交通事故の過失割合とは?基本の割合や決め方、不満なときの対処法
「交通事故の過失割合って何?」
「過失割合はどうやって決まるの?」
加害者側の保険会社に過失割合を提示されたけれど、そのまま受け入れていいものなのか、迷ってはいませんか?
自身の過失割合がどのくらいなのか、はっきりさせたいと思っている方もいるでしょう。
過失割合とは、事故発生の原因がどちらにどれだけあるのかを割合で表したものです。
被害者にも過失がある場合は、以下のように過失相殺(事故当事者両方に責任がある場合、それぞれの責任を鑑みて賠償額を考慮すること)されます。
事故発生の原因はさまざまであり、被害者だからといって過失割合が0になるとは限りません。
過失割合は、信号機の色や道路標識、道路幅、車両スピードなど、個別具体的な状況によって異なります。
こちらには防ぎようがない事故のはずなのに、
「あなたにも過失があるから50:50です」
「あなたの不注意が原因だから60:40です」
などと、加害者の保険会社に言われていませんか。
実は、示談交渉時に加害者側から提示される過失割合は不当なケースも多くあります。
過失割合は当事者同士の話し合いで決めるものなので、加害者側の言いなりにならず、反論することも大切です。
過失割合は、支払われる賠償金に影響するため、そのまま受け入れると賠償金が大きく減額されるリスクもあるため注意が必要です。
そこで、この記事では次のことを解説します。
この記事でわかること |
・交通事故の過失割合とは何か ・過失割合を決める人 ・事故のケース別の基本過失割合 ・加害者側に提示された過失割合を覆した4つのケース |
最後までお読みいただければ、過失割合に関する知識が深まり、加害者側と自信を持って交渉できます。
不当な過失割合で示談を成立させないためにも、過失割合の意味や決め方などを理解しておきましょう。
この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢
弁護士法人サリュ
大阪弁護士会
交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得
目次
1. 交通事故の過失割合とは
交通事故の過失割合とは、事故発生の原因がどちらにどれだけあるのかを割合で表したものです。
事故が発生すると、自分と相手の責任がそれぞれどれくらいなのかを話し合い、最終的に自分:相手=20:80のように割合で決定します。
過失割合は、被害者が受け取る賠償金に影響を与える重要なものです。
あなたの過失が少しでも大きくなると、受け取れるお金が少なくなります。
損害額総額によって差はありますが、受け取ることができる賠償金が数十万~数百万円も変わることがあります。
賠償金1,200万円のケースで見てみましょう。
過失割合 | 自分:相手=0:100の場合 | 自分:相手=20:80の場合 |
あなたが受け取れる金額 | 1,200万円 | 960万円 |
過失割合を決める際に参考にする要因は、
・交通手段(車か二輪車か自転車か徒歩かなど)
・事故現場(交差点か道路上かなど)
・信号の色
・道路標識(一時停止規制や優先道路規制の有無など)
・道路幅
・車両の速度
・事故の時間(日没後か否か)
など、非常にたくさんあります。
青信号だったから過失は0、スピード違反していないから過失は0、などと単純に決まるわけではありません。
そのため、ドライブレコーダーや警察の記録などを取り付けて、事故発生に至る状況を詳しく調べ、過失割合を決める必要があります。
2. 交通事故の過失割合を決めるのは「あなた自身と相手」
交通事故の過失割合とは何か、ご理解いただけたでしょうか。
ここで、「過失割合は誰が決めるの?」「加害者の保険会社や警察が決めるの?」などと疑問に思われる方がいるかもしれません。
結論、交通事故の過失割合は、原則として事故を起こしたあなた自身と相手方が話し合って決めるものです。
どちらか一方が「過失割合は〇:〇です」と、勝手に決めるものではありません。
以下に、過失割合を決める基本の流れをまとめました。
過失割合を決める流れ |
1.ドライブレコーダーや刑事記録を分析しつつ、事故状況のすり合わせを行う 2.基本過失割合を算出する 3.道路の幅や車両の速度などを考慮して基本過失割合を修正する 4.事故の当事者双方で合意する 5.合意できなければ裁判等で決着をつける |
なお、保険実務・裁判実務では、判例タイムズ社が発行する「別冊判例タイムズ38|民事訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍をもとに、基本過失割合やその修正要素を判断していくことになります。
交通事故の過失割合は誰が決める?納得の割合にするための対処も解説
3. 【事故ケース別】交通事故における基本の過失割合
交通事故の過失割合は賠償金に関わるものであること、事故の当事者同士で決めるものであることを解説しました。
過失割合を決める際、まずは「基本過失割合」を出しますが、これは「別冊判例タイムズ38|民事訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍を参考に決めるのが一般的です。
ここでは、事故のケース別に、基本過失割合を紹介します。
過失割合のパターンは、何百種類もありますが、本記事では四輪車同士の事故のなかから、よくある4パターンをピックアップしています。
1.交差点における直進車同士の事故【信号機の設置あり】 2.交差点における直進車同士の事故【信号機の設置なし】 3.交差点における右折車と直進車の事故【同じ道路を対向方向から侵入】 4.左折車と直進車の事故 |
3-1. 交差点における直進車同士の事故【信号機の設置あり】
ケース | 基本過失割合 |
Aが青信号、Bが赤信号 | A:B=0:100 |
Aが黄信号、Bが赤信号 | A:B=20:80 |
赤信号同士 | A:B=50:50 |
3-2. 交差点における直進車同士の事故【信号機の設置なし】
ケース | 基本過失割合 |
道路幅が同じでA・B同じ速度 ※Aが左方車、Bが右方車 |
A:B=40:60 |
Bが一方通行規制に違反している | A:B=20:80 |
A側の道路幅が明らかに広い | A:B=30:70 |
Bに一時停止の規制がある | A:B=20:80 |
3-3.交差点における右折車と直進車の事故【同じ道路を対向方向から侵入】
※Aが直進車、Bが右折車
ケース | 基本過失割合 |
青信号同士で進入 | A:B=20:80 |
Aが黄信号で進入、Bが青信号で進入し黄信号で右折 | A:B=70:30 |
黄信号同士で進入 | A:B=40:60 |
Aが赤信号で進入、Bが青矢印で右折 | A:B=100:0 |
3-4. 左折車と直進車の事故
※Aが直進車、Bが右折車
ケース | 基本過失割合 |
同じ道幅の交差点 | A:B=50:50 |
A側の道路幅が明らかに広い | A:B=30:70 |
Bに一時停止規制あり | A:B=20:80 |
Aが優先道路 | A:B=10:90 |
4. 相手保険会社から提示される過失割合は不当な場合もある
前章では、自動車同士の事故における基本過失割合のを一部紹介しました。
事故の状況により過失割合が大きく変わることをご理解いただけたはずです。
ここで注意したいのが、相手の保険会社に提示される過失割合は不当な場合もあるということです。
加害者側は、少しでも賠償額を減らすため、過失割合を主張してくることがあります。
また、加害者の一方的な言い分を前提に事故態様を特定し、過失割合の主張をしてくることもあります。
もしかすると、本来は「0:100」の事故なのに「40:60」と提示される可能性もあるのです。
2.交通事故の過失割合を決めるのは「あなた自身と相手」でも解説しましたが、過失割合はどちらか一方が決めるものではないため、納得するまで話し合うことが大切です。
5. 【当事務所の事例】相手方主張の過失割合を覆した4つのケース
加害者側に不当な過失割合を提示されるケースは多くありますが、弁護士が介入したことで覆すことができたケースも数多くあります。
ここでは、当事務所、弁護士法人サリュで実際にあった事例を4つ紹介します。
過失割合「70:30」が「0:100」になったケース 過失割合「30:70」が「5:95」になったケース 過失割合「20:80」が「10:90」になったケース 過失割合「100:0」が「50:50」になったケース |
5-1. 過失割合「70:30」が「0:100」になったケース
過失割合 | 70:30→0:100 |
事故の状況 | 自動車で走行中、右側路地から交差点に左折進入してきた自転車と衝突 |
Aさんは自動車で走行中、右側路地から交差点に左折進入してきた自転車と衝突しました。
相手は弱者救済の理論等に基づいて、自動車を運転してたAさんに70%の過失があると主張してきましたが、Aさんは納得できませんでした。
過失割合を決める際には、事故が起こることを予見できたかどうか(予見可能性)が重要なポイントとなります。
当事務所は裁判を提起し、ドライブレコーダーの映像をもとに、自転車の速度が相当にでていたことなどを指摘し、Aさんには予見可能性がなかったと主張しました。
その結果、当事務所の主張が認められ、Aさんには一切の過失がないとの判決を得ることができました。
5-2. 過失割合「30:70」が「5:95」になったケース
過失割合 | 30:70→5:95 |
事故の状況 | 片側3車線の道路で右折したところ、対向車と衝突 |
Iさんは片側3車線の道路で右折信号が青になったのを確認し右折しましたが、対抗から加害者の車が進行してきたために事故になりました。
当初、加害者は「信号を無視した」と認めていましたが、その後態度が一変し、警察の実況見分では自身に有利な内容を伝えていたのです。
その後、加害者側から提示された過失割合は、30:70でした。
当事務所は、加害者側の保険会社が依頼したリサーチ会社の資料を取り寄せ、加害者側の走行時の速度や信号サイクルなどを調査・分析し、加害者の主張に矛盾があることを指摘しました。
その結果、加害者に95%の過失割合を認めさせることができました。
5-3. 過失割合「20:80」が「10:90」になったケース
過失割合 | 20:80→10:90 |
事故の状況 | バイクで走行中、加害者の車が急に車線変更してきたのを避けようとして転倒 |
Aさんがバイクで走行中、加害者の車が急に車線変更をしたため、Aさんはぶつからないようハンドルを切ったところ、回避しきれず転倒した事故です。
事故の状況からすると、基本過失割合は20:80でしたが、Aとはさんは、相手の急な車線変更が原因であり納得ができないとのことでした。
そこで当事務所は、加害者が車線変更の直前に合図を出したことを指摘し、Aさんの過失割合は10%にとどまると主張しました。
相手は反論してきましたが、弁護士が交渉を重ねた結果、10:90で示談を成立させることができました。
5-4. 過失割合「100:0」が「50:50」になったケース
過失割合 | 100:0→50:50 |
事故の状況 | 自転車で走行中、前方から迫ってくる自動車に危険を感じて転倒 |
Cさんが狭い道を自転車で走行中、前方から自動車が立ちふさがるように走ってきたことから、Cさんは危険を感じ、衝突を避けようとして転倒してしまいました。
しかし、相手はCさんが勝手に転倒しただけだと主張し、自身の過失を一切認めなかったのです。
そこで当事務所では、道路状況や警察が作成する実況見分調書などを調査・分析し、相手にも過失があることを裁判で主張しました。
最終的に、50:50の過失割合で和解に至りました。
6. 提示された過失割合に納得いかなければ弁護士に相談しよう
前章では、示談交渉や裁判で過失割合を覆すことができたケースを紹介しました。
加害者側との示談交渉がはじまり、提示された過失割合に納得いかないときは、弁護士に相談することをおすすめします。
0:100の事故ではない場合、自身の保険会社の担当者が、加害者側とやりとりしてくれます。
しかし、保険会社の担当者は弁護士ほどの交渉力はなく、道路交通法や裁判例などの基礎知識が不足していることも多くあります。
そのため、不当な過失割合を提示されても、そのまま受け入れてしまう恐れがあるのです。
「【当事務所の事例】相手方主張の過失割合を覆した4つのケース」で紹介した事例の被害者の方々は、弁護士による証拠集め、交渉、裁判によって納得のいく過失割合で解決することができました。
実績豊富な弁護士なら、過去の裁判例や法律をもとに正当な過失割合を判断できます。
弁護士に依頼することで、あなた有利に過失割合を変更できる可能性があります。
過失割合が提示されているけれども納得できないと感じているなら、弁護士に相談しましょう。
「交通事故の過失割合に納得いかないなら交渉可能!必要な証拠や解決事例」の記事も、あわせてご覧ください。
7. まとめ
本記事では、交通事故の過失割合について解説しました。
重要なポイントをおさらいしましょう。
〇交通事故の過失割合とは、事故発生の原因がどちらにどれだけあるのかを割合で表したもの
〇過失割合を決める要因は、信号の色・道路の標識・道路の幅など多岐にわたる
〇 相手保険会社に提示される過失割合は不当な場合もある
〇 提示された過失割合に納得いかなければ弁護士に相談するのがおすすめ
交通事故の過失割合は、賠償金に影響する重要なものです。
なぜ自身の過失がそのような割合になるのか理解できないまま示談すると、本来受け取れるはずの賠償金が大きく減額されてしまいます。
過失割合は交通事故のプロでないと正しいかどうか判断することが難しいです。是非、弁護士にご相談ください。