硬膜外血腫による後遺症一覧|症状が残る可能性や受け取れる賠償金

交通事故や転倒などで頭を強く打ち、硬膜外血腫と診断されたら、後遺症が残るのではないかと不安になるでしょう。

なかには、主治医に後遺症が残る可能性を告げられ、調べている方もいるはずです。

硬膜外血腫の後遺症には、以下のようなものがあります。

硬膜外血腫によって現れる可能性がある後遺症
高次脳機能障害(強い衝撃で脳が損傷し、認知機能等に異常がある状態)
運動障害(足や手が麻痺して動かしづらくなったり、歩きづらくなったりする症状)
てんかん(突然意識を失い、手足が突っ張るようにけいれんする症状等)
遷延性意識障害(意識不明の状態)

後遺症が残る可能性が高まるのは、硬膜外血腫が原因で脳を損傷している場合です。

後遺症が残らないことが何よりですが、交通事故の被害に遭い、硬膜外血腫による後遺障害が残ったら、加害者側に賠償金を請求しましょう

しかし、目に見えない部分の怪我や後遺症は、事故が原因だと認めてもらうのが難しい傾向にあります。

硬膜外血腫という大怪我を負い後遺症が残ったのに、「事故による症状ではない」と判断されれば、受け取れる賠償金が大幅に下がる可能性があるのです。

交通事故で被害に遭い、つらい思いをしているあなたに、そのようなことが起こらないよう、この記事では以下のことを解説します。

この記事でわかること
・硬膜外血腫で見られる主な後遺症
・硬膜外血腫で後遺症が残る可能性が高いケース
・後遺症が残った方にとって後遺障害認定が重要である理由
・硬膜外血腫の後遺症で認定される可能性がある等級
・硬膜外血腫の後遺症が残った方が受け取れる可能性がある賠償金

この記事を読むことで、自分にどのような後遺症が残る可能性があるのか理解でき、今後の生活に向けて心構えできます。

お金や生活に不安を感じて毎日を過ごすことにならないよう、後遺症について一緒に学んでいきましょう。

この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢

弁護士法人サリュ
大阪弁護士会

交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年  弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得

弁護士法人サリュは、交通事故の被害者側専門で20,000件以上の解決実績を誇る法律事務所です。

交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
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1. 硬膜外血腫で見られる主な後遺症

まずは、硬膜外血腫で脳が圧迫され、脳に損傷が生じた場合に見られる主な後遺症を紹介します。

高次脳機能障害(強い衝撃で脳が損傷し、認知機能等に異常がある状態)
運動障害(足や手が麻痺して動かしづらくなったり、歩きづらくなったりする症状)
てんかん(突然意識を失い、手足が突っ張るようにけいれんする症状等)
遷延性意識障害(意識不明の状態)

1-1.高次脳機能障害

硬膜外血腫の後遺症に、高次脳機能障害があります。

高次脳機能障害とは、強い衝撃で脳が損傷し、認知機能等に異常がある状態のことです。

主な症状の一部を、以下にまとめました。

高次脳機能障害の主な症状
記憶障害:ものごとを覚えられない
行動と感情の障害:衝動や感情を抑えられない
注意障害:集中力が続かない
遂行機能障害:計画を立てられない
失語症(言語障害):話したいのに言葉が出てこない

症状は、脳のどの部位を損傷したのかによって異なるため、人それぞれです。

高次脳機能障害になると、以前と同じ仕事に就けなくなったり、一人で外出するのが難しくなったりする場合もあります。

高次脳機能障害に関するくわしい症状は、こちらの記事をご覧ください。

1-2. 運動障害

硬膜外血腫により、運動障害が残る可能性があります。

運動障害とは、足や手が麻痺して動かしづらくなったり、歩きづらくなったりする症状のことです。

脳の神経は身体全体に繋がっているため、頭以外の部分に症状が表れる場合もあります。

1-3. てんかん

硬膜外血腫が原因で残る可能性がある後遺症のひとつに、てんかんもあります。

てんかんとは、突然意識を失い、手足が突っ張るようにけいれんすることです。

てんかんの後遺症が残ると、数か月に1回、けいれんが発症する可能性があります。

症状が重い場合は、転倒するほどの発作が起きたり、1ヶ月に1回以上の発作が起きたりすることもあります。

1-4. 遷延性意識障害

硬膜外血腫により、遷延性意識障害の後遺症が残るケースもあります。

遷延性意識障害とは、意識不明の状態(植物状態)のことで、交通事故被害のなかで最も重い後遺障害です。

意味のある発語ができない、意思疎通ができないなどの状態が3ヶ月以上続くと、遷延性意識障害と診断されます。

被害者が遷延性意識障害になると、ご家族の介護が必要になるケースがほとんどです。

被害に遭ったご家族が硬膜外血腫で意識不明の状態が数日続いている場合は、遷延性意識障害の可能性が高いでしょう。

ご家族が遷延性意識障害になってしまった場合の対応ついては、こちらの記事をご覧ください。

2. 硬膜外血腫で脳を損傷すると後遺症が残る可能性がある

1章では、硬膜外血腫で見られる主な後遺症を紹介しましたが、後遺症が残る可能性が高いのは脳を損傷した場合です。

硬膜外血腫によって死亡あるいは後遺症が残る確率は、約10%といわれています。

それほど多くないと感じるかもしれませんが、重症の場合は命に関わるケースがあるため、早い段階での対処が必要です。

一方、軽傷なら手術しなくても血液が吸収され、そのまま治ることもあります。

怪我の状態をよく知っているのは医師のみのため、現在も治療中の方は、主治医の指示に従って治療に専念しましょう。

3. 後遺症が残ったら症状に見合う後遺障害等級を認めてもらうことが大事

2章では、硬膜外血腫によって脳を損傷すると後遺症が残る可能性があることをお伝えしました。

交通事故によって後遺症が残ってしまったら、「今後の生活は?」「働けなくなったらお金はどうなる?」など、さまざまな不安が出てくるはずです。

これらの不安を解消するためには、後遺障害認定を申請し、症状に見合う後遺障害等級を認めてもらうことが重要となってきます。

後遺障害認定・後遺障害等級とは
後遺障害認定とは、症状が一生残存し、後遺症が交通事故によるもの(=後遺障害)だと認めてもらうこと。
症状によって1~14級までの「後遺障害等級」が認定される。症状が重いほど数字が小さくなる。

後遺障害等級が認められると、受け取れる賠償金が数百万~数千万円変わる可能性があります。

具体的には、以下の手順で準備し、専門機関に申請します。

後遺障害等級と認定されるまでの流れ
1.事故による後遺症(後遺障害)だと証明するための検査を受ける
2.医師に後遺障害診断書を書いてもらう
3.後遺障害認定に有利になる証拠を用意する
4.後遺障害認定の申請をする

後遺障害等級は、今後の生活に必要な十分なお金を受け取るために必要なものです。

硬膜外血腫の後遺障害で何級が認められるのか、どのくらいの賠償金を受け取れる可能性があるのかについては、次の章で解説しますので、このまま読み進めてください。

4. 硬膜外血腫で認定される可能性がある後遺障害等級

交通事故で硬膜外血腫になり後遺障害(事故による症状だと証明できるもの)が認められた場合、認定される可能性がある後遺障害等級は、1・2・3・5・7・9・12・14級です。

それぞれ、認定される基準を以下にまとめました。

等級認定される基準
1神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12局部に頑固な神経症状を残すもの
14局部に神経症状を残すもの

引用:国土交通省 自賠責保険・共済の限度額と補償内容より一部引用

ここで紹介している国土交通省の基準はざっくりしたものですが、怪我の種類や症状によって、基準は細かく設定されています。

1級や2級は、後遺障害によって、家族や周囲の人の介護が必要な状態です。

3~9級は、脳に損傷が生じ、後遺障害によって仕事に支障が出るような状態です。

12級と14級は、脳の機能に異常はないけれども、身体の一部にしびれや痛みなどの神経症状が残っている状態です。

後遺障害認定は、これらの基準に当てはまるかどうかを、書類上の証拠のみで専門機関に判断されます

そのため、どれだけつらい症状があっても、画像や検査結果で後遺障害があることを証明できないと、後遺障害等級を受けることはできません。

5. 硬膜外血腫による後遺障害が残った方が受け取れる賠償金

硬膜外血腫による後遺障害が残った方が受け取れる賠償金は、大きく2種類あります

一つ目は「傷害部分に対する賠償金」、二つ目は「後遺障害に対する賠償金」です。

【傷害部分に対する賠償金】

・治療費
・入通院慰謝料(事故による怪我で入通院したことへの精神的損害に対して支払われるもの)
・休業損害(事故による怪我で仕事を休んだ場合の補償)

【後遺障害に対する賠償金】

・後遺障害慰謝料(事故で後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛に対して支払われるもの)
・後遺障害逸失利益(事故で後遺障害が残らなかったら得られたはずの利益)
・介護費や住宅改造費など

後遺障害等級によって変わるのは、後遺障害に対する賠償金です。

ここでは、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の金額相場を紹介します。

5-1. 後遺障害慰謝料の金額相場

後遺障害慰謝料は、事故によって後遺障害が残り、精神的苦痛を負ったことに対して支払われる賠償金です。

金額相場は、後遺障害等級によって110万円~2800万円です。

以下のように、後遺障害等級によって数百~数千万円もの差が出ます。

等級後遺障害慰謝料
12,800万円
22,370万円
31,990万円
51,400万円
71,000万円
9690万円
12290万円
14110万円

※弁護士基準で計算

一つ等級が変わるだけで、百万円以上も差が出ることから、症状に見合う等級を獲得する重要性をご理解いただけるでしょう。

5-2. 後遺障害逸失利益の金額相場

後遺障害逸失利益は、交通事故によって後遺障害が残っていなければ将来得られたはずの利益のことです。

金額相場は、数千万円~1億円以上となっています。

後遺障害逸失利益は、後遺障害等級だけでなく、被害者の年齢や性別、事故前の収入などを基に計算されるものです。

そのため、一人ひとり金額が異なります。

今回は、以下の2つのケースを例に挙げて等級ごとに金額相場を出しました。

【年齢・性別・基礎収入】

逸失利益は基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数で計算します。
これらの数字が高ければ高いほど、後遺障害逸失利益の金額は高くなります。
下記早見表では、以下の年収を前提にしています。  

基礎収入
35歳 男性 5,600,500円
35歳 女性 4,111,400円
(※令和4年の全学歴、年齢別、男女別の平均収入を前提)  

労働能力喪失率こちら
労働能力喪失期間に相当するライプニッツ係数はこちら

【後遺障害逸失利益の早見表(年齢・等級別)】

等級後遺障害逸失利益
(男性)
後遺障害逸失利益
(女性)
111,419万            8,383万
211,419万            8,383万
311,419万            8,383万
59,021万6,622万
76,395万4,694万
93,997万2,934万
12669万  490万  
14128万    94万 

※上記金額は一例です。

32年間(事故時35歳から67歳までの間)、後遺障害が残存することを前提とした計算になっています。12級の場合には10年、14級の場合には5年で計算をしております。

年齢や収入によって、金額は大きく変わります。

もし、被害者が子供や学生、専業主婦で収入がない場合は、政府が調査している「賃金センサス」の全年齢の平均賃金額を基礎収入として計算できるケースがあります。

そのため、事故当時に収入がないからといって逸失利益がもらえないと決まったわけではありません。

6. 硬膜外血腫の後遺障害認定を自力で認めてもらうのは困難

5章では、硬膜外血腫で後遺障害が残ったら受け取れる可能性がある賠償金を紹介しました。

ただし、寝たきりなどの事案を除いて、硬膜外血腫の後遺障害認定を自力で認めてもらうのは、困難といえます。

なぜなら、後遺障害認定を申請して等級を受けるには、事故によって残った症状であることを書類上の証拠で証明しなければならないからです。

例えば、硬膜外血腫によって高次脳機能障害の症状が表れているとしましょう。

言語障害や注意欠陥などの症状は目に見えませんが、これらをご家族や勤務先の陳述書、さらに、CTやMRIなどの検査結果で証明できなければ、後遺障害としては認められないのです。

実際に、当弁護士事務所サリュでも、似たような事例がありました。

【高次脳機能障害が認められづらい事例】

事例88:高次脳機能障害|診断名無くても等級認定サポートで後遺障害9級認定

そうならないためには、交通事故のプロである、事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

硬膜外血腫になりご不安な方は、弁護士法人サリュにご相談ください

サリュは、交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。  

法律と医療の知識があり、多くの事故を解決した実績のある弁護士があなたをサポートいたします。  

サリュが硬膜外血腫の後遺症に悩む方の力になれる理由は、以下のとおりです。  

解決実績が20,000件と豊富だから
顧問ドクターと連携して後遺障害を証明する証拠を集められるから  

サリュには、顧問ドクターがいます。  

必要な検査に漏れがないか、見落としている証拠がないかなど、細かくチェックできる環境が整っているのです。  

交通事故で後遺症が残った方が、正当な賠償金を受け取ることは重要です。  

ぜひ、交通事故のプロである私たちに、悩みをお聞かせください。    

電話で無料相談する方は、下記をクリックしてください。  

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7. まとめ

本記事では、硬膜外血腫の後遺症について解説しました。

最後に、大事なポイントをまとめます。

〇硬膜外血腫によって現れる可能性がある後遺症

高次脳機能障害(強い衝撃で脳が損傷し、認知機能に異常がある状態)
運動障害(足や手が麻痺して動かしづらくなったり、歩きづらくなったりする症状)
てんかん(突然意識を失い、手足が突っ張るようにけいれんする症状)
遷延性意識障害(意識不明の状態)

〇硬膜外血腫で脳を損傷すると後遺症が残る可能性がある 

〇後遺症が残ったら症状に見合う後遺障害等級を認めてもらうことが大事

〇硬膜外血腫の後遺症で認定される可能性がある後遺障害等級は、1・2・3・5・7・9・12・14級

〇硬膜外血腫による後遺障害が認められたら受け取れる可能性がある賠償金

【傷害部分に対する賠償金】
・治療費
・入通院慰謝料(事故による怪我で入通院したことへの精神的損害に対して支払われるもの)
・休業損害(事故による怪我で仕事を休んだ場合の補償)  
【後遺障害に対する賠償金】
・後遺障害慰謝料(事故で後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛に対して支払われるもの)
・後遺障害逸失利益(事故で後遺障害が残らなかったら得られたはずの利益)
・介護費や住宅改造費など

脳を損傷しなければ、硬膜外血腫で後遺症が残る可能性はそれほど高くありません。

しかしこれ以上あなたがつらい思いをしないためにも、加害者側とのやり取りが始まる前に一度、弁護士に相談することをおすすめします。

1日でも早く回復し、あなたにつらい後遺症が残らないことを祈っています。