症状固定は誰が決める?答えは医師!最適な判断のために知るべきこと
この記事を読んでいるあなたは、「症状固定は誰が決めるの?」と、気になっているはずです。
交通事故からしばらく経った頃に保険会社から連絡があったことがきっかけで、症状固定を誰が決めるのか不安になった方もいるでしょう。
結論、症状固定を決めるのは主治医です。
「これ以上治療を続けても改善しない」と診断することを意味する症状固定は、医学的に判断できる医師しか決めることはできません。
症状固定は診断書やその後の示談に関わる重要な情報で、慰謝料の金額に大きな影響を与えます。
しかし、保険会社が「そろそろ症状固定にしてください」と言って、勝手に治療費を打ち切ることがあります。
あなたが症状固定を誰が決めるのか知らず、安易に受け入れてしまった場合、本来受け取れるはずの賠償金を受け取れなくなるかもしれません。
そこで、この記事では以下について解説します。
この記事で分かること |
・症状固定を誰が決めるのか ・加害者の保険会社が症状固定を促してくる理由 ・症状固定と言われたときにあなたがやるべきこと ・症状固定前に弁護士に相談すべき理由 |
最後まで読めば、症状固定を誰が決めるのかだけでなく、保険会社や主治医に症状固定と言われた際にどう行動すべきなのか分かります。
被害に遭ったあなたが少しでも損をすることのないよう、症状固定について理解を深めましょう。
この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢
弁護士法人サリュ
大阪弁護士会
交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
相談だけで解決できることもありますので、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
目次
1.Q.症状固定は誰が決める?A.主治医
記事冒頭でもお伝えしましたが、症状固定を決めるのは主治医です。
症状固定とは:交通事故において治療終了を意味すること。これ以上治療やリハビリを続けても症状が良くならない状態になると、症状固定と診断される。 |
治療の効果が出ていないことを医学的に認識できる人は、医師のみです。
保険会社が独断で「そろそろ症状固定にしてください」「もうすぐ症状固定の時期なので」などと決めるものではありません。
交通事故による怪我の状態を、一番理解しているのは被害者あなたです。
医師が被害者の主張を無視して、勝手に症状固定を決めることもできません。
したがって、症状固定は「主治医と被害者が相談しながら決める」というのが正しい答えといえます。
被害者と加害者の示談交渉で症状固定時期を決められず裁判になった場合は、裁判所が症状固定を決めることもあります。
2.保険会社が症状固定を促してくる理由は「損害賠償額を減らすため」
症状固定を決めるのは、主治医と被害者であることが理解できたでしょう。
では、なぜ保険会社が被害者に「症状固定にしてください」「症状固定にして治療費を打ち切ります」などと言うことがあるのか気になりませんか?
保険会社が被害者に症状固定を促してくる理由は、損害賠償額を減らすためです。
実は、症状固定の時期を境目に、加害者側が支払うお金の種類が変わります。
症状固定の時期を早めれば保険会社の治療費負担が減るので、1日でも早く症状固定をするよう促してくるのです。
また症状固定を早めると、後遺症が残った場合に認定される「後遺障害等級」で、被害者が正当な等級を受けにくくなることがあります。
被害者が正当な後遺障害等級を受けられない場合も保険会社が支払う慰謝料の金額が減るため、それを狙って症状固定を促す保険会社もいるのです。
こんな場合は特に注意! |
早い段階で症状固定を促される可能性が高いのは、治療を続けながら職場復帰している場合や車の損害が軽微である場合です。 このような場合には、事故発生後短期間で治療費の対応を打ち切る旨の連絡が来ることがよくあります。 |
3.症状固定を安易に受け入れるべきではない2つの理由
保険会社には症状固定を決める権利がないのに促してくるのは、損害賠償額を減らすためだと分かりましたね。
症状固定を保険会社から提案されたとき、よく調べないまま受け入れると、そのような加害者側の思いどおりになるため注意が必要です。
ここでは、「そろそろ症状固定にしましょう」と保険会社に言われても、安易に受け入れるべきではない理由を解説します。
1.治療やリハビリにかかったお金を請求できなくなるから 2. 適切な後遺障害認定を受けられない可能性があるから |
3-1.治療やリハビリにかかったお金を請求できなくなるから
症状固定を安易に受け入れるべきではない理由は、治療やリハビリにかかったお金を請求できなくなるからです。
症状固定は、治療終了を意味します。
症状固定を受け入れると、その後治療を再開した場合、かかったお金が自己負担となる可能性があります。
【症状固定の時期を間違えた場合に起こり得るケース(例)】
日付 | 状況 |
8月1日 | まだ事故による手首の痛みが残っている気がするけど、保険会社の圧に負けて症状固定を受け入れた |
8月14日 | 2週間後、手首が痛みがしつこく残っているため病院に行き、検査を受けて来週手術が決まった |
8月21日 | 症状固定後の通院と手術なので、8月14日の通院分と手術費用は自己負担となる |
また、主治医が交通事故に詳しくない場合もあるので、医師に「そろそろ症状固定にする?」と聞かれた際も、不安が残ったまま受け入れることはやめましょう。
医師の症状固定時期の提案に納得いかなければ、治療を続けられないか相談できます。
3-2.適切な後遺障害認定を受けられない可能性があるから
適切な後遺障害認定を受けられない可能性があるのも、症状固定を安易に受け入れるべきではない理由のひとつです。
後遺障害認定とは、後遺症が交通事故によるものだと認めてもらうことです。
1~14級まであり、等級が高い(数字が小さい)ほど、被害者が受け取れる慰謝料の金額が上がります。
症状固定までの期間が短すぎると、後遺障害認定を受けられなかったり、低い等級にされたりする可能性があるのです。
怪我別の症状固定タイミング目安 |
・むちうち:半年程度 ・骨折:半年~1年程度 ・高次脳機能障害:半年~1年以上 |
けがの治療から症状固定までの期間が短いと、「しっかり治療を受けなかったら後遺症が残ったのでは?」等と疑われ、適正な後遺障害等級を獲得できない可能性が高まります。
一生治らない後遺症が残ったとしても、適正な後遺障害等級を獲得できなければ、納得いく慰謝料を被害者が受け取ることはできません。
保険会社は、症状固定の時期を早めると後遺障害認定を受けにくくなることも知っています。
そのため、どれだけ強気で症状固定を提案されても、安易に受け入れるべきではないのです。
4.保険会社に症状固定と言われたときにすべきこと
症状固定を安易に受け入れてはいけない理由を理解いただけましたか?
受け入れてはいけないことは分かったけれど、その後どうすれば良いのか気になりますよね。
保険会社に症状固定と言われたときは、まずは「主治医に相談してみます」と回答してください。
その後、あなたが具体的に何をするべきか、ここで紹介します。
【全員】主治医に相談する 【治療が必要な場合】治療を続ける 【治療が必要ではない場合】後遺障害認定の申請準備を進める |
4-1.【全員】主治医に相談する
保険会社に症状固定を提案されたら、まずは主治医に相談しましょう。
主治医に相談すべき理由は、あなたが今症状固定にするべき時期か、医学的な面で判断してもらえるからです。
相談する際は、
・現時点でまだ痛みが残っているのですが、まだ治療を続けたほうが良いですか?
・自分の怪我はまだ治療やリハビリで改善する可能性がありますか?
のように、「あなたが今怪我の状態をどのように把握しているのか」をあわせて伝えましょう。
「これ以上治療しても治らなさそう」「保険会社の担当者が威圧的で怖いから症状固定を受け入れよう」などと、自分の判断で保険会社と話を進めないでください。
4-2.【治療が必要な場合】治療を続ける
主治医に相談して治療が必要だと判断された方は、治療を続けましょう。
このタイミングで、医師に怪我の現状を記載した意見書を作成してもらうと、保険会社に「現時点で治療の継続が必要なので症状固定はしない」と主張できます。
その結果、保険会社に治療の継続を認めさせることができる場合もあります。
しかし、保険会社がこちらの主張を頑なに認めず、治療費の支払いを打ち切ってくるケースもあります。
保険会社に治療費を打ち切られた場合は、被害者が治療費を立て替えて支払い、治療を続けましょう。
その後、示談交渉時に治療費を相手方の任意保険会社や自賠責保険に対して請求するのが一般的です。
4-3.【治療が必要ではない場合】後遺障害認定の申請準備を進める
主治医に相談して治療が必要ではない=症状固定と診断され、後遺症が残ってしまった方は、後遺障害申請の準備を進めます。
後遺障害認定を申請して等級を獲得できれば、後遺障害慰謝料を受け取れます。
申請に必要なことは、以下のとおりです。
後遺障害認定の申請に必要なこと |
・交通事故による後遺症だと証明するための検査を受ける ・後遺症を証明する診断書を医師に作成してもらう ・後遺障害認定に有利な証拠を集める |
交通事故で怪我をさせられて痛みや痺れなどの症状が残っても、後遺障害認定されなければ後遺症だと認められません。
準備が整ったら後遺障害認定の申請をして、結果を待ちましょう。
後遺障害認定で等級を決めるのは損害保険料率算出機構という専門機関で、書類上の証拠で判断されます。
後遺障害認定を受けられるのは全体の約4%と少ない傾向にあり、申請すれば誰でも認定されるわけではないため、事前準備が重要なのです。
被害者ひとりで後遺障害認定を申請しても、証拠不十分で後遺障害等級を獲得できない可能性が高いです。 後遺障害認定の申請をすることになったときは、交通事故に強い弁護士への相談がおすすめです。 |
5.【注意】主治医は賠償面でベストな症状固定時期を知らない!
4章では、保険会社に症状固定と言われた場合、まずは主治医に相談するべきだとお伝えしました。
しかし、主治医は賠償面でベストな症状固定時期を知らない可能性があるため、注意が必要です。
交通事故は、一人ひとり状況が異なる特殊な案件です。
症状固定が後遺障害認定に影響を与えることや、慰謝料の金額に影響することなど、重要性を認識していない医師もいます。
交通事故に詳しくない主治医の場合、主治医と被害者で症状固定を決めると、本来受け取れるはずの慰謝料をもらえなくなる可能性が高いです。
一方で、交通事故の案件を担当したことのある弁護士なら、あなたの事故の状況や怪我の程度から、どのタイミングで症状固定にしてもらうべきか、分かります。
適正な慰謝料を受け取るためにも、主治医による症状固定の判断の前に、交通事故に詳しい弁護士に相談することが大切です。
6.症状固定前に弁護士に相談することが大事
交通事故に遭い怪我をして、症状固定時期に悩んでいるなら弁護士に相談しましょう。
本記事でも何度もお伝えしているように、症状固定の時期は、あなたの受け取れる慰謝料の金額に大きく影響します。
相談すべきタイミングは、症状固定前がおすすめですよ。
ここでは、症状固定前に弁護士に相談することが大事である理由を解説します。
・症状固定前から示談交渉に向けて準備できる ・主治医に症状固定の重要性を説明できる |
6-1.示談交渉に向けて準備できる
症状固定前に弁護士に相談すると、示談交渉に向けて少しずつ準備できます。
交通事故に遭った方の症状固定後の流れは、以下のとおりです。
症状固定→後遺障害認定の申請→示談交渉 |
症状固定と診断されたら、後遺障害認定の申請や、事故の解決に向けた加害者側との示談交渉がはじまります。
少しでも賠償額を減らそうと交渉してくる加害者と戦うためには、怪我の程度や後遺症の重さを細かく証明しなければなりません。
交通事故の案件は、医療や法律などの専門的な知識がないと、証拠を集めるのが難しい傾向にあります。
弁護士は、どのような証拠を集めれば加害者に言いくるめられることなく示談交渉を進められるか知っているので、しっかり準備できます。
また、症状固定前に治療費を打ち切られたとしても、後日示談交渉で「本来治療が必要だったこと」を証明し、治療費を請求できる可能性も高まります。
6-2.主治医に症状固定の重要性を説明できる
症状固定前に弁護士に相談すれば、主治医に症状固定の重要性を説明できます。
主治医が交通事故に詳しくない場合、不適切なタイミングで症状固定と診断しようとしたり、「症状固定の時期を慎重に決めたい被害者の意見」をまともに聞いてくれなかったりすることがあるのです。
なかには、症状固定の重要性を理解しているけれど、主治医に何度も説明や確認をするのが気まずいと感じる方もいますよね。
そのようなときに弁護士がいれば、被害者と医師の間に入り、
・症状固定が交通事故案件においてどのような意味を持つのか
・症状固定の時期がなぜ重要なのか
を説明できます。
もし、あなたが今症状固定について少しでも不安を感じているのなら、私たちサリュの弁護士にご相談ください。 サリュは交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。 サリュの創設者の谷は、損害保険会社側の弁護士をしていた経歴があります。 そのため、サリュの弁護士は加害者側の保険会社の考えや狙い、やり口を理解しています。保険会社が症状固定を提案してきたとしても、冷静に対処できますよ。 また、必要な検査に漏れがないかを検証できる顧問ドクターがいるのも、サリュの強みです。 主治医が交通事故に詳しくない場合は、サリュの顧問ドクターが交渉に有利な医療証拠の存在がないか確認して、医療機関に証拠の開示を依頼します。 弁護士が保険会社からの電話に対応することもできるので、治療途中からぜひご相談ください。 |
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7.症状固定は誰が決めるのか気になる方によくある質問
最後に、症状固定は誰が決めるのか気になる方によくある質問に回答いたします。
【Q1】症状固定はなるべく伸ばしたほうが良いですか? 【Q2】症状固定から示談成立までどのくらいの期間かかりますか? |
7-2.【Q1】症状固定はなるべく伸ばしたほうが良いですか?
A.症状固定をむやみに伸ばせばよいわけではありません。
怪我や後遺症がないのに病院に通い続けたとしても、治療が必要でなかったと判断されれば、治療費は自己負担になります。
また、ひどい後遺症が残った場合は、保険会社が症状固定を促してきたタイミングで受け入れ、その後の後遺障害認定で高い等級の獲得を目指すケースもあります。
詳しくは「事例285:高次脳機能障害での長期入院の必要性を医師面談による立証で認めさせた」でご紹介していますので、ご参考ください。
7-3.【Q2】症状固定から示談成立までどのくらいの期間かかりますか?
A. 後遺障害の申請をする場合、症状固定から示談成立までは、3ヶ月~6ヶ月程度です。
後遺障害認定の結果が出るまでに時間がかかったり、結果に納得できない場合に異議申立したりすると、さらに時間がかかることがあります。
また、加害者側と示談内容でもめて、訴訟提起などを行う場合には、症状固定から示談成立まで1年以上かかるケースもあります。
8.まとめ
症状固定を決めるのは、医師と交通事故の被害に遭ったあなたです。
保険会社が独断で決めるものではありません。
保険会社が症状固定を促してくる理由は、損害賠償額を減らすためです。
よく調べずに保険会社の主張を受け入れてしまうと、以下の状況になり、本来受け取れる慰謝料より少なくなる可能性があるため注意してください。
症状固定を安易に受け入れてはいけない理由 |
・治療やリハビリにかかったお金を請求できなくなるから ・後遺障害認定を受けられない可能性があるから |
症状固定を判断できるのは医師だけですが、交通事故に詳しくない人主治医の場合、賠償面でベストな症状固定時期を知らない可能性があります。
症状固定の時期は賠償金額に大きな影響が出るので、症状固定前に弁護士に相談してください。
交通事故の案件は複雑なため、分からないことがあって当然です。
少しでも不安を感じているならそのままにせず、私たちのような交通事故に詳しい弁護士を頼ってくださいね。