交通事故後は即病院へ行くべき3つの理由と受診しないリスクを解説

「交通事故に遭ったけど、軽い怪我だし病院へ行くのが面倒」
「怪我をしているかわからないけど、病院って行ったほうがいいの?」
突然の交通事故に遭ってしまったあなたは、このように悩んでいるのではないでしょうか。
交通事故に遭った場合、できれば当日中、遅くとも2~3日以内には病院へ行ってください。
事故の直後は軽い怪我だと思っていたり、怪我をしていないと感じていたりしても、実際には怪我が隠れている可能性があるからです。
経済的な事情で通院をためらうかもしれませんが、交通事故の被害者は治療や検査にかかる費用を加害者側に請求できるため、お金の心配をすることはありません。
また、後日怪我が判明しても、事故の直後に病院を受診していないと、以下のようなリスクが生じてしまうかもしれません。
・後から怪我が発覚しても事故から間が空いていると事故との因果関係を否定されて賠償金を請求できない ・治療の経過が十分に記録されておらず、後遺障害として認められない ・大した怪我ではないと思われて相場より低い金額の賠償金を提示される |
「そうは言っても、病院へ行くのは大げさだし、面倒」
そのように考えてしまう方に向けて、この記事では、交通事故の後に病院へ行く必要性や、請求できるお金についてなどを網羅的に解説します。
「病院に行くのが面倒」という気持ちはよくわかりますが、一時的な感情で病院へ行かないことは、結果として被害者であるあなたが損をしてしまう可能性を高めます。
身体のためにも、万が一の際に補償を得るためにも、この記事の内容を参考に、できる限り病院へ行くようにしてください。

交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
相談だけで解決できることもありますので、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
目次
1.交通事故に遭ったら2〜3日以内にすぐに病院に行こう
「軽い痛みがあるだけ」
「自覚症状はほとんどない」
という場合でも、まずはできるだけ早く病院へ行きましょう。
具体的には、事故当日か、難しい場合でも2~3日以内に病院へ行くようにしましょう。
(なお、極めて軽微な事故であり、自覚症状が全くない場合は、通院を控えるべき場合もあります。この場合、保険会社が交通事故による受傷を否定する可能性があるため、治療をしても治療費が自己負担になるなどのリスクが生じます。)
なぜ、自覚症状がほとんどなくても病院へ行くべきなのか、詳しい理由を3つに絞って説明します。
1.自覚がないだけで骨折などの怪我をしている可能性があるから 2.怪我が認められずに賠償金を請求できなくなるから 3.病院代の全部または一部を相手に請求できるため金銭的な損失もない(少ない)から |
1-1.理由(1)自覚がないだけで骨折などの怪我をしている可能性があるから
交通事故に遭ったらすぐに病院へ行くべき1つ目の理由は、自覚がないだけで骨折などの怪我をしている可能性があるからです。
以下のようなケースでは、事故の直後に痛みを感じにくく、後から症状が出てくることがあります。
捻挫・むちうち(頸椎捻挫) | 事故後、数日経ってから痛みが現れることがある |
骨折 | 事故直後はアドレナリンなどの影響で痛みに気が付かず、数時間~数日後に痛みが現れることがある。 ※早期に治療開始しないと、骨がきれいにくっつかず、後遺症が残るリスクがある |
脳出血や内臓損傷 | 頭や内臓の怪我は外傷ではわからず、体内で症状が悪化していくことが考えられる。 ※治療が遅れることで、高次脳機能障害や臓器の機能低下など、重篤な後遺症が残る可能性がある |
このような怪我をしていても、症状に気が付かず病院へ行くのが遅れると、治療を開始するのも遅くなることになります。
「頭をぶつけた」
「お腹を強く打った」
などの自覚がある場合には、精密検査などにより怪我をできる限り早く見つけるためにも、早期の受診が重要です。
1-2.理由(2)怪我が認められずに賠償金を請求できなくなるから
交通事故に遭ったらすぐに病院へ行くべき2つ目の理由は、怪我が認められずに、賠償金を請求できなくなる可能性があるからです。
交通事故で怪我をした際には、以下の賠償金を請求できる可能性があります。
内容 | 項目 | 解説記事 |
通院が必要な怪我をした | 入通院慰謝料 | 交通事故慰謝料の相場と計算|通院日数1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の場合 |
後遺障害が残り、認定を受けた | 後遺障害慰謝料 | 交通事故の後遺障害慰謝料の相場や計算方法・賢いもらい方とは? |
怪我の影響で仕事などを休んだ | 休業損害 | 交通事故の休業損害|職業ごとの算出方法・受け取り方法など網羅解説 |
後遺障害が残り、認定を受けた | 逸失利益 | 【早見表付き】後遺障害の逸失利益はいくら?ケースごとの金額を解説 |
※それぞれの項目の詳しい内容や金額の相場については、「解説記事」のリンク先の記事をご覧ください。
事故直後に病院へ行かず、日をあけてしまうと、怪我と事故の因果関係が証明できなくなる可能性が高まります。
最悪の場合、交通事故で怪我をしたのにも関わらず、治療費や慰謝料などの賠償金を請求できなくなるかもしれないのです。
また、適正な慰謝料や休業損害などの賠償金を受け取るには、医師の診断書と通院記録が必須です。
正当な賠償金の獲得のためにも、事故に遭ったらなるべく早く病院へ行くことが大切です。
1-3.理由(3)病院代の全部または一部を相手に請求できるため金銭的な損失もない(少ない)から
最後の理由は、病院代の全部または一部を相手に請求できるため金銭的な損失もない(少ない)からからです。
(※自賠責保険の上限である120万円までの治療費は、被害者に重大な過失が存在しない限りは全て回収できることが多いです。他方で、治療費が120万円を超えてしまった場合で、かつ、被害者に過失が存在する場合には、治療費の一部は自己負担となる可能性があります。)
「初診料や検査費用が高そうだから行きたくない」
そのように考えて病院の受診をためらう方がいるかもしれませんが、基本的に、交通事故の被害者は病院でかかった費用を加害者側に請求することができます。
【請求できる項目】
・初診料 ・治療費 ・レントゲンなどの検査費用 ・薬の処方費用 ・診断書の発行費用 ・病院への交通費 など |
これらの費用を請求するには、領収書などの金額を証明できる書類が必要になるため、病院へ行ったときは忘れずに受け取り、保管しておくようにしましょう。
また、「検査の結果、怪我をしていなかったら自己負担になるのでは?」
と考える方もいますが、そんなことはありません。
交通事故による怪我の有無を確かめるために検査をした場合、検査の結果、怪我がなかったとしても、必要な検査費用として相手側へ請求できることが多いです。
怪我をしていても、していなくても、被害者側が金銭的な損失を負うことはないため、お金の心配はせず、病院へ行くようにしましょう。
ただし、極めて軽微な事故であり、自覚症状が全くない場合は、通院を控えるべき場合もあります。この場合、保険会社が交通事故による受傷を否定し、一切の治療費を否定する可能性があるため、治療をしても治療費が自己負担になるなどのリスクが生じます。
2.交通事故の後で受診する病院の科は基本的に【整形外科】
交通事故の後、病院のどの科を受診すればいいのか迷うかもしれませんが、基本的には整形外科を受診しましょう。
整形外科は、骨折やむちうちなどの、骨や筋肉、関節などの怪我を適切に診断できる科です。レントゲンやMRIなどの検査設備が整っており、必要な検査を受けることができます。
また、事故対応に慣れている病院もあり、診断書の作成などもスムーズに行ってもらいやすいでしょう。
もし、整形外科の診療範囲ではない怪我が発覚した場合には、適した病院へ紹介状を書いてもらい、転院することも可能です。例えば、頭部を強打した場合には、脳神経外科を受診した方がいい場合があります。
そのため、どの病院に行くべきか迷った際には、まずは整形外科を受診するようにしましょう。
3.交通事故の後ですぐに病院に行かないリスク
ここまでは、交通事故の後に病院へ行ったほうがいい理由を伝えてきました。
ですが、どうしても「面倒くさい」「病院へ行く時間がもったいない」と考え、行くことをためらってしまう方もいるでしょう。
ここではそんなあなたに向けて、交通事故の後ですぐに病院へ行かなかったときに起こりうるリスクを3つ紹介します。
・後から怪我が発覚しても事故から間が空いていると事故との因果関係を否定されて賠償金を請求できない ・治療の経過が十分に記録されておらず、後遺障害として認められない ・大した怪我ではないと思われて相場より低い金額の賠償金を提示される |
3-1.後から怪我が発覚しても事故から間が空いていると事故との因果関係を否定されて賠償金を請求できない
最初に考えられるリスクは、後から怪我が発覚しても事故から間が空いていると事故との因果関係を否定されて賠償金を請求できないことです。
交通事故に遭ってから、すぐに病院へ行かないと、後から怪我をしていたことが発覚しても、事故との因果関係を証明することが難しくなります。
事故から時間が空くと、
「怪我が本当に事故で負ったものなのか、無関係なのではないか」
と、加害者側の保険会社から事故との関係を否定される可能性もあるでしょう。
また、初診が遅れると、事故による怪我の診断書や通院記録が十分に揃わず、事故との因果関係を裏付ける証拠が不十分になることも考えられます。
結果的に適正な賠償を受けられない可能性があるというのが、1つ目のリスクです。
3-2.治療の経過が十分に記録されておらず、後遺障害として認められない
次に考えられるのは、治療の経過が十分に記録されておらず、後遺障害が認められないリスクです。
交通事故により怪我をした場合、痛みやしびれ、動かしづらさなどの症状が治療後も残ることが考えられます。
そんなとき、本来であれば、症状によっては後遺障害等級(交通事故による怪我で後遺症が残った場合、症状や重度に応じて等級の認定を受ける仕組み)の認定を受け、等級(症状の重さなど)に応じた後遺障害慰謝料などを請求することができます。
しかし、治療の経過を十分に記録しておかないと、後遺症が残った理由が、交通事故による怪我のせいだと証明できない可能性があります。
後遺障害の認定には、医師の客観的な診断書や症状固定までの通院実績が不可欠です。
早期に病院を受診しないことで、後遺症が残っても補償を受けられないかもしれないというリスクがあることを知っておいてください。
3-3.大した怪我ではないと思われて相場より低い金額の賠償金を提示される
交通事故のあとすぐに病院へ行かない場合に考えられる最後のリスクは、相手の保険会社に大した怪我ではないと思われ、相場より低い金額の賠償金を提示される可能性があることです。
受診が遅れると、相手側の保険会社は、
「すぐに病院へ行く必要のない程度の軽い怪我だった」
とみなして、低額の示談金を提示してくるかもしれません。
そのときに、十分な受診の記録が残っていないと、反論する材料が足りず、相手が提示した条件を飲み込まなくてはならなくなるでしょう。
「事故の直後は気が付かなかったけど、実際には痛みが続いている」
という場合でも、医師の診断がなければ主張が通りづらく、相手側に有利に交渉が進められてしまう可能性もあります。
納得できない示談に持ち込まれる可能性があるというのが、交通事故のあとすぐに病院へ行かない最後のリスクです。
4.交通事故で病院に行くときの流れ
「交通事故に遭ったら病院へ行くべきなのはわかったけど、実際、どうやって行けばいい?」
病院に行くことを決めても、そこがわからずに迷ってしまう方もいるはずです。
交通事故のあとで病院へ行くときの流れは、以下の通りです。
1. 相手の保険会社に病院へ行くことを連絡する(どの病院へ行くか伝える) 2. 受診時に、病院に交通事故の怪我で受診することを伝える 3. 自分の保険会社に報告する(怪我の有無を問わず報告義務がある) 4.病院(整形外科)を受診する |
病院に行く前には、以下のチェックリストの内容を確認しておきましょう。
【病院に行く前に確認することリスト】
内容 | 確認先 |
当日、支払いの立て替えは発生するか | 相手保険会社 |
発生する場合、支払い方法は何があるか(現金、クレジットカードなど) | 病院 |
病院までの交通手段はあるか | 自分で |
病院へ行くためにかかった交通費などは、加害者に請求できる賠償金項目のひとつです。
基本的に、バスや電車などの公共交通機関を利用した場合には、実費で請求できるでしょう。
また、怪我や環境が理由でやむを得ずタクシーを利用した場合も、請求できる可能性があります。ただし、保険会社の対応によっては認められない場合があるため、事前に確認しましょう。
物損事故扱いにしていて怪我が発覚した場合、できれば人身事故に切り替える |
交通事故の直後は怪我に気が付かず、物損事故として届け出ていたものの、後から怪我が発覚した場合には、警察に連絡をして、できれば人身事故への切り替えを行いましょう。 物損事故のままでも自賠責保険からの賠償金は問題なく支払われますが、もし、後遺症が残って後遺障害申請をする場合には、物損事故となっていることが軽微な事故であるとの印象を抱かせ、後遺障害認定がおりない場合があります、 |
5.交通事故による怪我が判明したら医師に従って適切な通院を続けよう
「病院に行くには会社を休まなければいけないし、面倒だから行きたくない」
そのように感じてしまうかもしれませんが、まずは治療に専念し、怪我を治すために必ず通院を続けるようにしてください。
また、適切な期間・頻度の通院は、適正な賠償金の請求のためにも重要です。
怪我の症状や重度によっても異なりますが、主に、症状ごとに以下の期間・頻度の通院を行っていれば、保険会社に適正な賠償金の請求が行いやすいでしょう。
入通院期間 | 打撲 | 通院期間:1週間〜数か月程度 |
ねんざ・むちうち | 通院期間:1週間〜半年程度 | |
骨折 | 入通院期間:1か月〜1年程度 | |
通院頻度 | 通院頻度は3日に1、2回程度が目安(週2~4回程度通院) |
※あくまで目安です。実際の通院期間は必ず医師と相談してください。
もし、自己判断で通院を中断すれば、怪我が治りきらず、後遺症が残るリスクが増すかもしれません。
また、治療をやめた段階で事故による怪我は完治したとみなされ、保険会社がその後の治療費などを認めなくなる可能性もあるでしょう。
(概ね2週間の通院期間が空くと、2週間後以降に受診した際の治療費について、事故との因果関係について疑義が生じてきます。1ヶ月以上空くと、事故との因果関係は否定されます。)
怪我の治療のためにも、適切な賠償金の獲得のためにも、医師の指示に従った適切な通院は重要となります。
6.もし病院に通院しても治らなければ弁護士と共に戦おう
適切な治療を行っても症状が改善せず、保険会社と揉める場合には、弁護士と一緒に戦う必要があるでしょう。
交通事故による怪我で後遺症が残ってしまった場合、相手の保険会社の言うことに従っているだけでは、被害者が正当な補償を受けられない可能性があります。
【相手の保険会社の言いなりになるリスク】
後遺症が認められない | 交通事故による怪我の後遺症なのに、「事故は関係ない」と言われ慰謝料などの示談金を支払わない |
相場より低い金額で解決させられる | 後遺症の症状に対して、相場よりも低い金額の示談金を提示し「あなたの怪我ではその程度が相場です」などと言ってくる |
加害者有利の過失割合を押し付けられる | 加害者が有利になるような過失割合を訴え、被害者側にも自己負担をさせようとしてくる |
本来請求できるはずの項目を請求できない | 被害者が本来請求できる項目(治療費、検査費用、病院への交通費)をすべて伝えず、請求に漏れがあっても教えてくれない |
このような対応をしてくる保険会社に対して、知識のない被害者がそれらをすべて自分で行うのは、かなり難しいのが現実です。
そこで、力になれるのが弁護士です。
弁護士に依頼すれば、医師の診断書作成時のサポートや、後遺障害認定手続きなど、専門的なサポートを受けられます。
弁護士基準での示談交渉により、受け取れる賠償金額が増える可能性もあります。
自分の力で戦えない、という時には、弁護士に相談し、力になってもらいましょう。
7.まとめ
この記事では、交通事故に遭ったら必ず病院へ行くべき理由と、行かないことで生じるリスクについて解説してきました。
記事の内容のまとめは、以下の通りです。
▼交通事故に遭ったら2~3日以内に病院へ行くべき理由は以下の3つ
・自覚がないだけで骨折などの怪我をしている可能性があるから ・怪我が認められずに賠償金を請求できなくなるから ・病院代の全部または一部を相手に請求できるため金銭的な損失もない(少ない)から |
▼交通事故のあとに受診する病院は基本的に整形外科を選ぶ
▼交通事故のあとに病院へ行かないことで生じる可能性のあるリスクは以下の3つ
・後から怪我が発覚しても事故から間が空いていると事故との因果関係を否定されて賠償金を請求できない ・治療の経過が十分に記録されておらず、後遺障害として認められない ・大した怪我ではないと思われて相場より低い金額の賠償金を提示される |
▼交通事故のあとで病院へ行くときの流れは、以下の通り
1. 相手の保険会社に病院へ行くことを連絡する(どの病院へ行くか伝える) 2. 受診時に、病院に交通事故の怪我で受診することを伝える 3. 自分の保険会社に報告する(怪我の有無を問わず報告義務がある) 4.病院(整形外科)を受診する |
この記事の内容を参考に、交通事故のあとには必ずできる限り早く病院へ行ってください。