・医師の診断書 など |
申請から受け取れるまでの期間 | 申請から約1週間 |
仮渡金は、賠償金の一部なので、最終的な金額から差し引かれることに注意してください。
また、治療中に1回限りの請求となるので、どのタイミングで請求するかなども慎重に検討しましょう。
3-5.裁判所へ仮払い仮処分を申し立てる
相手方の任意保険会社が内払い請求を拒否している場合や、被害者が人身傷害保険に加入していない場合、自賠責保険への被害者請求や仮渡金では生活費の支払いに不足するなどの場合、裁判所へ仮払い仮処分の申立てをする方法があります。
裁判所から仮払い命令を出してもらうことで、相手方任意保険会社に一定額の賠償金の支払いを強制させることができます。
仮払い仮処分の申立てをすると、最短で4、5週間ほどで支払い命令がでます。
もっとも、裁判所に仮払い命令を出してもらうためには①被保全権利の存在と、②保全の必要性を資料などを用いて具体的に説明しなければいけません。
①被保全権利とは、仮払い命令によって守られるべき権利の存在です。交通事故で怪我をした方の場合、交通事故によって人身損害について損害賠償請求権を有しているといえますから、診断書や交通事故証明書などを用いてこの権利の存在を説明する必要があります。また、休業損害や慰謝料がいくら発生しているのかも、主張や資料による説明が必要になります。
また、②「保全の必要性」は、すぐに仮払い命令を出してもらわないと、生活が困窮し、立ち行かなくなる状況のことです。月々の支出に関する資料や、預貯金通帳の写しなど提出して保全の必要性を説明する必要があります。
仮払い仮処分の申立ては裁判手続きですので、交通事故に強い弁護士に依頼することが有効です。
4.慰謝料の支払いが遅くなる4つのケース
慰謝料は、出来るだけ早く支払ってほしいと、誰でも思うものです。
しかし、同じような条件でも、慰謝料の支払いが遅くなるケースもあります。
とくに、次のような場合に支払いが遅くなるため、注意が必要です。
それぞれ解説していきましょう。
4-1.示談交渉が難航し長期化した
示談交渉が難航し、長期化すると、慰謝料の振込は遅くなります。
大きな問題がなければ1〜6ヶ月程度で成立する示談交渉ですが、次のようなケースでは長期化します。
【示談交渉が長期化する理由の例】
・双方の言い分が食い違い、過失割合の算定が難しい場合 ・相手が過失を認めない場合 ・慰謝料の金額(算定方法)が妥当かどうかで対立する場合 ・慰謝料以外の休業損害や後遺障害逸失利益などの算定で主張の食い違いがある場合 |
相手の保険会社からの示談をそのまま受け入れると、慰謝料の支払いは早くなる可能性は高くなります。
とはいえ、多くの保険会社は、支払い額を抑えたいと思っているため、相手の主張を鵜呑みにすると、慰謝料は最低額となってしまう可能性があります。
少しでもスムーズに、かつ、多く慰謝料を獲得するには、弁護士に入ってもらい、証拠を提示したうえで合理的な主張をすることが有効です。
4-2.裁判に発展した
上記のように示談交渉が難航し、裁判に発展すると、慰謝料の支払いはさらに1年ほど遅くなります。
最高裁判所の令和5年「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」によると、交通損害賠償の平均審理期間(裁判所が訴えを受理してから判決などで終了するまでの期間)は13.3ヶ月となっています。
ただし、この数値は「和解」も含まれているため、和解できない場合や、控訴や上告に発展すると、さらに遅くなるでしょう。
とにかく早く慰謝料を支払ってほしい場合は、裁判に発展しないよう、早い段階で保険会社を納得させる証拠を提出したり、無理な主張はせずに譲歩すべきところは譲歩するなどの工夫が必要です。
4-3.相手が保険に入っていない
加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者本人の資力が不十分なケースが多いです。その場合、慰謝料を全額支払ってもらえないか、全額支払ってもらうとしても、分割払いになるなどして支払いに時間がかかります。
利用できるのが自賠責保険のみとなるためです。
自賠責保険で支払われる限度額は任意保険よりも低く、その金額を超えた損害賠償については、加害者自身が支払うことになります。
【自賠責保険による補償額】
・死亡による損害:最高3,000万円 ・後遺障害による損害:最高4,000万円※〜75万円(後遺障害等級による) ・傷害による損害:最高120万円 ・上記以外の後遺障害:3,000万円(第1級)~75万円(第14級) ※神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護:4,000万円(第1級) 随時介護:3,000万円(第2級) 参考:国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済による補償」 |
※自賠責による補償額はあくまで上限額であり、自賠責保険基準で計算した賠償金は、通常は任意保険と比較してかなり低い場合が多いです。
加害者の支払い能力によっては、少額を分割で支払うことになる可能性もあります。
全額をもらうには、長い月日が必要となるでしょう。
また、自賠責保険を利用すると、自分で手続きを行う必要があり、申請するだけでも時間がかかってしまいます。
とにかく早く解決したい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
加害者が自賠責保険も未加入の場合 |
加害者が自賠責保険も未加入の場合は、「政府保障事業」に請求する方法があります。 政府保障事業は、国(国土交通省)が加害者に代わって、自賠責保険程度の補償をする制度です。 ひき逃げされ、相手が不明な場合などにも利用できます。 支払限度額は、自賠責保険と同じですが、社会保険(健康保険、労災保険など)からの給付があれば、その金額は差し引かれるので注意が必要でしょう。 ただし、支払いまでに半年から1年以上かかる場合もあります。 詳しくは下記のリンクを参考にしてください。 出典:損害保険料率算出機構「政府の保障事業とは」 |
4-4.補足:治療が長期化しても病院には通い続けよう
治療が長期化すると、その分慰謝料の受け取りは遅くなります。
しかし、多少長期化しても、治療効果があり、症状に改善傾向がある間は、病院に通い続けることをおすすめします。
というのも、交通事故での通院や治療を途中でやめてしまうと、次のようなデメリットがあるからです。
【途中で治療をやめてしまうと起こる可能性があるデメリット】
・その後症状が悪化しても、治療費を請求できない ・治療を中止した日以降の期間は、慰謝料算定の対象期間に含まれない |
通院が短いと、慰謝料も低くなります。
その場合、弁護士に依頼すると「費用倒れ(慰謝料よりも弁護士費用が高い)」になる可能性もあるので注意が必要です。
治療の効果があって症状に改善傾向がある間は、途中で治療を中断するのではなく、完治するまでしっかり通いましょう。
また、月に1回程度の通院頻度だと、保険会社は軽症だと判断して慰謝料を低く見積もる傾向にありますので、むちうちなどの症状でも週に2〜3日は、継続して病院に通いましょう。
関連記事:【交通事故】弁護士依頼で費用倒れになるケース5つと防止策を解説
5.慰謝料をより早く高く受け取りたい場合は弁護士に相談しよう
慰謝料を、少しでも早く受け取りたい場合は、弁護士に相談しましょう。
これまでの記事の中でも、弁護士に依頼したほうがスムーズに進むことを解説してきました。
まとめると次のような理由があります。
それぞれ解説していきましょう。
5-1. 交渉力が高いため示談交渉が素早く進む
弁護士は、交通事故の示談交渉に関して、専門的な知識と経験を持っています。
そのため、相手の保険会社との示談交渉も、素早く効率的に進められます。
慰謝料の交渉材料となる法的知識が乏しいと、自分の主張をいえずに、相手の言い分をそのまま受け入れてしまう危険性があるでしょう。交渉が難航し、長期化する可能性が高くなります。
弁護士なら、適切に対応してくれるため、安心しておまかせすることができます。
5-2. 証拠の収集や法的手続きが迅速になる
弁護士に依頼すると、証拠の収集や法的手続きが迅速化します。
保険会社との示談には慣れているため、どのように進めるべきかを心得ているためです。
被害者が自分で行おうとすると、書類を集めるだけでも、かなりの手間や時間がかかるでしょう。
弁護士に依頼することで、慰謝料の支払いまでの期間を短縮できるでしょう。
5-3. 慰謝料が高くなる
基本的に、相手の保険会社が提示する賠償金は、弁護士に依頼する場合と比べて安くなります。
というのも、弁護士に依頼すると、慰謝料が「弁護士基準」となるためです。
慰謝料を計算するには3つの算定基準があります。
・自賠責基準:被害者救済のための最低限の補償
・任意保険基準:任意保険会社ごとの算定基準で補償
・弁護士(裁判)基準:裁判所が認定する慰謝料を元に算定
同じような怪我でも、算定方法によって、慰謝料や損害賠償の金額は大きく変わります。
そのため、少しでも多く慰謝料をもらいたい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
交通事故の慰謝料が、いつもらえるのか、おおよその目安はつきましたでしょうか。
最後にこの記事をまとめてみましょう。
◯交通事故の慰謝料がもらえるのは最短で事故後約1ヶ月
◯慰謝料の受取日数の出し方
◯一部分でも慰謝料を早く受け取るための5つの方法
※項目をクリックすると説明に飛ぶことができます。
これらの手続きを、早く高く受け取りたい場合は弁護士に相談することをおすすめします。
あなたの慰謝料が早くもらえて、これからの生活が安心して送れることを願っています。