【ケース別】玉突き事故の過失割合を徹底解説!割合が変動する要素も

「玉突き事故に遭ってしまった。自分にも過失割合がつくのだろうか?」
「別の車に巻き込まれて玉突き事故に遭った。自分の車にも過失割合がつくの?」

複数の車が絡む玉突き事故は、どの車にどれだけ過失が付くのか予想するのが難しいものです。

この記事を読んでいる方のなかには、後ろから追突された衝撃で前の車に突っ込んでしまった方も多いのではないでしょうか。

結論、玉突き事故は、最初に追突した車両の運転手の過失割合が大きくなります

前の2台が停車中、後ろからきた車両がぶつかり玉突き事故が起きたら、真ん中の車両に過失はつきません。

しかし、事故当時の状況(例:先頭車両がブレーキを踏んだ)や場所(一般道・高速道路)によって、玉突き事故の過失割合は変わります。

さらに、速度や車間距離などの要素も含めて最終的な過失割合が決まるため、一概に「玉突き事故の過失割合は〇:〇」と正確な数字を出せるわけではないのです。

そこでこの記事では、事故の状況別に玉突き事故の過失割合を解説します。

本記事で紹介する玉突き事故のパターン
【一般道】
「後方車両」が「真ん中の車両」に追突したケース
「先頭車両」が急ブレーキを踏んだケース
「真ん中の車両」が急ブレーキを踏んだケース
「真ん中の車両」が操作ミスをしたケース
「真ん中の車両」が最初に追突したケース

【高速道路】
「先頭車両」が不必要な急ブレーキを踏んだケース
「先頭車両」がやむを得ない事情で駐停車していたケース
「先頭車両」が自らの過失で駐停車していたケース

最後まで読めば、自分にどのくらいの過失がつく可能性があるのか理解でき、冷静に示談交渉に挑めます。

本来過失がないのに過失があると判断されないためにも、自分の玉突き事故のケースの過失割合をしっかり学んでおきましょう。

この記事の監修者
弁護士 松葉 想

弁護士法人サリュ名古屋事務所
愛知県弁護士会

交通事故解決件数 1,500件以上
(2025年9月時点)
【獲得した画期的判決】
【加害者責任否認案件において加害者の過失を85パーセントとし、症状固定時41歳男性の労働能力喪失期間を73歳までと認定した判決】(大阪地裁平成27年7月3日判決(交通事故民事裁判例集48巻4号836頁、自動車保険ジャーナル1956号71頁))
・自賠責保険金を含んだ回収額が3億9000万円となった裁判上の和解
・自賠責保険における等級認定が非該当であった事案において、後遺障害等級5級を前提とする裁判上の和解
・死亡、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害等の示談や裁判上の和解は多数
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例334:事前認定後遺障害非該当に対し、諦めずに異議申立て。後遺障害第14級9号を獲得した事例
事例355:本業の休業がなくても、副業を全休し収入が減少。訴訟手続きにより、副業の休業損害の多くを判決で勝ち得た事例
事例374:足首の両果骨折の賠償金が当初の相手方提示金額より2.3倍になった事例

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1. 玉突き事故の過失割合|基本は最初に追突した車両の運転手の過失が大きくなる

記事冒頭でもお伝えしたとおり、玉突き事故の過失割合は、最初に追突した車両の運転手の過失が大きくなります。

なぜなら、玉突き事故の過失割合は基本的に追突事故と同じように考えられるからです。

追突事故は、追突した車両の運転手に、車間距離が不十分だった・脇見運転をしていたなどの原因があることがほとんどです。

そのため、玉突き事故の基本の過失割合も、追突した車両の過失が大きくなります。

例えば、前にいる2台A・Bが停車中にCが追突し、玉突き事故が起きた場合の過失割合は、「A:B:C=0:0:100」です。

そのため、後方車両(C)に追突された勢いで、真ん中の車両(B)が先頭車両(A)に追突しても、Bの過失は0と考えるのが一般的です。

このように、玉突き事故の過失割合は、原則「最初に追突した車両」の責任が重くなります。

ただし、先頭車両がブレーキを踏んだ、真ん中の車両が運転ミスをした、などに該当する場合は、過失割合が変わります。
そこでここからは、具体的なケースごとに、どのような過失割合になるのかを詳しく見ていきましょう。

一般道での玉突き事故の過失割合
高速道路での玉突き事故の過失割合

2. 一般道での玉突き事故の過失割合

ここでは、一般道での玉突き事故の過失割合を、事故のパターン別に見ていきます。

「後方車両」が「真ん中の車両」に追突したケース
「先頭車両」が急ブレーキを踏んだケース
「真ん中の車両」が急ブレーキを踏んだケース
「真ん中の車両」が操作ミスをしたケース
「真ん中の車両」が最初に追突したケース

ここで紹介する過失割合は、「1.玉突き事故の過失割合|基本は最初に追突した車両の運転手の過失が大きくなる」で紹介した基本の割合がベースとなっており、あくまで“一般的な玉突き事故の場合”です。

事故の細かい状況によって割合が大きく変わる場合もあることを、覚えておいてください。

2-1. 「後方車両」が「真ん中の車両」に追突したケース 

後方車両(C)が真ん中の車両(B)に追突し、その衝撃で玉突き事故が起きた場合の基本過失割合は、「0:0:100」です。

「0:0:100」になるのは、先頭車両(A)と真ん中の車両(B)に、急ブレーキや操作ミスなどがないことを前提とした場合です。

後方車両(C)の不注意が原因と考えるのが一般的なため、Cの過失が100となります。

2-2. 「先頭車両」が急ブレーキを踏んだケース

先頭車両(A)が理由なく急ブレーキを踏んだため起きた玉突き事故の過失割合は、「30:0:70」です。

一番最初に衝突した車両の過失割合が大きくなる前提がありますが、この場合は先頭車両(A)が急ブレーキを踏んだことで起きた事故なので、Aにも過失が認められます。

2-3. 「真ん中の車両」が急ブレーキを踏んだケース

真ん中の車両(B)が理由なく急ブレーキを踏み、後方車両(C)がBに追突して起きた玉突き事故の過失割合は、「0:30:70」です。

一番最初に衝突した車両の過失割合が大きくなる前提がありますが、この場合は真ん中の車両(B)が急ブレーキを踏んだことで起きた事故なので、Bにも過失が認められます

2-4. 「真ん中の車両」がブレーキ操作ミスをしたケース

真ん中の車両(B)のブレーキ操作ミスで後方車両(C)がBに追突して起きた玉突き事故の過失割合は、「0:20:80」です。

一番最初に衝突した車両の過失割合が大きくなる前提がありますが、この場合は真ん中の車両(B)のブレーキ操作ミスが原因で起きた事故なので、Bにも過失が認められます

2-5. 「真ん中の車両」が最初に追突したケース

真ん中の車両(B)が先頭車両(A)に追突し、その後真ん中の車両(B)に後方車両(C)が追突した場合は、「AとBの事故」「BとCの事故」という扱いになります。

このケースでは、「A:B=0:100」、「B:C=0:100」とそれぞれの事故で過失割合を出すのが一般的です。

3. 高速道路での玉突き事故の過失割合

3章では、高速道路での玉突き事故の過失割合を紹介します。

全車両走行中に「後方車両」が最初に衝突した場合
「先頭車両」が不必要な急ブレーキを踏んだケース
「先頭車両」が正当な理由なく駐停車していたケース
「先頭車両」と「真ん中の車両」がやむを得ない事情で駐停車していたケース

高速道路での玉突き事故は、駐停車していた側の過失が大きくなる傾向にあります。
これは、原則として高速道路では駐停車が禁止されているからです。

また、一般道よりもスピード速く走行することが想定されているため、急ブレーキの危険性も高くなります。

よって、前方車両の急ブレーキで玉突き事故が起こった場合、前方車両には一般道路における玉突き事故よりも大きな過失がつきます

3-1. 全車両走行中に「後方車両」が最初に衝突した場合

全車両が走行中に後方車両(C)が最初に追突して起きた玉突き事故の過失割合は、「0:0:100」です。

高速道路であっても、全車走行中の追突事故は、一番最初に追突した車両の過失が一番大きいと考えるのが一般的です。

後方車両(C)の運転ミスと考えられるため、一般道の玉突き事故と同じように、Cの過失が100となります。

3-2. 「先頭車両」が不必要な急ブレーキを踏んだケース

先頭車両(A)が不必要な急ブレーキを踏んで玉突き事故が起きた場合の過失割合は、「50:0:50」です。

制限速度が速い高速道路では、自動車の円滑な運行が確保されなければならないため、それを阻害する行為は大きな過失がつく対象となります。
よって、不必要な急ブレーキを踏んだ車両にも大きな過失がつきます。

真ん中の車両(B)に過失はないと考えるのが一般的です。

3-3. 「先頭車両」が正当な理由なく駐停車していたケース

先頭車両(A)が正当な理由なく駐停車していて玉突き事故になった場合は、Aに過失が40つき、残りの60をBとCで分配することになります。

BとCの過失は、車間距離をどれだけ取っていたかなどを考慮して決定します。

3-4. 「先頭車両」と「真ん中の車両」がやむを得ない事情で駐停車していたケース 

先頭車両(A)と真ん中の車両(B)が、AやBに過失のない事情で駐停車した後、駐停車後の対応にも過失がない場合(退避することが不可能で、かつ、停止表示器材を設置していた/死傷または時間的余裕がなく停止表示器材を設置できなかった場合)に、後方車両(C)が追突して起きた玉突き事故の過失割合は、「0:0:100」です。

AやBに過失のない事情とは、AやBの過失なく発生した先行事故などが該当します。

ただし、正当な理由があっても、自動車を路肩に寄せることができたのに寄せていなかった場合は、AやBにも20%程度の過失がつくこともあります

4. 玉突き事故の過失割合に影響を与える要素

ここまで、事故当時の状況(例:先頭車両がブレーキを踏んだ)や場所(一般道・高速道路)ごとの玉突き事故の過失割合を紹介してきました。

ただ、2章、3章でお伝えした過失割合は、あくまで基本の割合です。

ここから、さまざまな要素をもとに調整し最終的な過失割合が決まるので、本記事で紹介した過失割合に必ずなるわけではありません

下記が、玉突き事故の過失割合を決める要素の一部です。項目ごとに、過失割合が「-20」~「+20」ほど修正されます。

玉突き事故の過失割合を決める要素
〈一般道での玉突き事故の場合〉
・速度(例:15㎞以上の速度違反、30㎞以上の速度違反)
・追突が起きた場所(例:住宅街・商店街等の歩行者の多い場所)
・道路状況(例:幹線道路)

〈高速道路での玉突き事故の場合〉
・視認不良(例:夜間、降雨)
・車道の大きな閉塞
・退避不能かつ停止機材

〈一般道・高速道路に共通する要素〉
・わき見運転等著しい前方不注視
・携帯電話等を通話のため使用したり、画像を注視したりしながらの運転
・酒気帯び運転、酒酔い運転
・居眠り運転等

修正要素の有無や該当性は複雑な内容なので、交通事故の知識がない人が、玉突き事故の過失割合を正しく判断するのは難しいのです。

自分の事故のケースにおける修正要素について詳しく知りたい方は、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

5. 玉突き事故の過失割合は事故状況をもとに慎重に判断することが重要

ここまで、事故状況別の玉突き事故の過失割合や、過失割合の修正要素についてお伝えしてきました。

玉突き事故の過失割合を決める際に大事なことは、事故状況をもとに慎重に判断することです。

なぜなら、「4.玉突き事故の過失割合に影響を与える要素」で解説したように、過失割合はさまざまな要素によって変わるからです。

事故相手の保険会社は、

「一般的に30:0:70だから」
「過去の同じような玉突き事故では、40:30:30だったから」

という理由で、過失割合を主張してくるかもしれません。

しかし、相手保険会社の発言が100%正しいとは限りません。
過失割合は事故当時者同士で話し合って決めるもののため、相手の主張に惑わされることなく、細かな状況を見て慎重に判断すべきなのです。

もし間違った過失割合で示談成立となれば、支払う必要がないのに賠償金を請求されることもあります。

玉突き事故の過失割合を理解しておけば、事故相手に提示する過失割合が明らかに間違っていると自分で気づけることもあります。

支払う必要のないお金を支払うことにならならないよう、過失割合を提示されたら、なぜこの割合なのかしっかり確認してください。

6. 玉突き事故で正当な過失割合で示談成立するために行うべき準備

玉突き事故は事故の状況によって過失割合が大きく変動することを、ご理解いただけたはずです。

6章では、正当な過失割合で示談成立するためにあなたが行うべき準備をお伝えします。

・事故の状況を書き出しておく
・ドライブレコーダーや事故現場の写真を用意する
・交通事故に強い弁護士に相談する

自分の過失割合を少なくするために嘘をつく加害者もいるため、ここで紹介する準備は必ず行ってください。

6-1. 事故の状況を書き出しておく

玉突き事故に巻き込まれたら、事故直後の状況をできるだけ早く書き出しておきましょう。

示談交渉の際に自分の過失割合を正確に主張するには、事故の流れや状況を具体的に説明する必要があるからです。

例えば、

「何時頃、どの車線をどのくらいの速度で走っていたのか」
「前方車が急ブレーキをかけた」
「自分は完全に停止していた」

など、思い出せる限り詳しく記録しておくことが重要です。
メモ帳やスマートフォンなどに記録しておけば、事故の状況を聞かれた際に、正確な情報を加害者側に伝えられます。

また、時間が経つほど記憶があいまいになってしまうものです。
保険会社との交渉時にあいまいな説明しかできない場合、こちらに不利な判断をされる可能性もあります。

事故の状況を具体的に説明することは、正当な過失割合を主張する際に役立つため、記憶があるうちに書き出しておきましょう。

6-2. ドライブレコーダーや事故現場の写真を用意する

玉突き事故の過失割合を正しく判断してもらうには、客観的な証拠をしっかり残しておくことが欠かせません。

怪我をしている場合には、警察に診断書を提出して人身事故に切り替えれば、実況見分が行われ実況見分調書が作成されます。これにより、客観的な事故状況が明らかとなります。

また、ドライブレコーダーの映像や事故現場の写真は強力な証拠になります。

なぜなら、玉突き事故はどの車が原因で連鎖的にぶつかったのかが争点になることが多く、言葉での主張だけで話し合いがまとまらないケースが多いからです。

ドライブレコーダーの映像があれば、衝突の瞬間や前方車両の急ブレーキの有無などが明確に分かります。
ドライブレコーダーがない場合、周辺に防犯カメラ等がないか探してみてください。ある場合は、管理者に問い合わせて早めに映像を確保しておきましょう。防犯カメラ映像は、2週間程度で上書きされてしまうものが多いです。
また、現場写真は車の位置や損傷の程度、道路状況などを記録するのに役立ちます。

「言った・言わない」の争いを防ぐためにも、証拠はできるだけ早く、漏れなく確保しておきましょう。
スマートフォンで撮影したものも証拠になることがあるので、示談交渉前に証拠を整理しておいてください。

6-3. 交通事故に強い弁護士に相談する

玉突き事故で正当な過失割合で示談成立するために、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、過去の事例や交渉経験をもとに、適正な過失割合を判断できるからです。

なかには、加害者側から過失があると言われている方、基本の過失割合を見て自分に過失があると不安になっている方もいるでしょう。

しかし、「5.玉突き事故の過失割合は事故状況をもとに慎重に判断することが重要」でもお伝えしたとおり、さまざまな要素によって過失割合は大きく変動します。

交通事故に強い弁護士が細かく調査すれば、提示されている過失割合より下がる可能性もあるのです。

特に玉突き事故は、車間距離やブレーキのタイミングなど、細かい要素で割合が変わるケースが多く、個人で正当な主張を通すのが難しい傾向にあります。

一見、正当な過失割合に思えても、事故相手に有利な割合になっているケースも0ではないため、専門的な知識がある弁護士に相談してください。

玉突き事故の過失割合は被害者専門の弁護士事務所サリュにお任せください
     

玉突き事故に遭い、「自分の過失割合はどのくらいになるのだろう?」と不安を感じている方は、ぜひ一度、弁護士法人サリュにご相談ください。
私たちは、交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。 経験豊富な弁護士があなたの事故状況を詳しくお伺いし、正当な過失割合で示談成立するために適切な対応をアドバイスいたします。
 
実際には過失がないにもかかわらず、不当に過失がつけられているケースも少なくありません。 特に玉突き事故は、複数の相手との交渉が必要になるなど、一般的な事故よりも複雑になることもあります。

  難しい交渉や手続きもすべて私たちにお任せいただけますので、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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7. まとめ

本記事では、玉突き事故の過失割合について解説いたしました。

最後に、重要なポイントをまとめます。

〇玉突き事故の過失割合|基本は最初に追突した車両の運転手の過失が大きくなる

〇玉突き事故の過失割合は、一般道と高速道路で異なる

〇玉突き事故の過失割合に影響を与える要素(一例)

〈一般道での玉突き事故の場合〉
・速度(例:15㎞以上の速度違反、30㎞以上の速度違反)
・追突が起きた場所(例:住宅街・商店街等の歩行者の多い場所)
・道路状況(例:幹線道路)

〈高速道路での玉突き事故の場合〉
・視認不良(例:夜間、降雨)
・車道の大きな閉塞
・退避不能かつ停止機材

〈一般道・高速道路に共通する要素〉
・わき見運転等著しい前方不注視
・携帯電話等を通話のため使用したり、画像を注視したりしながらの運転
・酒気帯び運転、酒酔い運転
・居眠り運転等

〇玉突き事故の過失割合は事故状況をもとに慎重に判断することが大事

〇玉突き事故で正当な過失割合で示談成立するために行うべき準備

・事故の状況を書き出しておく
・ドライブレコーダーや事故現場の写真を用意する
・交通事故に強い弁護士に相談する

玉突き事故の過失割合は、事故のケースだけでなく、それぞれの車両がどのような状態だったのかによって大幅に変わります。

過失割合は自分が支払う賠償金、受け取れる賠償金にかかわる重要なものなので、少しでも不安を感じているならそのままにせず、弁護士に相談してください。

あなたが納得いく過失割合で示談成立できることを、祈っています。