後遺障害等級9級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説

後遺障害等級9級の慰謝料の適正な相場はどのようなものでしょうか。後遺障害等級9級の認定を受けた方やそのような等級が想定される方向けに、適正な補償を受けられるよう慰謝料の相場等を解説します。

この記事の監修者
弁護士 籔之内 寛

弁護士法人サリュ
大宮事務所
埼玉弁護士会

【略歴】
2009年 中央大学法科大学院修了
2009年 司法試験合格
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【セミナー】
・自賠責後遺障害等級認定基準の運用と裁判(暮らしの中の言語学「ことばの機能障害と言語学」国立民族学博物館主催セミナーにおける講演)
・生保代理店向け 相続、交通事故セミナー 
【獲得した画期的判決】
【自保ジャーナル1966号53頁、1973号41頁に掲載】(交通事故事件)
東京高裁平成28年1月20日判決(一審:さいたま地裁平成27年3月20日判決)
【これまでの交通事故解決件数】
1400件以上(2022年11月現在)
【弁護士籔之内の弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例86:高次脳機能障害|約8000万円の提示を裁判で1億9000万円に増額
事例79:死亡事故 過失割合が争点 刑事記録や現地調査によりご遺族が納得できる解決に
事例208:会社役員であった被害者の休業損害が訴訟で認められた
事例66:訴訟提起により自賠責等級認定制度に一石を投じる 非該当から14級獲得!
事例204:自賠責14級の膝高原骨折の後遺障害について、異議申立てにより12級に等級変更。
事例209:自賠責非該当・家事労働を行う男性被害者が、賠償金270万円を獲得できた。

目次

1 後遺障害等級9級に対する補償の計算の全体像

後遺障害等級9級の認定を受けた方の補償は、以下の4つで構成されています。

①加害者(任意保険会社)からの賠償金
②加害者の自賠責保険からの自賠責保険金
③被害者の人身傷害保険
④労災保険・国民年金・厚生年金からの社会保障

本記事では、まず、加害者(任意保険会社)からの賠償金として重要な、後遺障害慰謝料、逸失利益、介護費について解説します。

次に、後遺障害等級申請の方法と自賠責保険金の受取り方について解説します。

その上で、実際の保険会社との交渉において弁護士を入れて裁判をすることの意味をご理解いただくために、弁護士法人サリュの解決事例を紹介します。

続いて、人身傷害保険の使い方を解説します。

最後に、加害者から受け取る慰謝料等の補償金とは別に、労災保険や障害年金などの社会保障を申請することのメリットを解説します。

2 後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料

(1)後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残存したことによる被害者の精神的損害を賠償するものです。後遺障害の程度(1級~14級の後遺障害等級)に応じて算定します。

後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料の相場は690万円です。

ただし、この金額は裁判所基準により算定される金額です。自賠責基準や任意保険基準における後遺障害等級9級の慰謝料相場は249万円です。

弁護士基準の後遺障害慰謝料相場

  自賠責基準 弁護士基準
別表第1 別表第2
1級 1650万 1150万 2800万
2級 1203万 998万 2370万
3級   861万 1990万
4級   737万 1670万
5級   618万 1400万
6級   512万 1180万
7級   419万 1000万
8級   331万 830万
9級   249万 690万
10級   190万 550万
11級   136万 420万
12級   94万 290万
13級   57万 180万
14級   32万 110万

(2)後遺障害慰謝料の交渉を弁護士に依頼するメリット

後遺障害慰謝料の算定基準には、最低限度の補償である「自賠責基準」、自賠責基準とほとんど変わりませんが多少上乗せされた「任意保険基準」、そして裁判で認められる「裁判基準」(「弁護士基準」や「赤本基準」と言ったりもします。)の3つの基準があると言われています。 

上記の表のように、後遺障害慰謝料は、裁判基準と自賠責基準で441万円もの差があります。弁護士に依頼をしない場合、任意保険会社から提示される後遺障害慰謝料は、任意保険基準といっても自賠責基準に近い金額であることが多いです。

弁護士に交渉を依頼すれば、裁判基準での慰謝料の交渉が可能となり、慰謝料の増額が見込めます。示談交渉がまとまらない場合は裁判で争っていきます。

任意保険会社から賠償金の提示があったら、まずは金額が妥当なのか弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故の慰謝料について
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(3)後遺障害慰謝料の増額

例外的ではありますが、さらに、弁護士に依頼することで、次のような事情がある場合は、後遺障害慰謝料が増額される可能性があります。

  複数部位に後遺障害が残存し、複数部位に後遺障害等級が認定された場合

【名古屋地裁平成18年12月13日判決】

右股関節、右膝関節及び右足関節の可動域制限(準用10級)、右足関節の変形(12級8号)、右下肢の短縮障害(13級9号)、右下肢の醜状痕・植皮術後瘢痕(12級、併合9級)の会社代表者(男・症状固定時58歳)につき、逸失利益を労働能力喪失率35%で67歳までとし、後遺障害等級9級の慰謝料を750万円認定した。

【仙台地裁平成24年3月27日判決】

【仙台地裁平成24年3月27日判決】
左肘関節の機能障害(12級6号)、右手指の関節機能障害(11級9号)、右足関節の機能障害(12級7号)及び右足指関節の機能障害(11級10号)で併合10級相当、右下肢の短縮障害(13級9号)、左手のシビレ等(14級10号)、左下肢の醜状障害(14級5号)、右下肢の醜状障害(12級相当)より、併合9級、PTSD診断(14級10号)の会社員(男・症状固定時24歳)につき、逸失利益を労働能力喪失率45%で67歳までとし、後遺障害等級9級の慰謝料を労働能力喪失の程度を考慮して830万円認定した。

  逸失利益の算定が困難または不可能な場合

【大阪地裁平成27年7月17日判決】

顔面醜状(9級16号)の会社員(男・症状固定時37歳)外貌醜状について逸失利益を認めないことを考慮し、後遺障害等級9級の慰謝料を900万円認定した。

3 後遺障害等級9級の後遺障害逸失利益

(1)逸失利益の計算方法

逸失利益とは、被害者に後遺障害が残り、労働能力が減少するために、将来発生するであろう収入の減少のことを言います。逸失利益は次の計算式により算出します。

【計算式】

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間の年数に応じたライプニッツ係数

  ア 基礎収入

被害者が事故に遭わなければ本来稼いでいた額になるので、一般的には事故前年の収入額を用います。

  イ 労働能力喪失率

後遺障害により労働能力がどの程度低下したかを数字であらわしたものです。

労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて一応の基準が定まっています。

後遺障害等級9級の労働能力喪失率は35%とされています。

  ウ 労働能力喪失期間とライプニッツ係数

労働能力喪失期間とは、労働能力喪失による収入の減少がいつまで続くかの期間のことです。後遺障害事案における労働能力喪失期間の始期は症状固定時、終期は67歳が原則です。

逸失利益は、後遺障害を前提として将来現実化すると考えられる損害です。それを紛争解決時に一括して受領するため、現在の価格(現価)に引き直す※必要があります。そのために、労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数(年金現価係数)を用いて中間利息を控除します。

※令和2年4月1日以降に発生した事故の場合は年利3%で引き直します。

※平成22年4月1日以降令和2年3月31日までに発生した事故の場合は年利5%で引き直します。

  エ 計算例

【令和4年1月1日発生の事故】

会社員・事故前年年収500万円

症状固定時42歳・男性

500万円×0.35×17.4131(25年に対応するライプニッツ係数)

=3047万2925円

(2)逸失利益の交渉を弁護士に依頼するメリット

  基礎収入

逸失利益については、基礎収入が争いになることがあります。

例えば、事故前年がちょうど転職した時期で、たまたま収入が低いもしくは無職だった場合や、自営業者の方で事故前年に事業を開始したばかりであった場合など、事故前年の収入が実態に即していない場合は、事故前数年間の収入資料等により、実態に即した収入額を立証する必要があります。

  労働能力喪失率

逸失利益については、労働能力喪失率についても争いになることが多いです。

労働能力喪失率は、一応の基準が定まっているとはいえ、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼働状況、所得の変動等を考慮して判断されます。

具体的な業務への支障等を主張し基準よりも高い労働能力喪失率が認められるケースもあります。

逸失利益の交渉には専門的な知識が必要になりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

(3)基準より高い労働能力喪失率が認定された事例

【仙台地裁平成24年3月27日判決】

左肘関節の機能障害(12級6号)、右手指の関節機能障害(11級9号)、右足関節の機能障害(12級7号)及び右足指関節の機能障害(11級10号)で併合10級相当、右下肢の短縮障害(13級9号)、左手のシビレ等(14級10号)、左下肢の醜状障害(14級5号)、右下肢の醜状障害(12級相当)より、併合9級、PTSD診断(14級10号)の会社員(男・症状固定時24歳)につき、右下肢のみでも9級相当と評価されるのに四肢に後遺障害がある本件を同列に扱うことはできないとして、45%の労働能力喪失率を認定した。

4 後遺障害等級9級の介護費

(1)介護費とは

介護費とは、被害者に介護が必要となる後遺障害が残存した場合の、症状固定後における付添いに要する費用です。

自賠法施行令別表においては、介護を必要とする後遺障害として明示されているのは別第1の1級と2級のみですが、裁判実務上は、後遺障害等級が3級以下の場合であっても、高次脳機能障害、脊髄損傷、下肢機能障害等の後遺障害について、将来介護費が認められています。

後遺障害等級9級の事案では、頚髄損傷に由来する左手指巧緻運動障害、左下肢脱力、左手握力低下等の後遺障害9級10号を残した57歳男性につき、随時、妻の介護を要するとして、日額4000円、合計2014万円余が認められた事例(大阪地判平21.8.25)があります。

ただ、後遺障害等級9級で将来介護費が認められた事例はあまりありません。裁判例の傾向としても、将来介護費が認められるのは後遺障害等級5級以上の事案が多いです(特に高次脳機能障害で多い)。

(2)介護費の計算方法

症状固定後の介護費の計算は、一般的には次の計算方法によります。

【計算式】

日額 × 365日 × 介護の期間の年数に対応するライプニッツ係数

日額については事案によって様々ですが、裁判基準では、職業付添人による場合には実費全額、近親者付添人による場合は日額8000円とされており、具体的看護の状況により増減することがあるとされております。

ただし、この基準額については、日常生活全般にわたって常時介護を必要とする場合を想定するものなので、常時介護を必要としないが、日常生活において一部身体介護や介護としての看視・声かけのみを要するという場合には、具体的な介護の内容、介護のために必要な時間等に応じて、上記基準額から減額されることになります。

介護の期間の年数については、原則、症状固定時の平均余命年数が認められます。

(3)介護費の交渉を弁護士に依頼するメリット

後遺障害等級9級の事案では、そもそもの介護の必要性が争いになることが多く、認められたとしても介護費の日額も争われます。先ほども述べたように、9級の後遺障害等級の事案では、裁判例でも認められている事例は少ないです。

後遺障害の内容・程度から介護が必要であることを立証し、現在及び将来の具体的な介護状況を立証していく必要があります。介護費については争いになることが多いですので、弁護士に相談することをお勧めします。

5 後遺障害等級9級のその他の損害項目

(1)慰謝料や逸失利益や介護費以外に認められる賠償の例

てんかん症状の後遺障害(9級10号)につき、長期にわたる抗てんかん薬の服用、検査が必要であることから、将来の治療費として120万円が認められた事例があります(神戸地判平28.12.13)。

(2)交渉を弁護士に依頼するメリット

将来にかかる治療費や通院交通費などの損害項目については、任意保険会社から提示されないことがありますので、被害者から診断書や領収書などの資料を提出して任意保険会社と交渉する必要があります。将来の治療関係費については争いになることが多いですので、弁護士に相談することをお勧めします。

6 後遺障害等級9級の等級認定の流れ

(1)後遺障害等級の審査の方法

後遺障害等級認定の申請方法には、①「事前認定」と②「被害者請求」という2つの方法があります。事前認定とは、加害者側の任意保険会社を通じて申請する方法です。「被害者請求」とは、被害者自身で申請を行う方法です。

事前認定は、主治医に後遺障害診断書を書いてもらい、それを加害者側の任意保険会社に提出すれば、あとは加害者側の任意保険会社が必要書類を揃えて申請してくれるため、被害者の手間がほとんどかかりません。

しかし、加害者側の任意保険会社が必要書類を揃えて申請するため、申請書類としてどのような書類が出されたか分かりません。書類に不備があったことで本来認定されるはずの後遺障害等級の認定を受けることができなくなる恐れがあります。

一方、被害者請求の場合は、被害者が申請書類を揃える必要があり手間がかかりますが、書類の不備を事前に確認し、認定に有利な資料を提出することができます。

また、被害者請求の場合は、後遺障害等級認定時に自賠責保険金(後遺障害等級9級の場合は616万円)が支払われます。事前認定の場合は、この自賠責保険金の先払いがありませんので、最終的に加害者側と示談するまで、まとまった金額の賠償金が入りません。

保険会社との交渉は長期化する可能性もありますので、最終的に示談が成立するまで賠償金が手元に入らないという点は、経済的に余裕のない被害者にとっては非常に大きなデメリットと言えますので、被害者請求により後遺障害等級の認定申請を行うべきです。

(2)後遺障害等級9級の症状と認定基準

後遺障害等級9級は、後遺障害等級の中でも対象となる症状が最も多い等級です。

認定基準は、自動車損害賠償保障法施行令という法令の別表に整理されています。

後遺障害等級9級の症状とその認定基準は以下のとおりです。

なお、等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行います(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準第3)。

後遺障害9級1号
両眼の視力が0.6以下になったもの

視力は裸眼ではなく矯正視力で測定します。

後遺障害9級2号
1眼の視力が0.06以下になったもの

視力は裸眼ではなく矯正視力で測定します。

  

後遺障害9級3号
両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

「半盲症」とは、視野の右又は左半部が見えなくなった状態です。

「視野狭窄」とは、視野が狭くなることです。

「視野変状」とは、部分的に見えない部分ができてしまう状態のことです。

これらの症状のいずれかを両眼に残した状態が該当します。

後遺障害9級4号
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの

「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、まぶたを閉じた時に角膜(黒目)を完全に覆えない程度のものを言います。

後遺障害9級5号
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの

鼻の「欠損」とは、鼻軟骨部の全部又は大部分を失った状態のことです。

「機能に著しい障害を残すもの」とは、鼻呼吸困難又は嗅覚脱失を指します。

鼻の欠損が鼻軟骨部の全部又は大部分に達しない程度のものでも、「外貌に醜状を残すもの」に該当する場合は、後遺障害等級12級14号が認定されることになります。

鼻を欠損しないで機能障害のみを残すものは、準用等級が認定されます。例えば、鼻呼吸困難又は嗅覚脱失を残すものは12級13号を、嗅覚の減退のみを残すものは14級9号を、それぞれ準用します。

後遺障害9級6号
咀嚼(そしゃく)及び言語の機能に障害を残すもの

「咀嚼の機能に障害を残すもの」とは、固形食物の中に咀嚼できない又は十分に咀嚼できないものがあり(たくあん、らっきょう、ピーナッツ等の一定の固さの食物中に咀嚼ができない又は十分にできないものがある場合)、そのことが医学的に確認できる場合(不正咬合、咀嚼筋群の異常、顎関節の障害、開口障害、歯牙損傷など、咀嚼ができない原因が医学的に確認できる場合)をいいます。

「言語の機能に障害を残すもの」とは、子音を発音する4種の語音(口唇音、歯舌音、口蓋音、喉頭音)のうち、1種の発音ができなくなった状態を指します。

後遺障害9級7号
両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの

両耳の平均純音聴力レベルが60dB以上のもの、又は両耳の平均純音聴力レベルが50dB以上であり、かつ、最高明瞭度が70%以下のものをいいます。

(50dBとは、エアコンの室外機の音です。60dBとは、走行中の自動車の車内の音です。)

後遺障害9級8号
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの

1耳の平均純音聴力レベルが80dB以上であり、かつ、他耳の平均純音聴力レベルが50dB以上のものをいいます。

(80dBとは、例えば地下鉄の車内の音です。)

後遺障害9級9号
1耳の聴力を全く失ったもの

1耳の平均純音聴力レベルが90dB以上ものをいいます。

(90dBとは、例えば騒々しい工場の中やカラオケ店の店内中央にいる際に聞こえる騒音です。)

後遺障害9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

具体的な症状としては、高次脳機能障害、脳損傷による身体性機能障害(手足の麻痺)、脳の器質的な損傷を伴わない精神障害(抗うつや不安、意欲低下等)、脊髄の損傷による障害(手足の麻痺)、末梢神経障害、外傷性てんかん、頭痛などがあります。

後遺障害9級11号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

例えば、次のような場合は後遺障害等級9級に該当します。

・呼吸機能が一定程度低下したもの。

・心機能が低下し身体活動が一定程度制限されるもの。

・ペースメーカーを植え込んだもの。

・房室弁又は大動脈弁を置換したもので、継続的に抗凝血薬療法を行うもの。

・食道の狭さくによる通過障害、胃の切除による消化吸収障害。

・小腸を大量に切除したもの。

・じん臓の機能が一定程度低下したもの。

・膀胱の機能障害により排尿障害を残すもの。

後遺障害9級12号
1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの

片手の親指か、親指以外の2本の指を、親指は第1関節(指先に最も近い関節)から、その他の指は第2関節から手首側で切断した状態をいいます。

後遺障害9級13号
1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの

片手の親指を含む2本の指か、親指以外の3本の指を、指先の骨の半分以上を失うか、第2関節か第3関節(親指は第1関節)の可動域が2分の1に制限された状態をいいます。

後遺障害9級14号
1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの

片足の親指を含む2本以上の指を、付け根の関節から失った状態をいいます。

後遺障害9級15号
1足の足指の全部の用を廃したもの

片足の指が以下のいずれかの状態になったものをいいます。

・親指の指先の骨を半分以上失った状態。

・親指以外の指を、第1関節(指先に最も近い関節)から付け根にかけての部分で切断した状態。

・第2関節か第3関節(親指は第1関節)の可動域が2分の1に制限された状態。

後遺障害9級16号
外貌に相当程度の醜状を残すもの

「外貌」とは、頭部、顔面部、頚部など、上下肢以外の日常露出する部分を指します。

「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいいます。

後遺障害9級17号
生殖器に著しい障害を残すもの

生殖機能は残っているものの、通常の性交では生殖を行うことができない状態をいいます。具体的には次のような場合です。

・陰茎の大部分を欠損した場合

・勃起障害を残した場合

・射精障害を残した場合

・膣口狭さくを残した場合

・両側の卵管に閉塞や癒着を残した場合

・頸管に閉塞を残した場合

・子宮を失った場合

(3)後遺障害等級の申請を弁護士に依頼するメリット

  申請書類の不備を事前にチェックすることができる

弁護士に依頼した場合は、基本的には被害者請求の方法で後遺障害等級の認定申請を行います。申請書類の中で最も大事になるのが後遺障害診断書です。

申請に当たっては、後遺障害診断書の記載内容に漏れはないか、不必要に不利なことが書かれていないか、間違ったことが書かれていないかなどを精査します。

そうすることで、適正な後遺障害等級が認定される可能性を高めることができます。

  より効果的な異議申立を行うことができる

後遺障害等級の認定申請を行った結果、認められるべき後遺障害等級が認定されなかった場合は、異議申立という再申請の手続を行うことができます。

異議申立には後遺障害に関する専門的な知識が必要となり、医学的知識も必要になります。後遺障害に関する知識・経験が豊富な弁護士に依頼すれば、より効果的な異議申立を行うことで認定可能性を高めることができます。

  資料収集や書類提出などの手続の負担を軽減でき迅速に申請ができる

ご本人でないと取得できない書類を除き、診断書や画像資料など申請に必要な書類は弁護士が代わりに収集することができますので、手続の負担が軽減されます。

また、被害請求手続の経験が豊富な弁護士であれば、必要な書類の作成・収集方法を熟知しておりますので、迅速に申請することが可能となります。

7 後遺障害等級9級の保険会社との交渉を弁護士に依頼をするメリット

(1)保険会社の交渉の傾向

例えば、後遺障害等級9級のケースで、後遺障害に関する損害賠償金(後遺障害慰謝料と逸失利益の合計)として650万円という賠償案を任意保険会社が提示してきたとします。実はこの650万円のうち616万円は後遺障害等級9級の自賠責保険金ですから、任意保険会社の支払額は34万円のみということになります。

このように、示談交渉において任意保険会社は、自賠責基準とあまり変わらない金額を任意保険会社の基準として提示してくることがあります。

(2)自賠責基準とは?

自賠責保険とは、「自動車損害賠償責任保険」の通称で、交通事故の被害者救済のため、損害賠償に関する最低限の資力を確保することを目的とした強制加入の保険です。自賠責保険には保険金額(上限額)が設定されています。

自賠責基準とは、自賠責独自の損害算出基準のことをいいます。自賠責保険からは、自賠責基準で算出した損害額が、自賠責保険金額を限度として支払われます。

  

(3)自賠責基準と任意基準と裁判基準の違い

自賠責基準・・・交通事故被害者救済のため最低限の保障を目的とした金額です。

任意基準・・・・任意保険会社独自の基準です。任意保険会社は自賠責基準を下回る金額で示談をしてはならないため、自賠責基準を下回ることはありません。自賠責基準と裁判基準の中間に位置しますが、自賠責基準寄りであることが多いです。

裁判基準(弁護士基準)・・・・裁判をした場合に認められる金額です。

(4)弁護士に依頼するメリット

裁判基準は裁判をした場合に認められる金額ですが、弁護士に依頼すれば、示談交渉でも裁判基準で交渉することで、裁判をしなくても裁判基準に近い金額で示談できる可能性があります。当初の任意保険会社から提示された金額から大幅に増額できることもあります。

また、弁護士に依頼すれば、仮に示談交渉で折り合いがつかなかったとしても、裁判で適正な金額を求めて争うことができます。裁判では、弁護士費用の一部を加害者に負担させることができます。

(5)弁護士に依頼した後の流れ

弁護士に依頼したあとは、保険会社との窓口は全て弁護士が行いますので、保険会社とのやり取りの負担からは解放されます。

また、もし裁判になったとしても、裁判には弁護士が出席しますので、被害者が裁判所に出頭しなければならない機会はあるとしても1回です。もちろん、全ての裁判に弁護士と一緒に同席いただくことも可能です。

8 弁護士法人サリュの解決事例

(1)解決事例64:中足骨骨折で9級15号の後遺障害等級の認定を受け2600万円の賠償金を獲得

  ご依頼の経緯

被害者はバイクで路上を走行中、交差点で左折するトラックに巻き込まれ、第1~5中足骨が全て骨折するという大怪我を負いました。相手の不誠実な態度に憤りを感じていた被害者は、弁護士特約に加入していたこともあり、専門家に任せようということで、サリュを訪れました。

  サリュの解決

①ポイント1 後遺障害診断書作成をサポート

被害者は大怪我を負ったため、一定期間の治療を終えたあとも足指の動きが悪く、可動域制限が残ってしまいました。サリュでは、後遺障害診断書作成に関するお手伝いをさせていただき、被害者に残存した後遺障害が適切に認定されるように積極的にアドバイスを重ね、内容の充実した後遺障害診断書が出来上がりました。その結果、被害者の後遺障害は9級15号という高い等級が認定されました。

後遺障害等級認定においては、後遺障害診断書の記載内容が非常に重要になります。傷病名や自覚症状の記載漏れがないか、可動域測定値は正しく記載されているかなどを事前に確認することが大切です。

②ポイント2 逸失利益の減額主張を打ち返した

被害者の後遺障害は9級という上位に位置する等級なので、こちらの請求額は、受領済みの自賠責保険金の616万円を差し引いても2000万円近くになりました。

主に争点となったのは逸失利益でした。相手方保険会社からは、足の怪我とはいえ、いつかは慣れるのだから67歳まで労働能力が落ちたままではないだろうという主張がされました。

しかし、過去の判例を調査し、被害者が実際に被っている日常生活における様々な不利益や、被害者の職業の特殊性等を主張していくことで、こちらの請求に近い金額で示談することができました。

逸失利益の交渉においては、後遺障害の内容と程度がどのようなもので、それにより日常生活及び仕事へ具体的にどのような支障があるのかを丁寧に立証していくことが肝要です。

(2)解決事例293:高次脳機能障害をサリュが立証し約3000万円の賠償金を獲得

  ご依頼の経緯

被害者は、通勤中に青信号の横断歩道を徒歩で横断中、右方向から交差点を右折してきた自動車に衝突され、脳挫傷、骨盤骨折、脊椎骨折及び腓骨骨折等の重傷を負いました。被害者のご家族がサリュのホームページを見て、事故後すぐに無料相談に来られご依頼いただきました。

  サリュの解決

①ポイント1 詳細に日常生活状況を聴取する

交通事故から約1年後には、被害者は複視等の症状を主に訴えており、複視や骨折による痛みの症状等での後遺障害認定を求めていました。

しかし、サリュには脳外傷事案の豊富な実績があり、被害者には高次脳機能障害が残っている可能性があるのではないかと考え、ご家族から丹念に被害者の日常生活状況を聴取した結果、高次脳機能障害での認定請求も行わなければならないとの判断に至りました。そこで、日常生活状況報告書という高次脳機能障害の認定に必要な資料を、ご家族との連携のもとサリュにて正確に作成し、自賠責保険へ提出した結果、高次脳機能障害として後遺障害等級9級(他の障害とあわせて併合8級)が認定されました。

②ポイント2 示談交渉時から丁寧に立証していく

示談交渉の段階から後遺障害による具体的症状を聴取し、実際の労働や家事への影響などを細かく主張していくことで、結果として保険会社はほとんどの項目を裁判基準に近い金額で認めました。

高次脳機能障害は、被害者自身が気付かず、ご家族も知識がなければ気付きにくい後遺障害ですので、早めに弁護士にご相談することをお勧めします。

(3)解決事例65:脊髄症状で後遺障害等級9級10号獲得、素因減額なく2200万円で解決

被害者は、ご主人が運転する自動車に乗車中、加害車両に追突され、頚部を負傷しました。被害者は、事故直後から頚部痛や四肢のしびれ等の症状を訴え、投薬治療等を続けましたが、症状は改善しませんでした。

そこで、被害者は、事故から約1年後に頚椎椎弓形成術(頚椎拡大術)という手術を受けました。それでも被害者の症状は劇的には改善しないまま症状固定の診断を受けました。

結局、被害者の治療期間は約2年間に及びました。サリュは治療期間中に医師面談を行って主治医から長期間の治療を必要とする理由(脊髄の圧迫所見が認められ、これを除くために上記手術が必要であったこと、術後少なくとも1年間の経過観察が必要であることなど)を聴取していましたので、症状固定のタイミングについて迷うことはありませんでした。

サリュが被害者請求で後遺障害等級の認定申請を行った結果、頚髄症状について後遺障害等級9級10号が認定されました。これはサリュが事前に予測していたとおりの認定結果でした。

示談交渉では、保険会社から脊柱管狭窄等を原因とする素因減額の主張がされましたが、交渉の結果、素因減額を考慮することなく約2200万円(自賠責保険金含む)で解決することができました。

9 人身傷害保険と後遺障害等級9級の損害賠償との関係

人身傷害保険とは、被害者が加入している自動車の保険で、ご自身のお怪我や後遺障害を補償がでる保険です。加害者がいる保険では、あまり、使われることが少ない保険ですが、ご自身に過失割合があるときには、忘れずに使わなければいけない保険です。

例えば、後遺障害等級9級で損害賠償金総額が5000万円で、自身の過失割合が1割であった場合、加害者からは4500万円が支払われます。人身傷害保険があれば、過失で控除された500万円を人身傷害保険から受け取ることができます。

ただし、ご自身の保険からも自分の過失割合分の補償を受けるには、加害者との間で裁判を行い、慰謝料の金額、総損害額、さらに過失割合等をはっきりさせる必要があります。

人身傷害保険の上限額や、裁判リスクも考えながら、示談交渉で解決するか、それとも、裁判まで行うか、弁護士と一緒に考えることが重要です。

10 通勤中又は業務上の事故における労災保険と後遺障害等級9級の損害賠償との関係

(1)労災保険とは

労災保険とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。労災保険の障害等級9級に該当する場合は、労災保険から、「療養給付(治療費に相当する)」、「休業給付(休業補償に相当する)」、「障害給付(逸失利益に相当する)」、「障害特別一時金」、「障害特別支給金」の給付を受けられます。なお、労災保険から慰謝料は支払われません。

(2)労災保険の障害等級

交通事故の後遺障害等級の認定基準は、労災保険の認定基準に準拠していますので、同じ交通事故で同じ怪我であれば、交通事故で後遺障害等級9級が認定されたら労災でも基本的には同じ後遺障害等級9級が認定されます(自賠責保険と労災保険が異なる制度である以上、例外的に異なる等級が認定されることはあります。)。

労災保険の障害等級は、労働者災害補償保険法施行規則別表第一の障害等級表に、1級から14級の等級が定められています。それぞれの等級ごとに給付内容と身体障害の内容が定められています。労災保険の障害等級9級の給付内容は、次のとおりです。

障害給付給付基礎日額の391日分
障害特別一時金算定基礎日額の391日分
障害特別支給金50万円

  ※ 給付基礎日額:事故直前3ヶ月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額

  ※ 算定基礎日額:事故前1年間の特別給与総額を365で割った額

(3)労災保険と損害賠償との関係

通勤途中の交通事故で後遺障害を残し、後遺障害等級9級が認定された場合、後遺障害に関する損害項目としては、後遺障害慰謝料と逸失利益があります。

また、労災保険から9級の障害等級が認定された場合は、給付内容としては障害給付、障害特別一時金、障害特別支給金があります。

労災保険の給付は人身損害についての補填を目的としているものですので、民事の損害賠償と同じ性質を持つものとされています。そのため、労災保険給付と損害賠償金を二重に受け取ることができないことになっています。

先に労災保険から給付を受けた場合は、その給付の限度で、加害者に請求する休業損害や逸失利益などの損害項目から控除します(被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権を国が代位取得し、被害者はその分損害賠償請求権を失う。)。

また、先に加害者から損害賠償金を受領した場合は、労災保険の給付と同一の事由に相当する額を控除して給付がなされます(休業給付に対応する項目は休業給付、障害給付に対応する項目は逸失利益です。)。

なお、労災保険給付には慰謝料はありませんので、慰謝料は労災保険給付とは無関係に受け取ることができます。

また、労災保険の特別支給金は、受け取ったとしても加害者へ請求する損害賠償額からは控除されることはなく、支給調整もされません。

 【まとめ】

 ・労災保険から先に障害給付を受け取った場合、加害者に請求する逸失利益の金額から控除される。

 ・加害者から損害賠償金を先に受け取った場合、逸失利益の金額の限度で、障害給付が減額される。

 ・慰謝料は労災保険給付を受けていても減額されることなく受け取れる。

 ・特別支給金は損害額から控除せず、支給調整もされない。

11 障害年金と後遺障害等級9級の損害賠償との関係

(1)障害年金とは

障害年金とは、病気やけがによって、一定以上の障害を有することになったときに支給される公的年金制度で、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。

病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。

交通事故が原因で障害を残した場合も、受給要件を満たし障害認定を受ければ、障害年金を受給することができます。

(2)障害年金の障害等級

障害の状態に応じて、障害基礎年金には1級と2級が定められており、障害厚生年金には1級、2級のほか3級が定められています。それぞれの等級ごとに受け取れる年金額が定められています。

  障害基礎年金

1級他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。
2級必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。

  障害厚生年金

1級障害基礎年金の障害の程度と同様。
2級障害基礎年金の障害の程度と同様。
3級労働が著しい制限を受ける、又は労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。

障害年金の障害等級と交通事故の後遺障害等級は認定基準が異なりますので、同じ等級が認定されるとは限りません。交通事故で後遺障害等級9級が認定された障害は、障害厚生年金の3級が認定される可能性があります。

(3)障害年金と損害賠償との関係

交通事故による損害賠償金と障害年金の両方を受け取ることはできません。どちらも生活保障という同じ性質を持つものだからです。

先に加害者から損害賠償金を受け取った場合は、障害年金の支給が停止します。支給が停止されるのは、事故発生日から最大で3年分の障害年金です(令和4年11月11日現在)。

したがって、二重に受け取ることができないといっても、支給が停止される3年分以降の分は受給できますので、申請自体は行うべきです。

また、加害者から損害賠償金を受け取る前に、先に障害年金の受給権を取得した場合は、支給を受けることが確定した年金額が損害額から控除されます(もらうことが決まった年金分は加害者に請求できない)。

なお、控除の対象となるのは、損害賠償金のうち逸失利益と休業損害に限られ、慰謝料は控除の対象になりません(年金をもらったとしても慰謝料は加害者に満額請求できる)。

12 後遺障害等級9級で身体障害者手帳はもらえるか

(1)身体障害者手帳とは

身体障害者手帳は、身体に障害があり、その状態が一定の障害に該当すると認められる場合に交付されます。手帳を取得すると各種福祉サービスを受けることができます。

身体障害者手帳の障害等級は、障害の種類別に重度の側から1級から6級の等級が定められています。

なお、7級の障害は単独では交付対象とはなりませんが、7級の障害が2つ以上重複する場合、または7級の障害が6級以上の障害と重複する場合は対象となります。

(2)交通事故の後遺障害等級と身体障害者手帳の障害等級との違い

障害者手帳をもらうには、原則として、7等級ある障害等級のうち6級以上に該当することが必要です。

交通事故の後遺障害等級9級は、身体障害者手帳の6級より軽度の障害が対象となりますので、基本的には身体障害者手帳の障害等級は認定されません。

例えば、交通事故の後遺障害等級9級は「1眼の視力が0.06以下」ですが、身体障害手帳の6級の視覚障害は「他方の眼の視力が0.02以下のもの(かつ視力の良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下)」です。これは、交通事故の後遺障害等級9級より上の8級「1眼の視力が0.02以下になったもの」に相当します。

ただし、肢体不自由においては、7級に相当する障害が2つ以上ある場合は6級になりますので、障害の内容・程度によっては、身体障害者手帳の障害等級が認定される可能性はあります。

サリュの解決事例