尺骨骨折の後遺症│主な症状と残さないために今からできることを解説

「交通事故で尺骨骨折をしたけど、後遺症が残ったらどうしよう」
「もし後遺症が残るとしたら、どんな症状が残るの?」
尺骨骨折の治療を受けているあなたは、こんな不安を抱えてはいませんか?
交通事故による尺骨骨折では、以下のような後遺症が残る可能性があります。
尺骨骨折の後遺症で見られる主な症状 |
・腕や手に痛み、しびれの症状が残る ・骨折した部分がうまくくっつかず、腕が動かしづらくなる ・骨がうまくくっつかず、変形してしまう |
尺骨骨折の痛みは、怪我をしてから1か月程度をピークに収まると言われており、事故後1~3か月が経過してもこれらの症状が続く場合、後遺症として定着するリスクが高くなります。
こうした後遺症が残らないように、治療に専念することは重要ですが、実は、治療中から後遺症が残ってしまった場合に備えて準備をしておくことも大切です。
もし、交通事故による尺骨骨折で後遺症が残ってしまった場合、症状によっては、「後遺障害等級」の認定を受けることができます。
この等級の認定を受けることで、後遺症が生活や仕事に影響を及ぼしていることが認められ、後遺障害に対する慰謝料などの賠償金を請求することができるようになるのです。
今からその準備を進めておくことは、「後遺症が残ったのに、何も補償してもらえない」という事態を回避することにつながります。
この記事では、尺骨骨折で後遺症が残らないか心配な方に向けて、尺骨骨折の後遺症の症状や、治療中にできる後遺症のリスクを軽減する方法などをお伝えします。
また、もし後遺症が残ってしまった方に向けて、後遺障害等級の認定についても詳しく解説します。
この記事でわかること |
・尺骨骨折の後遺症の症状がわかる ・尺骨骨折の後遺症を残さないためにできることがわかる ・万が一後遺症が残ってしまった場合に、後遺障害等級の認定を受ける方法がわかる ・尺骨骨折の後遺症では、どのような等級に認定される可能性があるのかがわかる |
この記事を参考に、まずは後遺症が残らないよう治療やリハビリに専念しましょう。
そして、もし後遺症が残ってしまった場合には、適正な補償を受けるために、後遺障害認定の獲得のために動けるよう準備しておきましょう。

この記事の監修者
弁護士 木村 高康
弁護士法人サリュ
萩事務所
山口県弁護士会
交通事故解決件数 400件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
大阪大学法学部法学科 大阪大学大学院高等司法研究科
【裁判実績等】
死亡事故、高次脳機能障害や引き抜き損傷等の重度後遺障害の裁判経験
人身傷害保険や労災保険等の複数の保険が絡む交通事故の裁判経験
その他、多数
【弁護士木村の弁護士法人サリュにおける解決事例(一部)】
・信号のある交差点での出合頭事故で当事者双方が事故の対面信号が青である旨の主張をしていた事案において、裁判で当方の依頼者の対面信号が青であり過失割合は0:100である旨の判決を得た事例
・CRPSについて自賠責では非該当とされた事案で、CRPSと矛盾しない残存症状が残ったこと等を理由に慰謝料等を裁判基準から増額して和解した事例
・事故により肘関節骨折を負った被害者が、残存した膝の疼痛について人身傷害保険会社から14級9号の認定を受けた事案において、訴訟で関節面の不整等を丁寧に立証することにより、12級13号に該当することを前提に和解した事例
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
相談だけで解決できることもありますので、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
目次
1.尺骨骨折で見られる後遺症は痛みやしびれ・可動域の制限など

尺骨骨折では、痛みやしびれ、可動域の制限(腕やひじが、怪我をする前のように動かせなくなる)などの後遺症が残る可能性があります。
尺骨は、手首からひじまである長い骨であるため、骨折した場所によって影響の出方が異なることがありますが、代表的な後遺症の症状や、生活への影響について、詳しく解説します。
【後遺症ではない可能性がある症状】 尺骨骨折の治療中に気になる症状としては、筋力の低下が挙げられます。 筋力低下は、骨折時にギプスなどで長時間腕を固定したことで、筋力が低下してしまう症状です。 こちらは、リハビリを通じて筋力を回復させることで、徐々にもとの状態に戻る可能性があります。 比較的短期間で改善するケースもあるため、安心してください。 |
1-1.尺骨骨折の後遺症(1)【痛みやしびれ】
尺骨骨折の治癒後、骨の周囲に慢性的な痛みや、神経の損傷によるしびれが残ることがあります。
特に、骨折が神経に近い場所で発生した場合、この症状が起こりやすいと言われています。
後遺症として残る痛みやしびれは、怪我の重度や状況によって異なります。
「常に痛みを感じる」という人から、「運動や重いものを持った時に痛みやしびれがある」という人まで、程度はさまざまです。
痛みやしびれが現れる場所は、骨折した位置が手首側かひじ側かなどによっても異なり、骨折した位置の近くに症状が出やすいでしょう。
もし痛みやしびれの後遺症が残った場合、生活に以下のような影響が生じる可能性があります。
日常生活への影響 |
・物をつかみづらくなる ・タイピングや筆記などの細かい作業がしづらくなる ・日常的に痛みを感じ、ストレスになる |
1-2.尺骨骨折の後遺症(2)【可動域の制限】(怪我をする前と同じように腕を動かせない)
尺骨骨折後、骨がうまくくっつかなかった場合や、長期間の固定の影響で関節の動きが制限され、手首やひじの可動域が狭くなることがあります。
尺骨骨折の可動域の制限では、怪我をしていない腕と比べて3/4以下に制限される症状が比較的よく見られます。
関節の可動域が狭くなる(制限される)と、腕を怪我する前のように動かすことが難しくなります。
特に、ひじの曲げ伸ばしなどに影響が出るでしょう。
もし可動域の制限の後遺症が残った場合、生活に以下のような影響が生じる可能性があります。
日常生活への影響 |
・着替えや歯磨きなどの日常動作がしづらくなる ・怪我をする前のようにスポーツなどができなくなる |
1-3.尺骨骨折の後遺症(3)【変形】
尺骨骨折が治癒する過程で、骨が正しい位置で癒合しなかった場合、前腕に変形が生じることがあります。
変形とは、骨がうまくくっつかず曲がってしまったり、偽関節と呼ばれる、関節ではない部分でぐらぐらと曲がってしまったりするような状態を指します。
骨が変形すると、見た目に変化があるだけではなく、腕に力が入りにくくなるなどの影響も考えられます。
日常生活への影響 |
・見た目が変わってしまうことでコンプレックスを感じる ・今までと同じように腕を使えず、スポーツや長時間の作業などで違和感を覚えることがある |
2.尺骨骨折後1~3か月経っても症状が残ると後遺症になる可能性がある

尺骨骨折では、怪我をしてから1〜3か月後も症状が残っていた場合、そのまま後遺症となってしまう可能性があります。
骨折は基本的に時間とともに治癒しますが、痛みやしびれ、腕の可動域制限などの症状が長期間続く場合、それが後遺症として残ってしまうかもしれません。
特に、治療を途中でやめたりリハビリを怠ったりすると、症状が悪化して日常生活に支障をきたすリスクが高まります。
尺骨骨折を軽い怪我だと侮り、治療を途中でやめてしまったり、リハビリを十分に行わなかったりした場合、適切な治療を続けていれば治るはずだった後遺症が残ってしまうということも考えられるでしょう。
怪我をしてから、医師が治療が終わったと判断するまでの1~3か月程度は、まずは医師の指示に従って、十分な治療・リハビリを継続してください。
しっかりと医師の判断に従うことが、後遺症のリスクを軽減することにつながります。
3.交通事故による尺骨骨折の後遺症を残さないためにやるべきこと3つ

交通事故による尺骨骨折は、適切な治療とリハビリを行えば多くの場合完治すると言われていますが、対応が不十分だと後遺症が残るリスクもあります。
ここでは、後遺症を防ぐために治療中にできる具体的なポイントを解説します。
・医師の判断に従って通院を続ける ・リハビリを継続する ・痛みや違和感を放置せず医師に早めに報告する |
3-1.医師の判断に従って通院を続ける
医師の判断に従って通院を続けることが、後遺症を残さないようにするために最も重要なポイントです。
骨の状態や回復具合を正確に把握し、適切な治療方針を維持するためには、医師の診察が欠かせません。
診察を怠ると、骨が正しく治癒していないことを見逃すリスクがあります。
また、適切な通院を続けず、治療の記録が途切れてしまうと、その後症状が悪化したと思っても、それが怪我の影響なのかどうかがわからなくなってしまいます。
医師の判断に従い、定期的に通院を続けることが、適切な治療計画を維持し、後遺症を防ぐ可能性を高めてくれるでしょう。
3-2.リハビリを継続する
次に、リハビリをしっかり継続することが大切です。
リハビリをしっかりと続けることで、腕の可動域を回復させる効果が期待できます。
尺骨骨折後は、筋肉や関節が硬直することで可動域が制限されることがあります。
リハビリはこれを防ぎ、元の状態に近づけるために重要な役割を果たします。
日常生活にスムーズに戻るためにも、医師や理学療法士などの専門家の指示に従い、リハビリを継続しましょう。
3-3. 痛みや違和感を放置せず医師に早めに報告する
後遺症を残さないためには、痛みや違和感などの自覚症状を放置しないことが重要です。できるだけ早く医師に報告しましょう。
痛みや違和感は、骨の再生が不完全であったり、神経が損傷していたりするサインである可能性があります。
痛みや違和感などの症状は、外見上では判断できず、医師の診察のみでは見逃されてしまうこともあります。
小さな違和感でも見逃さず、これらを早期に医師に伝えることで、必要な治療や対応を迅速に受けられるでしょう。
4.交通事故による尺骨骨折で後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性がある

交通事故による尺骨骨折で後遺症が残ると、症状によっては後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
後遺障害等級とは |
後遺障害等級とは、交通事故などで負った怪我により、治療後も残る後遺症の重さを1級から14級に分類したものです。 1級は最も重く、日常生活に大きな支障が出る状態(例:両目の失明)に該当し、14級は比較的軽い障害(例:軽い痛みやしびれが残る)に該当します。 この等級に応じて、後遺障害慰謝料や逸失利益(後遺障害が原因で失われた将来の利益に対する補償)などの補償額が決まります。 認定を受けることで、治療後も続く痛みや不便に対する補償を受けることができるため、適切な後遺障害等級の認定を受けることは、適正な賠償金を請求するために重要です。 |
後遺障害等級の認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益などの後遺障害に対する補償を請求できるようになります。
認定を受けないと、怪我による後遺症が残っているにもかかわらず、それに対する補償を受けることができない可能性があります。
詳しい金額については次章で紹介しますが、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できないと、賠償金の総額が数百万円単位で変わってしまうことも考えられます。
そのため、後遺症の症状が残っているという人は、後遺障害の認定を受けるべきなのです。
詳しい認定の手順や、症状に応じた適正な認定を受けるための知識は、以下の記事で解説しています。
こちらも参考にしてください。

5.尺骨骨折の後遺症で認定される後遺障害等級

尺骨骨折の後遺症の中でも、痛みやしびれ、可動域の制限、骨の変形などについては、後遺障害の認定を受けられる可能性があります。
これらは、1章でお伝えしたものと同じような症状ですが、中でも、継続的に症状が続いているなど、特定の条件を満たしている場合に認定を受けられるかもしれません。
それぞれの症状で受けられる可能性がある等級について、等級ごとの慰謝料の相場も交えて解説します。
後遺障害慰謝料の相場や等級ごとの違いについては、以下の記事で解説しているので、こちらも参考にしてください。

後遺障害慰謝料の自賠責基準と弁護士基準とは |
後遺障害慰謝料の計算基準には、以下の3種類があります。 ![]() この中でも、相手の保険会社が提示してくるのは、最低限の基準である自賠責基準か、それより少し高い程度の任意保険基準で計算した後遺障害慰謝料であることがほとんどです。 しかし、被害者にとって適正であると言える慰謝料は、過去の判例などをもとに定められた弁護士基準で計算した金額です。 それを知らずにいると、保険会社から「この怪我ではこのくらいの金額が相場ですよ」などと言われ、不当に低い金額のまま示談交渉を進められてしまう可能性があるため、注意してください。 |
5-1.【神経症状】痛み・しびれなど│12級・14級
等級 | 症状 | 慰謝料相場 (自賠責基準) | 慰謝料相場 (弁護士基準) |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの | 32万円 | 110万円 |
尺骨骨折後、骨折部位が神経に影響を与えることで、持続的な痛みやしびれが発生することがあります。
これらの症状は、神経症状として、12級もしくは14級に認定される可能性があります。
12級と14級、それぞれに認定される基準としては、不正癒合の有無があります。
不正癒合とは、骨折が正しい位置で癒合せず、骨の形状や機能に影響を及ぼす状態を指します。これにより、神経が圧迫され、症状が重くなることがあります。
骨折部位が医師によって不正癒合と診断される場合、12級に該当する可能性が高まります。そうではないものの、継続的に症状が続いている場合には、14級と認定されることがあります。
5-2.【可動域制限】関節の動かしづらさなど│10級・12級
等級 | 症状 | 慰謝料相場 (自賠責基準) | 慰謝料相場 (弁護士基準) |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの | 190万円 | 550万円 |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの | 94万円 | 290万円 |
尺骨骨折の治癒過程で、関節や周辺組織の硬直が起こり、これにより、腕を以前のように自由に動かせなくなる場合があります。
これらの症状は、機能障害(関節の可動域制限)として、10級もしくは12級に認定される可能性があります。
10級と12級の認定基準は、多くの場合、関節の可動域が健側(怪我をしていない側)の可動域と比較したときの制限によって等級が決められます。
・関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているもの→10級 ・関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているもの→12級 |
5-3.【変形障害】骨の変形など│7級・8級・12級
等級 | 症状 | 慰謝料相場 (自賠責基準) | 慰謝料相場 (弁護士基準) |
7級9号 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの | 419万円 | 1,000万円 |
8級8号 | 1上肢の偽関節を残すもの | 331万円 | 830万円 |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの | 94万円 | 290万円 |
骨折部位が正常な形に戻らず、外見上や機能的に変形が残る場合があります。
これらの症状では、後遺障害7級、8級、12級のいずれかの認定を受ける可能性があるでしょう。
骨に変形が残ることで、見た目だけでなく、腕の機能にも影響を及ぼすことがあります。
尺骨骨折において癒合不全が残った場合、それぞれの等級に認定される基準の例としては、尺骨に関連して整理すると、以下のようなものがあります。
7級9号 | ・橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性装具が必要なもの |
8級8号 | ・橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、上記以外のもの ・橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残し、時々硬性装具が必要なもの |
12級8号 | ・橈骨及び尺骨の両方に変形を残すもので、その変形が外部から見てもわかる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの ・橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの ・橈骨又は尺骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、硬性補装具を必要としないもの ・上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの ・橈骨若しくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの |
これらの基準は、過去の例をもとにしたもので、必ずしも同じ症状であれば同じ等級の認定になるというわけではありませんが、自身の症状と比較して参考にしてください。
6.尺骨骨折で後遺障害等級の認定を受けるために今からできること

交通事故で尺骨骨折を負い、後遺症が残る可能性がある場合、後遺障害等級の認定を受けることが重要です。
しかし、認定を受けるためには、適切な証拠と手続きを整える必要があります。
ここでは、今からできる具体的な行動を紹介します。
・レントゲンなどの画像検査を受けて証拠を残す ・必要に応じて可動域検査などの検査を受ける ・症状固定のタイミングを見極める ・治療中から弁護士などの専門家に相談・依頼しておく |
6-1.レントゲンなどの画像検査を受けて証拠を残す
後遺障害等級の認定に向けて最初にできることは、レントゲンなどの画像検査を受けて証拠を残すことです。
骨折の状態や治癒過程を記録するために、定期的にレントゲンやCT、MRIなどの画像検査を受けましょう。
後遺障害等級の認定には、骨折部位の状態を示す客観的な証拠が必要です。
特に、不正癒合や骨変形が疑われる場合は、画像検査が認定の重要な判断材料となります。
症状に対して適正な等級で認定されるためにも、怪我の経過を画像検査の結果で残しておくことは、非常に重要になります。
医師と相談しながら定期的な画像検査を受け、診断書と共に症状が残っている証拠として記録を残しておきましょう。
6-2.必要に応じて可動域検査などの検査を受ける
骨折後に関節や筋肉の可動域が制限されている場合には、可動域検査を受けて記録を残すことが重要です。
可動域制限は、後遺障害等級の10級や12級に該当する可能性があります。この制限の程度を証明するには、専門医による客観的な検査結果が必要です。
こうした検査を行わないと、実際には制限があっても認定を受けることができないリスクがあります。
治療中から腕の動かしづらさなどを感じている場合には、医師に相談し、適切な検査を受けるようにしましょう。
6-3.症状固定のタイミングを見極める
症状固定のタイミングを見極めることも大切です。
症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態を指します。
医師より症状固定の診断を受けると、治療が終了し、示談交渉へと進むことになります。
この症状固定のタイミングを医師と相談しながら適切に判断することが重要です。
一般的に、通院期間が6か月未満である場合、治療期間が短く、後遺障害認定の対象外となってしまう可能性があります。
そのため、保険会社によっては、その期間よりも早い段階で症状固定を促してくることがあるのです。
症状固定を決めるのは、保険会社ではなく医師です。
症状が残っているという場合には、保険会社の言いなりになって症状固定を急がず、適切なタイミングを医師と相談しながら見極めてください。
症状固定についての詳しい解説は、下記の記事で行っていますので、併せて参考にしてください。

6-4.治療中から弁護士などの専門家に相談・依頼しておく
最後にできることは、治療中から弁護士などの専門家に相談・依頼しておくことです。
尺骨骨折で後遺症が残ってしまったとしても、自分だけの力では後遺障害認定を受けることは難しいのが実情です。
これは、以下のようなリスクがあるためです。
【自身で後遺障害等級の申請を行うリスク】
・必要書類に漏れがあり、申請がスムーズに進められず認定されるまで時間がかかる ・認定を受けるために必要な後遺障害診断書の適切な書き方がわからず、症状が残っているのに医療証拠が足りず非該当になる ・納得がいかない結果であっても、異議申し立ての手続きがうまく進められない |
実際に、以下の事例では、後遺障害認定を行った被害者が、事故と後遺障害の関連性を証明できず、一度目の申請では後遺障害の認定を受けることができませんでした。
【一度目の申請では非該当に…】 ・原動機付自転車で走行中、割り込んできたタクシーと接触して転倒。 ・右尺骨骨折、右手関節三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷の怪我を負い、治療後も右手首に可動域制限が残る。 ・加害者加入の自賠責保険会社に後遺障害の申請を行うものの、10代の頃に負った骨折の痕(偽関節)が原因であるとされ、非該当の結果に。 【その後】 ・弁護士事務所サリュがご依頼を受け、医療画像をすべて見直し。改めて作成した医療照会回答書を添付して自賠責に異議申し立てするも、再度非該当。 ・被害者の症状に対して適切な結果が得られず、サリュが自賠責保険・共済紛争処理機構に対し、後遺障害に関する紛争処理を申請 ・その結果、右手首の可動域制限は本件事故によるとの因果関係が、紛争処理機構によって認められ、後遺障害等級12級6号が認定 |
このように、専門知識がない状態で申請を進めると、認定が遅れたり、適切な等級が認定されなくなったりするリスクがあります。
一方、専門家に相談すれば、スムーズに手続きを進められるよう、診断書の内容確認や申請手続きのサポートを受けることができるでしょう。
そのため、医学的な知見のある弁護士に相談し、治療中からアドバイスを受けておくと安心して手続きを進められます。
尺骨骨折で後遺障害が残りそうで不安。そんな時は、サリュが力になります |
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7.まとめ
この記事では、交通事故で尺骨骨折の怪我を負ってしまった方に向けて、尺骨骨折の後遺症の症状や、認定される可能性がある後遺障害等級について解説しました。
記事の内容のまとめは、以下の通りです。
▼交通事故による尺骨骨折では、以下のような後遺症が残る可能性がある。
・腕や手に痛み、しびれの症状が残る ・骨折した骨がうまくくっつかず、腕が動かしづらくなる ・骨がうまくくっつかず、変形してしまう |
▼交通事故から1~3か月経っても症状が残っている場合、後遺症となる可能性がある
▼尺骨骨折の後遺症が残らないようにできることは以下の3つ
・医師の判断に従って通院を続ける ・リハビリを継続する ・痛みや違和感を放置せず医師に早めに報告する |
▼交通事故による尺骨骨折で後遺症が残った場合、症状によって後遺障害等級の認定を受けられる可能性がある。認定される可能性がある症状は以下の3つ。
・【神経症状】痛み・しびれなど│12級・14級 ・【可動域制限】関節の動かしづらさなど│10級・12級 ・【変形障害】骨の変形など│7級・8級・12級 |
▼尺骨骨折で後遺障害等級の認定を受けるために今からできることは以下の4つ
・レントゲンなどの画像検査を受けて証拠を残す ・必要に応じて可動域検査などの検査を受ける ・症状固定のタイミングを見極める ・治療中から弁護士などの専門家に相談・依頼しておく |
この記事の内容を参考に、尺骨骨折の後遺症に備えた行動をとってください。