後遺障害診断書の書き方|等級認定に有利な記載例を弁護士が紹介
ケガや病気の治療のあとに残った障害を認定してもらうためには、「後遺障害診断書」の提出が必要となります。しかしながら、「どうやって書けばいいか分からない」「記載例が見たい」という方がほとんどではないでしょうか。
厳密に言うと、後遺障害診断書というのは「お医者さんにお願いして書いてもらうもの」なので、障害が残った方が自身で記載するものではありません。
しかしながら、後遺障害等級認定の審査においてかなり重要な書類となるため、適切に記載されているか自分でもしっかりチェックする必要があります。
いくら自覚している後遺障害があっても、その自覚症状が診断書に書かれていなかったり、症状を客観的に裏付ける検査結果や所見などの記載がなければ、障害を認定してもらうことは難しいでしょう。
後遺障害診断書でよくある失敗例 ・腰痛の自覚症状があるのに、後遺障害診断書の自覚症状欄に記載されていない ・自覚症状の程度が記載されていないため、等級認定が下りない ・自覚症状を裏付ける客観的な所見が記載されていない ・聴力障害があるのに、聴力測定の結果が記載されていない ・「予後不明」など、今後良くなる可能性を含んだ記載がある、などなど |
そこでこの記事では、後遺障害診断書の7項目の書き方や記載例(良い例・悪い例)を詳しく解説していきます。
さらに後半では、後遺障害診断書を上手く書いてもらうためのポイントや、後遺障害診断書の書き方に精通している医師を探すのがおすすめの理由など、等級認定を有利に進めるアドバイスも掲載しています。
適切な後遺障害診断書を書いてもらい、適切な等級認定を得たい方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事の監修者
弁護士 平岡 将人
弁護士法人サリュ銀座事務所
第一東京弁護士会
交通事故解決件数 1,000件以上
(2024年1月時点)
【著書・論文】
虚像のトライアングル(幻冬舎MC・2015)
交通事故被害者を救う賠償交渉ノウハウ(株式会社レガシー・2017)
交通事故の賠償は不十分 被害者本意の仕組み作りを(週刊エコノミスト・2017.3)
後遺障害等級14級9号マスター(株式会社レガシー・2019)
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【セミナー・講演】
人身傷害分野に取り組む弁護士のための医学研修(船井総研・2018)
後遺障害12級以上の世界(共同出演:株式会社レガシー・2019)
交通事故と各種保険 全3回(弁護士ドットコム・2020)等
【獲得した画期的判決】
東京高裁平成28年1月20日判決(一審:さいたま地裁平成27年3月20日判決)
「障がい者の事故被害救済」 日本経済新聞夕刊 掲載日2015年4月8日(許諾番号30040811)
目次
1. 後遺障害診断書の書き方・記載例
早速、後遺障害診断書の書き方について、画像付きで詳しく解説していきます。
なお、冒頭でも書いた通り、後遺障害診断書は、障害が残っている当事者本人が書くものではなく、お医者さんにお願いして書いてもらうものです。
ここでは、医師に書いてもらう前に、「どの項目があって、どのようなことを書いてもらうのか」をイメージできるように解説していきます。また、どのように書いてもらうと障害認定がされやすいのかチェックポイントも併記します。
※後遺障害診断書とは何なのか、費用相場、いつ作るのかなどの基礎知識については、「6. 後遺障害診断書を書いてもらう前に知っておくべき基礎知識」で後述しています。概要を知りたい方は、そちらを先に読んでみてください。
1-1. 被害者の基本情報
後遺障害診断書の左上には、交通事故被害者の基本情報(氏名・生年月日・住所・職業)を記載してもらいます。
1-2. 受傷日時・症状固定日・入院期間・通院期間
後遺障害が残るきっかけとなったケガについての受傷日時、症状固定日を記載してもらいます。異時共同不法行為(治療中に違う事故に遭ってしまった)の事案については、受傷日時は2つの事故日を記載してもらいましょう。
入院期間と通院期間については、後遺障害診断書を作成する医師が在籍している医療機関に入院・通院した期間を記載してもらいます。
途中で転院した場合には、この欄には、転院前での入院・通院期間については記載されません。しかしながら、事故が起きてからの入院・通院状況は、月々の診断書と診療報酬明細書などにより、自賠責保険側に情報は伝わります。
1-3. 傷病名・既存障害
傷病名の欄には、症状固定した時点で残存している傷病名を記載してもらいましょう。既存障害の欄には、今回の事故以前に有していた障害があれば記載してもらいます。
なお、既存障害の存在の記載があることで、当該交通事故によって残存した後遺障害と判断されず、後遺障害認定を受けられないケースがあるので注意しましょう。
1-4. 自覚症状(★重要)
自覚症状の欄は、交通事故被害者が症状固定時に訴えている症状を詳しく記載してもらう欄です。
この自覚症状に記載する内容は、後遺障害の等級認定の審査に大きく影響しますので注意しましょう。自覚症状に書かれていない症状は後遺障害として認定されませんので、漏れがないよう記載してもらうのがベストです。
後遺障害認定は書面による審査なので、いくら自覚症状が大きくても、その内容が後遺障害診断書に書かれていなければ、自覚症状が無いと判断されてしまうのです。
また、自覚している症状が「日常生活や仕事にどのような影響を与えているか」「どの程度現れるか」「現れる頻度や時間帯など」を具体的に含めて伝えることが大切です。
良い表現の例 ・腰に痛みが残り、20分以上座っていることができない ・首や肩にしびれが残っていてうつむけないため、パソコン作業や家事ができない ・腰痛があるため、重いものを持つことができなくなってしまった ・手に痛みがあり、一人では食事や着替えができない |
悪い表現の例 ・首や肩に違和感がある ・全身がしんどい ・上肢の痛み |
どのような自覚症状が残り、それによりどんなふうに日常生活や仕事に悪影響を及ぼしているかをしっかり医師に伝えましょう。自覚症状が抽象的であったり、痛みの箇所がはっきり記載されていないと審査に不利になる場合があります。
その内容を実際に診断書に記載するのは医師ですが、できるだけ詳細に伝えるとともに、日常生活や仕事への影響も省略せずに書いてもらえるよう依頼しましょう。また、後遺障害診断書を受け取った時にも、自分の訴えた症状と内容がしっかり記載されているか確認してください。
1-5. 他覚症状および検査結果(①~⑩)(★重要)
症状固定時に残っている他覚症状や、各種検査の結果を記載してもらう欄です。他覚症状とは、本人以外の第三者である医師が客観的に捉えることができる症状のことです。
この欄には、神経学的検査(手足の運動麻痺や感覚障害の有無などを調べる検査)、画像検査(レントゲン・CT・MRIなど)、脳波検査、知能テスト・心理テストなど精神機能検査、医師による触診・視診の結果などを記載してもらいましょう。
後遺障害によっては、自覚症状を裏付けるような他覚症状がなければ、後遺障害として認定されないものもあります。そのため、自覚症状を他覚的に認めるような内容をここに記載できるのがベストです。
例えば、むちうちによるしびれや痛みは、単なる画像検査では所見が見つからない場合があります。いくら自覚症状があっても、他覚的な所見がない場合、後遺障害等級の認定を受けることは厳しくなります。
画像検査で異常が見つからない場合には、別の神経学的検査を受けさせてもらい、客観的な所見を見つけて記載してもらえるようにしましょう。
良い表現の例 ・腱反射 異常値 ・CTに骨の変形癒合、偽関節、関節面の不正あり ・MRIで腱板、靭帯、半月板、関節包などの部位に損傷あり ・頸椎に骨棘あり、椎間孔狭小化 ・神経電動検査 異常値 |
悪い例 ・醜状痕があるのに、醜状の欄に記載がない ・聴力障害があるのに、聴力測定の結果が記載されていない (症状を客観的に裏付ける証拠が記載されていないと、認定されません。) ・可動域制限があるのに、可動域の記載がない (特に、自賠責保険の可動域制限などの機能障害の認定は、原則として自動値ではなく他動値を考慮して等級該当性を判断します。自動値のみの記載だと、認定されない場合があります。) ・「原因不明」「異常なし」など、自覚症状を裏付けできない内容が記載されている ・自覚症状を裏付けるための必要な検査を行っていない場合も、後遺障害を認定できない |
医師に後遺障害診断書を書いてもらった後は、自覚症状を裏付けるような他覚症状が記載されているかをチェックしましょう。
また、必要な検査がされていないことに気付いた場合には、別の検査を受けさせてもらうなどの対応が必要かもしれません。
1-6. 障害内容の増悪・緩解の見通しなど(★重要)
「障害内容の増悪・緩解の見通しなど」の欄には、被害者の後遺障害が今後どうなるか、医師が考える見通しを記載してもらいます。
増悪とは「症状が悪化すること」、緩解とは「症状が治まること」をいいます。
ここでは、医師が将来にわたって後遺障害として残ることを認めている場合には、以下のように「症状が固定する」「緩解しない」という内容を書いてもらうのがベストです。
良い表現の例 ・症状固定と考える ・緩解の見込みなし ・緩解は困難と思われる |
悪い例(今後良くなる可能性を含んだ記述は避ける) ・緩解の見込み ・回復(治癒・軽減)する可能性あり ・今後軽快していくと思われる ・予後不明 |
後遺障害診断書は「今後回復しないであろう障害が残ってしまった」ことを証明するためのものです。
ここで「回復」「緩解」「治癒」「軽減」「軽快」「予後不明」などの見通しを記載されてしまうと、将来治るものは後遺障害ではないという理由で、後遺障害等級が認定されない可能性が高くなるので注意しましょう。
1-7. 医師の署名欄
後遺障害診断書の最後の欄は、医師の署名欄です。診断書を記載した医師の情報(病院所在地・名称・診療科・氏名)や診断日、診断書発行日を記載してもらいましょう。
2. 障害認定してもらうための後遺障害診断書のポイント
ここからは、正当に後遺障害を認定してもらうための後遺障害診断書のポイントについて解説していきます。
2-1. 障害を認定してもらえる後遺障害診断書の条件を満たそう
後遺障害診断書を「障害を認定してもらうための書類」として見たときに、後遺障害診断書が満たすべきポイントは以下の3つです。
障害を認定してもらえる後遺障害診断書の条件 ①本人の自覚症状は何かが記載されている ②その自覚症状を裏付ける検査が行われており、裏付ける所見がある ③後遺障害診断書に、その自覚症状、自覚症状と整合する傷病名、自覚症状を裏付ける検査結果、所見が漏れなく記載されている |
1章の書き方でも適宜補足を入れていますが、まずは自覚症状がしっかり記載されており、それを裏付けるものとして客観的な検査結果や所見が分かるように記載されていることが必要です。
2-2. 後遺障害診断書で「よくある記載漏れ」を避けよう
障害を認定してもらいたいならば、後遺障害診断書でよくある記載漏れを避けましょう。
よくある記載漏れの例 ①可動域制限があるのに、当該制限を受けている部位の可動域が正確に計測されていない (参考運動ではなく、主要運動について他動値が正確に記載されている必要がある) ②変形障害がある場合、当該変形箇所について「体幹骨の変形」部分に◯が付されていない (鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼などで鎖骨部に外見上の変形がみられるのに、変形箇所に◯が記載されていないケースはよくある) ③外貌醜状があるのに、醜状の箇所、長さ、形などが記載されていない ④骨折により下肢の短縮があるのに、それが記載されていない ⑤聴力の障害があるのに、聴力検査の結果が記載されていない |
上記のような記載漏れがあると、後遺障害等級を認定してもらうことはできません。医師から後遺障害診断書を受け取った際には、上記のような記載漏れが無いか、しっかり確認しましょう。
もし記載漏れがある場合には、理由も添えて記載の変更や追加を依頼してください。
2-3. 後遺障害診断書はできるだけ「被害者請求」で提出する
後遺障害等級認定を獲得するために「後遺障害診断書」はとても重要ですが、それ以外の要素も審査に影響を与えることがあるので注意しましょう。
例えば、後遺障害の申請方法は「①事前認定(加害者の保険会社経由)」ではなく、できるだけ「②被害者請求(自分で加害者の自賠責保険会社に提出)」で行うのがおすすめです。
なぜならば「①事前認定」の方法は、審査に必要な書類を、加害者側の保険会社が用意することになり、加害者側の保険会社に請求を一任することになるからです。場合によっては、被害者が後遺障害診断書の中身を確認しないまま、審査を受けているケースも存在します。
「②被害者請求」は、自分でさまざまな書類を準備するため大変ですが、被害者の後遺障害を裏付ける証拠を自分で選んで提出できるメリットがあります。
さらに詳しくは「7-4. 完成した後遺障害診断書を提出する」で後述します。
3. 後遺障害診断書の書き方に不慣れ・書きたがらない医師もいるので注意しよう
ここまで後遺障害診断書の書き方や障害等級認定につながりやすいポイントについて解説しましたが、医師の中にも、後遺障害診断書に書式に慣れていなかったり、面倒で書きたがらない医師もいるので注意しましょう。
後遺障害診断書の作成に不慣れな医師の場合、「記載内容がどう等級認定につながるのか」を理解していないため、故意ではなくとも、うっかり、認定に必要となる情報の記載漏れをしてしまうことがあります。
また、「書き方が分からない」「丁寧に書くのが面倒くさい」と諦めている医師の場合は、適当に診断書を仕上げてしまい、こちらも、認定に必要な情報を記載してくれないケースがあります。
医師の仕事はケガや病気を治すことであり、後遺障害の証明のための診断書を書くのは不得意という医師もたくさんいます。限られた時間の中で、診断書を時間をかけずにあっさりと書いてしまうこともあるでしょう。
このように、後遺障害診断書の書き方に慣れていなかったり、面倒と思いながら渋々作成してくれたりするケースでは、障害認定に至るような充実した後遺障害診断書を作成してもらえないことがあるので、注意しましょう。
4. 後遺障害診断書を上手く書いてもらうためのポイント
ここからは、後遺障害診断書に慣れていない医師に上手く書いてもらうために、患者側ができるポイントについて解説します。
4-1. 自覚症状についてはメモを渡すなどして詳細に伝える
自覚症状は被害者本人が感じている症状なので、あらかじめ文面を作成してメモを渡すなど、できるだけ正確に自覚症状を記載してもらえるような工夫をしましょう。
前述した通り、自覚症状の欄は後遺障害等級認定の審査にも大きくかかわる部分です。自覚症状に書かれていない内容は後遺障害として認定されません。
例えば、本人がしびれを自覚していたとしても、それが後遺障害診断書の自覚症状欄に書かれていなければ、認定されようが無いのです。
どのような自覚症状があり、それが仕事や生活がどう困難になっているのか、診断書にしっかり記載されるようにお願いしましょう。
4-2. 他覚症状や検査内容については記載してもらった後にチェックする
他覚症状(医師の所見)や検査内容についての欄は、医師が感じた内容を記載してもらう欄なので、「こうしてほしい」と口出すことは難しいでしょう。もし希望を伝えたとしても、最終的には医師が客観的に判断した内容を記載してもらうことになります。
しかしながら、後遺障害診断書を作成してもらった後にしっかりチェックして、後遺障害等級認定につながる内容になっているか確認することが大切です。
後遺障害診断書をチェックするポイント ・自覚症状を裏付けるような検査結果や所見がしっかり記載されているか ・「可動域制限があるのに可動域の記載がない」などの記載漏れがないか |
もし記載漏れがある場合には、医師に理由を説明して修正を依頼しましょう。
5. 後遺障害診断書の書き方に精通している弁護士を探すのもおすすめ
適切な後遺障害等級認定を得るためには、後遺障害診断書の書き方に精通している弁護士にアドバイスを受けながら診断書を作成するのもおすすめです。
ここまで解説した通り、後遺障害等級認定で適切な結果を得るためには、後遺障害診断書の書き方が重要となります。また、「そもそも認定に必要な検査をしていなかった」というケースもありえます。必要な検査がされていなければ、残念ながら障害認定されることはありません。
弁護士は、医者ではありません。治療については、当然のことながら医者が専門です。しかし、必ずしも、医者が、後遺障害の証明に長けているとは限りません。治療のためには全く必要ない検査も、後遺障害の証明には必要となります。この点で、弁護士が関与するメリットがあります。
理想の後遺障害診断書を作るためには、以下が必要となります。
①自覚している症状に応じた適切な等級をもらうためにはどうしたらいいか分析する力
②上記を立証するために必要な検査(場合によっては交通事故の記録や意見書など)を分析する力
これを実現するには、障害認定の実績が豊富な弁護士にアドバイスをもらうことがベストです。
後遺障害認定の申請や異議申し立ての実績が十分にある弁護士ならば、「このケースならばこういう資料で補えそうだ」「あの検査を行うのが良さそう」など、認定に有利になりそうなポイントを見つけることができます。
見つけたポイントを、主治医と共有することができるので、充実した後遺障害診断書の作成が可能となります。
例えば、当事務所(弁護士法人サリュ)のように、提携している顧問医師と連携を取りながら、医学的知識を蓄積し、後遺障害申請者の希望に最大限寄り添ってくれる弁護士を探すのがおすすめです。
弁護士法人サリュはここが強い! ①後遺障害等級認定や、非該当から14級獲得したケースなど異議申し立ての解決事例が多い ②提携している顧問ドクターが存在しており、正しい結果を導く診断書の提出が可能 ③既にある医療証拠の収集や事故の状況見分調書なども取り寄せが可能 |
弁護士法人サリュの後遺障害認定の事例(ほんの一部です) 事例352:治療が打ち切られても、健康保険で治療を継続。後遺障害認定を受けにくい若年者でも、治療実績を重ねたことで後遺障害認定を受けた事例 事例373:過去の事故による受傷部が悪化、新たに後遺障害申請を行い、併合7級を獲得した事例 事例348:高次脳機能障害で後遺障害等級7級認定、自賠責保険金を含め損害賠償金2351万円を獲得 |
サリュの顧問ドクターによるサポートのページもぜひ参考にしてください。
6. 後遺障害診断書を書いてもらう前に知っておくべき基礎知識
ここからは、そもそも後遺障害診断書とは何かなど、基本的な知識について補足します。
後遺障害診断書が何に使われるのか、費用はいくらかかるのか、作った後どうしたらいいのかなど基本情報をしっかりと理解し、納得のいく障害認定等級を得られるよう心構えをしておきましょう。
6-1. 後遺障害診断書とは
病気やケガなどで残った障害について、その具体的な症状や支障について証明する書類のことをいいます。正式名称は「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」です。
診断書を作成できるのは「医師のみ」となり、事故被害者が自分で記載するものではない点に注意しましょう。
後遺障害診断書が必要になるケースは、後遺障害等級認定の審査を受ける時、後遺障害等級認定の再審査(異議申し立て)を受ける時で、審査の必要書類に指定されています。
つまり、後遺障害が何級に該当するかを判定するために必要になるのが、後遺障害診断書といえます。
6-2. 後遺障害診断書の作成費用相場・費用負担
後遺障害診断書を医師に書いてもらう場合の費用は、5千円~1万円程度が相場です。ただし、費用が決まっているわけではなく病院が定めることができるため、病院によっては2万円以上の価格を設定しているケースもあります。
作成にかかった費用は自己負担となりますが、後遺障害等級に認定されれば加害者に請求することが可能です。ただし、認定されなかった場合にはそのまま自己負担となります。
後遺障害診断書を書いてもらう時点ではいったん自費で支払い、後で保険会社から支払われるケースが多いでしょう。
6-3. 後遺障害診断書の作成時期・期間
後遺障害診断書を書いてもらう時期は、「症状固定になったタイミング」です。
症状固定とは、病気やケガについて、これ以上治療を続けても病状や症状が改善されないことをいいます。治療による効果がこれ以上ないと判断された時に「症状固定」となります。
後遺障害診断書は、後遺症が残ったことを認めてもらうものなので、治療が終わり症状固定になってもなお後遺症が残っている時に書いてもらいます。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼した場合、その場で書いてもらえることもあれば、受け取りまでに数日から1カ月程度かかることもあります。日数は病院によってまちまちなので、注意しましょう。
7. 後遺障害診断書を作成・提出するまでの流れ
最後に、後遺障害診断書を医師に書いてもらって提出するまでの流れをまとめて解説します。
7-1. 医師から「症状固定」と診断される
症状固定前には等級は認定されないため、まずは後遺障害診断書を書いてもらう前提として、医師から「症状固定」と診断される必要があります。
治療を続けて改善の見込みがない場合に「症状固定」となります。症状固定をいつとするかは、患者からも積極的に医師に対して確認しましょう。
※ただし、症状固定すると、その時点から保険会社から治療費や休業損害などを受け取れなくなるデメリットがあります。症状固定のタイミングが早すぎるのも良くないため、やみくもに症状固定の判断を急がすのは得策ではありません。 症状固定の最善のタイミングに迷ったら、その後の後遺障害等級認定や示談交渉を有利に進めるためにも、ぜひサリュにご相談ください。 |
7-2. 後遺障害診断書の用紙を保険会社などから入手する
後遺障害診断書の作成を医師に依頼する場合には、基本的には自分で用紙を持参して、医師に渡して書いてもらう必要があります。
加害者が加入している任意保険会社や自賠責保険会社に請求して送ってもらいましょう。どの保険会社も共通のフォーマットを使用しているため、どこに請求しても書式は共通のものとなります。
今すぐに書式が必要な場合には、以下からダウンロードすることも可能です。
7-3. 医師に後遺障害診断書の作成をお願いする
用紙を持参して医師に後遺障害診断書の作成をお願いして、記入してもらいましょう。
全ての先生が後遺障害診断書の書き方に精通している訳ではないため、自覚症状の欄など、可能であれば「このように書いてほしい」と希望を伝えた上で書いてもらえるようお願いしましょう。
ただし、他覚症状の欄などは医師の所見を記載する部分なので、「こう書いてほしい」は通らないことを覚悟しておいてください。
もし医師が「書きたくない」など協力的ではない場合には、最悪の場合、転院も必要となります。
7-4. 完成した後遺障害診断書を提出する
医師が記入した後遺障害診断書を受け取ったらいよいよ提出です。提出先は、後遺障害申請を「①事前認定(加害者の保険会社経由)」で行うか「②被害者請求(自分で加害者の自賠責保険会社に提出)」で行うかによって異なります。
【事前認定と被害者請求の違い】
事前認定 | 被害者請求 | |
概要 | 加害者の保険会社に 後遺障害診断書だけ提出して 残りの手続きを一任する | 加害者の自賠責保険会社に 後遺障害診断書やその他書類を 自分で用意して送付する |
提出先 | 加害者の加入している保険会社 | 加害者の加入している自賠責保険会社 |
必要書類 | 後遺障害診断書のみ ※他の書類は保険会社が用意 | 後遺障害診断書の他に 支払請求書や印鑑証明書など 必要書類を自分で準備する |
メリット | 後遺障害診断書のみ用意すれば良い 手続きがラク | 有利な資料を用意できれば 後遺障害等級の認定可能性を上げることが可能 |
デメリット | 審査資料を自分で自由に追加できない。 | 自分で用意する必要書類が かなり多くて大変 |
加害者の保険会社に手続きを任せる「事前認定」の場合には、加害者の保険会社に後遺障害診断書のみを提出するだけです。他の書類は任意保険会社の方で準備してくれます。
一方、「被害者請求」で自分で自賠責保険会社に後遺障害の等級認定を申請する場合には、後遺障害診断書と合わせて以下などの書類を一緒に提出します。
被害者請求で後遺障害等級認定の請求を行う場合の必要書類(一例) ・後遺障害診断書 ・交通事故証明書 ・自動車損害賠償責任保険金支払請求書 ・事故発生状況報告書 ・診断書・診療報酬明細書 ・印鑑証明書 ・休業損害証明書 ・通院交通費明細書 ・レントゲン・MRIなどの画像 |
「被害者請求」は準備する書類が多くて大変なので、一般的には保険会社に診断書だけ提出する「事前認定」を選ぶ方が多いでしょう。
しかしながら、もし保険会社の治療中の対応が悪く、審査に不安がある場合には、自分で書類を準備できる「被害者請求」の方がおすすめです。たとえば、治療期間について保険会社と被害者との間で見解の不一致がある場合、保険会社任せにしてしまうと、保険会社の認める治療期間の診断書しか資料を提出してくれないかもしれません。治療期間に争いがあるケースでは、積極的に被害者請求をしていくべきです。
書類の準備は大変ですが、サリュにご依頼いただければ、適切な後遺障害等級を得るために有利な書類のアドバイスなども含めて、対応させていただきます。サリュは相談料・着手金0円、ご来所不要でのご相談を受け付けております。ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
本記事では「後遺障害診断書の書き方(書いてもらう方法)」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。
最初に、後遺障害診断書の書き方・記載例を、項目ごとに詳しく解説しました。
・被害者の基本情報 ・受傷日時・症状固定日 ・入院期間・通院期間 ・傷病名・既存障害 ・自覚障害(★重要) ・他覚症状および検査結果(①~⑩)(★重要) ・障害内容の増悪・緩解の見通しなど ・医師の署名欄 |
障害認定してもらうための後遺障害診断書のポイント
・障害を認定してもらえる後遺障害診断書の条件を満たそう ・後遺障害診断書で「よくある記載漏れ」を避けよう ・後遺障害診断書はできるだけ「被害者請求」で提出する |
後遺障害診断書を書きたがらない医師もいるので注意しよう
・保険会社ともめることを不安に思っている ・「記載内容がどう等級認定につながるのか」を理解していない ・認定に必要となる情報の記載漏れをしてしまうことがある |
後遺障害診断書を上手く書いてもらうためのポイント
・自覚症状についてはメモを渡すなどして詳細に伝える ・他覚症状や検査内容については記載してもらった後にチェックする |
後遺障害診断書の書き方に精通している弁護士にアドバイスを受けるのもおすすめ
①自覚している症状に応じた適切な等級をもらうためにはどうしたらいいか分析する力 ②上記を立証するために必要な検査(場合によっては交通事故の記録や意見書など)を分析する力 これらを満たせるのは、顧問ドクター + 障害認定の実績が豊富な弁護士 の組み合わせ |
後遺障害診断書の書き方によって、後遺障害等級認定の結果は大きく左右されます。適切な障害認定を得たい方は、ぜひ交通事故被害者の救済に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。