保険会社から突然の休業損害の打ち切り│回避するための手段を解説

「保険会社からそろそろ休業損害の打ち切りの時期ですと言われた」
「急に休業損害の打ち切りを伝えられたけど、従わないといけないの?」
あなたはこのように悩んでいませんか?
結論からお伝えすると、相手の保険会社から休業損害の打ち切りを提案されても、安易に受け入れてはいけません。
以下のようなステップで対処し、相手の言いなりになることは避けましょう。
【休業損害の打ち切りを回避するためのSTEP】 STEP1│医師に意見書や診断書を書いてもらう STEP2│MRI検査などの医学的証拠で怪我の客観的な状況を保険会社に伝える STEP3│職場に相談して段階的に復職を検討する |
相手が出す条件にそのまま従ってしまうと、治療が継続できなくなり、最悪の場合後遺障害の認定などにも悪影響を及ぼすリスクがあります。
それらのリスクを避けるためにも、相手の主張をそのまま受け入れず、自分の状況に応じて冷静に対応してください。
この記事では、休業損害の打ち切りを回避するためにできることを具体的に説明し、それに加えて、納得できないときは弁護士に相談したほうがいい理由も解説します。
ぜひ最後まで読んで、相手保険会社からの不当な休業損害の打ち切りに立ち向かってください

この記事の監修者
弁護士 西内 勇介
弁護士法人サリュ
横浜事務所
神奈川県弁護士会
交通事故解決件数 800件以上
(2025年9月時点)
【略歴】
京都大学法科大学院修了
【獲得した画期的判決】
死亡事故、高次脳機能障害や引き抜き損傷等の重度後遺障害の裁判経験
人身傷害保険や労災保険等の複数の保険が絡む交通事故の裁判経験
その他、多数
【弁護士西内の弁護士法人サリュにおける解決事例(一部)】
事例339:無保険で資力に不安な相手方に対し裁判。200万円を回収した事例
事例368:主婦の休業損害を、すべての治療期間で認められた事例
事例373:過去の事故による受傷部が悪化、新たに後遺障害申請を行い、併合7級を獲得した事例
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
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目次
1.保険会社が休業損害の打ち切りを提案してきても、復帰が困難なら交渉を

保険会社から「そろそろ休業損害の支払いは打ち切ります」と言われたとしても、安易に受け入れてはいけません。
なぜなら、保険会社の提示は被害者一人ひとりの症状や回復状況を丁寧に確認した上での判断ではなく、「通例」や「慣習」に基づいて機械的に判断されているケースも少なくないからです。
概ね、保険会社は、むち打ちや打撲なら2週間〜2か月、骨折なら2か月から4か月程度で仕事復帰が可能であると考える傾向にあります。 しかし、本来、仕事復帰の時期は、被害者の傷害の部位、程度、症状の内容、業務内容などによって、ケースバイケースであり、通例や慣習によって機械的に判断すべきもではありません。
そのため、主治医とよく相談し、休業の必要性があれば、安易に保険会社の提案に従わずに、保険会社側に休業損害の継続対応を交渉することが重要です
ここからは、保険会社に一方的に休業損害の打ち切りを言い渡された場合に被害者ができることを紹介します。
2.【休業損害の打ち切りを回避するためのSTEP1】医師に意見書や診断書を書いてもらう

保険会社に休業損害の継続を認めてもらうためには、まず医師に「治療の継続が必要」「復職が困難」といった内容の意見書や診断書を書いてもらうことが有効です。
なぜなら、被害者自身の「まだ痛みがある」「働ける状態ではない」といった主張だけでは、保険会社にとっては主観的な訴えにすぎないと判断されてしまうことがあるからです。
しかし、第三者である医師による客観的な診断があれば、保険会社側も納得しやすく、休業損害の継続に応じる可能性が高まります。
実際のステップとしては、以下のような流れで進めましょう。
2-1.(1)医師に現在の症状や仕事の内容を具体的に伝える
まずは、医師に自分の仕事内容や職場の状況をしっかり伝え、痛みや不自由が仕事にどう影響するかを共有します。
・立ち仕事が多く足の痛みが残っていて復帰できない ・首の痛みとしびれで1時間以上デスクワークを続けられない ・業務上荷物を運ぶ必要があるが、関節の痛みで重いものを持てない |
など、どのような症状を感じていて、それによって仕事にどのような影響が出るのかを具体的に伝えることが重要です。
2-2.(2)相談内容を踏まえて、医師に意見書や診断書を作成してもらう
医師に相談した内容を踏まえて、意見書や診断書を書いてもらいます。
このとき、「就労不可」「治療の継続が必要」などの文言を入れてもらうことで、自分の状況を客観的に証明してもらえます。
2-3.(3)保険会社に医師の意見書・診断書を提出する
意見書や診断書ができたら、すぐに保険会社に提出しましょう。
自分の意見だけを伝えるよりも、客観的な根拠があることで保険会社も納得しやすくなります。
3.【休業損害の打ち切りを回避するためのSTEP2】MRI検査などの医学的根拠で怪我の客観的な状況を保険会社に伝える

診断書や意見書だけでは保険会社が納得しない場合、MRIやCT検査などの医学的証拠を提示し、より客観的な状況を示すことが有効です。
保険会社が休業損害の継続に難色を示す背景には、「本当に治療が必要な状態なのか」「労働不能の状態なのか」という疑念がある場合があります。
医師の診断だけでなく、目に見える客観的な証拠があれば、治療の継続や休業の必要性を裏付ける材料となり、保険会社に正当性を認めてもらいやすくなります。
具体的には、以下のような検査結果や記録が有効です。
・CTやMRIなどの画像所見 ・関節可動域検査などの神経学的検査 |
もしこのような客観的な所見がない場合には、通院の頻度やリハビリ内容、日々の痛みの変化を記録したメモなどが、継続して症状があることや、治療の継続が必要となる証拠となる可能性があります。
このように、第三者が見ても納得できるような客観的な医学的証拠があれば、保険会社との交渉で相手を納得させられる可能性が高まるでしょう。
4.【休業損害の打ち切りを回避するためのSTEP3】職場に相談して段階的に復職を検討する

ここまで紹介してきたような方法で交渉しても保険会社が納得しない場合は、無理に対立を続けるのではなく、職場に相談して段階的な復職を検討するという選択肢もあります。
保険会社との交渉がうまくいかず、やむを得ず復職する場合でも、「いきなりフルタイムで元通り働く」のではなく、自身の体調や症状に合った働き方を会社と調整することが大切です。
たとえば以下のような対応ができないか会社と相談してみてください。
・時短勤務…1日4〜5時間程度からスタートし、体調に応じて徐々に勤務時間を延ばす ・出勤日数の調整…週2〜3日程度の出勤からスタートして仕事に慣れる ・配置転換…座り仕事や軽作業など、無理なくできる業務からスタートする |
このように、被害者としても「治療の継続は必要だが、復職に向けて努力している」という姿勢を見せることで、保険会社との交渉を円滑に進めやすくなることがあります。
「○月○日から段階的に復職する予定。それまでは休業損害が必要」といった形で保険会社に説明すれば、一定の譲歩を得られる可能性もあるでしょう。
職場復帰後に通院のための欠勤・遅刻・早退が必要な場合は休業損害が認められる |
通院などのために仕事を抜けなければならない場合、その時間に応じた減収分(給与の減額)は、治療の必要性が認められれば休業損害として補償されることが多いです。 完全な復職ではなくても、通院やリハビリと両立しながら働く形であれば、損害補償と収入の確保を両立できる可能性があります。 |
5.休業損害を打ち切られても後から請求が可能な場合も。復職は冷静に判断するべき

「お金がもらえなくなると困るから、多少無理をしてでも復職するしかない」
突然保険会社から休業損害の打ち切りを言い渡されると、そのように思ってしまうケースがあるかもしれません。
ですが、まだ治療が必要な段階で無理に復職する必要はありません。
むしろ、今後のためにも相手の主張を聞き入れず、医師の判断に従った通院や療養を続けてください。
保険会社から休業損害の打ち切りを通告されても、それで請求の権利が完全に失われるわけではありません。
治療の必要性が認められれば、後から請求できる場合があります。過去には、一度打ち切られた支払いが再開された事例もあります。
保険会社が支払っている休業損害は、あくまで「仮払い(先払い)」です。
これは保険会社側の任意のサービスであり、「打ち切られた=損害の発生が否定された」というわけではありません。
実際に、以下のケースでは打ち切られた後で交渉して休業損害を算定し、請求しました。
打ち切り後に休業損害などを算定して請求した事例 |
被害者のGさんは交通事故により上腕骨骨幹部を骨折し、利き手の握力や可動域が著しく低下。調理員としての復職が難しい状態でしたが、事故から7か月で保険会社に休業損害を打ち切られてしまいました。 不安を感じたGさんはサリュに相談。主治医との連携により、手首の可動域に重大な障害があることを医学的に示し、「後遺障害12級6号」の認定を受けました。 その後、打ち切り後から症状固定日までの休業損害・逸失利益を算定し、保険会社と交渉。 その結果、打ち切り後から症状固定日までの休業損害を認めさせ、裁判基準に近い金額で示談が成立しました。 事例の詳細を見る |
このように、休業損害が打ち切られても、必要性が認められれば後から請求することが可能です。
焦って復職するのではなく、まずは冷静に対応してください。
6.納得できない休業損害の打ち切りを提示されたら復職する前に弁護士へ相談して

休業損害の打ち切りについて保険会社の対応に納得できない場合は、復職を決める前に弁護士へ相談することをおすすめします。
保険会社は、必ずしも被害者の立場に立って判断してくれるとは限りません。むしろ、加害者側に有利に交渉を進めようとしてきます。
治療の必要性や休業の正当性をしっかり主張するには、法的な知識と経験に基づくサポートが不可欠です。弁護士に相談すれば、以下のような具体的な支援が受けられます。
1.休業や治療の継続の必要性を示す証拠を揃えるサポートを受けられる 2.相手の保険会社と交渉してくれる 3.適正な金額の休業損害を算定してくれる |
6-1.休業や治療の継続の必要性を示す証拠を揃えるサポートを受けられる
休業や治療の継続の必要性を示す証拠を揃えるサポートを受けられるのが、弁護士に相談・依頼する大きなメリットです。
交通事故の被害者が保険会社と交渉を進める際に悩みがちなのが、「何をどのように準備すればよいのか分からない」という点です。
弁護士に相談しておけば、必要な書類の整え方や医師への依頼内容など、専門的な知識がなければ対応が難しい場面で具体的なサポートを行ってくれます。
実際に以下の事例では、証拠の収集や職場との調整、医師との強力でサポートして、一度打ち切られた休業損害の支払いを再開させられました。
被害者は事故によって長期間の入院と手術が必要な大ケガを負ったにも関わらず、保険会社から治療費や休業損害の打ち切りを通告される。 サリュでは保険会社に対して被害者の状況を丁寧に説明し適正な補償を行うよう要求。 就業先への書類作成依頼を被害者に代わって行うなどのサポートも行った結果、休業損害の支払いが再開される。 さらに、治療費の打ち切りにも医学的根拠をもって反論し、その後の賠償交渉では保険会社の提示額約750万円に対し、最終的に約1500万円の和解金を得ることに成功する。 事例の詳細を見る |
このように、弁護士から証拠収集や交渉におけるサポートを受けることで、休業損害の継続や再開につながる場合もあるのです。
6-2.相手の保険会社と交渉してくれる
相手の保険会社と交渉してくれるのも、弁護士に依頼する大きなメリットです。
交通事故の示談交渉では、 事故対応のプロである保険会社と戦う必要があります。被害者が一人で対等に交渉を進めるのは難しいのが現実です。
そこで、法律の専門家である弁護士の助けを借りることで、正当な主張をしっかり伝えることが可能になります。
実際に、【5.休業損害を打ち切られても後から請求が可能な場合も。復職は冷静に判断するべき】でご紹介した事例の事例では一度休業損害を打ち切られても、打ち切り後の休業損害や、逸失利益を算定して請求することができました。
保険会社に一度打ち切りを言い渡された後の交渉は、弁護士の専門性があってこそ可能になります。
相手の主張に納得ができないときは、交渉のプロである弁護士のサポートを受けてください。
6-3.適正な金額の休業損害を算定してくれる
弁護士は適正な金額の休業損害を算定してくれるため、最終的に得られる賠償金の総額が大きく変わることがあります。
保険会社は自社の支払いを抑えるために、本来受け取れるはずの休業損害を過小に提示していることも少なくありません。
そのため、相手が提示する金額を鵜呑みにしてしまうと、本来請求できるはずだった金額を大きく下回る可能性もあるのです。
実際に以下の事例では、相手が提示してきた金額に対して、サリュの交渉で手当まで含めて請求することができました。
被害者は追突事故で頚椎捻挫及び腰椎捻挫という怪我を負い、首と腰の痛みで事故前に行っていた夜勤への対応が困難になる。 本来であれば、業務に従事しなかった分の手当ては認定されにくいものではあるものの、サリュの調査と粘り強い交渉により、「事故がなければ夜勤を行っていたことが十分考えられた」と認められる。 その結果、休業損害に加えて、業務できなかった分の夜勤手当を請求し満額を獲得。 事例の詳細を見る |
このように、正当な補償額を得るためには、弁護士の助けを借りて精密に算定してもらうことが重要です。
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7.まとめ
この記事では、休業損害の打ち切りについて解説しました。
内容のまとめは以下の通りです。
▼保険会社から休業損害を打ち切ると言われても安易に受け入れてはいけない
▼納得できない休業損害の打ち切りは以下のステップで回避する
【休業損害の打ち切りを回避するためのSTEP】 STEP1│医師に意見書や診断書を書いてもらう STEP2│MRI検査などの医学的証拠で怪我の客観的な状況を保険会社に伝える STEP3│職場に相談して段階的に復職を検討する |
▼休業損害が打ち切られても、後から請求できるケースもある
▼納得できない休業損害の打ち切りを提示されたら、まずは弁護士に相談するべき
この記事の内容を参考に、納得できない休業損害の打ち切りを回避してください。