交通事故で脊髄損傷を負ったら|やるべきことや補償・賠償金を解説

「交通事故に遭い脊髄損傷を負ってしまった。今後のお金や生活はどうなってしまうのだろう。」

「大事な家族が事故で脊髄損傷を負ってしまった。自分達にできることは何?」

交通事故で脊髄損傷を負わされた方や被害者のご家族は、悲しみや不安で押しつぶされそうになっているはずです。

そのような状況のなかで、今後について考えるのはつらいことでしょう。

脊髄損傷を負った方やご家族が今後のためにやるべきことは、以下の3つです。

脊髄損傷を負った方やご家族がまずやるべき3つのこと
1.治療・リハビリに専念して回復を目指す
2.退院後の生活を想定して環境を整える
3.慰謝料や治療費などのお金を受け取る準備をする

ひどい事故に遭わされた事実を、お金で解決できるわけではありません。

ですが、事故によって怪我をさせられたあなたや家族が、これから少しでも安心して暮らしていくためには、お金も大切なのです。

なかでも、慰謝料や治療費(賠償金)などのお金を受け取る準備をすることは、重要といえます。

賠償金は、準備の進め方によって金額が数百~数千万円も変わる可能性があるものなので、しっかり受け取らないと今後の生活の質が大きく変わる可能性もあるのです。

治療やリハビリが終わってからも続いていくあなたの人生を、少しでも穏やかなものにするために、この記事では以下のことを解説します。

この記事で分かること
・脊髄損傷を負った被害者やご家族が今やるべき3つのこと
・脊髄損傷を負った方が受け取れるお金や補償一覧
・賠償金の金額を左右する後遺障害等級の重要性
・交通事故による脊髄損傷で正当な賠償金を受け取るための流れ
・今後の生活や賠償金獲得に関するサポート

治療に専念したり退院後の生活環境を整えたりするのと同じくらい、お金を受け取る準備をすることは大事です。

焦らず行動できるよう、まずは脊髄損傷を負った被害者やご家族が今やるべきことから理解していきましょう。

この記事の監修者
弁護士 松葉 想

弁護士法人サリュ名古屋事務所
愛知県弁護士会

交通事故解決件数 1,300件以上
(2024年1月時点)
【獲得した画期的判決】
【加害者責任否認案件において加害者の過失を85パーセントとし、症状固定時41歳男性の労働能力喪失期間を73歳までと認定した判決】(大阪地裁平成27年7月3日判決(交通事故民事裁判例集48巻4号836頁、自動車保険ジャーナル1956号71頁))
・自賠責保険金を含んだ回収額が3億9000万円となった裁判上の和解
・自賠責保険における等級認定が非該当であった事案において、後遺障害等級5級を前提とする裁判上の和解
・死亡、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害等の示談や裁判上の和解は多数
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例334:事前認定後遺障害非該当に対し、諦めずに異議申立て。後遺障害第14級9号を獲得した事例
事例355:本業の休業がなくても、副業を全休し収入が減少。訴訟手続きにより、副業の休業損害の多くを判決で勝ち得た事例
事例374:足首の両果骨折の賠償金が当初の相手方提示金額より2.3倍になった事例

弁護士法人サリュは、交通事故の被害者側専門で20,000件以上の解決実績を誇る法律事務所です。

交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
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1.交通事故で脊髄損傷を負ったら|被害者やご家族がやるべき3つのこと

交通事故で脊髄損傷を負い、突然できないことが増えたつらさや身体が不自由になった悲しみ、今後の不安は、はかり知れません。

しかし冒頭でもお伝えしたように、脊髄損傷を負った方・被害者を支えるご家族の方が、これから少しでも安心して暮らすためにできることがあります。

以下の3つをおこない、一緒に少しずつ先のことを考えていきましょう。

1.治療・リハビリに専念して回復を目指す
2.退院後の生活を想定する
3.お金を受け取る準備をする

1-1.治療・リハビリに専念して回復を目指す

まずは、何よりも治療・リハビリに専念して回復を目指しましょう

一般的に、事故直後は脊髄の損傷を最低限に抑えるため、安静にします。

その後、リハビリをおこなうのが基本の流れです。

治療やリハビリを優先すべき理由は、脊髄損傷が、損傷直後から数週間(急性期)が回復に大きく影響する怪我だからです。

脊髄損傷は、手足の麻痺や排尿・排便障害などの症状を引き起こす可能性がある怪我で、比較的早期に将来の後遺症が決まるといわれています。

事故直後の重要な時期に治療やリハビリをしないと、以下のような状態になる恐れもあるのです。

・筋肉の緊張や肺の機能が低下し、血栓症や肺炎になる
・関節が固まり、手足が動かしにくくなったり麻痺が強く残ったりする

なかには、怪我をしたショックや不安から、自暴自棄になって前向きな気持ちで治療を受けられない方もいるでしょう。

被害者をそばで支えるご家族も、本人が前向きではない状態で無理に治療やリハビリをすすめるのは、心苦しく感じるはずです。

しかし、急性期の適切な治療やリハビリが、後遺症を最小限に抑えることにつながります

そのため、まずは医師の指示に従って何よりも治療を優先し、回復を目指してください。

参考:日本リハビリテーション医学会 脊髄損傷のリハビリテーション治療

1-2.退院後の生活を想定する

退院後の生活を想定するのも、今のうちにやっておくべきことの一つです。

なぜなら、脊髄損傷で重い後遺症が残った場合、これまでどおりの生活ができない可能性が高いからです。

例えば、以下のようなことを考えておけば、いざ準備が必要になったときに焦らずにすみます。

・介護が必要になった場合に自宅で介護するのか

・足に麻痺が残って自力で歩けない場合にスロープを付けるのか

退院後は、加害者に請求するお金のことや介護方法など、考えるべきことが多数あります。

1から準備を進めるのは大変なので、焦らず退院の日を迎えるためにも、退院後の生活を想定しておきましょう

また、脊髄損傷を負った方やご家族の支援団体があります。

被害者家族との情報交換や、退院後の生活準備についての相談ができる以下のサイトも、ぜひご覧ください。

脊髄損傷を負った方やご家族向けの支援団体
NPO法人日本頸髄損傷LifeNet
全国頚髄損傷者連絡会
一般社団法人 交通事故被害者家族ネットワーク

1-3.お金を受け取る準備をする

保険金や賠償金などのお金を受け取る準備も、脊髄損傷を負った方やご家族がやるべきことです。

正当な金額を獲得するためにあなたが今できる準備は、以下のとおりです。

今できるお金を受け取るための準備
【本人・家族】受け取れるお金の種類や、自分の場合どのくらいもらえる可能性があるのかを知る
【本人・家族】正当な賠償金を獲得する方法を知る
【家族】入通院の付き添いにかかった費用を記録しておく(領収書をとっておく)

※付き添いにかかった費用を記録するべき理由は、示談交渉時に請求できる場合があるため

事故直後は、まだお金のことを考える余裕はないかもしれません。

しかし、治療をするにも退院後の生活環境を整えるにも、お金は必ず必要になります。

また、治療やリハビリがある程度落ち着いてきたら、加害者側との示談交渉がはじまります。

どのようなお金を受け取れるのか知っておけば、加害者側に賠償金を提示された際、それが正しいかどうか判断できるでしょう

受け取れるお金の種類や、賠償金を獲得する方法は本記事で解説するので、このまま読み進めてくださいね。

2.交通事故で脊髄損傷を負った方が受け取れるお金や補償の種類

1章では、交通事故で脊髄損傷を負った方やご家族がまずやるべきことを、紹介しました。

つらさや悲しみをお金で解決できるわけではないですが、これから安心して生活を送るためにも、あなたはお金や補償をしっかり受け取るべきです。

あとから

「このようなお金も請求できたんだ」

「こんな補償もあったんだ」

などと後悔しないよう、交通事故で脊髄損傷を負った方が受け取れる可能性があるお金や、補償の種類を理解しておきましょう。

事故で脊髄損傷を負った方が受け取れるお金や補償
お金・補償の種類もらえる人
損害賠償金・加害者のいる事故により傷害を負った人
生命保険の保証・生命保険(医療保険等)に加入している人
労災保険給付・仕事中や通勤中に事故に遭った人
人身傷害保険・事故による怪我で治療した人
障害年金・脊髄損傷で重い後遺障害が残った人
※障害年金1~3級
傷病手当金・事故による怪我が原因で会社を休んだ人
身体障害者手帳・脊髄損傷で後遺障害が残り審査に通った人
※身体障害者手帳1~6級

2-1.損害賠償金

事故で脊髄損傷を負った方は、以下の損害賠償金を加害者に請求し、受け取ることができる可能性があります。

損害賠償金とは、事故によって怪我を負ったり会社を休んだり後遺障害が残ったりしたことに対して、被害者が加害者に請求できるお金のことです。

損害賠償金の種類内容・金額例
入通院慰謝料・入通院による精神的なダメージに対して支払われるお金
・入通院する期間によって金額が変わる
3ヶ月入院+3ヶ月通院した場合:188万円
6ヶ月入院+6ヶ月通院した場合:282万円
治療費・入院費・通院や入院時にかかったお金
通院交通費・通院にかかったお金
休業損害・怪我が原因で仕事を休んだ分のお金
・事故前の収入によって金額が変わる
後遺障害慰謝料・後遺症が残ったことの精神的ダメージに対して支払われるお金
・後遺障害認定の等級によって金額が変わる(290万~2,800万円)
後遺障害3級の場合:1,990万円
後遺障害9級の場合:690万円
後遺障害逸失利益・事故に遭わなければ将来得られたはずの収入
・事故前の収入や年齢などによって金額が変わる
介護費・改造費・車いす購入費用など・自宅の改装や介護などにかかったお金

※金額例は裁判所基準で計算されたものです。

事故で脊髄損傷を負ったあなたは、入通院にかかったお金はもちろん、怪我が原因で仕事を休んだ分のお金なども、加害者に請求できます。

最終的に受け取れる金額は、怪我の程度や年齢などによって異なりますが、数百万円から数億円に及ぶケースもあります。

実際に当事務所サリュにおいても、脊髄損傷を負った方の最終的な損害賠償金が約600万円~約3,000万円となった事例があります。

それぞれの事例をクリックすると詳細がご覧になれます。
【賠償金2,700万円】中心性脊髄損傷・痺れが残ったケース
【賠償金2,200万円】頚部痛や両手足の痺れが残ったケース
【賠償金577万円】中心性脊髄損傷・両手に痛みや痺れが残ったケース
賠償金2億円以上】脊髄損傷により麻痺等が残ったケース

ただ、損害賠償金を受け取れるといっても、「どう受け取れば良いのか」想像もつかない方も多いかと思います。

その詳しい方法は「4.脊髄損傷で正当な賠償金を獲得する方法6ステップ」でお伝えするので、このまま読み進めていきましょう。

2-2.生命保険の保障

交通事故で脊髄損傷を負った方が生命保険に加入していれば、以下の保障や保険金を受け取れる場合があります。

入院保障:入院した際に給付金が支払われる
通院保障:保障対象となる通院をした際に支払われる
高度障害保険金:完全麻痺、随時介護が必要になった場合などに支払われる

加入している保険によって、入院日数〇日まで・退院後〇日以内の通院まで、のように、保障を受けられる基準が異なります。

申請してから受け取るまでに時間がかかるケースもあるため、加入している保険会社に保障を受けられるかどうか、早めに確認してください。

また、医療保険に入っていれば、医療保険からも入院や手術を受けた際に給付金が支払われます

医療保険の給付金を受け取る場合も申請が必要なため、保険会社に確認しましょう。

2-3.労災保険給付

仕事中や通勤中の交通事故で脊髄損傷を負った場合は、労災保険給付を受けられます。

療養補償給付:治療費全額が支給される
休業補償給付:会社を休んだ場合、給付基礎日額の約80%が支給される(休業4日目から)
障害補償給付:後遺症が残った場合、障害の程度によって一時金や年金が支給される

※給付基礎日額=労働基準法の平均賃金に相当する額のこと

治療費や休業補償を加害者の保険会社から受け取るなら、労災保険給付を受けることはできません

労災保険給付を受ける際の基本の流れは、以下のとおりです。

労災保険給付の申請先は、お住まいの地域の労働基準監督署です。

ただ、職場によって労災保険給付を受ける手続き方法が異なるため、申請前にまずは職場に確認しましょう。

2-4.人身傷害保険

任意の自動車保険に加入している方は、人身傷害保険から保険金を受け取れる場合があります。

人身傷害保険は、ほかの保険や補償と同時に受け取ることが可能な場合もあり、過失割合も関係ありません

人身傷害保険で受け取れるお金は、以下のようなものです。

・事故による怪我の治療費

・会社を休んだ分の収入

・逸失利益

・将来の介護費など

通常、損害賠償金は、自賠責保険と加害者の任意保険会社の両方から支払われます。

しかし、加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険からしか賠償金をもらえません。

そのようなとき、人身傷害保険があると、足りない分を補てんできます。

任意の自動車保険に加入しているなら、保険会社の担当者に保険金の申請をしたい旨を伝えて、申請しましょう。

2-5.障害年金

事故による脊髄損傷が原因で生活や仕事に支障が出ており、障害年金の1~3級に該当する方は、障害年金を受け取れます

国民年金に加入している方は障害基礎年金、厚生年金に加入している方は障害基礎年金と厚生年金を両方受け取れる仕組みです。

等級の基準と、年間受給額の例を、以下にまとめました。

障害厚生年金の金額には、障害基礎年金と厚生年金の両方が含まれています。

等級基準
1級他人の介護を受けなければ日常生活を送れない状態
2級必ずしも他人の助けは必要ではないが、助けなしで日常生活を送れない・働けない状態
3級日常生活は問題なく送れるが、以前のように働けない状態

障害年金の等級は、後遺障害認定の等級と異なります

金額は、年金への加入期間や収入・子供の人数などによって異なります

障害年金を受け取る条件は、初診日に年金に加入していること・直近の1年間の未納がないことなどです。

障害年金を申請する際は、日本年金機構から書類をダウンロードして記入し、年金事務所や市区町村の役所に提出します。

脊髄損傷を負った方は障害年金を受け取れる可能性が高いので、詳しい条件や金額などを日本年金機構の公式サイトでご確認ください。

2-6.傷病手当金

事故による怪我が原因で働けなくなった方は、傷病手当金を健康保険から支払われる傷病手当金を受け取れます。

傷病手当金を受け取れる条件は、次のとおりです。

傷病手当金を受け取れる条件
・事故による怪我が原因で連続3日以上休んでいる
・傷病手当金を上回る額の休業分の給与を、会社からもらっていない
・労災保険から休業補償給付を受けていない

傷病手当金は、会社を休んだ1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。

支給される期間は、支給日から通算1年6ヶ月です。

脊髄損傷を負って働けなくなったのに、会社から給与をもらえなかった、労災保険からも補償を受けられなかった方は、傷病手当金を活用しましょう。

ただし、同じ怪我で障害厚生年金または障害基礎年金を受けている方は、満額はもらえないことを留意しておいてください。

傷病手当金を申請する際は、加入している健康保険組合のサイトか、全国健康保険協会のサイトから書類をダウンロードし、指定の場所に提出します。

2-7.身体障害者手帳

交通事故で脊髄損傷を負った方が一定の条件を満たしていれば、身体障害者手帳を取得できます。

身体障害者手帳とは、以下のような日常生活に関するさまざまなサポートを受けられる手帳です。

身体障害者手帳の取得で受けられるサポート
・医療費等の助成:医療費やリフォーム費用など
・税金の軽減:所得税や住民税など
・公共料金の割引:バスや電車の運賃、公共施設の入場料など

障害者手帳の等級は、症状によって1~7級にわかれますが、身体障害者手帳をもらえるのは1~6級のどれかに認定された場合です。

身体障害者手帳の等級は、自賠責保険や労災保険における後遺障害認定や障害年金の等級とは異なります。 

お住まいの地域の障害福祉担当窓口で必要書類を記入・申請したら、審査によって等級が決定します。

障害年金や障害者手帳は早めに申請すべき
障害年金や身体障害者手帳は、将来的にもらえるお金やサポートです。
申請から結果が出るまでに時間がかかる場合もあるため、早めの申請をおすすめします。

しかし、加害者への損害賠償の請求と同時に、これらの申請をおこなうのが難しい方もいるでしょう。
損害賠償の請求は弁護士が力になれるため、弁護士への相談も検討してみてください。

3.損害賠償金が「数百~数千万円」も変わる後遺障害等級の重要性

2章では、脊髄損傷を負った方が受け取れるお金や補償を紹介しました。

そのなかのひとつである損害賠償金は、あなたが失ったものに対するお金であるとともに、精神的な苦しみやつらさに対する慰謝料でもあります

被害者であるなら、正当な慰謝料を受け取るべきなのです。

しかし、賠償金を請求すれば必ず正当な金額をもらえるわけではありません。

後遺障害認定を申請し、あなたの症状に合う後遺障害等級を獲得できなければ、後遺障害慰謝料の金額が数百~数千万円も変わってしまうのです。

後遺障害認定・後遺障害等級とは
後遺症が交通事故によるものだと認めてもらうことを、後遺障害認定という。
後遺障害認定の等級は1~14級まであり、数字が小さいほど後遺症が重い。

以下に、脊髄損傷で認定される可能性のある後遺障害等級と、後遺障害慰謝料の金額をまとめました。

等級具体的な症状後遺障害慰謝料
(裁判所基準)
1級脊髄損傷による症状が原因で、身の回りの動作において常に介護が必要2,800万円
2級脊髄損傷による症状が原因で、身の回りの動作において随時介護が必要2,370万円
3級身の回りの動作はできるが、脊髄損傷による症状が原因で働けない1,990万円
5級脊髄損傷による症状が原因で、とても簡単な仕事しかできない1,400万円
7級脊髄損傷による症状が原因で、簡単な仕事しかできない1,000万円
9級脊髄損傷による症状が原因で、就労可能な職種の範囲がかなり制限される690万円
12級通常どおり働けるが、脊髄損傷による症状によって多少の障害がある290万円

後遺障害等級を獲得するには、事故によって脊髄損傷を負ったこと、後遺症が残っていることを証明する必要があります。

自分では5級程度の症状だと思っていたとしても、検査結果や診断書の内容で後遺症を証明できなければ、9級や12級が認定される可能性もあるのです。

また、後遺障害逸失利益にも、後遺障害等級は大きく影響します

以下の表は、等級によってどのくらい逸失利益が変わるのかをまとめたものです。

35歳男性の平均収入を基に計算しています。

【35歳男性の後遺障害逸失利益(一例)】

等級後遺障害逸失利益の金額
1級~3級1億1,419万円
5級9,021万円
7級6,395万円
9級3,997万円
12級1,599万円

※逸失利益は、年齢やその人の収入、どれくらい労働能力が失われたかなどによって、金額が変わります。ここで紹介しているのは、一例です。

このように、等級が変わるとあなたが受け取れる金額は大幅に上下します

そのため、適切な後遺障害等級を獲得することが大切です。

4.脊髄損傷で正当な賠償金を獲得する方法6ステップ

後遺障害認定が、賠償金を左右する重要なものだと解説しました。

次に気になるのは、どうすれば脊髄損傷で適切な後遺障害等級を獲得できるのか、ではないでしょうか。

後遺障害等級を獲得し、賠償金を獲得するまでの流れは次のとおりです。

1.脊髄損傷を証明する検査を受ける
2.治療・リハビリを続ける
3.主治医に症状固定の診断を受ける
4.脊髄損傷による後遺障害を証明できる診断書を用意する
5.後遺障害認定を申請し等級を獲得する
6.加害者側と示談交渉し慰謝料や治療費を請求する

後遺障害等認定を申請して怪我に見合う等級を獲得するのは、簡単なことではありません。

そのため、交通事故に詳しい弁護士の力を頼るのがおすすめです。

弁護士がいれば、ここで紹介する1~6までのステップを、スムーズに進めやすくなります。

弁護士が力になれる理由は、「5-2.【賠償金が不安な方】交通事故に強い弁護士への相談・依頼」で詳しく解説するので、まずは賠償金を獲得するための全体の流れをつかんでいきましょう。

4-1.脊髄損傷を証明する検査を受ける 

まずは、脊髄損傷を証明する検査を受けましょう。

脊髄損傷を証明するには、CTやレントゲン・MRIなどの精密検査を受けることが大切です。

なぜなら、どれだけ重い後遺症があっても、画像で脊髄損傷があることを証明できないと、適切な後遺障害等級が認定されない傾向にあるからです。

CTやレントゲンだと、損傷が写らない場合があります。

そのため、MRIを受けていない場合はすぐに受けてください。

また、なるべく早い段階で精密検査を受けることも大事です。

事故から時間が経ってしまうと、事故による損傷かどうか疑われる原因になります。

主治医が交通事故に詳しくない場合、後遺障害認定に必要な検査の知識もない可能性があります。

そのため、主治医に指示された検査だけを受ければ良いわけではないのです。
MRIや筋力テストなどを受けていないなら、被害者本人やご家族が検査を依頼しなければなりません。

4-2.治療・リハビリを続ける

脊髄損傷を証明する検査を受けながら、治療やリハビリも続けましょう。

1-1.治療・リハビリに専念して回復を目指す」でもお伝えしましたが、脊髄損傷は損傷直後から数週間(急性期)が、回復に大きく影響するといわれています。

そのため、自己判断で治療やリハビリをやめてはいけません

脊髄損傷を負った方がおこなうリハビリは、以下のようなものです。

・可動域訓練

・筋力トレーニング

・歩行訓練

・電気刺激

少しでも不自由なく日常生活を送るためにも、医師の指示に従い、回復を目指してください。

参考:リペアセルクリニック 脊髄損傷後の機能回復に効果的なリハビリについて

4-3.主治医に症状固定の診断を受ける

次に、主治医に症状固定の診断を受けます。

症状固定とは:これ以上治療やリハビリを続けても、症状が良くならない状態。
症状固定の時期が治療期間を表すため、適切なタイミングでないと受け取れる治療費(賠償金)が減る。

症状固定は主治医が診断するものですが、本人と相談しながら決めるケースが一般的です。

まだ痛みが残っている、リハビリすればまだ改善しそう、などと感じるなら、主治医にしっかり伝えましょう。

ここで、注意すべきことがあります。

それは、加害者の保険会社が、治療期間を少しでも短くして損害賠償金を減らすために、症状固定を促してくることです。

加害者側の言いなりになり症状固定を早い時期で受け入れれば、後遺障害認定の申請時に

「治療期間が短かったので大した怪我ではないはず」

「リハビリ期間が短すぎて後遺症が残ったのでは」

などと思われ、低い等級にされる可能性もあります。

そのため、加害者側に症状固定を提案されても安易に受け入れてはいけません。

脊髄損傷は、事故から1年以上経って症状固定となるケースが多いので、怪我の状況に合わせて適切なタイミングで診断を受けましょう。

4-4.脊髄損傷による後遺障害を証明できる診断書を用意する

次に、脊髄損傷による後遺障害を証明できる後遺障害診断書を、主治医に作成してもらいます。

後遺障害診断書は、後遺障害認定の申請時に最も重視されるものです。

診断書に記載する内容を、以下にまとめました。

後遺障害診断書に記載する内容の一部
・自覚症状
・検査結果
・後遺障害の内容
・障害内容の今後の見通し

後遺障害認定を審査する専門機関は、診断書などの書類をもとに等級を検討します。

事故が原因の脊髄損傷があることを、証拠とあわせて細かく記載しなければ、正当な等級を獲得できません

また、以下のような診断書だと、脊髄損傷による後遺障害を証明できず、正当な等級を獲得できなくなる可能性があり、内容は慎重に確認・精査する必要があります。

記載の仕方が良くない診断書の内容例
「足に麻痺がある」
→説明が曖昧で、どのような麻痺があるかよく分からないと思われる
「まれに呼吸が苦しい」
→脊髄損傷との関係性を疑われる
「腕に痛みがあるが軽減している」
→治ってきているなら重い後遺症ではないだろうと思われる

診断書の書き方や内容は、後遺障害を証明する際の重要なポイントになります。

ただ、医療の知識がない状態で、主治医に診断書の書き方を指摘したり修正を依頼したりしても、聞いてもらえない可能性が高いです。

そのため、主治医との対応については、弁護士に相談することをおすすめします。

4-5.後遺障害認定を申請し等級を獲得する

後遺障害診断書を準備できたら、後遺障害認定を申請して等級を獲得します。

申請方法は、事前認定と被害者請求の2種類あります。

被害者が自分で書類や証拠を用意して申請する「被害者請求」のほうがおすすめです。

後遺障害認定を申請して結果が出るまでは、約1~6ヶ月かかります。

結果に納得いかない場合は、異議申立てをすることも可能です。

4-6.加害者側と示談交渉し慰謝料や治療費を請求する

後遺障害認定の結果が出たら、加害者側と示談交渉をします。

示談交渉の基本的な流れを、まとめました。

加害者側から慰謝料の金額などが記載された示談案が届く

内容を確認し、示談交渉する

双方が納得いく内容で話がまとまったら、示談成立となる

示談交渉で、入通院にかかったお金や、後遺障害等級をもとに計算した慰謝料などを請求します。

加害者側は、被害者に支払う損害賠償金を少しでも減らすために、低い金額で交渉してくるでしょう。

そこで、提示された金額が不当に安いこと、本来はいくら受け取るべきであることなどを、根拠と合わせて主張しなければなりません

ただ、弁護士を依頼していれば、このような示談交渉もすべて任せられます

直接加害者側と対立せずにすむので、安心してください。

5.交通事故で脊髄損傷を負った方が利用できるサポート

脊髄損傷で正当な後遺障害等級を獲得し、賠償金を受け取るためのポイントは理解していただけたでしょうか。

ここまで、背傷損傷を負った方やご家族がやるべきことを紹介してきました。

しかしこれらすべてを、被害者家族だけで乗り越える必要はありません。

あなたが思っている以上に、助けてくれる制度や団体などがあるので、安心してくださいね。

最後に、交通事故で脊髄損傷を負った方やご家族が利用できるサポートを紹介します。

【今後の生活が不安な方】自動車事故対策機構による被害者支援制度
【賠償金が不安な方】交通事故に強い弁護士への相談・依頼

5-1.【今後の生活が不安な方】自動車事故対策機構による被害者支援制度

脊髄損傷で重度後遺障害(主に後遺障害1~3級)を負った方やご家族は、被害者支援制度を利用するのがおすすめです。

自動車事故対策機構(ナスバ)による被害者支援制度を受ければ、以下のようなサポートを受けられますよ。

被害者支援制度の一部
・介護相談:在宅介護に関する相談ができる
・訪問支援:ナスバ職員に家に来てもらい、情報提供をしてもらう
※問い合わせ先→自動車事故対策機構(ナスバ)

重い後遺障害のある被害者を自宅介護する場合、常に誰かが見ていなければならないため、ご家族の負担は大きくなりがちです。

このような被害者支援制度を利用すれば、介護者の負担を軽減しながら、退院後も安心して生活を送れます。

5-2.【賠償金が不安な方】交通事故に強い弁護士への相談・依頼

賠償金が不安な方は、交通事故に強い弁護士への相談・依頼がおすすめです。

弁護士が、賠償金について不安な方やご家族の力になれる理由は、以下の2つです。

弁護士が脊髄損傷を負った方やご家族の力になれる理由
・後遺症の見落としを防げる場合があるから
・賠償金獲得のサポートができるから

交通事故に強い弁護士は、法律だけでなく医療の知識もあるため、主治医が気づけない後遺症に気づけることがあります。

後遺症を見落とされたら、つらい症状があるのに後遺障害等級を獲得できず、慰謝料が減ってしまうかもしれません。

また、脊髄損傷を負った方に必要な検査のアドバイスや、診断書の作成サポートができるのも、交通事故に強い弁護士だからできることです。

このため、4章で解説した「脊髄損傷で正当な賠償金を獲得する方法6ステップ」も、楽になるでしょう。

弁護士は過去の解決実績を活かして、後遺障害等級の獲得準備や加害者側との示談交渉など、正当な賠償金を受け取るために全力を尽くします。

このように、交通事故のプロならではの視点で被害に遭った方をサポートできるため、賠償金の獲得に不安を感じている方は弁護士を頼ってみてください。

私たち「弁護士法人サリュ」の弁護士は、交通事故に遭い脊髄損傷を負わされた方・ご家族を一番近くでサポートいたします。

サリュは、交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。治療途中から、症状固定時期や診断書の作成などであなたの力になれます。
【サリュの強み】
・交通事故の解決実績が約20,000件以上と豊富!
顧問ドクターと協力して、脊髄損傷を証明する証拠を集める
・脊髄損傷を負った方のサポート実績がある
脊髄損傷は、あなたの生活・人生が大きく変わってしまう、大怪我です。ひどい目に遭わされたあなたが、少しでも安心して生活できるよう、私たちは全力でサポートさせていただきます。
どんなに小さなことでも構わないため、まずは今抱えている悩みをお聞かせください。
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6.まとめ

この記事では、交通事故で脊髄損傷を負った方がすべきことや、受け取れるお金について紹介しました。

重要なポイントを、最後にまとめます。

交通事故で脊髄損傷を負ってしまった方・ご家族は、以下の3つをやるべきです。

【脊髄損傷を負った方がやるべきこと】
1.治療・リハビリに専念して回復を目指す
2.退院後の生活を想定する
3.慰謝料や治療費などのお金を受け取る準備をする

脊髄損傷を負わされた事実をお金で解決することはできませんが、安心して生活していくためにはお金が重要です。

あなたが受け取れるお金や補償は、以下のとおりです。

【脊髄損傷を負った方が受け取れるお金や補償】
・損害賠償金
・生命保険の保証
・労災保険給付
・傷病手当金
・人身傷害保険
・障害年金
・身体障害者手帳

なかでも、損害賠償金は数百~数億円もの差が出る可能性があるため、受け取る準備をしっかりしなくてはいけません

金額を左右するのは、後遺障害等級です。

後遺障害認定で正当な等級を獲得することが、正当な賠償金の受け取りにつながります。

【正当な賠償金を獲得する方法6ステップ】
1.脊髄損傷を証明する検査を受ける
2.治療・リハビリを続ける
3.主治医に症状固定の診断を受ける
4.脊髄損傷による後遺障害を証明できる診断書を用意する
5.後遺障害認定を申請し等級を獲得する
6.加害者側と示談交渉し慰謝料や治療費を請求する

後遺障害認定の申請や加害者との示談交渉は、弁護士が力になれます。

示談交渉はもちろん、治療中からさまざまなアドバイスができるので、ぜひ私たち弁護士にお任せください。

あなたやご家族が、これから少しでも安心して生活できることを、祈っています。