後遺障害の等級は誰が決める?適切な認定を受けるための流れを解説
「後遺障害が残りそうだけど、等級って誰が決めるの?」
「相手の保険会社から任せてほしいと連絡がきたけど、このまま任せて本当に大丈夫?」
交通事故で怪我をしたあなたは、後遺障害等級の認定について、そんな疑問を抱いていませんか?
後遺障害等級の認定は、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という認定機関が行っています。
この機関は、自賠責保険に請求があった場合の調査や認定を行う機関で、公正かつ中立的な立場での損害調査が行われています。
任意保険会社との利害関係がある組織ではないので、被害者にとっても、中立な立場で調査や認定が行われるのが特徴です。
自賠責損害調査事務所とのやりとりは、基本的に保険会社を介して行います。
後遺障害の等級には、1級から14級までの段階があり、症状の程度に合わせて認定される仕組みです。
もし、症状が後遺障害に該当すると認められなかった場合には、「非該当」という結果になります。
後遺障害等級の認定は、下記のような流れで進みます。
後遺障害の等級は、後遺障害慰謝料と逸失利益の金額に影響します。
もし、後遺障害等級の認定について詳しい知識がないまま申請を進めると、正当な認定が受けられない可能性があります。
「では、一体どうやって正しい認定を受ければいいの?」
そう思った方のために、この記事では、後遺障害等級認定の詳しい流れや正当な認定を受けるためのポイントなどをわかりやすく解説します。
この記事でわかること ・後遺障害等級の認定を行っている機関がどこだかわかる ・後遺障害等級について具体的に理解できる ・後遺障害等級の認定を行う流れがわかる ・後遺障害等級の申請には「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法があることを知り、自分がどちらを選んだほうがいいかがわかる ・適正な後遺障害等級の認定を受けるためのポイントが具体的にわかる |
この記事を読めば、後遺障害等級の認定を受けるときの疑問が解消するはずです。
正しい後遺障害等級の知識を身に着けて、後悔なく申請や示談交渉を進めてください。
この記事の監修者
弁護士 國田修平
弁護士法人サリュ
横浜事務所
神奈川県弁護士会
交通事故解決件数 620件以上
【出身校】
明治大学法学部法律学科
慶應義塾大学大学院法務研究科
【メディア出演実績】
西日本新聞『「ほう!」な話』(改正民法における相殺制度 など)
【弁護士國田の弁護士法人サリュにおける解決事例(一部)】
事例348:高次脳機能障害で後遺障害等級7級認定、自賠責保険金を含め損害賠償金2351万円を獲得
事例360:労災事故で死亡した被害者について、遺族2人のうち1人が、自賠責保険金及び損害賠償金を獲得
事例363:主治医とのコミュニケーションに不安を感じていたところ、サリュにご依頼。治療中でも後遺障害審査を見通したサポートで後遺障害等級14級獲得。自賠責保険金を含み、合計329万円の損害賠償金で解決
事例371:夜勤ができなかった分の手当について、綿密な調査を行い、示談交渉で獲得した事例
目次
1.後遺障害の等級は損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」が決める
後遺障害等級を決めているのは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という機関です。
損害保険料率算出機構は、自賠責保険の支払いにおいて、誰もが公正で適正な補償を受けられることを目的とした、非営利の民間組織です。
その中で、後遺障害等級の調査や認定を行っているのが自賠責損害調査事務所です。
被害者が後遺障害等級の認定を受けるにあたって、自賠責損害調査事務所と直接やり取りをすることはありません。
自賠責損害調査事務所へは、保険会社を介して調査の依頼が行われます。
自賠責損害調査事務所は、保険会社から提出された書類をもとに、被害者の後遺障害等級の調査・認定を行います。
結果は、保険会社を通じて、被害者へと伝えられます。
これらの詳しい流れについては、3.後遺障害等級の認定の流れ定の流れで解説しています。
納得いかない場合は異議申し立てもできる |
認定の結果に納得がいかない場合、もう一度審査を求める異議申立てが可能です。 その際の再審査は、自賠責保険審査会が行います。 自賠責審査会は、自賠責損害調査事務所が設置するものです。 審査の客観性・専門性を確保するため、日本弁護士連合会が推薦する弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者などの外部の専門家が参加し、専門分野に分かれて審査を行います。 |
2.後遺障害の等級は1~14級のいずれかが認定される
後遺障害等級は損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」が認定するとお伝えしましたが、具体的にどのような形で認定されるのか気になりますよね。
後遺障害の等級は、介護の必要性の有無と、後遺障害の内容によって、1~14級のいずれかが認定されます。
他方、申請をしても、後遺障害が認められなかった場合には、非該当となります。
具体的に、どのような症状が何級に認定されるのかは、2-1. 後遺障害の等級一覧で紹介する表のとおりです。
2-1. 後遺障害の等級一覧
後遺障害の等級と、それぞれの内容については、介護の有無によって、下記の2つの表のように定められています。
【介護が必要な場合の後遺障害等級】
等級 | 後遺障害 |
第1級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
第2級 | 1.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
参考:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「自動車損害賠償保障法施行令 別表第1」
【介護を要さない場合の後遺障害等級】
等級 | 後遺障害 | 認定された事例/症例 |
第14級 | 1.一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 2.三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 3.一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 4.上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 5.下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの 6.一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 7.一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 8.一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの 9.局部に神経症状を残すもの | ・頚部打撲、腰部打撲、胸背部打撲等の怪我、頚部痛や上肢のしびれ等の症状が残存 |
第13級 | 1.一眼の視力が0.6以下になったもの 2.正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの 3.一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの 5.五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 6.一手のこ指の用を廃したもの 7.一手のおや指の指骨の一部を失ったもの 8.一下肢を一センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの 10.一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | ・事故の影響で片目の視力が落ちた ・片足の長さが1センチ以上短くなった |
第12級 | 1.一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4.一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5.鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8.長管骨に変形を残すもの 9.一手のこ指を失ったもの 10.一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 11.一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの 12.一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13.局部に頑固な神経症状を残すもの 14.外貌に醜状を残すもの | ・右肘骨折の怪我。右肘に痛みが残る |
第11級 | 1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4.十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6.一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7.脊柱に変形を残すもの 8.一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの 9.一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | ・右膝の内側側副靭帯損傷、左膝の外側側副靭帯損傷等の怪我、左右の膝に神経系統の障害が残り、併合処理の結果11級 |
第10級 | 1.一眼の視力が0.1以下になったもの 2.正面を見た場合に複視の症状を残すもの 3.咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの 4.十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 6.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 7.一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの 8.一下肢を三センチメートル以上短縮したもの 9.一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの 10.一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの 11.一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの | ・右上腕骨を骨折、右肩に可動域制限が残る |
第9級 | 1.両眼の視力が0.6以下になったもの 2.一眼の視力が0.06以下になったもの 3.両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの 4.両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 5.鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの 6.咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの 7.両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 8.一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの 9.一耳の聴力を全く失ったもの 10.神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 11.胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 12.一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失ったもの 13.一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの 14.一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの 15.一足の足指の全部の用を廃したもの 16.外貌に相当程度の醜状を残すもの 17.生殖器に著しい障害を残すもの | ・左手舟状骨骨折、右肩腱板断裂、右手TFCC損傷という重傷。両手に痛みや灼熱感、機能障害等CRPSの症状が残る |
第8級 | 1.一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの 2.脊柱に運動障害を残すもの 3.一手のおや指を含み二の手指を失ったもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの 4.一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 5.一下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8.一上肢に偽関節を残すもの 9.一下肢に偽関節を残すもの 10.一足の足指の全部を失ったもの | ・脳挫傷、骨盤骨折、脊椎骨折及び腓骨骨折等の重傷、複視や骨折による痛み、高次脳機能障害が残存。併合8級 |
第7級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの 2.両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 3.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 4.神経系統の機能又は精神に障害を残し軽易な労務以外の労務に服することができないもの 5.胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 6.一手のおや指を含み三の手指を失ったもの又はおや指以外の四の手指を失ったもの 7.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの 8.一足をリスフラン関節以上で失ったもの 9.一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 10.一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 11.両足の足指の全部の用を廃したもの 12.外貌に著しい醜状を残すもの 13.両側の睾丸を失ったもの | ・頭部及び股関節を受傷、高次脳機能障害が残る |
第6級 | 1.両眼の視力が0.1以下になったもの 2.咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの 4.一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 5.脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの 6.一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの 8.一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失ったもの | ・硬膜外血腫、外傷性くも膜下出血と診断、高次脳機能障害7級・嗅覚脱失12級相当の後遺障害が認定され、併合6級 |
第5級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの 2.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 3.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 4.一上肢を手関節以上で失ったもの 5.一下肢を足関節以上で失ったもの 6.一上肢の用を全廃したもの 7.一下肢の用を全廃したもの 8.両足の足指の全部を失ったもの | ・神経や精神に障害が残り、簡単な仕事しかできなくなった |
第4級 | 1.両眼の視力が0.06以下になったもの 2.咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 3.両耳の聴力を全く失ったもの 4.一上肢をひじ関節以上で失ったもの 5.一下肢をひざ関節以上で失ったもの 6.両手の手指の全部の用を廃したもの 7.両足をリスフラン関節以上で失ったもの | ・食事や話すのが難しいほど障害が残った |
第3級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの 2.咀嚼又は言語の機能を廃したもの 3.神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 4.胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し終身労務に服することができないもの 5.両手の手指の全部を失ったもの | ・食事や話すことが全くできなくなった |
第2級 | 1.一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 2.両眼の視力が0.02以下になったもの 3.両上肢を手関節以上で失ったもの 4.両下肢を足関節以上で失ったもの | ・びまん性脳損傷の怪我、左片麻痺、高次脳機能障害が残る |
第1級 | 1.両眼が失明したもの 2.咀嚼及び言語の機能を廃したもの 3.両上肢をひじ関節以上で失ったもの 4.両上肢の用を全廃したもの 5.両下肢をひざ関節以上で失ったもの 6.両下肢の用を全廃したもの | ・頚髄損傷の傷害で四肢体幹機能障害、感覚障害、膀胱直腸障害等の症状が残存 |
参考:一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構「自動車損害賠償保障法施行令 別表第2」
複数の後遺障害が残った場合、合算して「併合●級」のような認定となるケースもあります。
2-2. よく見られる後遺障害と認定される等級
前項で、後遺障害の等級一覧を紹介しましたが、表を見ても自分がどの等級に該当するのか想像できない方も多いのではないでしょうか。
ここからは、交通事故でよく見られる後遺障害と、認定されやすい等級をお伝えします。
【交通事故でよく見られる後遺障害と、認定される等級】
後遺障害の症状 | 認定される等級 |
むちうち | 14級、もしくは12級 |
怪我をした場所に痛みが残る | 14級、もしくは12級 |
首や腰が動かしづらくなる機能障害が残る | 8級、もしくは6級 |
腕や足が動かしづらくなる機能障害が残る | 5級~12級のいずれか |
交通事故でよく見られる「むちうち」の場合、14級、もしくは12級が認められるケースが多いです。
なぜ、同じむちうちでも等級が異なるのかというと、画像所見など、他角的な所見により症状が証明できるか否かで等級が異なるからです。
【むちうちの後遺障害が残ったケース】
治療中から痛みが続いていて、一貫性が認められるものの、画像所見などがない | 14級 |
治療中から痛みが続いていて、一貫性が認められており、なおかつレントゲンなどで所見が証明できる | 12級 |
また、同じ運動障害であっても、可動域によって等級は異なります。
例えば、足の関節の機能障害の場合、下記のように等級が変わってきます。
【足に機能障害の後遺障害が残ったケース】
関節がほとんど動かず、人工関節に置き換えても可動域が半分以下になっている | 8級 |
関節が健康な側の足の2分の1以下しか動かなくなっている | 10級 |
関節が健康な側の足の4分の3以下しか動かなくなっている | 12級 |
実際の症状や検査内容によって、認定結果は異なりますが、これらの内容をベースに等級の認定が行われています。
3.後遺障害等級の認定の流れ
後遺障害認定を行っている機関と、等級の内容についてご理解いただけたでしょうか?
ここまでの内容を踏まえて、実際に後遺障害等級の認定を行う場合の流れについて、お伝えしていきます。
後遺障害等級の認定は、大きく、下記のような流れで実施します。
3-1.(1)症状固定→医師に後遺障害診断書を書いてもらう
治療が進み、医師に症状固定と言われたら、認定のために後遺障害診断書を書いてもらいましょう。
診断書はこのような用紙で、被害者本人が記載するのではなく、すべて医師に書いてもらいます。
診断書の内容は、下記のようなものです。
・被害者の基本情報 ・受傷日時、症状固定日、入院期間、通院期間 ・傷病名、既存障害・自覚症状・他覚症状および検査結果(①~⑩) ・障害内容の増悪、緩解の見通しなど ・医師の署名 |
この診断書で、後遺障害が残っていることを医学的に証明してもらい、認定へと進みます。
後遺障害診断書の書き方については、下記の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてください。
後遺障害診断書の書き方|等級認定に有利な記載例を弁護士が紹介
3-2.(2)保険会社へ、後遺障害診断書を送る
後遺障害診断書を書いてもらったら、保険会社へそれを送ります。
この後、申請を進めていくに当たって、被害者は「被害者請求」と「事前認定」の2つのやり方から好きな方法を選ぶことができます。
申請方法によって準備の仕方が変わるのですが、詳しい内容は4.後遺障害等級の申請には「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法があるで解説します。
3-3.(3)保険会社から自賠責損害調査事務所へ調査を依頼
保険会社へ送った診断書などの必要書類は、後遺障害等級の認定を行う自賠責損害調査事務所へ送られます。
ここからは、被害者は特にすることはなく、3-6.(6)保険会社から被害者へ、後遺症認定の結果を通知で結果が通知されるまでは待機することになります。
3-4.(4)自賠責損害調査事務所で後遺障害の調査が行われ、等級の判断
送られてきた書類をもとに、自賠責損害調査事務所が等級の判断を行います。
基本的には自賠責損害調査事務所内で書類での審査が行われますが、認定が難しいケースの場合は外部の専門家と協力して審査を行ったり、被害者への聞き取りを行ったりする場合もあります。
3-5.(5)自賠責調査事務所から保険会社へ結果の通知
自賠責調査事務所で等級の認定が済んだら、保険会社へと結果の通知を行います。
等級は1~14級がある他、後遺障害が認められなかった場合には非該当となります。
3-6.(6)保険会社から被害者へ、後遺症認定の結果を通知
自賠責調査事務所での認定結果が、保険会社を通じて被害者へと伝えられます。
もし結果に納得できなかった場合は、異議申し立てをすることが可能です。
4.後遺障害等級の申請には「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法がある
先ほども簡単にお伝えしたとおり、後遺障害等級の申請には「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法があります。
前項の認定の流れで紹介した、
3-2.(2)保険会社へ、後遺障害診断書を送るの段階で、どちらの方法にするか選択します。
どちらの申請方法にするかは、被害者が選べます。
いずれの方法であっても、認定する機関は同じです。
ただ、下記の表のとおり、審査の対策のしやすさや準備の手間が異なります。
総合的なおすすめ度 | 審査の対策のしやすさ | 準備の手間 | |
被害者請求 | ★★★ | ★★★ | ★☆☆ |
事前認定 | ★☆☆ | ★☆☆ | ★★☆ |
どちらの方法にするか悩む方には、被害者請求をおすすめします。
なぜなら、正当な認定を受けるためには、審査の対策に力を入れられる被害者請求のほうが有利だからです。
その理由について理解できるよう、それぞれの方法について、詳しく説明していきます。
4-1.被害者請求
被害者請求は、必要書類を申請者(あなたやあなたが依頼した弁護士)がすべて集めて申請を行う方法です。
【必要書類一覧】
必ず必要な書類 | ・支払請求書 ・交通事故証明書 ・事故発生状況報告書 ・医師の診断書 ・損害賠償額の受領者が請求者本人であることの証明(印鑑証明書) |
事例により必要な書類 | ・休業損害を証明する書類 ・レントゲン写真等 |
これらの書類を加害者側の自賠責保険会社に提出すると、認定機関である損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所で申請が行われます。
申請者が書類を準備するので、内容の精査や、症状が伝わりやすい資料を添付するといった審査対策ができるのが特徴です。
ただし、準備のために知識が必要であったり、書類を集める手間がかかったりと、事前認定に比べると労力がかかるのがデメリットとなります。
4-2.事前認定
事前認定は、加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所で審査を受ける方法です。
必要な書類は、任意保険会社の担当者が集めてくれるので、被害者はほとんど何もしなくて済み、手間がかかりません。
しかし、審査に向けた対策がしづらく、結果的に認定が受けづらくなるリスクがあります。
なぜなら、任意保険会社は、症状を具体的に証明する書類(レントゲン写真等)の準備などを十分に行ってくれない可能性があるからです。
適正な認定を受けるためには、十分な対策ができる被害者請求を選ぶことをおすすめしています。
5.適正な後遺障害等級の認定を受けるコツ3つ
前項で、適正な後遺障害等級の認定を受けるには被害者請求を選ぶのがおすすめだとお伝えしましたが、認定を獲得するには他にもいくつかのコツがあります。
後遺障害等級の認定を正当に受けるため、これらのポイントを意識してみてください。
・後遺障害を裏付けるための検査を行う ・症状固定まで治療を継続する ・後遺障害の存在や程度を明確に証明できる書類を用意する |
5-1.後遺障害を裏付けるための検査を行う
まずひとつ目は、後遺障害を裏付けるための検査を行うことです。
2-2. よく見られる後遺障害と認定される等級でもお伝えしたとおり、同じ症状であっても、画像所見の有無や、症状の重さで等級は変わります。
また、本人が痛みなどの自覚症状を感じていても、検査などで客観的に証明ができなければ、認定が通らない可能性も高まるのです。
【後遺障害の裏付けになる検査の例】
・MRIやレントゲンなどの画像検査 ・後遺障害がある部位の反射テスト、疼痛誘発テスト、可動域測定検査など ・握力、視力、聴力など各種検査 |
客観的に症状を証明するためにも、必要な検査をきちんと行い、証拠として結果を残しましょう。
5-2.症状固定まで治療を継続する
ふたつ目は、症状固定まで治療を継続することです。
医師の判断を待たずに、「もう治らないんじゃないか」などと、勝手に通院をやめるのは絶対にNG。
医師が症状固定というまで、確実に通院・治療は続けてください。
通院を途中でやめてしまうと、治療の経過がカルテなどに残らず、症状が続いていたことを証明するのが難しくなります。
また、通院が必要ない程度の症状であると判断され、後遺障害が認められない可能性もあります。
自分の考えで勝手に通院をやめず、症状固定まではきちんと治療を継続してください。
5-3.後遺障害の存在や程度を明確に証明できる書類を用意する
最後のコツは、後遺障害の存在や程度を明確に証明できる書類を用意することです。
後遺障害の認定は、自賠責損害調査事務所に送付した書類の内容をもとに調査が進められます。
この時に、症状を証明できる書類が多いほど、認定の可能性は高まります。
5-1.後遺障害を裏付けるための検査を行うで受けた検査の結果などの書類を、漏れなく揃えるようにしましょう。
また、書類の書き方についても注意が必要です。
同じ症状であっても、記載の表現によって不利な判断をされてしまう可能性があるからです。
そんな事態を防ぐためには、専門的な知見を持った、後遺障害認定に強い弁護士のサポートがあれば安心でしょう。
実際に、下記の事例では、弁護士のアドバイスによって適正な後遺障害の認定が獲得できています。
・【事例1】後遺障害診断書作成について弁護士のアドバイスを受け、12級13号が認定 ・【事例2】非該当の結果に納得がいかずご相談。弁護士が介入し、不足していた情報を集めて準備して異議申し立てし、後遺障害等級獲得 サリュの後遺障害別解決事例 |
このように、後遺障害の認定のサポートを受けたい場合には、まずは弁護士への相談を検討してください。
6.まとめ
この記事では、後遺障害の等級を誰が、どのように決めるのかについて解説しました。
内容のまとめは、以下の通りです。
〇後遺障害の等級は損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」が決める
〇後遺障害の等級は1~14級のいずれかで認定される
〇後遺障害の認定は下記の流れで行われる
〇後遺障害等級の申請には「被害者請求」と「事前認定」の2つの方法がある
〇適正な後遺障害等級の認定を受けるコツは下記の3つ
・後遺障害を裏付けるための検査を行う ・症状固定まで治療を継続する ・後遺障害の存在や程度を明確に証明できる書類を用意する |
以上の内容を参考にして、後遺障害等級の認定を行ってください。