交通事故の後遺障害慰謝料の相場や計算方法・賢いもらい方とは?

後遺障害慰謝料とは何のことでしょうか。等級ごとの金額の相場や計算方法、弁護士に依頼した場合とそうでない場合との比較、もらい方などを解説します。

この記事の監修者
弁護士 平岡 将人

弁護士法人サリュ銀座事務所
第一東京弁護士会

【著書・論文】
虚像のトライアングル(幻冬舎MC・2015)
交通事故被害者を救う賠償交渉ノウハウ(株式会社レガシー・2017)
交通事故の賠償は不十分 被害者本意の仕組み作りを(週刊エコノミスト・2017.3)
後遺障害等級14級9号マスター(株式会社レガシー・2019)
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【セミナー・講演】
人身傷害分野に取り組む弁護士のための医学研修(船井総研・2018)
後遺障害12級以上の世界(共同出演:株式会社レガシー・2019)
交通事故と各種保険 全3回(弁護士ドットコム・2020)等
【獲得した画期的判決】
東京高裁平成28年1月20日判決(一審:さいたま地裁平成27年3月20日判決)
「障がい者の事故被害救済」 日本経済新聞夕刊 掲載日2015年4月8日(許諾番号30040811)

関連記事:交通事故の弁護士特約とは?賢い使い方とメリット・デメリット
関連記事:後遺障害等級12級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説

1 交通事故の後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)は、交通事故によって後遺障害が残存した場合に、将来にわたって残り続ける痛み、機能障害等による精神的苦痛を補填するものです。原則として後遺障害等級の認定を受けた場合にもらうことができます。また、金額は、後遺障害の等級ごとに算出されます。

 なお、後遺障害慰謝料と区別されるものとして、治療期間中の精神的苦痛を補填するものとして、通院慰謝料(傷害慰謝料)があります。通院慰謝料については以下の記事をご覧ください。

交通事故の慰謝料について
もっと詳しく

2 後遺障害慰謝料の相場や計算方法

(1)後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の計算には、3つの基準があるといわれています。それは、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準)です。後遺障害慰謝料の相場を知るためには、まずは上記の各基準を理解する必要があります。交通事故の被害者が特に理解すべきなのは、弁護士基準です。

以下で、詳しく説明していきます。

 ア 自賠責基準

自賠責保険は、交通事故の被害に遭った方の最低限の補償を確保する保険です。そのため、自賠責基準の慰謝料は、低廉になります。被害者は自賠責基準の後遺障害慰謝料で示談すべきではありません。

以下の表は、自賠責基準の等級ごとの後遺障害慰謝料です。

  自賠責基準
別表第1 別表第2
1級 1650万 1150万
2級 1203万 998万
3級   861万
4級   737万
5級   618万
6級   512万
7級   419万
8級   331万
9級   249万
10級   190万
11級   136万
12級   94万
13級   57万
14級   32万

 イ 任意保険基準

任意保険基準とは、交通事故の加害者が加入している対人賠償責任保険の内部基準のことを指します。被害者側はこの基準にしたがう義務はなく、保険会社から提示された金額が低ければ、堂々と増額を求めるべきです。

 ウ 弁護士基準(裁判基準)

次に、弁護士基準について説明します。交通事故の被害者が慰謝料の相場や計算方法を知ろうとする場合、この弁護士基準をしっかり理解しておくことが重要です。

弁護士基準とは、実際に訴訟をした場合に裁判官が計算する慰謝料の基準のことを指します(そのため、「裁判基準」ともいわれます)。裁判所は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(いわゆる赤い本)にしたがい、迅速かつ公平な観点から基準化された慰謝料を計算するケースが多いです。

弁護士に依頼することで、弁護士基準による後遺障害慰謝料で交渉することができるため、後遺障害慰謝料は劇的に増額します。

弁護士基準の後遺障害慰謝料は、以下の表の通りです。

  弁護士基準
1級 2800万
2級 2370万
3級 1990万
4級 1670万
5級 1400万
6級 1180万
7級 1000万
8級 830万
9級 690万
10級 550万
11級 420万
12級 290万
13級 180万
14級 110万

(2)後遺障害慰謝料の等級ごとの金額

下記の表は、弁護士基準と自賠責基準の後遺障害慰謝料を比較した表です。この表をみるとわかるとおり、両者には金額に大きな違いがあります。なお任意保険基準は、特に決まったものがあるわけではなく、概ね自賠責基準と弁護士基準の間くらいの金額となることが多いです。

  自賠責基準 弁護士基準
別表第1 別表第2
1級 1650万 1150万 2800万
2級 1203万 998万 2370万
3級   861万 1990万
4級   737万 1670万
5級   618万 1400万
6級   512万 1180万
7級   419万 1000万
8級   331万 830万
9級   249万 690万
10級   190万 550万
11級   136万 420万
12級   94万 290万
13級   57万 180万
14級   32万 110万

(3)むちうち14級の場合の後遺障害慰謝料

むちうちで14級の後遺障害が認定された場合、もらえる後遺障害慰謝料は、上記の表の通り自賠責基準だと32万円、弁護士基準だと110万円です。自賠責基準と弁護士基準とでは、倍以上の開きがあります。

これだけの金額差があることから、むちうちであっても、後遺障害の認定を獲得できた場合は弁護士費用を考慮しても後遺障害慰謝料の交渉を弁護士に依頼するメリットはあります。
なお、後遺障害等級ごとの慰謝料の相場や計算方法については以下の関連記事をご覧ください。

関連記事:後遺障害等級1級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説
関連記事:後遺障害等級2級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説
関連記事:後遺障害等級9級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説

3 後遺障害慰謝料をもらう方法・流れ

(1)後遺障害慰謝料をもらう方法

後遺障害慰謝料は、原則として後遺障害の認定を受けた場合にもらえます。後遺障害は、自賠責保険調査事務所に後遺障害の申請をすることで認定を受けることができます。もっとも、仮に後遺障害認定を受けなかったとしても、完治した場合と同様に扱うことが著しく不相当といえるような事情があれば、慰謝料の金額を増額するなどしてもらえる賠償金の総額が増えるケースもあります。

例えば、交通事故によって顔に3センチ未満の線状跡が残っているに過ぎない場合、3センチ以上の線状跡を認定基準とする14級の後遺障害認定を受けることはできません。しかし、現に、線状のキズ跡が残っている以上、完治していることと同様に扱うのは相当ではありません。同様に、3つ未満の歯に歯科補綴を加えた場合は、3つ以上の歯科補綴が基準となっている14級の認定を受けることはできませんが、歯の欠損状態は生涯続く以上、この場合も完治した場合と同様に扱うことは不相当といえます。

このような場合、後遺障害慰謝料そのものを認定することは困難となりますが、通院慰謝料を増額するなどして通常よりも多くの慰謝料を認定するケースがあります。

治療の甲斐なく何らかの症状が残り、完治したものと同様に扱うことが不相当といえる場合は、慰謝料の増額を求めることが有効です。

(2)後遺障害慰謝料をもらうタイミング

交通事故に遭ってから、賠償金をもらうまでは、以下のような流れとなります。

上記の図のように、後遺障害慰謝料は、後遺障害が認定され、示談が成立した後にもらうことが一般的です。もっとも、後遺障害の申請方法には①事前認定の方法と②被害者請求の方法があり、次に説明するように、被害者請求の方法により後遺障害認定の申請することで一部の後遺障害慰謝料について示談前に支払ってもらうことが可能になります。

 ア 事前認定の場合に後遺障害慰謝料をもらうタイミング

事前認定とは、後遺障害認定の申請手続きを加害者側の任意保険会社が被害者に代わっておこなう手続き方法です。

被害者は、必要書類のほとんどを保険会社が集めてくれるので、手続き的な負担は少ないというメリットがあります。

一方で、事前認定の場合、後遺障害等級が認定されてもすぐに自賠責保険金をもらえるわけではなく、多くは最終的な示談が成立した後に、他の賠償金と一緒に支払われるに過ぎません。

 イ 被害者請求の場合に後遺障害慰謝料をもらうタイミング

被害者請求とは、被害者自ら、自賠責保険に対して後遺障害認定の申請手続きをおこなう方法です。16条請求や直接請求といったりもします。この方法は、被害者が必要書類を集めることになり、一定の手続き的負担を伴いますが、何らかの後遺障害等級が認定されればその等級に応じた自賠責保険金が認定とほぼ同時に支払われます。

そのため、被害者請求による後遺障害認定の場合の方が、事前認定に比べて後遺障害慰謝料をもらうタイミングは早いです。

ただし、自賠責保険から支払われる賠償金は、最低補償としての賠償金に過ぎないため、弁護士基準で算定した慰謝料との差額が生じます。この差額は、後遺障害認定後の示談交渉の際に請求することになります。

交通事故にあって負傷した場合、仕事が十分にできず生活に困窮する方も一定数います。その場合は、被害者請求によってまとまったお金を早めに回収してしまうことが有効といえるでしょう。

関連記事:事前認定で14級の後遺障害申請をするデメリットとは

4 後遺障害等級を獲得するためのポイント

後遺障害等級は、申請さえすれば認定されるというものではありません。重篤な症状が残っている場合でも、残念ながら非該当になってしまう被害者も多くいます。

では、どのようにしたら後遺障害認定を獲得することができるでしょうか。

ポイントは、後遺障害の審査は書類審査ということです。

書類に不備があれば、どんなに重篤な症状があっても、症状に見合った後遺障害等級を獲得することはできません。

特に以下の点について注意が必要です。

(1)後遺障害診断書に残存した症状や検査所見が漏れなく記載されているか

例えば、むちうちの場合、「頚部痛」や「腰部痛」といった症状が漏れなく後遺障害診断書に記載されているかを確認しましょう。また、レントゲンやMRI検査の所見について、医師に記載してもらうようにしましょう。

むちうち以外の傷病についても、例えば肩鎖関節脱臼の場合は、肩付近の変形状態について、後遺障害診断書に記載されている必要がありますし、変形がわかるような写真を添付することも有効です。

(2)症状固定時に残存した症状が受傷当初から一貫して継続しているか

症状固定時に残存した症状は、受傷当初から一貫して継続している必要があります。受傷後しばらくして発生した症状だと、後遺障害として認定されない可能性があります。症状が一貫して残存していることを示すために、診断書その他の医療記録に記載されているかを確認しましょう。

(3)レントゲンやMRI画像などの検査資料が添付されているか

むちうちの場合はもちろん、それ以外の傷病でも、画像検査の資料は最重要書類の一つです。これらは痛みや可動域制限、変形の有無などを客観的に立証する資料となります。

検査資料は、必ずしも画像資料だけとは限りません。聴力障害があれば、当然聴力検査の資料が必要になりますし、膝関節の靭帯損傷の場合は不安定性を示すためにラックマンテスト、前方引き出しテストなどの検査資料が重要になります。

このように、後遺障害等級を獲得するためには、診断書のほかに様々な検査資料が必要になります。すでに実施した検査の資料を症状固定時に集めるだけであればいいですが、そもそも検査自体していない場合は、検査資料を集めようと思っても集められないケースもあります。そのため、少しでも後遺障害等級を獲得する可能性を高めるのであれば、早い段階で後遺障害に詳しい弁護士に相談し、必要な検査のアドバイスを受けるといいでしょう。

(4)受傷機転をしっかり説明できているか

傷病によっては、「どうやって受傷したか」が後遺障害の獲得のために重要となるケースがあります。たとえば、追突事故でむちうちになり、頚部痛や腰部痛が残存した場合は理解しやすいですが、追突事故で肘関節を痛め、症状固定時まで疼痛が残存した場合、そもそもどうやって肘を痛めたのかを合理的に説明する必要があります。特に、関節部の疼痛について後遺障害を獲得していくためには、どうやって受傷したのか、つまり、受傷機転の説明が重要です。このような受傷機転の説明は、事故発生状況報告書や診断書などの記載をみて確認します。

5 後遺障害等級を獲得した場合のデメリットとは

後遺障害申請を検討している被害者の中には、「後遺障害の認定を受けることで日常生活や仕事上のデメリットがあるのでは?」と不安になる方もいらっしゃいます。しかし、後遺障害の認定は、あくまで適切な賠償金算定の指標としての意味しかなく、障害者手帳を交付されるものでもなければ、外部に公表されるものでもありません。そのため、後遺障害の認定を受けることによる日常生活上、仕事上のデメリットはありません。

6 弁護士基準を超える後遺障害慰謝料がもらえることもある

弁護士基準の慰謝料は、慰謝料を算定する際に参考にする基準であり、その基準額に被害者が拘束されるわけではありません。裁判所や保険会社は、事案によっては、弁護士基準の慰謝料を超える慰謝料を認定するケースもあります。

一般的に、加害者に故意もしくは重過失(無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらに信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転等)がある場合には、基準以上の慰謝料がもらえる可能性があります。

また、交通事故後の加害者に、著しく不誠実な態度等がある場合にも、基準以上の慰謝料がもらえる可能性があります。たとえば、謝罪がないうえ自らの責任を軽減させるために証拠を隠滅したような場合がこれにあたります。

7 後遺障害慰謝料の交渉を弁護士に依頼するメリットとは?

(1)弁護士基準の後遺障害慰謝料で交渉することができる

交通事故では、多くの場合に弁護士に依頼することで後遺障害慰謝料が劇的に増額します。これは、弁護士に依頼することで弁護士基準を前提にした後遺障害慰謝料の交渉が可能になるからです。後遺障害慰謝料の交渉を弁護士に依頼する最大のメリットは、この点にあります。

(2)後遺障害慰謝料以外の賠償項目についても増額できる

後遺障害慰謝料以外の賠償項目も、弁護士が介入することで適切に算定することが可能になります。例えば、休業損害、通院慰謝料、付添費用、介護費用、後遺障害逸失利益なども、弁護士が適切に金額を算出することで劇的に増額することがあります。また、弁護士を入れることで過失割合を適切に算出ことも可能になります。

交通事故の損害賠償金は、残念ながら一般の方が適切に算出することは多くの困難を伴います。そのため、賠償交渉に不安を感じたら、一度弁護士に相談してみましょう。

8 後遺障害慰謝料に関するその他のQ &A

(1)後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の違いは何ですか?

後遺障害逸失利益とは、後遺障害により体が不自由になったことで就労にマイナスの影響が生じた場合の金銭的な不利益を補填する賠償項目です。交通事故に遭わなければ本来得られたであろう利益を失ったことを示すため、「逸失利益」と言っています。逸失利益については、以下のページもご覧ください。

後遺障害逸失利益について
もっと詳しく

後遺障害逸失利益も後遺障害慰謝料も、後遺障害が残ったことに対する賠償である点は同じです。もっとも、後遺障害慰謝料が精神的苦痛に対する賠償であるのに対し、後遺障害逸失利益は仕事への影響という点で異なります。後遺障害認定を受けていれば、仕事している方は、基本的に後遺障害慰謝料も後遺障害逸失利益も両方受け取ることができます。

(2)後遺障害慰謝料と入通院慰謝料の違いは何ですか?

通院慰謝料と後遺障害慰謝料を混同してしまう方がいますが、これらは別物です。通院慰謝料は、事故日から治療終了(症状固定日)までの痛み、日常生活への影響等の精神的損害に対する補填であるのに対し、後遺障害慰謝料は、将来もずっと抱え続けなければならない痛み、機能障害等に対する精神的損害の補填です。つまり、慰謝料の対象となる時点が異なります。したがって、後遺障害が認定されれば、通院慰謝料とは別途、後遺障害慰謝料をもらうことができます。

通院慰謝料は治療期間の長さや怪我の重さによって金額が変わるのに対し、後遺障害慰謝料は、残った後遺障害がどれほど重篤なものなのかによって金額が変わります。

交通事故の慰謝料について
もっと詳しく

(3)保険会社によって後遺障害慰謝料の金額は変わりますか?

保険会社の違いによって、後遺障害慰謝料の支払額が変わるというわけではありません。大手の損害保険会社であっても自賠責基準とほぼ変わらない後遺障害慰謝料を提示するケースはたくさんあります。他方で、大手の損害保険会社でなくても、弁護士基準と遜色ない後遺障害慰謝料を支払ってくれるケースもあります。ただ、このようなケースは稀です。

後遺障害慰謝料の支払額は、担当者によって変わることはあります。担当者によっては、信じられないくらい低い後遺障害慰謝料を提示することがありますし、稀ですが、妥当な後遺障害慰謝料を提示してくれるケースもあります。少しでも相手方保険会社の担当者の対応に疑問を感じたら、早期に弁護士に相談しましょう。

(4)後遺障害慰謝料の算定に通院中の通院日数は関係ありますか?

後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級によって金額が変わりますので、通院中の通院日数は関係がありません。

(5)無過失(0:100)の交通事故の場合、後遺障害慰謝料は増えますか?

交通事故が加害者の一方的な過失で発生した場合でも、それが故に後遺障害慰謝料が増えるわけではありません。交通事故の損害賠償金の算定においては、損害額の算定と、過失割合の算定は分けて検討します。被害者:加害者=0:100の事故で、被害者に過失が無い場合、被害者側の不注意による賠償金が減ることはないというだけで、後遺障害慰謝料が増額されるわけではありません。

しかし、酒酔い運転やひき逃げなど、加害者側の著しく不誠実な態度があれば、後遺障害慰謝料が増額されるケースもあります。その他、被害者側が受けた精神的な損害の内容によっては、弁護士基準などの基準にとらわれることなく、増額された後遺障害慰謝料が認定されるケースもあります。どのようなケースで後遺障害慰謝料が増額されるのかは、個別具体的に判断されることもありますので、弁護士に相談してみると良いでしょう。

(6)後遺障害が認定されたら、将来生じる予定の治療費の補償も受けられますか?

治療費の補償は、原則として交通事故発生日から治療終了日(症状固定日)までとなります。そのため、後遺障害の認定を受けた後の将来発生する治療費は原則として補償の対象とはなりません。もっとも、将来発生する治療費について、医学的に必要であることを丁寧に主張立証することで、一定程度認められる可能性はあります。特に、重度の後遺障害が残存した場合は、定期的に症状悪化を防ぐための医学的な処置が必要なケースもあり、このような必要性を主張することで将来の治療費の補償を受けることができる場合もあります。

(7)後遺障害慰謝料の交渉を弁護士に依頼した場合、弁護士費用で費用倒れとなることはありますか?

後遺障害が認定されている場合、多くのケースで弁護士費用による費用倒れとはなりません。後遺障害慰謝料は、前記のとおり、自賠責基準と弁護士基準に大きな差があるため、弁護士を介入させた場合の増額幅はかなりあります。また、後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料とは別に、後遺障害逸失利益も請求でき、この後遺障害逸失利益についても弁護士を入れることで大幅な賠償金増加が期待できます。そのため、弁護士を介入させた場合の賠償金の増額幅と、これにかかる弁護士費用を比較すると、経済的に大きなプラスとなるケースが多いです。

この点は、ご相談先の法律事務所によって費用体系は変わりますので、弁護士に相談してみると良いでしょう。

弁護士法人サリュは、費用は後払いですし、費用倒れとなる可能性がある場合は、その旨明確にお伝えし、あえてご依頼を控えていただくようご案内することもございます。

関連記事:交通事故の弁護士費用相場はいくら?費用倒れとならない4パターン

(8)保険会社から送られてきた賠償金提案書の後遺障害の部分には「75万円」と記載されていました。これは何ですか?

後遺障害申請の結果、14級の後遺障害が認定されると、自賠責保険から自賠責保険金として75万円が支払われることがあります。これは自賠責基準の後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の合計額です。つまり、相手方の保険会社から送られてきた賠償金の提案書の後遺障害部分に「75万円」と記載されている場合、それは「後遺障害部分については自賠責基準で納得してください」という保険会社からのメッセージということになります。この金額は、不当なケースがほとんどですので、必ず示談前に弁護士に相談しましょう。

9 弁護士法人サリュの後遺障害慰謝料に関する解決事例

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