交通事故の過失割合は誰が決める?納得の割合にするための対処も解説
「交通事故の後、保険会社から連絡がきたけど、過失割合って誰が決めるの?」
この記事を読んでいるあなたは、保険会社に一方的に過失割合を提示されて、「保険会社が決めるのか?」「既に決まってしまっているのか?」と不安を感じているのではないでしょうか。
結論、過失割合は交通事故の当事者同士が決めるものです。
加害者の保険会社に、勝手に、一方的に決める権利はありません。
過失割合決定までの流れ |
1.当事者間で事故状況をすり合わせる(信号の色、一時停止をしたかどうかなど) 2.事故の状況や過去の裁判例をもとに「基本割合」を出す 3.具体的行為態様などをもとに修正をおこなう 4.話し合いをおこない、双方の合意のもと過失割合が決まる |
しかし、決定事項のように一方的に過失割合を提示し、示談を進めようとしてくる保険会社は多く存在します。
よく調べないまま保険会社の主張を受け入れてしまうと、自身の過失が本来より大きく認定されて、受け取れる賠償金が減ることもあります。
そこで、この記事では以下について解説します。
この記事で分かること |
・交通事故の過失割合は誰が決めるのか ・図で見る過失割合の決め方 ・保険会社に過失割合を主張されても直ちに受け入れてはいけない理由 ・過失割合に納得がいかないときはどうするか ・弁護士の介入で過失割合の交渉が成功した3つの事例 |
この記事を読めば、過失割合を誰が決めるのか分かり、保険会社から連絡がきても適切な対応ができます。
納得できる過失割合で示談成立するためにも、過失割合について知識を付けましょう。
この記事の監修者
弁護士 梅澤 匠
弁護士法人サリュ福岡事務所
福岡県弁護士会
交通事故解決件数 1,700件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2009年 3月 明治大学法学部 飛び級入学のため中退
2012年 3月 同志社大学司法研究科 修了
2012年 9月 司法試験合格
2013年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【公職】
同志社大学司法研究科兼任教員(民法演習担当)
-獲得した画期的判決-
【大阪高裁平成30年1月26日・判例タイムズ1454号48頁】(交通事故事件)
歩行者との非接触事故につき,自動車運転者の過失責任が認められた事例
【神戸地裁令和元年6月26日判決・自保ジャーナル2054号110頁】(交通事故事件)
転回時の衝突事故について有利な過失割合が認定された事例
【神戸地裁令和元年7月24日・交通事故民事裁判例集52巻4号913頁】(交通事故事件)
併合14級の後遺障害逸失利益の算定について、減収がなかったものの逸失利益を認定した事例
その他複数
【弁護士梅澤の弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例336:死亡事故で被害者参加制度を利用。遺族の気持ちを加害者に直接伝えたい
事例344:異議申立てで、むちうち症状の後遺障害等級を第14級9号から第12級13号へ覆した事例
事例158:後遺障害申請サポートで13級を獲得。示談交渉時256万円の提示だったが、訴訟提起で1030万円を獲得
目次
1.交通事故の過失割合は誰が決める?
交通事故の過失割合は、事故の当事者同士で決めるものです。
1章では、警察や相手の保険会社に決定権がないことについても、解説します。
・過失割合を決めるのは事故の当事者同士 ・過失割合を警察が決めることはない ・過失割合を相手保険会社の独断で決めることはできない |
1-1.過失割合を決めるのは事故の当事者同士
交通事故の過失割合を決めるのは、事故の当事者同士です。
事故の当事者同士が納得するまで話し合いをして、決定(示談)します。
言い換えると、事故の当事者のどちらかでも納得しない状態では、過失割合は決まらないのです。
ただ、本人同士が直接話すというわけではなく、保険会社が代わりに交渉することも多くあります。
そのため「過失割合を決めるのは当事者の代理人としての保険会社同士」とも言えます。
例外:当事者間の示談交渉で意見がまとまらず訴訟になった場合は、裁判所が過失割合を決めることになります。 |
1-2.過失割合を警察が決めることはない
過失割合を、警察が決めることはありません。
交通事故の後、現場に警察が来て実況見分が行われたはずです。
この実況見分をもとに警察が作成する報告書は、事故の状況を示す証拠として、過失割合の決定に影響を与えます。
しかし、警察には過失割合そのものの決定権がありません。
仮に、現場で警察官が「あなたは一切悪くないですよ」とか「この事故の過失割合は3対7くらいですよ」などと発言していたとしても、その発言には意味はありません。
過失割合は事故の状況をもとに当事者同士で決定するものなのです。
1-3.過失割合を相手保険会社の独断で決めることはできない
過失割合を、相手の保険会社の独断で決めることはできません。
過失割合は双方が納得したうえで決定されるものなので、どちらか一方の意見だけのみで決定されることはありません。
相手の保険会社に「今回は過失割合が〇:〇になると思います」「過失割合は〇:〇なので…」などと言われても、それは相手側の主張であり、決定事項ではないのです。
2.過失割合の決め方を図で解説|基本割合が基準となる
交通事故の過失割合は、事故の状況や過去の裁判例に基づく「基本割合」が基準となります。
以下のとおり、基本割合を出してから修正をおこない、最終的な過失割合を決定するのが一般的な流れです。
過失割合決定までの流れ |
1.当事者間で事故状況をすり合わせる(信号の色、一時停止をしたかどうかなど) 2.事故の状況や過去の裁判例をもとに「基本割合」を出す 3.具体的な行為態様などをもとに修正をおこなう 4.話し合いをおこない、双方の合意のもと過失割合が決まる |
ひとくちに交通事故といっても、状況はさまざまです。
そのため、まずは交通事故発生の状況について当事者間の認識をすり合わせます。
そのうえで「別冊判例タイムズ38」という書籍を用いて該当図から基本過失割合を算出します。
ここでは、例として、4つの状況別に基本割合を図で解説します。
・信号機のある交差点での事故 ・道幅が違う場所での事故 ・信号待ちでの追突事故・駐車場内での事故 |
2-1.信号機のある交差点での事故
青信号で直進していたAに、信号無視のBが衝突した場合の基本割合は、A:B=0:100です。
2-2.道幅が違う場所での事故
道幅が違う交差点の場合は、狭い道路を走るAの過失が大きくなります。
したがって、この場合の基本割合は、A:B=70:30です。
2-3.信号待ちでの追突事故
信号待ちをしているBにAが衝突した場合の基本割合は、A:B=100:0です。
2-4.駐車場内での事故
駐車区画から出ようとするAと、通路を進行するBが衝突した場合は、駐車区画から出るほうの過失が大きくなります。
したがって、この場合の基本割合は、A:B=70:30です。
基本割合は絶対ではない! |
事故の状況別に基本割合を紹介しましたが、これをもとに修正をおこないます。当事者の属性やスピードなどの具体的運行態様状況によって修正されるため、基本割合はあくまでも目安であること押さえておきましょう。 |
3.【注意】保険会社に過失割合を提案されてもすぐに受け入れてはダメ!
過失割合がどのように決まるのか解説しましたが、注意すべきことがあります。
それは、「保険会社に過失割合を提案されてもすぐに受け入れてはいけない」ということです。
2.過失割合の決め方を図で解説|基本割合が基準となるで解説したとおり、過失割合を基本割合を修正することで算定することになりますが、事故の状況は1件1件異なるため、似ているからといって同じ過失割合になるわけではありませんよ。
あなたが、「信号のない交差点での自動車同士の事故だから、自分の過失は40%か……」などと思っていても、事故時の状況によっては過失割合が少なくなったり大きくなったりする可能性もあります。
保険会社が提案してくる過失割合が正しいとも限りません。
納得がいかない場合は交渉の余地があるので、すぐに受け入れることはやめましょう。
4.過失割合に納得いかないときの対処法
加害者側が提案する過失割合に納得いかないときは、自分で対処する方法と、交通事故に強い弁護士を頼る方法の2つの対処法があります。
物損事故と人身事故、それぞれ解説します。
4-1.物損事故の場合
車に擦り傷ができた、凹んだ、などの物損事故で過失割合に納得いかないときは、以下の方法で対処します。
物損事故で過失割合に納得できない場合の対処法 |
・ドライブレコーダーを提出する ・現場で聞き込みをして目撃者を探し証言してもらう ・事故現場周辺に防犯カメラを探し、あれば取り寄せて提出する |
しかし、これらを一人でおこなうのは難しいと感じる方もいるはずです。
物損事故で過失割合に悩むときは、弁護士費用特約を利用して弁護士に依頼したり、弁護士費用特約がなく、費用負担も難しい場合には法テラスを利用する方法もありますよ。
法テラスは、無料の法律相談をおこなう公的機関です。交通事故後の手続きや慰謝料相場などに関する情報を、無料でアドバイスしてもらえます。 ただ、法テラスを利用するには、以下のような条件を満たしている必要があります。 ・収入が一定額以下であること ・不当な目的で無料相談を利用しないこと 詳しい内容や条件は、「法テラス 無料法律相談に関するよくあるご質問」でご確認ください。 |
4-2.人身事故の場合
人身事故の場合は、怪我の内容や治療期間によって損害賠償額が大きくなります。弁護士を選任することで賠償金の回収額が大きく上がることも多いので、積極的に弁護士に相談しましょう。
交通事故に詳しい弁護士には、多くの交通事故案件を解決してきた実績があります。
弁護士に相談するべき理由は、以下のとおりです。
交通事故に強い弁護士ができること |
・証拠収集ができる ・裁判例や法令に基づいて適正な過失割合を主張できる ・専門機関(ADR)への申立てや裁判をスムーズに進められる |
※専門機関(ADR)とは、交通事故紛争処理センターや日弁連事故相談センターのことです。自動車事故の被害者と加害者の間に立ち、中立的な立場で問題解決を手伝ってくれます。
人身事故において、被害者本人の力だけで提示された過失割合を覆す証拠を集めるのは難しいケースも多いです。弁護士なら、知識や経験をもとに証拠を収集し、保険会社と有利に交渉を進められます。
弁護士費用に不安を感じている方は、弁護士費用特約に加入しているか確認してみてください。 弁護士特約に加入している場合、 ・10万円までの相談費用 ・300万円までの弁護士費用 を保険会社に補償してもらえます。 また、弁護士特約を使えなかったり、経済的に余裕がない方も、着手金無料で引き受けてくれる事務所もありますし、法テラスを利用することもできます。法テラスの詳しい内容や利用条件は、「法テラス 無料法律相談に関するよくあるご質問」でご確認ください。 |
5.【事例】弁護士の介入により過失割合の交渉に成功した3つのケース
先ほども触れましたが、弁護士に相談することで、知識や経験をもとに保険会社と交渉し、提示された過失割合を覆せる可能性もあります。
ここでは、弁護士法人サリュで実際にあった、弁護士の介入により過失割合の交渉に成功した事例を3つ紹介します。
5-1.ケース1.過失割合「7:3」→「0:10」自動車と自転車の事故
過失割合 | 7:3→0:10 |
事故の状況 | 自動車を運転中、右側路地から交差点に左折進入してきた自転車と衝突 |
Aさんは自動車運転中、右側路地から交差点に左折進入してきた自転車と衝突しました。
双方に怪我はありませんでしたが、相手の保険会社は、自転車よりも自動車のほうが過失が重くなる理論に基づき、7:3の過失割合であると主張してきました。
Aさんは提案された過失割合に納得がいかず、サリュにご相談くださいました。
サリュの弁護士は裁判を起こし、ドライブレコーダーの映像をもとにAさんに過失がないことを主張。
その結果、今回の事故の状況では、Aさんは自転車との衝突を予測できない状況だったことが認められたのです。
最終的に、Aさんには一切の過失がなかったことが認められ、過失割合は7:3から0:10になりました。
5-2.ケース2.過失割合「75:25」→「30:70」原付バイクと自動車の事故
過失割合 | 75:25→30:70 |
事故の状況 | 原付バイクで走行中、信号のない交差点で右折しようとした際、追い越してきた自動車と接触して転倒 |
Iさんは、片側一車線の道路を原付バイクで走行していました。
信号のない交差点で右折しようとした際、追い越してきた自動車と接触して転倒したのです。
当初、加害者は自分の非を認めていましたが、後日おこなわれた実況見分では「自分は悪くない」と主張し、態度を変えます。
相手保険会社から「過失割合は5:5」と提案されたタイミングで、サリュにご相談くださいました。
相手に訴訟を提起され、一審では75:25の判決に。
しかしサリュの弁護士が諦めず控訴して戦い、一審判決の誤りを主張したところ、最終的に30:70で過失割合を覆すことができたのです。
5-3.ケース3.過失割合「2:8」→「0:100」自動車と自動車の事故
過失割合 | 2:8→0:10 |
事故の状況 | 自動車運転中、スーパーの駐車場から右折進入してきた自動車に衝突される |
Sさんは車通りの多い道路を自動車で走行中、スーパーの駐車場から右折進入してきた自動車に衝突されました。
怪我はありませんでしたが、加害者の保険会社は過失割合2:8と主張し、修理費の全額支払いを拒否したのです。
自分に落ち度がないと考えるSさんは納得いかず、サリュにご相談くださいました。
保険会社は、「動いている自動車同士の事故で過失割合が0:100になることはない」と主張。
サリュの弁護士は提訴し、現場調査をしたり右折禁止の看板の写真を撮るなどして報告書を作成しました。
動いている自動車同士の事故でしたが、結果、0:10の判決を獲得できました。
6.過失割合で悩む方は弁護士法人サリュにご相談ください
交通事故に遭い、不当な過失割合を主張されて困っている方は、弁護士法人サリュにご相談ください。
サリュは、交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。
被害に遭った側なのに、「あなたにも悪い部分がある」と言われるのは、悔しいですよね。
サリュは、あなたの納得いく過失割合になるよう、現場に足を運んだり、必要であれば訴訟を起こして保険会社と戦います。
サリュでは人身事故に限らず物損事故の過失割合に関するご相談もお受けできます。
弁護士に依頼すべき案件かどうか迷う方も、「このまま保険会社の言いなりにはなりたくない」「相手の主張がおかしい」と感じるなら、是非一度お問い合わせください。
\交通事故2万件の解決実績/
7.まとめ
交通事故の過失割合は、以下の流れで事故の当事者同士が決めるものです。
過失割合決定までの流れ |
1.当事者間で事故状況をすり合わせる(信号の色、一時停止をしたかどうかなど) 2.事故状況や過去の裁判例をもとに「基本割合」を出す 3.具体的運行態様などをもとに修正をおこなう 4.話し合いをおこない、双方の合意のもと過失割合が決まる |
過失割合は実況見分を行った警察や、加害者側の保険会社が勝手に決められるものではありません。
加害者の保険会社に過失割合を提案されても、納得できない場合は交渉の余地があるため、すぐに受け入れないようにしましょう。
過失割合に納得がいかない場合は、自分で対処するか、弁護士に相談して対処します。
特に人身事故の場合、過失割合によってあなたが受けとれる賠償金の額が大きく変わるため、不満を抱えた状態で話を進めてはいけません。
交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、過失割合を覆せる可能性もあるので、諦めないでくださいね。