交通事故の治療費は加害者の保険会社が払う?! 請求・立替の方法を解説

交通事故後の通院時、自分で治療費を払ったけれど、あとから加害者側に請求できるのだろうか

この記事を読んでいるあなたは、加害者側の保険会社や共済(以下、「保険会社」といいます。)からまだ連絡がない状態で病院に行き、窓口で治療費を払ったことに不安を感じていませんか?

・治療費は全額加害者の負担?

・立て替えた分はいつ払ってもらえるの?
・次回の治療費の支払いはどうなる?

など、気になることが多数あるはずです。

結論、交通事故の治療費は損害賠償項目の一つなので、原則加害者側の負担となります

あなた(被害者)がすでに立て替えている場合は、後日請求可能です。

治療費は、請求するタイミングによって請求方法が異なりますが、多くの場合、任意保険による一括対応で支払われます。

※一括対応…保険会社から病院へ直接治療費が支払われることを指します。

しかし、加害者側に治療費の支払いを拒否されたり、加害者が任意保険に入っておらず治療費を払ってもらえなかったりする可能性も、0ではないのが実情です。

治療費をスムーズに支払ってもらえない場合の対処法を知らないままだと、本来自己負担する必要がないお金を払うことになります。

そこで、この記事では、治療費を全額受け取れるのか、初回の治療費を立て替えた場合に次回も窓口で支払うべきなのかなど、今あなたが気になっていることを解説します。

この記事でわかること
・交通事故の治療費を加害者側に支払ってもらう仕組み
・交通事故の被害に遭ったあなたが治療費を受け取る方法
・交通事故の治療費として受け取れる範囲
・加害者が任意保険に入っていなくても治療費を受け取る方法
・適切な治療費を受け取れない可能性がある2つのケース

最後まで読めば、交通事故の治療費の仕組みや受け取り方などを理解でき、正しい手順で加害者側に請求できます。

お金の心配をせずに安心して治療に専念するためにも、治療費について一緒に学んでいきましょう。

この記事の監修者
弁護士 松葉 想

弁護士法人サリュ名古屋事務所
愛知県弁護士会

交通事故解決件数 1,300件以上
(2024年1月時点)
【獲得した画期的判決】
【加害者責任否認案件において加害者の過失を85パーセントとし、症状固定時41歳男性の労働能力喪失期間を73歳までと認定した判決】(大阪地裁平成27年7月3日判決(交通事故民事裁判例集48巻4号836頁、自動車保険ジャーナル1956号71頁))
・自賠責保険金を含んだ回収額が3億9000万円となった裁判上の和解
・自賠責保険における等級認定が非該当であった事案において、後遺障害等級5級を前提とする裁判上の和解
・死亡、遷延性意識障害、脊髄損傷、高次脳機能障害等の示談や裁判上の和解は多数
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例334:事前認定後遺障害非該当に対し、諦めずに異議申立て。後遺障害第14級9号を獲得した事例
事例355:本業の休業がなくても、副業を全休し収入が減少。訴訟手続きにより、副業の休業損害の多くを判決で勝ち得た事例
事例374:足首の両果骨折の賠償金が当初の相手方提示金額より2.3倍になった事例

 

1. 交通事故の治療費を支払うのは原則加害者側の保険会社

記事冒頭でもお伝えしましたが、交通事故の治療費を支払うのは、原則加害者側の保険会社です。

加害者側にあなたの治療費を払ってもらう方法は、以下2つに大別されます。

1. 加害者の保険会社に病院に直接払ってもらう(一括対応)
2. 立て替えた治療費を損害賠償金として請求する

事故のケースや加害者側の保険会社の考えによってどちらになるか変わりますが、それぞれの仕組みを簡潔に解説します。

1-1. 加害者の保険会社から病院に直接払ってもらう(一括対応)

一つ目は、加害者の保険会社に治療費を直接支払ってもらう方法です。

これを一括対応といい、多くの場合はこの方法で支払いが行われます。

一括対応してもらえることになれば、加害者の保険会社が、あなたが通う病院に直接治療費を払います。

つまり、あなたが病院の窓口で治療費を支払う必要はなくなるのです。

そのため、被害者はお金を気にせず治療に専念できます。

1-2. 立て替えた治療費を損害賠償金として請求する

二つ目は、被害者が治療費を立て替えた分を、損害賠償金として請求する方法です。

まず、入院や通院にかかった治療費を、いったんすべて自分で立て替えます。

その後、示談交渉時に加害者の保険会社に請求して立て替えた分を受け取れる仕組みです。

後日請求する方法だと、いったんあなた自身が治療費を立て替えねばならず、怪我の程度や治療期間によっては大きな負担となってしまいます。

このため、一括対応してもらうのが理想ですが、一括対応を拒否されるケースもあるため、そうなった場合は損害賠償金として請求します。

一括対応を拒否されても、自己負担を抑えて治療を続けることは可能です。
くわしくは「3-3.【一括対応NGの方】立て替えた分を後日請求する流れ」で解説します。

2. 交通事故の治療費として受け取れる範囲

交通事故の治療費は、加害者側の保険会社が支払うべきものであることを理解していただけたでしょう。

次に気になるのは、治療費がどこまでの範囲を指すのか、ではないでしょうか。

以下に、交通事故の治療費として受け取れる項目と金額例をまとめました。

受け取れる治療費項目金額例
治療費診察や検査、入院、手術などにかかった費用のうち、交通事故と相当因果関係のあるもの 
入通院付添費家族や親族、看護師・介護士等による、付き添いにかかった費用のうち、必要性・相当性のあるもの

※被害者が事故による怪我でひとりで病院に行けない場合や医師から指示があった場合に受け取ることのできる可能性があります

【裁判所基準の相場】
通院付添費:3,300円/日
入院付添費:6,500円/日
 
【自賠責基準の相場】
通院付添費:2,100円/日
入院付添費:4,200円/日
入通院交通費・公共交通機関の運賃(電車やバス)
・自家用車のガソリン代 など  
※入通院時の移動にかかったもの
入院雑費入院時に必要な
・下着
・テレビカード   などを購入した費用

【裁判所基準の相場
1,500円/日  
【自賠責基準の相場】
1,100円/日
装具費車いすや義足などの費用
※事故による怪我で購入したもの
各種証明書の発行費用保険金や後遺障害認定の申請時に必要な
・交通事故証明書
・診断書   などの作成にかかる費用

※裁判所基準は、裁判所が用いることの多い基準 、自賠責基準は最低保証ラインの金額です。

算定基準については、「【怪我のケースで比較】交通事故の慰謝料の弁護士基準とその他の基準の差を徹底解説」の記事でくわしく解説しています。

事故の被害者であるあなたは、上記の項目を、治療関係費として受け取ることができる可能性があります

ただし、一括対応で支払ってもらうことができることが多いのは 、入通院にかかった費用です。

ほかの項目は、損害賠償金として示談交渉時に請求するケースが多いです。 

3. 交通事故で被害に遭ったあなたが治療費を受け取る方法

2章では、どの範囲までを交通事故の治療費として受け取れるのかを解説しました。

ただ、既に治療費を立て替えた方、これから病院に行こうとしている方は、治療費の受け取り方がよくわからない現状に不安を感じるのではないでしょうか。

ここでは、治療費を受け取る方法や流れを解説します。

加害者側がどのような対応をしてくるのかによって治療費の請求方法が変わるため、臨機応変に行動していきましょう。

3-1. 【全員】加害者の保険会社に連絡し治療費の一括対応をお願いする

通常、治療費の支払いについては、加害者の保険会社から連絡がきて説明されます。

しかし、まだ治療費について何も連絡がきていないなら、あなたの方から連絡し、確認しましょう

以下の例文のように、治療費の支払いについてどのような対応をしてくれるのか、自分はどうしてほしいのかを伝えてください。

事故で怪我をしたので通院しているのですが、治療費についての連絡がまだきていません。一括対応でお願いしたいと思っています。

このように伝えて、一括対応してもらえると言われたら、すぐに手続きを開始しましょう。

3-2. 【一括対応OKの方】一括対応の手続きの流れ

一括対応してもらえることになったら、通院している病院の名前と連絡先を、加害者の保険会社に伝えます

具体的な流れは、以下のとおりです。

一括対応の手続きの流れ
1.通院している病院の名前と連絡先を、加害者の保険会社に伝える
2.加害者側の保険会社から、任意一括対応の同意書が郵送または電子メールで届く
3.同意書にサインする
4.受理されると保険会社による病院への治療費支払いがはじまる

一括対応してもらえることになれば、あなたは同意書にサインをするだけです。

ほかの手続きは、加害者側の保険会社がすべて行ってくれるケースが多いです

手続き完了前に受診する際は、病院の窓口で一括対応の手続き中である旨を伝えましょう。

もし病院に立て替えるよう言われた場合は指示に従ってください。

一括対応前に立て替えた治療費は、以下の手順で加害者の保険会社に請求可能です。

1. 立て替えた治療費があることを加害者側の保険会社に伝える
2. 明細書や領収書などを提出して立て替えた分を受け取る

※保険会社や事案によって、手順や受け取れるタイミングは異なります。

3-3. 【一括対応NGの方】立て替えた分を後日請求する流れ

加害者の保険会社に一括対応をお願いして拒否された場合は、勤務中や通勤中等の労災事故でなければ健康保険を利用して治療費を立て替え、請求しましょう。

交通事故の治療費は、自由診療となることが多いため、普段の通院のようには健康保険は使えません。

しかし、適切に手続きを行えば、健康保険での通院が可能となります。

これにより、窓口での支払いは必要ではあるものの、立替えの負担を減らして治療を受けられるのです。

具体的な流れは、以下のとおりです。

健康保険で治療を継続し、後日請求する流れ
1. 加入している健康保険に連絡し、保険を利用して事故による怪我の治療を受けたいことを伝える
2. 「第三者行為による傷病届」を、郵送または直接提出する  
※すぐの提出が難しい場合は、電話で連絡をしてください
3. 健康保険を使って病院を受診し、治療費を立て替えて支払う
4. 立て替えた治療費を加害者に請求する

実は、あなたの過失が大きいと思われているなどの理由で、加害者側が一括対応を拒否するケースは多い傾向にあります。

そのため、一括対応を拒否された場合の流れもしっかり押さえておきましょう。

健康保険を利用して治療費を後日請求する際の注意点
健康保険を利用して治療を続け、示談交渉で治療費を請求する場合に注意すべきことがあります。
それは、自己判断で通った接骨院や鍼灸院の治療費は、請求できない可能性が高いことです。
損害賠償の一つである治療費は、医師による治療にかかった費用のみに限られることがあります。
接骨院や鍼灸院の先生は医師ではないため、治療費として認められないケースが多いのです。
接骨院や鍼灸院に通う際は、主治医に許可を得てからにしましょう。

4. 立て替えた治療費を少しでも早く受け取る方法

交通事故の治療費は基本的に任意保険による一括対応になりますが、3章で解説したように拒否されるケースもあります。

通常、交通事故の治療費は、自賠責保険と任意保険の両方から支払われます。

任意保険に治療費を請求すれば、任意保険が自賠責保険の分もまとめて被害者に支払ってくれるので、自賠責保険に請求する必要はありません。

しかしそれだと、すぐには立て替えた治療費を受け取れないのです。

なかには、立て替えた分を少しでも早く回収したい方もいるでしょう。

以下の方法なら、比較的早く治療費等を受け取ることのできる可能性があります

・加害者の自賠責保険に被害者請求する
・被害者の任意保険を利用する

4-1. 加害者の自賠責保険に被害者請求する

一つ目は、加害者の自賠責保険や自賠責共済(以下、「自賠責保険」といいます。)に被害者請求する方法です。

被害者請求
加害者の自賠責保険に直接請求し、治療費を示談前に受け取る方法

4-2. 被害者自身の任意保険を利用する

二つ目は、被害者の任意保険を利用して、立て替えた治療費を受け取る方法です。

あなたが人身傷害保険に加入しているなら、保険会社に保険金を請求できます。

人身傷害保険とは
事故で怪我をした場合にかかった治療費や、働けない間の収入などを補償してもらえる保険
【補償される項目例
・事故による怪我の治療費
・会社を休んだ分の収入
・逸失利益(事故に遭わなければもらえるはずだった利益)
・将来の介護費など

【利用方法】
1.自分が加入している保険会社に連絡する
2.人身傷害保険で治療費を受け取りたいことを伝える
3.指示された必要書類を準備して保険会社に提出する
4.審査に通ると保険金を受け取れる

※人身傷害保険で保険金を受け取ったら、損害賠償額と調整されるため、二重でもらうことはできない

人身傷害保険から治療費をもらえるタイミングは、保険会社による損害額算定が終わったらすぐです。

よって、示談交渉前に治療費を回収しやすいです。

金額は加入している保険によって異なるため、利用を検討している方は保険会社の担当者に確認してください。

5. 自分の力では適切な治療費を受け取るのが難しい2つのケース

「交通事故で怪我をさせられた側なのだから、かかった治療費はすべて加害者側に負担させたい」

このように思うのは当然です。

しかし、本記事で紹介してきた方法を実践しても、適切な金額を受け取れない場合もあります。

自分(被害者)にも過失がある場合は、100%の治療費を受け取ることのできない可能性があります。

例えば、「あなた:被害者」の過失割合が「4:6」の場合に受け取ることのできる治療費は、60%になることがあります。

【治療費200万円の場合】
加害者側に請求できる治療費:120万円(200万円×0.6)
あなたの自己負担額:80万円

もしあなたが過失割合に納得していないなら、そのまま示談成立させてはいけません。

示談成立後は、過失割合の交渉や変更はできないからです。

もらえる治療費に納得がいかないなら、示談成立前に加害者側に交渉すべきです。

過失割合を覆すための証拠を集めて交渉すれば、過失割合を覆せる可能性があります。

6. 交通事故の治療費に悩んでいるなら弁護士への相談がおすすめ

交通事故の治療費に悩んでいる方、不安がある方は、弁護士への相談がおすすめです。

特に、交通事故に強い弁護士は、さまざまなケースの事故案件を解決してきた実績があります。

次のような知識を活かして、被害に遭ったあなたが少しでも損しないよう、サポートできるのが弁護士です。

・被害者が、治療にかかったお金を少しでも多く回収する最善の方法

・加害者側の保険会社に一括対応を拒否された場合の対応

弁護士なら、過失割合に納得がいかない場合に加害者側と交渉して過失割合を覆す、といったことが可能です。

あなたひとりでは適切な治療費を受け取るのが難しい状況でも、弁護士なら専門知識と経験を活かして力になれる可能性があります。

  交通事故の治療費について不安があり、弁護士の依頼を検討している方は、サリュにご相談ください。
私たちサリュは、交通事故の被害者専門の弁護士事務所です。
交通事故の解決実績は、業界トップクラスの 20,000件以上あります。
 
交通事故は、事故の状況や加害者側の対応がそれぞれまったく異なるため、経験や弁護士の知識が重要です。
サリュは被害者専門の弁護士事務所のため、被害者の苦しみや悔しさを理解できる弁護士しかいません。
加害者側の保険会社との交渉や手続きのサポートなどで、あなたが不利にならないよう全力を尽くします。
示談成立前ならいつでもご相談可能です。
今感じている不安を、ぜひお聞かせください。  

電話で無料相談する方は、下記をクリックしてください。
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7. 交通事故の治療費に関する質問

最後に、治療費に関するよくある質問と回答です。

【Q1】加害者が任意保険に入っていない場合は治療費を請求できないですか?
【Q2】治療費の支払いが途中で打ち切られることもありますか?

7-1. 【Q1】加害者が任意保険に入っていない場合は治療費を請求できないですか?

A.加害者が任意保険に入っていなくても、治療費を請求することは可能です。

以下の方法なら、治療費を請求して受け取れます。

・加害者の自賠責保険に直接請求する

・被害者自身の任意保険を利用する

・労災保険を利用する(通勤中や仕事中の事故の場合)

また、加害者に直接請求する場合、加害者が任意で払ってくれなければ、訴訟を起こして治療費を請求することになります。

そのため、加害者が任意保険に入っておらず、治療費について悩んでいる方も、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

7-2. 【Q2】治療費の支払いが途中で打ち切られることもありますか?

A.治療費の支払いが途中で打ち切られることもあります

加害者側の保険会社は、少しでも支払う金額を抑えたいと考えているからです。

あなたが治療を続けているにもかかわらず、一方的に打ち切ってくるケースもあります。

しかし、治療が必要な状態なら、治療費を打ち切られても治療をやめる必要はありません。

治療費を立て替える等して通院を続け、その後の方策を考えましょう。

8. まとめ

この記事では、交通事故の治療費について解説しました。

交通事故の治療費は、原則加害者側の負担となります

【加害者側にあなたの治療費を払ってもらう方法】

1.加害者の保険会社に病院に直接払ってもらう(一括対応)
2.立て替えた治療費を損害賠償金として請求する

【立て替えた治療費を少しでも早く受け取る方法】

・加害者の自賠責保険に被害者請求する
・被害者の任意保険を利用する

【自分の力では適切な治療費を受け取るのが難しいケース】

・自分にも過失がある場合

加害者の任意保険会社が一括対応してくれれば、一括対応終了まではあなたが直接病院に治療費を払う必要はなくなります。

しかし、一括対応を拒否されたり、自分にも過失があって適切な治療費を受け取れない可能性があったり、状況はさまざまでしょう。

かかった治療費をしっかり請求して受け取るには、弁護士の力が必要です。

少しでも不安があるなら、交通事故のプロであるサリュの弁護士に相談してください。