後遺障害10級とは?認定される症状や賠償金を事例と合わせて解説
「後遺障害10級が認められるのはどのような症状?」
「自分の怪我で後遺障害10級を認めてもらうことは可能?」
このように、交通事故による怪我で後遺障害が残ってしまい、10級に該当するのか気になっていませんか?
結論からお伝えすると、後遺障害10級が認められるのは、下記の症状に該当する場合のみです。
後遺障害が残った部位 | 後遺障害の内容 |
目の障害 | 1号:1眼の視力が0.1以下になったもの 2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
口の障害 | 3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4号:十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
耳の障害 | 5号:両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6号:一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
上肢の障害 | 7号:一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
下肢の障害 | 8号:一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9号:一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 11号:一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
後遺障害10級の認定を受けるには、検査や診断をとおして、こうした症状が事故によるものであると証明しなければなりません。
しかし、診断書の作成や検査が適切にされないと、10級相当の後遺障害が残っていても、不当に低い等級を認定される可能性があることをご存じですか?
本来は後遺障害10級相当の症状が残っているのに、10級よりも下の等級が認定されれば、あなたが受け取れる賠償金は少なくなります。
また、10級が認められても、加害者側が提示してくる賠償金が正当な金額ではないケースもあるのです。
そこでこの記事では、後遺障害10級が認定される基準や、10級が認められた方が受け取れる慰謝料、注意点をくわしく解説します。
お読みいただくことで、ご自身が後遺障害10級に該当するかどうかや、受け取れる慰謝料について理解でき、適正な等級の認定に向けて動き出せるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。

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目次
1. 【部位別】後遺障害10級が認められる症状とは?

まずは、怪我をした部位別に、10級が認められる後遺障害や認定基準などを紹介します。
後遺障害が残った部位 | 後遺障害の内容 |
目の障害 | 1号:1眼の視力が0.1以下になったもの 2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
口の障害 | 3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4号:十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
耳の障害 | 5号:両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6号:一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
上肢の障害 | 7号:一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
下肢の障害 | 8号:一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9号:一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 11号:一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
※「号」は症状の程度や部位によってさらに細かくわけるためのものです。2号より3号が重い、というようなルールはありません。
ご自身が本当に10級に該当しそうか、確認してみてください。
1-1. 目の障害|10級1号、2号
10級1号 | |
後遺障害の内容 | 1眼の視力が0.1以下になったもの |
認定基準 | 矯正後(コンタクトレンズや眼鏡使用後)の視力が0.1以下の場合のみ |
検査方法 | 視力の測定は、原則、一般的な視力検査で使用される「万国式試視力表」を用いる |
10級2号 | |
後遺障害の内容 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
認定基準 | 「複視を残すもの」とは、次のいずれにも該当するものをいう。 a.本人が複視のあることを自覚していること b.眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること c.ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されること |
目の障害で認定される可能性があるのは、後遺障害10級1号または2号です。
事故による怪我が原因で、
・片目の視力が、コンタクトレンズや眼鏡をしても0.1以下になった方
・正面を見ている時に複視(物が二重に見えること)の症状を感じる方
などが認定される可能性があります。
目の後遺症で後遺障害10級が認定された場合、日常生活において下記のような影響が出る可能性が高いでしょう。
日常生活への影響 |
【1眼の視力が0.1以下】 ・遠くにいる人が知り合いでも誰かわからない ・車や自転車の運転は非常に危険 ・時計の数字が読めない ・黒板、白板の文字が読めない 【複視】 ・頭痛 ・めまい など |
1-2. 口の障害|10級3号、4号
10級3号 | |
後遺障害の内容 | 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの |
認定基準 | 【咀嚼】 たくあん、らっきょう、ピーナッツ等の一定の固さの食物のなかで咀嚼できないものがある。 【言語機能】 4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、1種以上の発音ができない。 ・口唇音(ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ) ・歯舌音(な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ) ・口蓋音(か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん) ・喉頭音(は行音) |
10級4号 | |
後遺障害の内容 | 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
認定基準 | 14本以上の歯にインプラント、クラウン、入れ歯などが入る |
※歯科補綴とは:歯を失った部分を人工の歯や装置で補う歯科治療のこと
口の障害で認定される可能性があるのは、後遺障害10級3号または4号です。
事故による怪我が原因で、
・咀嚼できないものがある方
・発音できなくなった音のある方
・14本以上の歯が入れ歯やインプラントになった方
などが認定される可能性があります。
口の後遺症で後遺障害10級が認定された場合、日常生活において下記のような影響が出る可能性が高いです。
日常生活への影響 |
・食事内容が制限される ・コミュニケーションを取りづらい(会話しづらい) など |
1-3. 耳の障害|10級5号、6号
10級5号 | |
後遺障害の内容 | 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
認定基準 | ・両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のもの ・両耳の平均純音聴力レベルが40dB以上であり、かつ最高明瞭度が70%以下のもの |
検査方法 | 病院での聴力検査 (標準純音聴力検査、語音聴力検査など) |
10級6号 | |
後遺障害の内容 | 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
認定基準 | 一耳の平均純音聴力レベルが80dB以上90dB未満のもの |
検査方法 | 病院での聴力検査 (標準純音聴力検査、語音聴力検査など) |
※平均純音聴力レベル:どのくらい小さな音が聞こえるか
※最高明瞭度:言葉をどの程度明確に聞き取れるか
耳の障害で認定される可能性があるのは、後遺障害10級5号または6号です。
事故による怪我が原因で、
・両耳が聞こえづらくなり、1m以上の距離だと会話の内容を認識できない方
・耳元で大声で話しかけなければ、会話の内容を認識できない方(片耳)
などが認定される可能性があります。
耳の後遺症で後遺障害10級が認定された場合、日常生活において下記のような影響が出る可能性が高いです。
日常生活への影響 |
・日常会話が難しくなる ・補聴器が必要になる など |
1-4. 上肢の障害|10級7号 、10号
10級7号 | |
後遺障害の内容 | 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの |
認定基準 | ・指の末節骨の長さ(第一関節より上の骨)の半分以上を失う ・指の付け根の関節、親指以外の第二関節、親指の第一関節の可動範囲が事故前の半分以下になる ・指の末節の指腹部と側部の、深部感覚及び表在感覚を完全に失う |
10級10号 | |
後遺障害の内容 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
認定基準 | 左右いずれかの上肢にある3大関節(肩・ひじ・手首)のうち、1つの関節の可動範囲が事故前の半分以下になる |
指の障害で認定される可能性があるのは、後遺障害10級7号または10号です。
事故による怪我が原因で、
・片手の親指、または親指以外の2本の指が動かしづらくなった方
・片手の親指、または親指以外の2本の指の感覚が完全になくなった方
・左右いずれかの肩やひじ、手首の関節のうち、どれか一つが事故前の半分以下しか動かせなくなった方
などが認定される可能性があります。
上肢の後遺症で後遺障害10級が認定された場合、日常生活において下記のような影響が出る可能性が高いです。
日常生活への影響 |
・文字を書けなくなる ・荷物を持ちづらくなる ・料理などの家事が難しくなる ・パソコンやスマートフォンの操作が難しくなる など |
1-5. 下肢の障害|10級8、9、11号
10級8号 | |
後遺障害の内容 | 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの |
認定基準 | 片脚が3cm以上短くなる |
10級9号 | |
後遺障害の内容 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの |
認定基準 | 片足の親指、または親指以外の4本の指を失う |
10級11号 | |
後遺障害の内容 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
認定基準 | 左右いずれかの下肢にある3大関節(股・ひざ・足首)のうち、1つの関節の可動範囲が事故前の半分以下になる |
下肢の障害で認定される可能性があるのは、後遺障害10級8、9、11号です。
事故による怪我が原因で、
・片方の脚が3㎝以上短くなった方
・片足の親指または親指以外の4本を付け根から先すべてを失った方
・左右いずれかの股やひざ、足首の関節のうちどれか一つが事故前の半分以下しか動かせなくなった方
などが認定される可能性があります。
下肢の後遺症で後遺障害10級が認定された場合、日常生活において下記のような影響が出る可能性が高いです。
日常生活への影響 |
・歩きづらくなる ・立ち仕事をするのが難しくなる ・履ける靴が限られる など |
2. 交通事故による怪我で後遺障害10級が認定された事例

ここまでで、ご自身が後遺障害10級に該当するのか、おおよそ見当がついたのではないでしょうか。
ただ、実際にどのようなケースで10級が認定されるのか、また認定されるとどうなるのか、さらに詳しく知りたい方もいらっしゃるでしょう。
そこで2章では、当弁護士事務所サリュが過去に対応した案件の中から、後遺障害10級が認定された事例を5つ紹介します。
どのような怪我、症状で後遺障害10級が認められたのか、どの程度の賠償金を受け取れたのかなどに注目してみてください。
1.【賠償金:当初提示額の10倍】歯牙欠損、男性のケース 2.【賠償金:1,635万円】大腿骨骨折による関節機能の障害、男性のケース 3.【賠償金:1,260万円】上腕骨近位端骨折による可動域制限、男性のケース 4.【賠償金:約1,000万円】右足首の骨折による可動域制限、男性のケース 5.【賠償金:2,500万円】右鎖骨骨折による可動域制限のケース |
2-1. 【賠償金:当初提示額の10倍】歯牙欠損、男性のケース
賠償金額 | 当初提示額の10倍 |
事故の状況 | 青信号で横断歩道を横断中、対向から来た自転車と横断歩道上で衝突 |
怪我の種類 | 前歯3本を失う |
Aさんは青信号で横断歩道を横断中、対向から来た自転車と横断歩道上で衝突し、前歯を3本失ってしまいました。
サリュにご相談いただいたときは歯の治療は終了していましたが、加害者側が提示してきた賠償金は20万円程度と少ないものでした。
Aさんはサリュの弁護士とともに、加害者が加入していた保険会社に後遺障害認定手続を依頼したところ、10級が認定されます。
そして賠償金についても、加害者側に当初の10倍以上を提示させることができました。
2-2. 【賠償金:1,635万円】大腿骨骨折による関節機能の障害、男性のケース
賠償金額 | 1,635万円 |
事故の状況 | バイクで十字路の交差点を直進しようとしたところ、交差点に進入してきた加害車両に衝突される |
怪我の種類 | 右大腿骨頚部骨折 |
Kさんは、バイクで十字路の交差点を直進しようとしたところ、左方から進入してきた車両に衝突されて右大腿骨頚部骨折を受傷しました。
一生懸命治療に励みましたが、残念ながら人工股関節を入れることになり、手術を行いました。
Kさんは、サリュの弁護士とともに後遺障害申請を行ったところ、10級が認められます。示談交渉では、弁護士が2年3ヶ月分の休業損害や、将来発生する可能性がある治療費などを漏れなく請求しました。
その結果、1,635万円の賠償金(自賠責保険金、労災の障害補償給付を除く)で示談を成立させることができたのです。
2-3. 【賠償金:1,260万円】上腕骨近位端骨折による可動域制限、男性のケース
賠償金額 | 1,260万円 |
事故の状況 | 片側二車線の道路の左側の車線をバイクで走行中、車線変更してきた車に衝突される |
怪我の種類 | 右上腕骨近位端骨折 |
Bさんは、片側二車線の道路をバイクで走行中、右車線から突然車線変更してきた車に衝突され、右上腕骨近位端骨折を受傷しました。
医師から後遺障害が残る可能性が高いことを告げられたBさんは、早い段階でサリュに相談に来てくださいました。
残念ながらBさんの右肩関節には可動域制限の症状が残りましたが、弁護士が後遺障害認定の申請に関するサポートを行い、10級を認めてもらうことができました。
加害者側は、過失割合や逸失利益(事故に遭い怪我をしていなければ、本来受け取れたはずの利益)について争ってきましたが、サリュの弁護士が丁寧に交渉します。
その結果、こちらの主張がほとんど認められ、Bさんは1,260万円弱の賠償金を受け取ることができました。
2-4. 【賠償金:約1,000万円】右足首の骨折による可動域制限、男性のケース
賠償金額 | 800万→1,000万 |
事故の状況 | 原付に乗っている際に自動車と衝突 |
怪我の種類 | 右足首の骨折 |
Aさんは原付乗車中に自動車と衝突し、右足首などを骨折。2年ほど治療しましたが、足首の可動域制限が残り、後遺障害10級が認定されました。
加害者側に提示された示談金は800万円でしたが、少なく計算されていると感じたため、サリュにご相談くださいました。
サリュの弁護士は、加害者側の保険会社に、少なく見積もられていた後遺障害逸失利益について交渉します。
その結果、こちらの主張がほぼ認められ、最終的に1,000万円で示談を成立させることができました。
2-5. 【賠償金:2,500万円】右鎖骨骨折による可動域制限のケース
賠償金額 | 2,500万円 |
事故の状況 | 自転車で交差点を横断中、信号無視のトラックにはねられる |
怪我の種類 | 右鎖骨の遠位端骨折 |
Tさんは自転車で交差点を横断中、信号無視のトラックにはねられ、右鎖骨の遠位端骨折を負いました。1年以上治療に励みましたが、右肩の可動域制限が改善されませんでした。
しかし加害者側の保険会社は、Tさんが治療途中にもかかわらず、症状固定(交通事故において治療終了を意味すること)になったとして治療費を打ち切ってきたのです。
そこで、不安になったTさんはサリュにご相談くださいました。
弁護士はTさんの主治医と直接面談し、症状固定時期などを丁寧に確認。
その結果、保険会社が主張していた症状固定時期は間違っていることが判明したのです。
最終的に、Tさんは主治医に適切な診断書を作成してもらい、後遺障害10級が認定され、賠償金2,500万円で和解できました。
3. 後遺障害10級の方が受け取れる慰謝料を含む賠償金

2章では、実際に後遺障害10級が認められた方の事例を紹介しました。
事例をご覧いただいた方はお気づきかもしれませんが、後遺障害10級が認められたとしても、受け取れる賠償金は人それぞれ違います。
なぜなら事故によって後遺障害等級が認められた方が受け取れるのは、後遺障害等級に対する慰謝料だけではないからです。
そこで、3章では後遺障害10級の方が受け取れる慰謝料を含む賠償金を紹介します。
後遺障害10級の方が受け取れる賠償金は、
・怪我をしたり休業が発生した場合に受け取れるお金
・後遺障害が残った場合に受け取れるお金
の大きく2つに分類できますが、今回は後遺障害が残った場合に受け取れる賠償金について解説します。
怪我をしたり休業が発生した場合に受け取れる | ・治療費 (怪我の治療にかかったお金) ・入通院慰謝料 (怪我の治療による入通院で生じた精神的損害に対するお金) ・休業損害 (怪我が原因で仕事を休んだ場合に受け取れるお金) など |
後遺障害が残った場合に受け取れる | ・後遺障害慰謝料 (後遺障害が残り、精神的苦痛を感じたことに対して支払われるお金) ・後遺障害逸失利益 (事故に遭い怪我をしていなければ、本来受け取れたはずの利益) ・その他 (将来の治療費など) |
詳しく見ていきましょう。
※交通事故の被害者の方が受け取れるお金の全体像をお知りになりたい場合は以下の記事も合わせてご覧ください。

3-1. 後遺障害慰謝料
交通事故による怪我で、治療したにもかかわらず後遺障害が残り、後遺障害10級が認められた方は、後遺障害慰謝料を受け取れます。
後遺障害慰謝料とは |
後遺障害が残り、精神的苦痛を感じたことに対して支払われるお金 ※等級(症状の重さ)によって金額が変わる |
後遺障害10級の後遺障害慰謝料相場は、190万~550万円です。
相場に差がある理由は、計算基準によって算定される金額が異なるからです。
【計算基準別|後遺障害10級の後遺障害慰謝料相場】
自賠責基準 | 弁護士基準 |
190万円 | 550万円 |
交通事故の慰謝料の計算基準には、次の3つがあります。

加害者側の保険会社が、後遺障害慰謝料の金額として550万円を提示してくれることはほぼありません。最低保証ラインである自賠責基準の金額(190万円)に近い額を提示してくることが多いです。
しかしそれは、不当な金額である可能性が高いです。
そのまま受け入れず、必ず弁護士に相談しましょう。
後遺障害慰謝料の金額や計算方法について、さらに詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。

3-2. 後遺障害逸失利益
交通事故による怪我で、治療したにもかかわらず後遺障害が残り、後遺障害10級が認められた方は、後遺障害逸失利益を受け取れます。
後遺障害逸失利益とは |
事故に遭い怪我をしていなければ、将来受け取れたはずの利益に対する補償のこと |
後遺障害逸失利益は、後遺障害が原因で以前と同じ職に就けなくなったり、仕事を失ったりした場合に受け取れるお金です。
金額は、次の計算式をもとに算出します。
【計算式】 1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数 ※1年あたりの基礎収入とは: 被害者が事故に遭う前の年収などから算出する ※労働能力喪失率: 後遺障害の影響で事故前と比べて「労働能力がどの程度失われたか」という割合。10級の場合は一般的に27%で計算される。 ※ライプニッツ係数: 将来もらえたはずのお金を現在の価値に直すための係数 |
以下に、後遺障害10級が認定された方の後遺障害逸失利益の一例を、男女別にまとめました。
25歳 | 35歳 | 45歳 | 55歳 | 65歳 | |
男性 | 3780万 | 3246万 | 2942万 | 2208万 | 958万 |
女性 | 2684万 | 2386万 | 1991万 | 1375万 | 747万 |
※上記は以下の基礎収入を仮定し算出した金額です。具体的な金額はケースにより異なります。 特に、中高年者の場合は上記の金額との差が大きくなります。 25歳:男性5,908,100円・女性4,194,400円 (※令和6年の全学歴、全年齢、男女別の平均収入を前提) 35歳:男性5,897,800円・女性4,334,500円 45歳:男性6,837,700円・女性4,629,200円 55歳:男性7,242,100円・女性4,508,600円 65歳:男性4,162,800円・女性3,246,800円 (※令和6年の全学歴、年齢別、男女別の平均収入を前提) |
ただ、後遺障害逸失利益は、年齢や事故前の収入などによって大きく変動するものです。
自分が受け取れる後遺障害逸失利益についてくわしい金額を知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

3-3. その他(将来治療費など)
後遺障害によって将来発生する可能性があるお金も、加害者側に請求できる場合があります。
認められる可能性があるのは、下記のような費用です。
・将来の治療費
・将来のリハビリ代
・将来の手術費
・将来必要になる装具費(めがね代、コンタクト代、義歯代など) など
後遺障害10級の場合で認められるケースは多くありませんが、実際に、将来発生する治療費として認められた過去の事例を紹介します。
【1.将来発生するお金が賠償金として認められた事例】
そしゃく機能障害(10級2号)、左肩関節機能障害(10級10号)、左肩鎖関節亜脱臼に伴う鎖骨変形(12級5号、併合9級)のエステティシャンの女性につき、症状固定後も障害の悪化を防ぐために針治療やボトックス療法が有効だったとして、症状固定から20年間 ・週1回の針治療 ・3ヶ月に1回のボトックス治療 の費用として583万円が認められた。 (東京地判・平成18年12月27日) |
【2.将来発生するお金が賠償金として認められた事例】
左大腿骨頸部骨折後の人工骨頭置換(10級11号)のアルバイト女性につき、 ・将来3回の手術が必要 として手術費53万円と付き添い費23万円が認められた。 (埼玉地判・平成23年11月18日) |
これらは、自分から請求しなければ支払ってもらえないケースがほとんどです。
後遺障害が残ったことが原因で発生するお金があれば、加害者側に請求することを検討しましょう。
4. 【注意】診断書の作成や検査が適切にされないと不当に低い等級が認定される可能性がある

ここまでの内容をお読みいただき、後遺障害10級が認められた方が受け取れる可能性がある賠償金について、ご理解いただけたでしょうか。
しかし、そもそも、等級認定の判断材料となる診断書(後遺障害診断書)の内容が不十分であったり、必要な検査が行われなかったりすると、不当に低い等級が認定される可能性があるのです。
特に、後遺障害10級の方によくみられる可動域制限は、事故前よりも動かせなくなったことを客観的に証明しなければなりません。
・なんとなく手首が動かしづらくなった
・事故前より確実に腕が上がらない
などと感じていても、その不調を診断書や検査によって、医学的に証明できなければ、後遺障害10級は認められないのです。
「2-5.【賠償金:2,500万円】右鎖骨骨折による可動域制限のケース」で紹介した事例にもありましたが、もともとの診断書の内容が適切ではないケースもあります。
記載漏れ等を是正した結果、後遺障害10級が認められることは珍しくありません。
等級が下がれば受け取れるお金も少なくなります。
症状に対して適正な賠償金を受け取るためにも、診断書の作成や検査において不備なく進めて、10級を認定してもらうことが大切です。
5. 交通事故による怪我で後遺障害10級を認めてもらうために必要な3つのこと

4章では、診断書や検査が適切にされないと、不当に低い等級が認定される可能性があることをお伝えしました。
一生苦しむことになる後遺障害が残ったにもかかわらず、正当な等級が認められない状況になるのは、避けたいはずです。
そこで、後遺障害10級を認めてもらうためにあなたができることを、3つ紹介します。
1.後遺障害10級を証明するために必要な検査を受けて証拠を残す 2.適切なタイミングで症状固定の診断を受ける 3.必要事項が記載された後遺障害診断書を用意する |
どれか一つでも欠けると後遺障害10級が認められなくなる可能性があるため、必ず確認しましょう。
5-1. 後遺障害10級を証明するために必要な検査を受けて証拠を残す
1つ目は、後遺障害10級を証明するための必要な検査を受け、客観的な証拠を残すことです。
後遺障害10級は、自覚症状だけでなく、検査による客観的な証拠が必要となります。
例えば、骨折によって股関節が動かしづらくなり、明らかに以前のように歩けないとしても、その状況を検査によって証明しなければならないのです。
後遺障害10級を証明するために必要な検査は、症状によって異なります。
10級を証明するために必要な検査の一例 |
目の障害:視力検査 耳の障害:聴覚検査(標準純音聴力検査・語音聴力検査など) 上肢や下肢の障害:可動域測定、X線やMRIの画像診断 |
10級程度の後遺障害が残ったことを証明するためにも、まだ検査を受けていない場合は主治医に相談して検査を受けましょう。
5-2. 適切なタイミングで症状固定の診断を受ける
2つ目は、適切なタイミングで症状固定の診断を受けることです。
症状固定とは |
交通事故において治療終了を意味すること。 これ以上治療やリハビリを続けても症状が良くならない状態になると、症状固定と診断される。 |
症状固定は、主治医と被害者本人が決めるものです。
症状固定のタイミングが早すぎると、
「改善する可能性があるのでは?」
「治療期間が短いから後遺障害が残っただけでは?」
とみなされて、10級が認められにくくなるおそれがあります。
症状固定のタイミングは後遺障害認定の結果に大きく影響します。
そのため、医師とあなたが「これ以上治療を続けてもよくならない」と判断できたタイミングで、症状固定の診断を受けましょう。
5-3. 必要事項が記載された後遺障害診断書を用意する
交通事故による怪我で後遺障害10級を認めてもらうために必要なことの3つ目は、必要事項が記載された後遺障害診断書を用意することです。
後遺障害10級に該当するかどうかは、専門機関が書類で判断します。
そのため、診断書に必要な情報がきちんと書かれていないと、症状が実際よりも軽く見られたり、「本当に後遺障害があるのか?」と疑われたりする可能性があるのです。
例えば、手の指が曲がらないのに、「可動域制限の程度」が診断書に書かれていなければ、10級の対象と見なされないおそれがあります。
また、
・事故との関係性
・治療経過
・症状固定の時期
・自覚症状が続いていること
なども診断書に記載すべき内容ですが、主治医が交通事故にくわしくない場合、これらの項目が漏れることも珍しくありません。
つらい症状が残っているのに、「診断書の内容に不備があるせいで10級が認められない…」という状況にならないためにも、必要事項が記載された診断書を用意しましょう。
6. 後遺障害10級の認定について不安な方は交通事故に強い弁護士への相談がおすすめ

5章では、不当に低い等級が認定されないよう、あなたができることをお伝えしました。
しかしなかには、自分ひとりで後遺障害10級を認めてもらうための準備をすることに不安を感じている方もいるはずです。
もし少しでも不安を感じているなら、交通事故に強い弁護士に相談してください。
交通事故に強い弁護士は、医療の知識もあるため、後遺障害10級程度の症状が残っている方がこれから何をすべき知っています。
5章で紹介した下記の3つについても、医学的な知見やこれまでの実績に基づいてサポートが可能です。
1.後遺障害10級を証明するために必要な検査を受けて証拠を残す 2.適切なタイミングで症状固定の診断を受ける 3.必要事項が記載された後遺障害診断書を用意する |
実際、当弁護士事務所サリュでも、弁護士の介入によって10級が認められたり、当初提示されていた賠償金よりも増額した事例が多数あります。
・事例111:10級11号の事案で、示談交渉により事前提示より200万円増額
・事例104:自賠責10級認定も保険会社が12級主張。裁判で2000万円増額
・事例54:大腿骨頭壊死10級11号 基礎収入の丹念な立証により正当な逸失利益を獲得
・事例234:訴訟を提起し、賠償金が114万円から2000万円に増額!
後遺障害10級は重い後遺障害ですが、加害者側は誠実な対応をしてくれないことがほとんどです。
これ以上つらい思いをしないためにも、ぜひ弁護士を頼ってください。
7. 後遺障害10級に関するよくある質問

最後に、後遺障害10級に関するよくある質問にお答えします。
7-1.後遺障害10級が認定されたら障害者手帳ももらえますか?
後遺障害10級が認められても、障害者手帳をもらえない可能性が高いです。
なぜなら、障害者手帳をもらえるのは、身体障害者障害程度等級表によって7つに分類された障害者等級のうち、6級以上の方だけだからです。
後遺障害等級と障害者手帳の等級の認定基準は、それぞれ異なります。
後遺障害10級の症状は、身体障害者手帳の6級に該当しないケースがほとんどのため、申請しても手帳を受け取るのは難しいでしょう。
7-2.労災で後遺障害10級だったら自賠責保険の後遺障害も10級になりますか?
労災で後遺障害10級が認められたら、自賠責保険の後遺障害も10級が認定される可能性があります。
なぜなら、労災と自賠責保険の後遺障害等級が認定される基準は、似ているからです。
ただ、自賠責保険への後遺障害認定を申請する際、症状を証明する内容をきちんと記載しなければ、労災で認定された等級よりも低くなる可能性もあります。また、認定する機関も認定の趣旨も手続きも異なるため、必ずしも同じ等級になるわけではありません。
そのため、労災で後遺障害10級だったから大丈夫だろうと思わず、自賠責保険に後遺障害認定を申請する際も、検査結果や症状を証明する証拠をしっかり記載してもらうことが大切です。
8. まとめ
本記事では、後遺障害10級の内容や認定基準、受け取れる可能性がある賠償金などを紹介しました。
重要なポイントをまとめます。
〇【部位別】後遺障害10級が認められる症状
後遺障害が残った部位 | 後遺障害の内容 |
目の障害 | 1号:1眼の視力が0.1以下になったもの 2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
口の障害 | 3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4号:十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
耳の障害 | 5号:両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6号:一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
上肢の障害 | 7号:一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 10号:一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
下肢の障害 | 8号:一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9号:一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 11号:一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
〇後遺障害10級の方が受け取れる慰謝料を含む賠償金
怪我をしたり休業が発生した場合に受け取れる | ・治療費 (怪我の治療にかかったお金) ・入通院慰謝料 (怪我の治療による入通院で生じた精神的損害に対するお金) ・休業損害 (怪我が原因で仕事を休んだ場合に受け取れるお金) など |
後遺障害が残った場合に受け取れる | ・後遺障害慰謝料 (後遺障害が残り、精神的苦痛を感じたことに対して支払われるお金) ・後遺障害逸失利益 (事故に遭い怪我をしていなければ、本来受け取れたはずの利益) ・その他 (将来の治療費など) |
〇【注意】診断書の作成や検査が適切にされないと不当に低い等級が認定される可能性がある
〇交通事故による怪我で後遺障害10級を認めてもらうために必要な3つのこと
1.後遺障害10級を証明するために必要な検査を受けて証拠を残す 2.適切なタイミングで症状固定の診断を受ける 3.必要事項が記載された後遺障害診断書を用意する |
〇後遺障害10級の認定について不安な方は交通事故に強い弁護士への相談がおすすめ
交通事故の後遺障害等級は複雑なため、自分で判断するのは難しいものです。
ぜひ本記事の内容を、後遺障害等級の認定に役立ててください。