もらい事故で全損!買い替え費用の請求範囲と正当な金額を受け取る術

「もらい事故に遭って車が全損だと言われたけど、加害者に買い替え費用は請求できるの?」
「しばらく代車を使わなくてはいけないけど、この費用は自分で払わなければいけない?」
突然もらい事故に遭ったあなたは、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
結論からいうと、もらい事故で車が全損した被害者は、買い替え費用を相手に請求することが可能です。
とはいえ、以下のような金額を請求することはできません。
・新車で購入した時の価格を請求する ・買い換えた車の新車の購入費用を請求する |
もらい事故で全損したときに請求できる金額は、「(車両時価額+買替諸費用)-事故車の売却金額」と決まっています。
これは、事故発生時点での中古車市場における適正価格をベースに計算された金額で、年式や走行距離、修復歴などによって相場が変わり、新車購入価格より下がるのが一般的です。
また、もらい事故で全損した際に請求できるのは、上記のお金だけではありません。
廃車費用や登録費用などの、買い替え時にかかった費用も相手に請求することができます。
しかし、もらい事故では、相手の保険会社はできるだけ低い金額で解決しようと考え、最低限の補償しか提示してこないことがあります。
そこでこの記事では、もらい事故で車が全損してしまった方に向けて、買い替えの際にかかる費用を相手に請求する方法や、正当な金額を受け取る手順を解説します。
これらの内容を参考に、もらい事故の全損時の対応方法を身につけ、納得できる解決に向けて行動してください。

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目次
1.もらい事故で車が全損したら買い替え費用は相手に請求できる!

もらい事故によって車が全損してしまった場合、被害者は買い替えに必要な費用を相手(加害者側)に請求できます。
もらい事故は、過失割合が10:0で自分に過失がない事故を指します。
そのため、被害者は自分の保険会社を使わずに、加害者側(または加害者の保険会社)に全額を請求できるのが基本です。
自動車事故による全損には「経済的全損」と「物理的全損」の2種類があり、どちらの場合も正当な損害として買い替え費用を請求することができます。
経済的全損 | 修理費が車両時価額+買替諸費用を上回る場合のこと。 |
物理的全損 | 車が大破して修理不可能になった状態のこと。 例) フレームや主要部品が完全に損傷し、修理不能と判断される場合 |
【経済的全損の例】
車の購入時の価格 300万円 車の事故現在の時価(車両時価額) 50万円 買替諸費用 10万円 修理費用(適正修理費相当額) 80万円 →この場合、修理費用のほうが上回るため、経済的全損と判断される |
また、この時の車の価格は、新車で購入したときの金額ではなく、事故直前の車の状態をもとに、その段階での中古市場価格などをもとに計算されます。
詳しい金額については、次章以降で解説していきます。
2.もらい事故で全損した車の買い替え時には、新車購入価格を100%請求できるわけではない

前章で被害者は相手に車の買い替え費用を請求できるとお伝えしましたが、全損した車の買い替え費用を請求する場合、新車購入価格を100%請求できるわけではありません。
請求できる金額には限度があるため、注意が必要です。
請求できる買い替え費用=「(車両時価額+買替諸費用)-事故車の売却金額」となります。
2-1.車両時価額とは

車両時価額とは、事故発生時点での中古車市場における適正価格のことです。
年式や走行距離、修復歴などによって中古市場での相場が変わり、新車購入価格より下がるのが一般的でしょう。
保険会社による車の評価額の算定には「レッドブック(オートガイド自動車価格月報)」などの資料が参考にされます。
また、年式が10年以上前の車に関しては、一般的に新車販売価格の10%を時価相当額とされることがあります。
なぜなら、車の中古車価格を定める基準となるレッドブックには販売から10年以上経過した車は掲載されず、一律で新車販売価格の10%であると定められているからです。
保険会社が提示してくる車両時価額は、市場価格より安い金額となっているケースも多いため、注意が必要です。
保険会社からの提示金額に納得できない場合は戦う必要がある |
相手の保険会社は、車自体の価値などを考慮せず、市場相場よりも低い金額を提示してくることがあります。 販売時に約1600万円の車が当時オークションなどで約2000万円で取引されていた場合のように、発売価格よりも実際の取引金額が高額であったケースでも、保険会社は発売価格をもとに車両時価額を計算して提示してきます。 このような場合には、当時のオークションや中古車販売店などの相場をもとに反論する必要があるでしょう。 実際に、裁判では車の価値が認められ、発売価格を上回る車両損害費が認められた事例もあります。 <実際の事例> ポルシェ・911ターボ。事故当時の価値は2000万円は下らないと判断され、レッドブックに記載された金額は適正ではないとして、販売当時の金額1680万円を上回る2000万円の車両損害費を認める (東京地判 平30.12.20) 参考:日弁連交通事故相談センター 東京支部「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)2024(令和6)p267」 しかし、被害者の訴えだけでは保険会社は耳を貸さないこともあるので、金額に納得できない場合は、弁護士へ依頼して戦う必要があるでしょう。 |
2-2.事故車の売却金額とは
事故車の売却価格とは、スクラップや下取りに出した際の金額のことです。
事故で故障して走行不能の車であっても、数千円~数万円程度で買取をしてもらえる可能性があります。
事故時の車両時価相当額に買替諸費用を加えた金額から、売却代金を引いた金額(差額)が、相手に請求できる金額となります。
3.もらい事故で全損した車の買い替え時に請求できる項目

車の買い替え時に請求できるのは、車の時価額だけではありません。
廃車費用や登録費用などの買替諸費用も請求可能です。
しかし、相手方の保険会社は最低限の金額しか提示してこないケースがあるため、何が請求対象となるかをしっかり把握しておきましょう。
廃車費用 | 業者に払う廃車手続の代行手数料や、車両の解体にかかる費用など |
登録費用 | 新たに車を購入・乗り換える際、陸運局で必要となる新規登録や名義変更手続にかかる費用 |
登録手続代行費用 | 車の販売店や行政書士などに登録手続きを代行してもらう場合の手数料 |
車庫証明費用 | 車庫証明を申請するための印紙代・証紙代など、管轄の警察署へ支払う費用 |
車庫証明手続代行費用 | 車庫証明取得の手続を販売店や行政書士などに代行してもらう際に発生する手数料 |
納車費用 | 新車や中古車を購入した際、販売店から自宅や指定の場所まで車を配送してもらうためにかかる費用 |
リサイクル料金 | 自動車リサイクル法に基づき、車両の引取り・解体・破砕などに備えてあらかじめ預託している費用 |
消費税相当額 | 修理費用や購入費用など課税対象となる支出に対して課される消費税 |
自動車税環境性能割 | 自動車取得税に代わり、新車や中古車を購入するときにかかる税金 |
事故車の保管料 | 事故後に車を修理工場や保管業者に預ける際に発生する保管スペース代金や管理費用 |
4.もらい事故で全損した車の買い替え費用を相手に請求する手順

正当な金額を請求するためには、手順を踏んで、保険会社や加害者側と適切に交渉する必要があります。
ここでは、車の買い替え費用を迷わず請求できるよう、被害者(あなた)がこれから行うべき請求の手順を3ステップで解説します。
1.保険会社に連絡する 2.修理・買い替え費用の見積もりを取る 3.相手方と示談交渉をする |
4-1.保険会社に連絡する
まずは、自分が加入している保険会社に連絡をしてください。
もらい事故では過失割合10:0のため、自分の保険会社は原則として示談交渉に介入できません。
しかし、基本的に保険会社へは報告義務があるため、まずは連絡をしてください。
また、加入している保険の内容によっては、補償が受けられる可能性があります。
もし弁護士費用特約に加入していた場合は、自己負担なしで弁護士に交渉を依頼することができるため、示談を進める際に使用を検討してください。
このように、自身の負担を軽減するためにも、まずは保険会社への連絡が必要です。
4-2.修理・買い替え費用の見積もりを取る
次に、修理費用や買い替え費用の見積もりを取ります。
ディーラーや販売店、中古車買取業者などに依頼をして、修理費用や車両の時価を査定してもらいましょう。
このとき、車両時価額はレッドブックに記載された金額をベースに評価されてしまいます。
レッドブックに記載された価格は相場の取引価格よりも低いことが少なくないです。
人気の高い車であれば、発売価格よりも実際の取引価格が高かったというケースもあり、そのような場合では実際の取引価格を提示することで、車両時価額を不当に下げられない可能性があります。
当時の販売サイトや、ネットのオークション情報などは証拠となるため、日本国内に限らず、アメリカなどの海外サイトもくまなく探してみてください。
相手の保険会社は、最低限の金額しか認めないことがあります。
その際に反論する証拠となるため、可能であれば複数の業者で見積もりを取り、適正な市場価格を把握することが重要です。
4-3.相手方と示談交渉をする
見積もりを用意できたら、相手方と示談交渉をします。
もらい事故の場合、被害者側の保険会社は介入できないため、基本的に被害者本人と相手の保険会社で交渉することになるでしょう。
ここで気を付けたいのが、相手が提示した条件を鵜呑みにしないことです。
何度もお伝えしているとおり、相手の保険会社が提示する条件は、被害者にとって適正とは言えない、最低限の金額であることがあります。
また、先ほどお伝えした「請求できる項目」についても、教えてくれなかったり、認めてくれなかったりする可能性があります。
納得できる結果を導くためには、相手の言うことを鵜呑みにせず、交渉を続ける必要があるでしょう。
5.正当な金額を受け取るためには弁護士へ相談しよう

ここまでお伝えしてきたとおり、相手の保険会社が提示する金額は、被害者にとって納得できるものではないことがほとんどです。
とはいえ、交通事故対応に慣れた保険会社に対して、被害者本人が意見を通すのは難しいでしょう。
そんなときに力になれるのが、交通事故の解決実績が豊富な弁護士です。
「当時から人気が高いクラシックカーに乗っていたのに、最低限の金額しか出せないと言われた」
「こだわりのカスタムをしていたのに、それは補償対象外だと言われた」
もらい事故で突然車を全損してしまったにもかかわらず、相手の保険会社からそんなことを言われ、納得できないあなたのことを、弁護士なら法的な知識でサポートします。
また、車両が全損するような交通事故に遭ってしまった場合、被害者本人が怪我をしているケースも多いでしょう。
「むちうちくらいの怪我なら、物損扱いにしてほしい」
などと加害者に言われて、そのとおりにしてしまった場合、被害者が本来受け取れるべき賠償金が請求できなくなってしまいます。
そのようなときにも、弁護士が力になれるでしょう。
もらい事故で弁護士に依頼することで、どのようなメリットがあるのかは、以下の記事でも詳しく解説しているため、参考にしてください。

もらい事故で全損…加害者側との交渉はサリュにお任せください サリュは、交通事故の被害者救済に特化した弁護士事務所です。 被害者の方をサポートし続け、これまでに20,000件以上の交通事故を解決に導いてきました。 「相手との交渉がうまくいかず、困っている」 「怪我をしているのに、物損から人身に切り替えたくないと言ってくる」 など、自分の保険会社が介入できないもらい事故特有のトラブルも、サリュの経験豊富な弁護士がサポートいたします。 まずはお気軽にお問い合わせください。 |
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6.まとめ
この記事では、もらい事故で車が全損してしまった方が買い替え費用を相手に請求できるよう、請求できる範囲や手続きの方法を解説してきました。
内容のまとめは以下のとおりです。
▼もらい事故による全損は以下の2種類
経済的全損 | 修理費が車両時価額+買替諸費用を上回る場合のこと。 |
物理的全損 | 車が大破して修理不可能になった状態のこと。 例) フレームや主要部品が完全に損傷し、修理不能と判断される場合 |
▼もらい事故で全損した車の買い替え時に請求できる買い替え費用は「(車両時価額+買替諸費用)-事故車の売却金額」
▼もらい事故で全損した車を買い替える際は以下の項目も請求できる
廃車費用 | 業者に払う廃車手続の代行手数料や、車両の解体にかかる費用など |
登録費用 | 新たに車を購入・乗り換える際、陸運局で必要となる新規登録や名義変更手続にかかる費用 |
登録手続代行費用 | 車の販売店や行政書士などに登録手続を代行してもらう場合の手数料 |
車庫証明費用 | 車庫証明を申請するための印紙代・証紙代など、管轄の警察署へ支払う費用 |
車庫証明手続代行費用 | 車庫証明取得の手続を販売店や行政書士などに代行してもらう際に発生する手数料 |
納車費用 | 新車や中古車を購入した際、販売店から自宅や指定の場所まで車を配送してもらうためにかかる費用 |
リサイクル料金 | 自動車リサイクル法に基づき、車両の引取り・解体・破砕などに備えてあらかじめ預託している費用 |
消費税相当額 | 修理費用や購入費用など課税対象となる支出に対して課される消費税 |
自動車税環境性能割 | 自動車取得税に代わり、新車や中古車を購入するときにかかる税金 |
事故車の保管料 | 事故後に車を修理工場や保管業者に預ける際に発生する保管スペース代金や管理費用 |
▼もらい事故で全損した車の買い替え費用を相手に請求する手順は以下の3ステップ
1.保険会社に連絡する 2.修理・買い替え費用の見積もりを取る 3.相手方と示談交渉をする |
この記事の内容を参考に、もらい事故で全損した車の買い替えに対応してください。