【交通事故の示談交渉】元損保会社の顧問弁護士が進め方のコツを解説

「金額に納得がいかないんだけど…交通事故の示談交渉はどうやればいいの?」
交通事故に遭い、すでに加害者側の保険会社に示談金を提示されたあなたは、「少ない金額をどうにか交渉したい!」と考えているのではないでしょうか。
そこで今回は、以下の流れに沿って、あなたがやるべき具体的なことを解説します。

ただし、示談書の問題点を見つけて交渉しても、「この金額で正しいはず」「これ以上のお金を支払うことはできないんです」などと言いくるめられるリスクがある点に注意してください。
記事の後半では示談交渉の基本や流れに加えて、下記についてもくわしくお伝えします。
・どのようなパターンなら反論できるのか
・反論する際に出せる証拠
最後まで読めば、示談交渉の基本が理解でき、正当な内容での示談成立に向けて加害者側と交渉することができます。
まずは、示談交渉に入る前に覚えておくべき基本事項から学んでいきましょう。

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【獲得した画期的判決】
【加害者責任否認案件において加害者の過失を85パーセントとし、症状固定時41歳男性の労働能力喪失期間を73歳までと認定した判決】(大阪地裁平成27年7月3日判決(交通事故民事裁判例集48巻4号836頁、自動車保険ジャーナル1956号71頁))
・自賠責保険金を含んだ回収額が3億9000万円となった裁判上の和解
・自賠責保険における等級認定が非該当であった事案において、後遺障害等級5級を前提とする裁判上の和解
・死亡、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害等の示談や裁判上の和解は多数
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例334:事前認定後遺障害非該当に対し、諦めずに異議申立て。後遺障害第14級9号を獲得した事例
事例355:本業の休業がなくても、副業を全休し収入が減少。訴訟手続きにより、副業の休業損害の多くを判決で勝ち得た事例
事例374:足首の両果骨折の賠償金が当初の相手方提示金額より2.3倍になった事例
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
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目次
1. 交通事故の示談交渉における2つの基本
まずは、交通事故の示談交渉の基本から解説します。
1.自力で行わずに弁護士をつける 2.示談が成立する前なら異議を唱えられる |
交通事故の示談交渉の内容によって、被害者が受け取ることのできる賠償金が数十万~一千万円以上も上下することがあります。
不当な内容で示談成立し、これ以上つらい思いをしないためにも、ここで解説することをしっかり覚えておいてください。
1-1. 自力で行わずに弁護士をつける
交通事故の示談交渉は自力で行わず、弁護士をつけましょう。
なぜなら、弁護士を介入させずに被害者が自分で交渉を行った場合、交渉する余地がないこともあるからです。
加害者側の保険会社は、被害者に交通事故の知識がないことを利用して、うまく言いくるめようとしてくる場合もあります。
例えば、提示された慰謝料が少ないとこちらが主張しても、以下のように交渉に応じてくれない場合があります。
「このケースの事故では、慰謝料は〇円程度なことがほとんどなのでこれ以上は支払えない」
「あなた(被害者)の怪我の程度だと示談金は基本〇円なので、この金額が正しいです」
加害者側の主張の問題点に気づけず示談書にサインすれば、あとから交渉することはできません。
しかし弁護士がいれば、金額が妥当かどうかの判断や交渉の代行、示談書のチェックなどをすべて任せ、不利な内容で示談するリスクを減らせます。
加害者側の思いどおりにしないためにも、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
1-2. 示談が成立する前なら異議を唱えられる
交通事故の示談交渉では、示談が成立する前なら何度でも異議を唱えられます。
例えば、一度交渉して応じてもらえなかった内容だとしても「入通院慰謝料の計算が合っていないかも」「過失割合がやっぱりおかしいのでは?」などと疑問に思う点があれば、再度交渉することができるのです。
交通事故に遭い不安な状況のなかで高圧的な態度を取られたら、「この状況から早く抜け出したい」「早くお金を受け取りたい」と思うでしょう。
しかし示談が成立すると法的な効力が発生し、あとから内容を変更したり、追加で請求することができないのが原則です。
もしサインした後に、「やっぱりこの金額には納得いかない……」「あとから後遺症がでてきたので治療費を請求したい」などと交渉しても、その分のお金を受け取ることができる可能性は高くありません。
そのため、少しでも納得いかない内容なら、何度でも交渉すべきです。加害者側が高圧的な態度だとしても、「これ以上は無理です」と言われても、交渉次第でどうにかなる可能性があるので、諦めないでください。
時効について |
交通事故の損害賠償には時効がありますが、時効を気にしすぎて焦りすぎる必要はありません。なぜなら、時効成立までに解決に至らない場合、時効の完成を猶予させたり、時効を更新させる制度があるからです。 時効についてくわしく知りたい方は、弁護士に相談しましょう。 【交通事故の時効】 物損事故:3年 人身事故:5年 |
2. 交通事故の示談交渉の進め方【3STEP】
1章では、示談交渉前に覚えておくべき基本を紹介しました。
2章では、示談交渉が実際にどのように進んでいくのか、解説します。
加害者側から届く示談書は、加害者側に有利な内容であることがほとんどなので、慎重に確認しましょう。
【STEP1】送られてきた示談書の問題点を見つける 【STEP2】相手方の保険会社と交渉する 【STEP3】双方が納得したら示談成立となる |
2-1. 【STEP1】送られてきた示談書の問題点を見つける
まずは、加害者側から送られてきた示談書の問題点を見つけます。
よくある問題点は、本来含まれるはずの金額が含まれていないことです。
示談書の問題点によくあるものをまとめました。
よくある示談書の問題点の例 |
・治療費が実際の支出より少ない ・通院交通費が含まれていない ・事故後のレッカー車代や代車費用などが含まれていない ・休業損害の日数や金額が少ない ・慰謝料の額が低い ・過失割合がおかしい |
示談書には、交通事故による損害賠償の項目や費用が、すべて正確に記載されている必要があります。そのため金額だけでなく、記載のある項目が正しいか、漏れがないかなども確認してください。
2-2. 【STEP2】相手方の保険会社と交渉する
示談書の内容に問題点を見つけたら、その項目について相手方の保険会社と交渉します。
言った、言っていないのトラブルを防ぐためにも、やり取りの内容をメモしたり録音したりすることをおすすめします。保険会社との交渉は電話で行われることが多いので、万が一トラブルになった際の証拠になるからです。
交渉では、なぜこう思うのか、証拠とともに主張しなければ相手方を納得させることができません。
どのような証拠を提示すべきかについては、「3.よくある示談交渉で反論できるパターンと出せる証拠」で解説します。
示談交渉で話がまとまらない場合は、最終手段として訴訟(裁判)に進み、裁判所の判断を仰ぐことになります。
2-4. 【STEP3】双方が納得したら示談成立となる
双方が納得する内容で話がまとまったら、示談書にサインをして示談成立となります。
示談が成立したら、通常、1ヶ月以内に賠償金が振り込まれます。
3. よくある示談交渉で反論できるパターンと出せる証拠
2章では、交通事故の示談交渉の進め方を解説しました。
ここで気になるのは、どのようなパターンなら示談交渉で反論できるのか、ではないでしょうか。
結論、「2-1.【STEP1】送られてきた示談書の問題点を見つける」で紹介した、よくある示談交渉の不備一覧にあることは、すべて交渉できます。
よくある示談書の問題点の例 |
・治療費が実際の支出より少ない ・通院交通費が含まれていない ・事故後のレッカー車代や代車費用などが含まれていない ・休業損害の日数や金額が少ない ・慰謝料の額が低い ・過失割合がおかしい |
3章では、反論できるパターンと、交渉の際に出せる証拠について見ていきましょう。
・治療費や入通院慰謝料が少ない場合 ・休業損害が認められない場合 ・本来含まれるはずの賠償金が入っていない場合 ・過失割合が明らかに不当である場合 |
3-1. 治療費や入通院慰謝料が少ない場合
提示された治療費や入通院慰謝料が少ない場合は、その金額の根拠を確認し、反論できます。
まずは、慰謝料を含む賠償金が3つある算定基準のうち、どの基準で計算されているかどうか確かめましょう。
交通事故の被害者は本来、裁判所が認定するような慰謝料を受け取ることのできる立場ですが、加害者側は自賠責基準で計算した金額を提示してくるはずです。
弁護士基準で計算した慰謝料を含む賠償金を計算し、下記の証拠とともに交渉しましょう。
弁護士基準で計算した賠償金の交渉に役立つ証拠 |
・赤い本(民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準)などの慰謝料表 ・法律事務所のサイトで公開されている慰謝料早見表 など |
また、下記の資料も、治療費や入通院慰謝料を交渉する際に重要な証拠となります。
治療費や入通院慰謝料の交渉に役立つ証拠 |
・怪我の程度や治療経過が記載された診断書 ・通院回数、通院日数、入院期間などがわかる資料 など |
3-2. 休業損害が認められない場合
交通事故による怪我をして仕事を休んだ日があるのに、休業損害が入っていない、休んだ日数より少なく見積もられている、などの場合も反論できます。
確認すべきことは、
・賠償金項目に、自分が仕事を休んだ日数分の休業損害が反映されているか
・自分の職業に該当する計算方法が適用されているか
です。
休業損害を計算する方法や、職業別の計算方法については、「交通事故の休業損害|職業ごとの算出方法・受け取り方法など網羅解説」の記事で解説しています。
休業損害の交渉で役立つ証拠は、下記のとおりです。
休業損害の交渉で役立つ証拠 |
【給与所得者】 ・休業損害証明書(職場に記入してもらう) ・給与明細や勤怠記録・前年分の源泉徴収票 など 【自営業・フリーランス】 ・確定申告書の控え・請求書、伝票など 【共通】 ・医師の診断書(仕事を休む必要があったことを証明できる内容)など |
3-3. 本来含まれるはずの賠償金が入っていない場合
本来含まれるはずの賠償金が入っていない場合も、反論できます。
加害者側は、少しでも賠償金を減らそうとして、支払うべき項目を隠すことがあります。
加害者の保険会社は、以下の項目を賠償金として記載しないことが多いです。
・通院交通費 ・事故後のレッカー車代や代車費用 |
もしこれらの賠償金が示談書の項目になければ、必要な費用として交渉してください。
本来含まれるはずの賠償金の交渉で役立つ証拠は、下記のとおりです。
本来含まれるはずの賠償金の交渉で役立つ証拠 |
・通院の際にかかった交通費を証明できるもの(領収書、IC履歴) ・レッカー車や代車の請求書、領収書 など |
3-4. 過失割合が明らかに不当である場合
過失割合が明らかに不当である場合も、反論できます。
過失割合は、事故状況や裁判例によって判断されるため、提示された割合が常に正しいとは限りません。
例えば、保険会社が「あなたにも3割の過失がある」と言ってきた場合でも、本当はあなたに過失がない0:100のケースである可能性もあるのです。
以下の証拠があれば、過失割合の交渉に役立つ場合があります。
過失割合の交渉に役立つ証拠 |
【自分で用意できる証拠】 ・ドライブレコーダー ・事故現場の写真 ・事故で破損した自動車の写真(自動車事故の場合) 【自分で用意できない証拠】 ・実況見分調書:弁護士を通して入手することが多い ・事故現場付近の監視カメラ:店舗やビルの管理者に自分で映像を請求するか、弁護士を通して入手する ・信号サイクル表:自分で各都道府県の警察本部に開示請求するか、弁護士を通して入手する |
また、今回の事故と似ている裁判例を探して提示し、加害者側が主張する過失割合との違いを主張する方法もおすすめです。
3-5. 示談金の内訳が書かれていない場合
示談金の内訳が書かれていない場合は、「示談金の内訳が書いていないので、項目ごとの内訳を教えてください」と相手方に問い合わせましょう。
基本的に、示談金は「治療費〇円、休業損害〇円」というように、各項目で金額を提示するものです。被害者は、項目ごとの補償額を知る権利があります。
そのため、もし「内訳は出せない」「一括でこの金額です」などと相手方に言われても、「項目ごとの金額を明確にしてほしい」とお願いしましょう。
何度交渉しても話し合いがまとまらない場合の対処法 |
何度交渉しても対応してもらえない、話し合いがまとまらない場合は、裁判に持ち込む可能性を遠回しに伝えることをおすすめします。 示談交渉で話がまとまらず裁判になれば、解決までに時間がかかります。さらに、被害者に有利な結果が出れば、加害者側は示談書に記載した金額よりも高額な賠償金を支払わなければなりません。 裁判をする旨を告げることで、交渉に応じてもらえるケースもあります。示談交渉では無理だと判断した際は、「訴訟を起こすことも考えています」と伝えてみてください。 |
4. 交通事故の示談交渉を自力で行うと保険会社に言いくるめられるリスクが高い
3章では、交通事故の示談交渉で反論できるパターンや出せる証拠を紹介しました。
ここで注意すべき点があります。
それは、交通事故の示談交渉を自力で行うと、保険会社に言いくるめられるリスクが高いということです。
なぜなら、知識がない方が過失割合や慰謝料の違和感、間違いに気づくことができないからです。
例えば、加害者の保険会社は、本当は0:100、10:90の事故だとしても、「過失割合は20:80です」と言うことがあります。反論した際、「あなたも停車していなかったからこの過失割合です」と説明されたら、そのまま受け入れてしまう方が多いでしょう。
本記事で紹介した方法で反論しても、加害者の保険会社は
「上に交渉したけどダメでした…」
「今回の事故のケースはこの過失割合になることがほとんどなんです」
「これ以上金額を上げることはできません」
などと言ってくるかもしれません。
しかし、それが正しいとは限りません。
このように、交通事故の知識がない状態で交渉し、加害者側に有利な内容で示談成立となれば、あなたは被害に遭った分のお金を受け取れません。
そのため、示談交渉は交通事故に強い弁護士に相談してください。
5. 交通事故の示談交渉は交通事故に強い弁護士に任せよう
交通事故の示談交渉は、交通事故に強い弁護士に相談してください。
交通事故に強い弁護士がいれば、
・加害者側から提示された示談書を確認して問題点に気がつく
・交渉するために必要な証拠をすぐに集める
・加害者の保険会社に直接交渉する
など、すべてを任せることができます。
また、「3.よくある示談交渉で反論できるパターンと出せる証拠」で紹介した、反論する際に必要な証拠も、あなた一人で準備する必要がなくなります。
弁護士は「〇〇が必要なので用意してください」「主治医に〇〇について聞いてきてください」など、具体的なアドバイスができるため、あなたの示談交渉への不安やストレスも軽減するでしょう。
実際に、弁護士が介入したことで、当初提示された金額より大幅に増額できた事例も多数あります。
【事例】
事例345:相手方保険会社の提示額から500万円以上増額し、スピード解決
事例229:歯の後遺障害等級で10級を獲得!当初提示額から10倍以上に
事例107:逸失利益の基礎収入を平均賃金で認めさせ、示談交渉で600万円増額
このように、賠償金が2倍以上になることも、珍しくないのです。
あなたの力になれる交通事故に強い弁護士の特徴は、下記のとおりです。
交通事故に強い弁護士の特徴 |
・交通事故の解決実績が豊富 ・加害者側が強気な態度でも、最後まであきらめずに交渉を続ける ・被害者の気持ちに寄り添い解決を目指す |
納得いかない内容で示談成立し後悔しないためにも、プロを頼ることをおすすめします。
6. まとめ
本記事では、交通事故の示談交渉における基本や進め方、反論できるパターンについて解説しました。
最後に、大事なポイントをおさらいします。
〇交通事故の示談交渉における2つの基本
1.自力で行わずに弁護士をつける 2.示談が成立する前なら異議を唱えられる |
〇交通事故の示談交渉の進め方【3STEP】
【STEP1】送られてきた示談書の問題点を見つける 【STEP2】相手方の保険会社と交渉する 【STEP3】双方が納得したら示談成立となる |
〇よくある示談交渉で反論できるパターン
・治療費や入通院慰謝料が少ない場合 ・休業損害が認められない場合 ・本来含まれるはずの賠償金が入っていない場合 ・過失割合が明らかに不当である場合 |
〇交通事故の示談交渉を自力で行うと保険会社に言いくるめられるリスクが高い
〇交通事故の示談交渉は交通事故に強い弁護士に任せるのがおすすめ
示談交渉では、加害者側が提示してきた内容の不備を見つけ、それに反論する証拠を集めて交渉し、相手方を納得させなければなりません。
正当な内容で示談を成立させるためにも、これまで多くの交通事故を解決してきたプロに示談交渉を任せることを検討してみてください。