信号無視の事故の慰謝料はいくら?ケースごとの過失割合と基準を解説

相手の信号無視で事故に巻き込まれた場合、「適切な慰謝料を受け取りたい」と考えるのは当たり前の話でしょう。

相手の信号無視によって引き起こされた事故での慰謝料は、損害の大きさなどによってかなり差がありますが、目安は以下の通りです。(※相手の過失が100%の場合)

算定基準

入通院慰謝料
(骨折、靭帯損傷、脳挫傷等で適用される別表1を前提)

後遺障害慰謝料

死亡慰謝料

入院2ヶ月、通院8ヶ月の場合

等級によってかなり差がある

一家の支柱が亡くなったのか、母親や配偶者が亡くなったのかによって差がある

自賠責基準

-※

32万円~1,850万円

400万円~最大1,350万円

(遺族の数などによって変わる)

任意保険基準

112.1万円

裁判基準

194万円

110万円~2,800万

2,000万円〜2,800万円

※自賠責保険の場合、慰謝料以外の治療費・休業損害・交通費全てを合算して120万円までしか出ません。入院2ヶ月をするほどの重傷の場合、治療費が高額になり、自賠責基準の120万円の枠のほとんどが治療費で埋まってしまう可能性があるため、自賠責保険から回収できる慰謝料は少額となると思われます。

注意してほしいのですが、「相手が悪いのだからたくさん慰謝料をもらえるだろう」「信号無視という最悪なことをしたんだから、上乗せでもらえるよね?」という主張が通らないケースは多くあります。

信号無視という重大な違反があったとしても、その事実だけで通常の交通事故の慰謝料よりも金額が自動的に加算されるわけではないのです。

特に保険会社から提示される慰謝料は、一般的には怪我の内容や治療期間・日数などによって決まるため、「信号無視があったから」といって慰謝料が自動的に増える訳ではありません。

また、加害者が信号無視をしたとしても、例えば被害者側が信号違反車両の発見後、容易に回避措置をとることができたのにこれを怠った場合や、双方赤信号無視だった場合など、過失割合が0%:100%とならないケースもあります。仮にそうなった場合、結果的にこちらの過失の分だけ慰謝料を減額されてしまうのです。

【過失割合による死亡慰謝料の金額の例(2,000万円の場合)】

過失割合(加害者:被害者)死亡慰謝料の額(満額が2,000万円の場合)
100:0(被害者に過失なし)2,000万円(満額)
80:20(被害者の過失20%)1,600万円(20%減額)
60:40(被害者の過失40%)1,200万円(40%減額)
50:50(被害者の過失50%)
※被害者も信号無視したケースなど
1,000万円(50%減額)

一方で、加害者が意図的に信号無視を行ったり、重大な過失がある場合にもかかわらず、加害者が過失を認めない場合などでは、弁護士が交渉に介入することによって加害者の過失を認めさせ、保険会社からの提示額を大幅に引き上げることが可能な場合があります。

このように、信号無視の事故の慰謝料はケースによって大きく左右されると言えるでしょう。

そこでこの記事では、信号無視がからむ事故での慰謝料はどのように決まるか、保険会社からの慰謝料の提案はなぜ低い金額なのかなどを解説した上で、「できるだけ多く慰謝料や損害賠償金をもらうにはどうしたらよいか」を詳しく解説してきます。

「相手が悪いはずなのに慰謝料を減額してくるのが納得行かない!」「できれば慰謝料を満額受け取りたい!」という方は、ぜひ最後までお読みください。

この記事の監修者
弁護士 梅澤 匠

弁護士法人サリュ福岡事務所
福岡県弁護士会

【略歴】
2009年 3月 明治大学法学部 飛び級入学のため中退
2012年 3月 同志社大学司法研究科 修了
2012年 9月 司法試験合格
2013年  弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【公職】
同志社大学司法研究科兼任教員(民法演習担当)
-獲得した画期的判決-
【大阪高裁平成30年1月26日・判例タイムズ1454号48頁】(交通事故事件)
歩行者との非接触事故につき,自動車運転者の過失責任が認められた事例
【神戸地裁令和元年6月26日判決・自保ジャーナル2054号110頁】(交通事故事件)
転回時の衝突事故について有利な過失割合が認定された事例
【神戸地裁令和元年7月24日・交通事故民事裁判例集52巻4号913頁】(交通事故事件)
併合14級の後遺障害逸失利益の算定について、減収がなかったものの逸失利益を認定した事例
その他複数
【交通事故解決件数】1500件以上(2023年1月時点)
【弁護士梅澤の弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例336:死亡事故で被害者参加制度を利用。遺族の気持ちを加害者に直接伝えたい
事例344:異議申立てで、むちうち症状の後遺障害等級を第14級9号から第12級13号へ覆した事例
事例158:後遺障害申請サポートで13級を獲得。示談交渉時256万円の提示だったが、訴訟提起で1030万円を獲得

1. 信号無視事故の慰謝料はケースにより数万円~数千万円程度

まずは、信号無視があった場合の交通事故の慰謝料がいくらぐらいになるか、解説していきます。

信号無視に限らずですが、交通事故の慰謝料は以下の3つの慰謝料に大別され、種類や損害の大きさによって金額にはかなり差が現れます。

【3つの慰謝料の種類】

入通院慰謝料

交通事故によって医療機関への入院・通院を強いられたことによって生じた精神的苦痛に対して支払われるもの

後遺障害慰謝料

交通事故によるケガの治療をしても完全には治らず、何らかの症状が残ってしまう場合に、その身体的・精神的な苦痛に対して支払われるもの

死亡慰謝料

亡くなった被害者本人が受けた精神的苦痛や、遺された家族の精神的苦痛に対して支払われるもの

 

この3つの慰謝料がだいたいどのくらいになるか、3-1から3-3で解説していきます。

なお、慰謝料の算定方法には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」の3種類があり、どの算定方法を用いるかによって金額がかなり異なります。

①自賠責基準

・自賠責保険から被害者に慰謝料が支払われる場合に用いられる
・自動車損害賠償保障法施行令で定められた慰謝料の基準
・最低限の補償となり、3つの基準の中で最も低い

②任意保険基準

・加害者の任意保険会社から慰謝料が支払われる場合に用いられる
・各保険会社が独自に設けている慰謝料の基準(非公開)
・自賠責基準より高いけれど、裁判基準よりはかなり低い

③裁判基準(弁護士基準)

・過去の判決をもとにして算出した慰謝料の基準
・3つの基準の中で最も高額となる
・裁判所が適切と考える「適切な基準」といえる

保険会社からは「②任意保険基準」をもとに示談金の提案があります。裁判基準と比べるとだいぶ低い金額の提案が来ることがあるので注意しましょう。

1-1. 入院・通院した場合の慰謝料

入院・通院した場合の慰謝料は、入院日数・通院日数によってかなり金額が変わります。

例えば通院が1日で治れば8600円((4300円×2×実通院日数)自賠責基準)ですが、入院6カ月なら200万円以上(裁判基準)の慰謝料がもらえるケースもあります。

ここでは、例として、むち打ち等の軽症の場合で、6ヶ月間(180日)に週2回程度のペースで合計48回整形外科に通院した場合の慰謝料を以下に示します。

算定基準慰謝料金額
自賠責基準
※最も低い水準
412,800
任意保険基準643,000
裁判基準(弁護士基準)
※適切な基準
890,000

ただし、上記は、被害者の過失がゼロの場合の金額です。被害者側にも過失が認められる場合は、過失割合に相当する分が減額されます。

1-2. 後遺障害が残った場合の慰謝料

事故が原因のケガを治療した後も完全に治らず、後遺障害が残った場合には、「後遺障害慰謝料」を請求することができます。

後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級ごとに算定されます。つまり、重度の後遺障害が残っていれば高く、軽度になれば慰謝料額も低くなります。

以下に、【自賠責基準】と【裁判基準(弁護士基準)】の後遺障害慰謝料の等級ごとの金額をまとめました。

【後遺障害慰謝料の等級ごとの金額】

  自賠責基準 弁護士基準
別表第1 別表第2
1級 1650万 1150万 2800万
2級 1203万 998万 2370万
3級   861万 1990万
4級   737万 1670万
5級   618万 1400万
6級   512万 1180万
7級   419万 1000万
8級   331万 830万
9級   249万 690万
10級   190万 550万
11級   136万 420万
12級   94万 290万
13級   57万 180万
14級   32万 110万

なお、後遺障害慰謝料については、任意保険基準は特に決まったものがなく、自賠責基準と裁判基準(弁護士基準)のあいだの金額になることが多くなります。

後遺障害の等級について」の記事に、後遺障害の状態ごとの等級の目安が載っているので、ぜひ参考にしてください。

例:むちうちで14級の後遺障害が認定された場合にもらえる後遺障害慰謝料
・自賠責基準だと32万円
・裁判基準(弁護士基準)だと110万円
例:歩行中に自転車に追突されて大腿骨を骨折し、10級の後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
・自賠責基準だと190万円
・弁護士基準だと550万円

ただし、上記は、被害者の過失がゼロの場合の金額です。被害者側にも過失が認められる場合は、過失割合に相当する分が減額されます。

1-3. 被害者が死亡した場合の慰謝料

交通事故被害者が死亡した場合には、加害者に「死亡慰謝料」を請求することができます。

死亡慰謝料は、亡くなった被害者本人が受けた精神的苦痛や、遺された家族の精神的苦痛に対して支払われるものです。死亡した本人は受け取れないため、遺族(被害者の配偶者、父母、子)が受け取ることになります。遺族の精神的苦痛に対する慰謝料は、「近親者慰謝料」とも呼ばれますが、多くは死亡慰謝料の金額を検討する際に一緒に考慮されます。

【死亡慰謝料の金額】

算定基準慰謝料金額
自賠責基準
※最も低い水準
400万円(※1)~最大1,350万円(※2)
※2:遺族が3名以上かつ被害者に被扶養者がいる場合
任意保険基準保険会社独自の基準
自賠責保険基準より高く弁護士基準より低い
裁判基準(弁護士基準)
※適切な基準
2,000万円〜2,800万円
判例では3,000万円事例あり

※1:2020年3月31日以前に発生した事故については、350万円となります。

ただし、上記は、被害者の過失がゼロの場合の金額です。被害者側にも過失が認められる場合は、過失割合に相当する分が減額されます。

2. 相手が信号無視した事故でも慰謝料が満額もらえないことがある

加害者が信号無視をしたことが原因で事故が起こった場合に、もらえる慰謝料の金額は、満額もらえるとは限りません。なぜならば、相手の信号無視であっても、過失が「相手100%:自分0%」に必ずなる訳では無いからです。

「過失」とは、「発生した交通事故に対する責任(不注意)の割合」のことをいいます。

普通に考えれば、信号無視した人と信号無視していない人がいたら、信号無視した人の過失が100%、していない人の過失は0%になりそうなものです。しかし、これが例えば、歩行者(赤信号で直進●)と車(青信号で直進●)の場合、歩行者が弱者という観点もあり、自動車側にも30%の過失が認められてしまいます。

また例えば、交差点でのバイクと自動車の直進同士の事故で、バイクが「赤信号●」で直進車が「黄信号●」の場合、過失は「100%:0%」ではなく「70%:30%」となります。

このように、相手が車かバイクか歩行者か自転車かなどにもよりますが、信号無視したからといって、信号無視した方の過失が必ず100%になるわけではない点に注意が必要です。

※ケースごとの過失割合については、「4. 信号無視があった場合の交通事故の過失割合」で詳しく後述します。

3. 信号無視がからむ事故の慰謝料金額は「過失割合」の影響が大きい

慰謝料および損害賠償金の金額は、個別の過失割合によって大きく左右されます。

なぜならば、被害者にも過失が認められてしまうと、被害者の過失割合に相当する額が減額されてしまうからです。例えば、被害者の過失が30%の場合には、慰謝料を含む損害賠償金の金額から30%相当の金額が減額されてしまいます。

例:ある事故の死亡慰謝料が、被害者に全く過失がない場合に2,000万円だったとします。
しかしながら、このケースにおいて被害者にも30%の過失があった場合には、30%に相当する600万円が減額され、70%に相当する1,400万円の慰謝料しかもらえません。

【過失割合による死亡慰謝料の金額の例(2,000万円の場合)】

過失割合(加害者:被害者)死亡慰謝料の額(満額が2,000万円の場合)
100:0(被害者に過失なし)2,000万円(満額)
80:20(被害者の過失20%)1,600万円(20%減額)
60:40(被害者の過失40%)1,200万円(40%減額)
50:50(被害者の過失50%)
※被害者も信号無視したケースなど
1,000万円(50%減額)

このように、いくら加害者が信号無視していても、そして被害者が死亡していたり大きな後遺障害を負っていたりしても、被害者の過失割合が認められてしまえば、慰謝料は大きく減額されてしまうことがあります。

とはいっても、被害者側としては、「信号無視した加害者が圧倒的に悪いはずだ」「できれば、満額に近い慰謝料をもらいたい」と思うはずです。

加害者側から「被害者にも過失があった」と主張された場合に、どう戦っていくか、そもそも過失割合はどのように通常設定されているかは、5章以降で詳しく解説していきます。

4. 信号無視があった場合の交通事故の過失割合

信号無視があった場合の交通事故の過失割合は、過去の判例などから、ケースごとに基本となる過失割合の基準が決められています(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準)。

例えば、「交差点の出会い頭で直進車同士が事故を起こしたときに、直進車Aが赤信号、直進車Bが青信号だった場合には、直進車Aの過失割合は100%、直進車Bの過失割合は0%」などと基準となる過失割合が定められています。

※ただし、これはあくまで基準であり、実際にはそれ以外の要素も含めて個々のケースごとに過失割合が決まるので注意してください。

ここからは、民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準をもとに、ケースごとの過失割合の基準を解説していきます。

4-1. 自動車同士の事故の過失割合

自動車同士の事故で信号無視があった場合の過失割合の基準は、以下のとおりです。

①両方とも直進車の事故

直進車A直進車B過失割合
青●赤●0%:100%
黄●赤●20%:80%
赤●赤●50%:50%

なお、直進車Aが黄信号で交差点に入り、その直後に信号がに変わっていた場合(直進車Bは赤信号)の過失割合は、「直進車A:直進車B=30%:70%」となります。

②右折車と直進車の衝突事故

右折車A直進車B過失割合
青●赤●0%:100%
青●青●80%:20%
青●黄●30%:70%
黄●黄●60%:40%
赤●赤●50%:50%

なお、右折車が青信号で交差点に進入した後、赤信号に変わったのちに右折した場合(直進車は赤信号)の過失割合は、「右折車A:直進車B=10%:90%」となります。

また、右折車が黄信号で交差点に進入した後、赤信号に変わったのちに右折した場合(直進車は赤信号)は、「右折車A:直進車B=30%:70%」となります。

4-2. バイクと自動車の事故の過失割合

バイクと自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合の基準は、以下のとおりです。

①交差点での直進同士の事故

バイク自動車過失割合
青●赤●0%:100%
赤●青●100%:0%
黄●赤●10%:90%
赤●黄●70%:30%
赤●赤●40%:60%

自動車同士の事故と異なり、バイクの方がやや過失が有利に判断されます。これは、バイクの方が自動車に比べて要保護性が高いと考えられるためです。

なお、バイクが黄信号で交差点に進入した直後に赤信号に変わった場合(自動車は赤信号)の過失割合は、「バイク:自動車=20%:80%」となります。

4-3. 自転車と自動車の事故の過失割合

自転車と自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合の基準は、以下のとおりです。

交差点での直進同士の事故

自転車自動車過失割合
青●赤●自転車0%:自動車100%
赤●青●自転車80%:自動車20%
黄●赤●自転車10%:自動車90%
赤●赤●自転車30%:自動車70%
赤●黄●自転車60%:自動車40%

なお、自転車がからむ事故の場合、「夜間の事故である」「自転車側に著しい過失がある(酒気帯び運転や二人乗り、無灯火、スマホ操作など)」などの修正要素により、自転車側の過失割合が増えることがあります

4-4. 歩行者と自動車の事故の過失割合

歩行者と自動車の事故で信号無視があった場合の過失割合の基準は、以下のとおりです。

①横断歩道を渡る歩行者と直進車の事故

歩行者直進車過失割合
青●赤●歩行者0%:直進車100%
赤●赤●歩行者20%:直進車80%
赤●青●歩行者70%:自動車30%

なお、歩行者が青信号で横断歩道に進入した後、赤信号に変わっていた場合(直進車は青信号)の過失割合は、「歩行者20%:直進車80%」となります。

②横断歩道の歩行者と右左折車の事故

歩行者右左折車過失割合
青●青●歩行者0%:右左折車100%
黄●青●歩行者30%:右左折車70%
赤●青●歩行者50%:右左折車50%
黄●黄●歩行者20%:右左折車80%
赤●黄●歩行者30%:右左折車70%
赤●赤●歩行者20%:右左折車80%

歩行者と自動車の場合、歩行者が信号無視をしていたとしても、自動車の過失割合が高めに設定されています。これは、自動車よりも歩行者の方が要保護性が高いと考えられるからです。

4-5. 自転車と歩行者の事故の過失割合

自転車と歩行者の事故で信号無視があった場合の過失割合の基準は、以下のとおりです。

交差点での直進同士の事故

自転車歩行者過失割合
赤●青●自転車100%:歩行者0%
赤●黄●自転車85%:歩行者15%
赤●赤●自転車75%:歩行者25%
黄●赤●自転車40%:歩行者60%
青●赤●自転車20%:歩行者80%

なお、自転車がからむ事故の場合、「自転車側に著しい過失がある(酒気帯び運転や二人乗り、無灯火、スマホ操作など)」などの修正要素により、自転車側の過失割合が増えることがあります。

自転車と歩行者の事故の場合、車両では加入が義務化されている自賠責保険に入っていないケースが多く、後遺障害部分の賠償を請求しにくいなどの事情があります。

トラブルなどが生じやすいため、必要があればぜひサリュにご相談ください。

5. 信号無視の有無が争点になる場合の対処法4つ

ここまで解説したとおり、信号無視があったかどうかによって過失割合が変わるため、慰謝料の金額にも大きな影響があります。

そのため、加害者側は、示談交渉のときに「信号無視の有無」を争点として主張してくることがあります。例えば、加害者側が信号無視したことを否定したり、「被害者も信号無視をしていた」と主張してきたりするケースがあります。

こうした場合の対処法としては、相手の主張をくつがえす証拠を提出することです。

5-1. ドライブレコーダーの記録

加害者側の信号無視を明らかにする(または、被害者が信号無視していないことを明らかにする)場合にもっとも効果的なのが、ドライブレコーダーの動画データを証拠として提示することです。

自分の車載ドライブレコーダーはもちろん、相手のドライブレコーダーの提出も求めましょう。また、可能であれば、周囲の車のドライブレコーダーの記録を提供して活用することもできます。

5-2. 周辺の監視カメラの記録

事故現場周辺のコンビニやパーキング、街頭の監視カメラのデータを確認するのもおすすめです。管理者が見せてくれない場合でも、弁護士が依頼すれば見せてもらえることもあるため、困ったときにはご相談ください。
なお、このような監視カメラの映像記録は、例えばコンビニの場合は2週間程度で上書きされてしまうなど、保存期間が短いケースが多いため、事故後早期に管理者に連絡し、「後日、弁護士から適切な手続きをとって開示を求めるので、ひとまず保存しておいて欲しい」と伝えて、証拠の保全を図ると良いでしょう。

5-3. 目撃者の証言

事故現場を目撃した方を探して、得た証言も証拠となります。事故から時間が経過すると証言を集めるのが難しくなるため、できるだけ早くに証言を集めることが重要です。

5-4. 警察の実況見分調書や供述調書を取り寄せる

警察が事故当時に作成した「実況見分調書」や「供述調書」も強力な証拠となります。事故から時間が経過すると、加害者も被害者もだんだん記憶が薄れてきてしまいます。だからこそ、事故直後の状況をまとめたこれらの書類は示談交渉の大きな材料となります。

「実況見分調書」や「供述調書」を取り寄せて、相手がどのように説明しているのか、目撃者の証言はどう書かれているかなどを再度確認しましょう。

5-5.事故調査会社による調査資料

民間の事故調査会社が、過失割合を検討する前提として、当事者双方から事情を聴取したり、現場写真、道路幅などを調査することがあります。警察の実況見分ほど強力ではありませんが、こちらもある程度証拠として有効な場合があります。
もし、過失を争いたい場合は、ご自身が契約されている保険会社の担当者に相談し、民間の調査会社による調査をするよう要望してみることも有益です。

6. 加害者側は低い慰謝料を提示してくるので注意しよう

ここからは、「信号無視事故があった場合の慰謝料の提示額が低い」とお悩みの方に向けた情報を解説していきます。

前提として、加害者側は「できるだけ慰謝料や損害補償金を安く済ませたい」と考えています。そのため、以下のような方法で低い慰謝料での示談を提案してきます。

・被害者にも過失があると主張してくる
・裁判基準よりも低い基準で慰謝料を算定して提案してくる

この2つについて、さらに補足解説していきます。

6-1. 被害者にも過失があると主張してくる

相手方は、自分が支払う慰謝料をできるだけ低く抑えるために、「被害者にも過失がある」と主張してくることが考えられます。

例えば、満額だと1,000万円の慰謝料を支払わなければいけないケースがあった場合、「被害者にも50%の過失があるから、示談金は半額の500万円です」などと言ってくるケースがありえます。

このように主張してきた場合の対処法については、先ほどの5章を再確認してください。

6-2. 裁判基準より低い基準で慰謝料を算定して提案してくる

3章で解説した通り、慰謝料の算定方法には3種類あり、算定方法によって金額がかなり異なってきます。加害者側はできるだけ慰謝料を抑えたいので、低い基準を使って慰謝料を計算して示談を求めてくるでしょう。

加害者が加入している保険会社から示談提案がある場合、保険会社が独自に設けている任意保険基準で算定した慰謝料の提案が来ます。

ここでは、例として、むち打ち等の軽症の場合で、6ヶ月間(180日)に週2回程度のペースで合計48回整形外科に通院した場合の慰謝料を以下に示します。

算定基準慰謝料金額
自賠責基準
※最も低い水準
412,800
任意保険基準643,000
裁判基準(弁護士基準)
※適切な基準
890,000

裁判基準だと89万円の慰謝料がベースになるのに対して、保険会社は412,800円~643,000円の提案をしてくるのです。

金額に納得が行かない場合には、裁判基準で算定してもらえるように、交渉していく必要があります。

7. 信号無視の事故で慰謝料を大幅に増額できた事例3つ

ここからは、加害者が信号無視をした事故に関する事例をいくつか紹介していきます。

「加害者が信号無視を認めない」「過失割合で揉めている」などで悩んでいる方は事例を見て、ぜひ参考にしてみてください。

7-1. 加害者の信号無視を証明して600万円超の賠償金を獲得した事例

自動車を運転していたRさん(40代)は、右折青信号で交差点を右折しようとしたところ、赤信号を無視して対向直進してきた加害者と衝突し、頚椎捻挫などの怪我を負いました。

ところが加害者は事故直後から自分の信号は青であり、Rさんこそ赤信号無視であるから自分に責任は無いと言い張り、加害者が加入していた保険会社も加害者の言い分を鵜呑みにして、治療費の立て替えすら拒んできました。

Rさんは、このような加害者と保険会社の対応に非常に立腹され、サリュの無料相談にお越しくださいました。

幸いにも、事故には目撃者がおり、連絡先が分かることを知り、直ちにその供述内容を確認して証拠化するために動きました。サリュの弁護士とリーガルスタッフが2名体制で目撃者に連絡を取り、その内容を証拠化した上で目撃者の署名押印を得ておきました。さらに、事故現場の信号サイクル表も取り付けて、実際の事故現場にいって検証し、Rさんの信号が青であったという真実を裏付ける資料を収集していきました。

その結果、保険会社はとうとう過失割合について「加害者側が100%悪い」ことを認めました。

一方、Rさんの怪我は軽いものではなく、結局、半年以上の通院でも頚部痛などの症状が改善しなかったため、後遺障害等級の申請をし、サリュのノウハウを活かしたアドバイスに基づく診断書が作成されたこともあり、無事に1回の申請で14級が認定されました。

ところが、今度は、保険会社が「示談段階では慰謝料は8割までしか支払えない」と言ってきたのです。そこで、サリュは直ちに「紛争処理センターへの申立」を行いました。保険会社が示談を受け入れないことについて実質的な争点はなかったので、裁判をするまでもなく紛争処理センターで早期解決が可能だろうという見込みだったのです。その見込みはずばり的中し、申立からわずか2カ月で、ほぼサリュの請求通りの内容で物損・人損併せて600万円以上(自賠責保険金含む)の金額で示談できました。

参考:事例230:加害者の信号無視を証明。責任を否定していた加害者から600万円超の賠償金を獲得

7-2. 加害者の信号無視を明らかにして過失割合を変更させた事例

Iさんは、片側3車線の道路で、右折するために、交差点内で対向車が通過するのを待っていました。右折信号が青になったので右折を開始したところ、対向車の一番左側にいた加害車両が交差点内に進入してきました。当初、加害者は「信号を無視してしまった」と話しており、Iさんに謝罪もしていましたが、実況見分の際に現場で警察官に話した内容は、加害者自身に有利な内容でした。

その後、Iさんは加害者側の保険会社から、「Iさんにも3割の過失がある」と主張されました。それに納得できなかったIさんは、サリュにご相談くださいました。

Iさんから聞いた事故状況の詳細、取得した刑事記録、加害者側の保険会社が依頼したリサーチ会社の資料も取り寄せて検討を進めました。検討の結果、加害者が証言していた走行速度、黄色信号を確認した地点およびその地点から停止線までの距離、本件交通事故現場の信号サイクルも加味して、加害者の主張に矛盾があることを指摘しました。

その結果、相手方が主張していた30:70ではなく、5:95の過失割合(物損については0:100)を認めさせることに成功しました。

参考:事例318:過失割合を、相手方主張の30:70から5:95に修正して解決。

7-3. 加害者の過失を立証して総額7000万円を受け取ることができた事例

交差点を原動機付自転車で走行していたNさん(18歳、男性)は、交差点に右折進入してきた乗用車にはねられ、急性硬膜下血腫で間もなくお亡くなりになりました。この事故は、Nさんが赤信号無視で交差点に進入してしまった事故だったのですが、相手の加害乗用車も赤信号で進入し、かつ、かなりのスピードを出していた可能性がありました。

しかし、加害者は「自分は青信号で交差点に進入しており、事故はNさんのせいだ」と主張し、改悛の情も一切見られませんでした。Nさんのご両親は、Nさんの過失を認めつつも「加害者も安全運転をしてくれていれば、息子は死ななくても済んだのではないか」という気持ちが捨てきれず、サリュにご相談に来られました。

事故状況について調査を始めると、やはり加害者側の信号は青ではなく赤であったこと、加害者が20kmのスピード違反もしていたことが判明しました。

さらに、サリュは加害者の刑事裁判に遺族が参加できる「被害者参加制度」のサポートも始めました。被害者参加制度とは、死亡事故のような大きな事故では、遺族が、加害者に対して情状について意見を述べることができる制度です。Nさんのご両親は、息子の過失を認めつつも、「加害者も同様に危険な運転行為をしたことを反省してほしい」と裁判の中で訴えることができました。

こうして結局、加害者の主張を鵜呑みにして対応していなかった保険会社も、Nさんと加害者の過失は3:7という結果を認めました。

しかしながら、いざ示談交渉となると保険会社は誠意ある対応をしませんでした。そのため、今度は民事裁判を提起し、18歳で突然命を奪われたNさん本人の無念や、子供を失った深い悲しみ、加害者が否認の言を繰り返したことによる精神的苦痛を訴えました。6回の期日を経て、最終的に、人身傷害保険と損害賠償請求を併せて総額7000万円を受け取ることで解決することができました。

参考:事例102:死亡事故で被害者参加。遺族の気持ちも伝え、過失割合も覆した

8. 信号無視事故の慰謝料で悩んだら弁護士への依頼がおすすめ

「相手が信号無視をしてたのに認めない」「こちらにも過失があると言われた」のように、信号無視がからむ事故では、過失割合で揉めるケースが多くあります。

加害者サイドは、できるだけ自分の過失を低くし、被害者側にも過失があると主張し、慰謝料や損害賠償金の金額を低くしようとしてくる傾向があります。

また、任意保険会社は、高い水準の「裁判基準」ではなく、低い「任意保険基準」を用いるため、納得できない慰謝料金額を提案してくるケースが多いでしょう。

もしこのように「納得できない慰謝料」を提示されてしまった場合は、過失割合について交渉したり、「裁判基準(弁護士基準)」での適正な金額の慰謝料に変更してもらったりするために、弁護士に相談することをおすすめします。

残念ながら、被害者本人が保険会社と交渉しても、保険会社が「裁判基準(弁護士基準)」の慰謝料を認めてくれる可能性は低いと言わざるをえません。多少の増額しか期待できません。そのため、裁判基準による高額な慰謝料を手にするためには、弁護士に介入してもらい、交渉してもらう必要があります。

また、過失の有無や割合について争う場合には、それをどう証明するかが難しいため、過失の立証に精通している弁護士の協力が不可欠です。過失割合の算定も含めて、示談交渉を円滑に行うためには弁護士の介入がベストなのです。

ただし、弁護士であれば誰でもいいという訳にはいきません。納得のいく慰謝料を手にするためには、交通事故被害者救済に強く、自賠責・裁判所・保険会社の実情に精通している弁護士がおすすめです。

サリュは、業界トップクラス20,000件以上の解決実績を持っている交通事故救済のプロです。それでいて、相談料・着手金は0円。「まずは話を聞くだけ」のような気軽な相談が可能で安心できる弁護士法人です。

交通事故の中でも慰謝料のトラブルに発展しやすい信号無視が絡む事故については、できれば早い段階から我々に気軽にご相談いただければ幸いです。

9.まとめ

本記事では「信号無視があった事故の慰謝料」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

信号無視事故の慰謝料はケースにより数万円~数千万円程度

算定基準

入通院慰謝料
(骨折、靭帯損傷、脳挫傷等で適用される別表1を前提)

後遺障害慰謝料

死亡慰謝料

入院2ヶ月、通院8ヶ月の場合

等級によってかなり差がある

一家の支柱が亡くなったのか、母親や配偶者が亡くなったのかによって差がある

自賠責基準

-※

32万円~1,850万円

400万円~最大1,350万円

(遺族の数などによって変わる)

任意保険基準

112.1万円

裁判基準

194万円

110万円~2,800万

2,000万円〜2,800万円

相手が信号無視した事故でも慰謝料が満額もらえないことがある

・相手の信号無視であっても、過失が「相手100%:自分0%」に必ずなる訳では無いから

信号無視がからむ事故の慰謝料金額は「過失割合」の影響が大きい

慰謝料が2,000万円の場合
・100:0(被害者に過失なし)なら2,000万円(満額)
・80:20(被害者の過失20%)なら1,600万円(20%減額)
・60:40(被害者の過失40%)なら1,200万円(40%減額)
・50:50(被害者の過失50%)なら1,000万円(50%減額)

信号無視があった場合の交通事故の過失割合については、以下のケースごとに解説しました。

・自動車同士の事故の過失割合
・バイクと自動車の事故の過失割合
・自転車と自動車の事故の過失割合
・歩行者と自動車の事故の過失割合
・自転車と歩行者の事故の過失割合

加害者側の保険会社は、低い慰謝料を提示してくるので注意しましょう。弁護士に依頼することで、示談金額が何倍も変わってくることがあります。どれだけ増額できるかは、弁護士の手腕にかかっています。

もしも示談交渉に行き詰ったら、サリュの無料相談をぜひご活用ください。