事故による記憶障害の症状|当てはまる人が取るべき行動を詳しく解説

「最近、約束を忘れたり、買い物で失敗したりすることが増えた。もしかして、交通事故による記憶障害?」

「事故に遭った家族に記憶障害のような症状が出ている。主治医に相談したほうが良いのだろうか」

このように、日常生活や仕事でさまざまな症状が現れ、事故が原因の記憶障害ではないかと不安を感じていませんか?

また、事故に遭った被害者本人に記憶障害の症状が見られ、心配しているご家族の方もいるでしょう。

交通事故で頭部外傷を負い、次のような症状が出ている場合、事故による記憶障害の可能性が高いです。

事故による記憶障害の症状一例
・事故前のできごとは思い出せるが、事故後の新しいできごとを覚えられない
・数分前に話した内容を思い出せない
・約束を忘れてしまう
・大事なものをどこにしまったのか思い出せない

事故による記憶障害の症状は一つではないため、「まさか」と思う症状も、事故が原因かもしれません。

上記に当てはまる症状があり、事故が原因かもしれないと少しでも思うなら、1日でも早く病院に行き主治医に相談してください

すぐに病院に行くべき理由は、事故による記憶障害は、「高次脳機能障害」の症状のひとつである可能性が高いからです。

実は、事故による記憶障害が高次脳機能障害として認められた場合、慰謝料などを含めた高額な賠償金を受け取れる可能性があります

しかし、そのためには、現在現れている症状が事故によるものであると証明し、認められる必要があります。

もし認めてもらえなければ、記憶障害が原因で日常生活に影響が出ていたり、以前のように働けなくなったりしても、納得のいく賠償金を受け取ることはできません

そこで、記憶障害の後遺障害が残っているかもしれないあなたが、これから安心して生活していくために、以下のことを解説します。

この記事でわかること
・事故による記憶障害でよく見られる症状
・事故による記憶障害の可能性がある場合、すぐに病院に行くべき理由
・正当な賠償金を受け取るまでの具体的な流れ

この記事を読めば、あなたの症状が事故による記憶障害かどうか見当がつき、そのうえで適切な行動を起こせるはずです。

早速読み進めていきましょう。

この記事の監修者
弁護士 籔之内 寛

弁護士法人サリュ
大宮事務所
埼玉弁護士会

交通事故解決件数 1,500件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2009年 中央大学法科大学院修了
2009年 司法試験合格
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【セミナー】
・自賠責後遺障害等級認定基準の運用と裁判(暮らしの中の言語学「ことばの機能障害と言語学」国立民族学博物館主催セミナーにおける講演)
・生保代理店向け 相続、交通事故セミナー 
【獲得した画期的判決】
【自保ジャーナル1966号53頁、1973号41頁に掲載】(交通事故事件)
東京高裁平成28年1月20日判決(一審:さいたま地裁平成27年3月20日判決)
【弁護士籔之内の弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例86:高次脳機能障害|約8000万円の提示を裁判で1億9000万円に増額
事例79:死亡事故 過失割合が争点 刑事記録や現地調査によりご遺族が納得できる解決に
事例208:会社役員であった被害者の休業損害が訴訟で認められた
事例66:訴訟提起により自賠責等級認定制度に一石を投じる 非該当から14級獲得!
事例204:自賠責14級の膝高原骨折の後遺障害について、異議申立てにより12級に等級変更。
事例209:自賠責非該当・家事労働を行う男性被害者が、賠償金270万円を獲得できた。

弁護士法人サリュは、交通事故の被害者側専門で20,000件以上の解決実績を誇る法律事務所です。

交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
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1. 事故による記憶障害でよく見られる症状

冒頭でもお伝えしましたが、事故による記憶障害の症状は一つではありません。

記憶障害といっても、どのような症状が現れるかは一人ひとり異なります。

以下に、事故による記憶障害でよく見られる症状をまとめました。

事故による記憶障害の症状一覧
・事故前のできごとは思い出せるが、事故後の新しいできごとを覚えられない
・数分前に話した内容を思い出せない
・約束を忘れてしまう
・大事なものをどこにしまったのか思い出せない
・新しい情報は覚えられるが、昔のことを思い出せない
・自分が今どこにいるのか、何をしているのかわからなくなる
・日付や曜日がわからない
・事故の瞬間や、事故に遭った前後1週間の記憶だけがない
・スーパーで同じものを繰り返し買ってきてしまう
・忘れていることさえ忘れる
・直前に話した内容を忘れて「私、今何を話していた?」と確認する

※あくまで一例です。

これらの症状に一つでも該当する方、似たような症状がある方は、事故で頭部外傷を負ったことが原因で記憶障害になっている可能性があります

また、被害者本人に自覚はないけれど、家族や職場の人に

「最近、忘れることが多いよね」

「最近、ミスが多い気がするけれど、大丈夫?」

などと指摘されることが増えた方も、記憶障害の可能性があるといえます。

2. 事故による記憶障害の可能性がある場合、すぐに主治医に相談すべき

1章で紹介した事故による記憶障害の症状に、当てはまるものはあったでしょうか?

もし、一つでも当てはまる症状があるなら、その症状についてすぐに主治医に相談してください

「もう少し症状が目立つようになってから……」「仕事に支障は出ていないし」と考えて相談を後回しにすると、後悔するかもしれません。

ここでは、すぐに主治医に相談すべき理由を以下のとおり解説します。

・症状の改善に影響するから
・後遺障害認定してもらえるかどうかに影響するから

2-1. 症状の改善に影響するから

記憶障害の症状が現れているなら、すぐに主治医に相談し、1日でも早くリハビリをはじめましょう。

なぜなら、リハビリの開始が遅れると、症状が改善しない可能性が高まるからです。

事故による記憶障害は、脳挫傷や脳震盪など、事故で頭部外傷を負ったことが原因で起こります。

実は、脳の損傷が原因で記憶障害になった場合、完治を目指すのは難しいです。
しかし、早期のリハビリによって症状が少しずつ回復したり、進行を遅らせたりできる可能性があります

そのため、1日でも早く主治医に相談してリハビリを開始することが大切です。

2-2. 後遺障害認定してもらえるかどうかに影響するから

後遺障害認定してもらえるかどうかに影響することも、すぐに主治医に相談すべき理由です。

あなたが悩んでいる症状が今後も続き、事故による後遺障害だと証明できれば、「後遺障害」として認定され、そこに対して後遺障害慰謝料逸失利益を請求できます

後遺障害とは
交通事故による後遺障害が残ったことを、医学的に証明して認められたもの。
後遺障害として認定されるのは、後遺障害認定を申請して審査され、等級を獲得できた場合のみ。

しかし、すぐに検査をしなければ、あなたが苦しんでいる症状が事故によるものだと証明しづらくなるのです。

記憶障害の症状が現れているのに病院で相談せず、数ヶ月~1年後に病院を受診した場合、

「今回の事故が原因の記憶障害だと判断できない」

「今回の事故の後に頭を打って、記憶障害になったのでは」

と、加害者側の保険会社に疑われることにもつながるでしょう。

すぐに主治医に相談し、交通事故による記憶障害だと証明するための検査や診断を受けましょう。

3. 事故による記憶障害は「高次脳機能障害」として認められる可能性がある

事故による記憶障害の可能性が高い場合、すぐに主治医に相談すべき理由をご理解いただけたでしょうか。

実は、事故による記憶障害の症状が続く場合は、「高次脳機能障害」という後遺障害として認められる可能性があります

高次脳機能障害とは
事故による衝撃で脳が損傷し、記憶や思考・言語などのコントロールがうまくできなくなる障害

記憶障害は、「高次脳機能障害の症状」のひとつです。

高次脳機能障害になると、記憶障害のほかに、以下のような症状が現れることもあります。

高次脳機能障害の症状
行動と感情の障害その場に合わせた言動ができない  
【例】
・温厚な性格だったのに怒りっぽくなる
・アクティブな性格だったのにやる気が出ず引きこもりがちになる
注意障害集中力がなくなる  

【例】
・長時間の作業ができない
・話題が変わると会話についていけない
遂行機能障害目的を達成するために行動したり考えたりすることができない  

【例】
・自分で計画を立てられない
・優先順位をつけて行動できない
失語症(言語障害)話したり聞いたりする力が失われる  

【例】
・頭で考えている言葉が出てこない
・相手の話をすぐに理解できない

※あくまで一例です。

高次脳機能障害の特徴は、脳のどの部位を損傷するかによって、現れる症状が異なるところです。

もし、記憶障害だけでなく、上記で解説したようなほかの症状も現れているなら、高次脳機能障害の可能性を疑ってみましょう。

4. 記憶障害が高次脳機能障害と認められた場合に受け取れる賠償金

3章では、記憶障害が、高次脳機能障害と呼ばれる後遺障害の症状の一つであることを解説しました。

あなたに現れている症状が高次脳機能障害の症状だと認められた場合、「後遺障害に対する賠償金」を受け取れる可能性が高いです。

以下に、高次脳機能障害を認められた場合に受け取れる賠償金をまとめました。

後遺障害慰謝料【金額例】110万円~2,800万円  

・記憶障害が残ったことによる身体的、精神的な苦痛に対して支払われるお金
・後遺障害の重さを現す後遺障害等級によって、金額が上下する
後遺障害逸失利益【金額例】約60万円~1億円  

・事故に遭い、記憶障害にならなければ将来受け取れたはずの利益
・事故前の年収や年齢、どのくらい働けなくなったかによって、金額が上下する
介護費や改装費など・重度の記憶障害が原因で、介護することになった場合にかかる費用
・記憶障害が原因で、自宅を改装しなければならない場合にかかった費用

事故が原因の高次脳機能障害によって記憶障害になったと認められれば、精神的な負担に対する慰謝料を受け取れます

また、記憶障害が原因で以前と同じ仕事に就けなくなったり、部署異動を命じられたりする可能性もあるでしょう。

その場合も、減額された給与や将来得られるはずだった収入(後遺障害逸失利益)を請求し、受け取ることができるのです。

ただ、記憶障害が高次脳機能障害であると認められるには、「後遺障害認定」を申請し、等級を獲得しなければなりません

正当な賠償金を受け取るために重要な「後遺障害認定の等級」については、次の章でくわしく解説するので、このまま読み進めてください。

高次脳機能障害だと認められなくても受け取れる賠償金
記憶障害が高次脳機能障害と認められなくても、受け取れる可能性がある賠償金もあります。

それは、以下の項目です。  

治療費:通院や検査にかかったお金
入通院慰謝料:入通院による精神的損害に対して支払われるお金
休業損害:事故が原因で仕事を休んだ場合に受け取れるお金  

記憶障害に悩んでいる方は、事故で頭部外傷を負った際、入通院したり仕事を休んだりしたでしょう。  

その際にかかった費用は、記憶障害が高次脳機能障害として認められなくても、加害者側に請求できます。

5. 正当な賠償金を受け取るためには後遺障害等級を獲得する必要がある

先述の通り、記憶障害が高次脳機能障害だと認められた場合、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を受け取ることができます。

言い換えれば、記憶障害でどれだけつらい思いをしていても、それが高次脳機能障害だと認められなければ、後遺障害に対する慰謝料などの賠償金を受け取れないのです。

記憶障害の症状が高次脳機能障害と認められるには、後遺障害が残った証拠を準備して専門機関に申請し、「後遺障害等級」を獲得する必要があります

後遺障害等級とは
交通事故による怪我の後遺障害の程度を、1~14級に分類したもの
数字が小さいほど後遺障害が重いことを意味する

あなたが、後遺障害何級程度の記憶障害なのか確認できるよう、高次脳機能障害で認定される可能性がある等級と症状を、以下の表にまとめました。

等級認められる基準後遺障害慰謝料の金額
(弁護士基準)
1a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を要するもの
b  高次脳機能障害による高度の痴ほうや情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの  

※aまたはbに該当する
2,800万円
2a  重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等に随時介護を要するもの
b  高次脳機能障害による痴ほう、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため随時他人による監視を必要とするもの
c  重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの  

※a、b又はcが該当する
2,370万円
3生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの1,990万円
5高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの1,400万円
7高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの1,000万円
9通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの690万円
12通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの290万円
14通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの110万円

引用:厚生労働省 「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」

等級によって、後遺障害慰謝料の金額にも大きな差が出ることがわかるでしょう。

また、上記の表では後遺障害慰謝料の金額を例に挙げましたが、後遺障害逸失利益(事故に遭わなければ将来受け取れたはずの利益)も、等級が上がるごとに増額します。

そのため、後遺障害等級を獲得することは、正当な賠償金を受け取るために重要なのです。

6. 後遺障害等級を獲得し賠償金を受け取るまでの流れ【5STEP】

正当な賠償金を受け取るためにも、後遺障害認定を申請して等級を獲得することが大事だとお伝えしてきました。

しかし、今の状態では、後遺障害等級を獲得するにはどうすれば良いのか、どのような流れで賠償金を受け取れるのかわからないでしょう。

そこで、6章では記憶障害に悩むあなたが後遺障害等級を獲得し、賠償金を受け取るまでの流れを解説します。

STEP1.主治医に相談して検査やリハビリを受ける
STEP2.適切なタイミングで症状固定の診断を受ける
STEP3.後遺障害認定に必要なものを集める
STEP4.後遺障害認定を申請し等級を獲得する
STEP5.加害者側と示談交渉し、示談金(賠償金)を受け取る

6-1. 【STEP1】主治医に相談して検査やリハビリを受ける

2.事故による記憶障害の可能性が高いならすぐに主治医に相談すべき」でお伝えしたとおり、まずは主治医に相談して必要な検査やリハビリを受けましょう。

記憶障害は完治しない可能性が高い後遺障害ですが、リハビリによって回復したり進行を遅らせたりできる可能性があるからです。

また、後遺障害等級の獲得のためにも、早い時期での検査が重要になります。

高次脳機能障害による記憶障害だと認めてもらうためには、事故後3ヶ月~6ヶ月程度に撮影したCTやMRIの画像証拠が必要なケースが多いです。

そのため、記憶障害の可能性を少しでも疑うならすぐに病院を受診し、CTやMRIなどの精密検査も受けてください。

6-2. 【STEP2】適切なタイミングで症状固定の診断を受ける

治療やリハビリを1~2年程度続け、これ以上症状が改善しない状態になったとき、医師の判断に基づき症状固定の診断を受けます。

症状固定とは
症状固定は治療終了を意味するもの。
後遺障害認定の申請は、症状固定の診断を受けてからおこなう。

高次脳機能障害は脳の損傷が原因の後遺障害ですが、1年程度しっかり治療やリハビリをすれば、症状が改善する可能性もあるといわれています。

そのため、治療期間が短すぎると、しっかり治療を受けなかったから後遺障害が残ったと思われ、専門機関に後遺障害を認めてもらえない可能性が高まるのです。

もし、本当に適切な時期なのか迷うなどと感じるなら、弁護士がアドバイスできるので、相談だけでもしてみると良いでしょう。

6-3. 【STEP3】後遺障害認定に必要なものを集める

症状固定の診断を受けたら、後遺障害認定を申請して等級を獲得するために必要なものを集めます。

高次脳機能障害で後遺障害認定を申請する際に必要なものは、以下のとおりです。

高次脳機能障害で後遺障害認定を申請する際に必要なもの
・主治医が作成する後遺障害診断書
・知能や記憶、運動検査などの結果
・CTやMRI等の画像検査結果
・家族が作成する日常生活状況報告

後遺障害認定は、書類上の証拠で審査されます。

特に重要なのは、後遺障害診断書の内容です

後遺障害診断書には、他覚所見や自覚症状、現在残っている症状などを、空欄なく埋める必要があります。

ただ、主治医が交通事故にくわしくない場合、記憶障害を認めてもらうために重要な診断書の内容が不十分になってしまうかもしれません。

診断書の内容に少しでも不安を感じる場合は、弁護士に相談しましょう

後遺障害認定申請前の注意点
高次脳機能障害が後遺障害だと認められるためには、以下も満たしている必要があります。  

・初診時の診断書に頭部外傷の記載がある
・カルテに意識障害についての記載がある  

今後、後遺障害認定を申請する方は、上記の基準を満たしているかどうか主治医に確認しておきましょう。

6-4. 【STEP4】後遺障害認定を申請し等級を獲得する

高次脳機能障害による記憶障害を証明する証拠を集めたら、後遺障害認定を申請して等級を獲得します。

具体的な流れは、以下のとおりです。

後遺障害認定の申請から等級決定までの流れ
後遺障害認定に必要なものを集める

加害者の自賠責保険に集めた書類や証拠を提出する

自賠責保険が内容を確認し、調査会社に書類を提出する

調査会社による審査がおこなわれ、等級が決定する

提出した証拠によって、あなたの記憶障害が高次脳機能障害によるものだと認められれば、等級が認定されます。

等級を獲得できなかった場合、等級に納得がいかない場合は、証拠を集めなおして再申請することも可能です。

6-5. 【STEP5】加害者側と示談交渉し、示談金(賠償金)を受け取る

等級を獲得したら、最終的な過失割合や示談金(賠償金)を決める示談交渉がはじまります。

加害者側が示談内容を提示し、内容に納得いかない場合は交渉をするのが基本の流れです。

示談交渉については、あなた自身で交渉するか弁護士に依頼するかのどちらかとなります。

双方が示談内容に納得して交渉が成立すると、示談金(賠償金)が振り込まれます。

示談成立から示談金(賠償金)が振り込まれるまでの一般的な期間は、1~2週間です。

7. 弁護士は事故による記憶障害で悩む方の賠償金獲得をサポートできる

高次脳機能障害による記憶障害の症状で、後遺障害等級を獲得し、賠償金を受け取るまでの流れを解説しました。

ただ、これらをすべて被害に遭ったあなたやご家族だけでおこなうのは大変でしょう。

また、記憶障害は目に見えない症状のため、主治医が画像証拠を見落としたり、後遺障害診断書の書き方を間違えたりする可能性もあります。

しかし、交通事故にくわしい弁護士がいれば、過去の実績をふまえて、賠償金獲得に向けて必要な準備をサポートしてもらえるのです。

記憶障害と向き合いながら安心して生活するため、必要な賠償金を受け取るためにも、交通事故のプロである弁護士に相談しましょう。

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8. 記憶障害で苦しむ被害者を支える家族ができること

今悩んでいる記憶障害の症状が、あなたのご家族に現れている場合、心配な気持ちでいっぱいでしょう。

ただ、側で支えるご家族だからこそ、力になれることがあります。

最後に、事故による記憶障害で苦しむ被害者を支えるご家族ができることを3つ紹介します。

・本人のつらさを受け入れてあげる
・安心して暮らせるよう生活をサポートする
・障害年金や障害者手帳などの活用も検討する

8-1. 本人のつらさを受け入れてあげる

記憶障害で一番つらいのは、被害者ご本人です。

そのため、覚えられないことが多くても被害者本人を責めず、つらさを受け入れてあげましょう

大事な家族だからこそ、

「このまま元に戻らないのではないか」

「これくらいできるようにならないと本人のためにならない……」

という思いから、つい厳しく接してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、厳しく接することは、被害者本人を深く傷つけるだけです

また、事故による記憶障害は、忘れていることさえも忘れているケースも多いです。

「この前話したでしょう」「これも忘れちゃった?」などと言っても、本人は何のことだかわからない場合もあります。

被害者本人が、自分は記憶力がなくて迷惑ばかりかけている、周りの人をイライラさせてしまう、などと感じて落ち込まないよう、優しく受け入れてあげましょう。

8-2. 安心して暮らせるよう生活をサポートする

記憶障害で苦しむ被害者本人が、少しでも安心して暮らせるようなサポートをしてあげることも、家族だからこそできることです。

例えば、以下のようなサポート方法があります。

記憶障害の方をサポートする方法の例
・メモを取ることをすすめる
・お金の管理を家族全員でおこなう
・買い物に行く際は必ず誰かが付き添う
・何かを説明する際はホワイトボードを使用する
・物の置き場所を一緒に決める

「すぐに忘れてしまうからメモを取ってね」「お金の管理に気をつけてね」などと伝えるだけでは、サポートとして不十分な場合もあります。

なぜなら、メモや通帳を、どこに置いたのかわからなくなってしまう可能性もあるからです。

記憶障害といっても症状はさまざまなので、被害者本人が苦手とすることは何かしっかり観察し、サポート内容を考えてあげましょう

8-3. 障害年金や障害者手帳などの活用も検討する

障害年金や障害者手帳の活用を検討することも、ご家族だからこそできることです。

障害年金や障害者手帳を申請して等級が認められたら、お金の援助や日常生活のサポートなどを受けられます

これらは、被害に遭った本人だけでなく、ご家族の身体的・精神的な負担を減らすことにもつながるため、積極的に活用してください。

障害年金を受け取れる人・公的年金に加入している
・年金を滞納せず払っている
障害年金で1~3級に該当する
障害者手帳を受け取れる人障害者手帳で1~3級に該当する

障害年金や障害者手帳の申請は、後遺障害認定の申請とは別です。

それぞれ申請して等級を獲得する必要があります。

どちらも、症状固定の診断を受けてからの申請になるため、焦る必要はありません。

また、両方申請することも可能です。

障害年金についてくわしく知りたい方は「日本年金機構」、障害者手帳について知りたい方は「お住まいの市町村区の障害福祉課窓口」にお問い合わせください。

9. まとめ

本記事では、事故による記憶障害について解説しました。

最後に、大事なポイントをまとめます。

【事故による記憶障害の症状例】

・事故前のできごとは思い出せるが、事故後の新しいできごとを覚えられない
・数分前に話した内容を思い出せない
・約束を忘れてしまう
・大事なものをどこにしまったのか思い出せない
・新しい情報は覚えられるが昔のことを思い出せない

【記憶障害の症状が出ている場合、すぐに主治医に相談するべき理由】

・症状の改善に影響するから
・後遺障害認定してもらえるかどうかに影響するから

【記憶障害の症状が出ている方が賠償金を獲得する流れ】

STEP1.主治医に相談して検査やリハビリを受ける
STEP2.適切なタイミングで症状固定の診断を受ける
STEP3.後遺障害認定に必要なものを集める
STEP4.後遺障害認定を申請し等級を獲得する
STEP5.加害者側と示談交渉し、示談金(賠償金)を受け取る

事故による記憶障害は、高次脳機能障害の症状の可能性が高いです。

まずは治療やリハビリに専念し、それでも記憶障害の症状が治らなかったら、高額な賠償金を獲得できるかもしれません。

ただ、記憶障害があっても、後遺障害として認められなければ賠償金は減ってしまいます。 一生治らないかもしれない後遺障害をしっかり認めてもらうためにも、本記事で紹介したステップに沿って行動してみてください。