交通事故で「弁護士特約が使えない」本当は使えるケースと対処法紹介
「弁護士特約を使いたいけど、自分のケースでは使えないんじゃないかと心配」
「保険会社に弁護士特約は使えないと言われたけど、本当に使えないの?」
そんな疑問を抱えていませんか?
交通事故に遭ったときに弁護士特約を使えるかどうかは、保険約款の内容で変わってきます。
主に、下記のようなケースでは使えないことが多いです。
また、事故が起こった後で弁護士特約に加入した場合も、使用はできません。
しかし、一見弁護士特約が使えないと思われているケースの中でも、実は使用できることもあります。
下記のようなケースでは、基本的には弁護士特約が使えます。
・過失割合が10:0のもらい事故の場合 ・加害者と被害者の加入している保険会社が同じ場合 ・保険会社に「軽傷だから使わないほうがいいですよ」などと言われた場合 |
このように、ケースによって本当に弁護士特約が使えない場合と、使えないと言われても実は使用できる場合があります。
保険会社などに「使えない」と言われてもそのまま信じず、自分の場合は本当に使えないのかどうかをまずは調べましょう。
そこで、この記事では、弁護士特約が使えないケースと、実は使えるケースについての詳細な解説と、「弁護士特約を使えない」と言われた場合の対処法をお伝えします。
この記事でわかること |
・弁護士特約が本当に使えないケースが具体的にわかる ・「弁護士特約を使えない」と思っても実は使えるケースがわかる ・弁護士特約を使えないと言われた時の対処法がわかる ・弁護士特約が使えなくても弁護士に依頼したほうがいいケースがわかる |
これらの内容を参考にして、弁護士に依頼するべきかどうかを精査してください。
この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢
弁護士法人サリュ
大阪弁護士会
交通事故解決件数 900件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年 弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得
目次
1.交通事故で弁護士特約が使えないケース6つ
まずは、どんなケースで弁護士特約が使えないのかを解説します。
実際に使えるかどうかは契約内容や保険会社によっても異なりますが、下記のようなケースでは使用できないと決められていることが多数です。
・自分に大きな過失がある事故の場合 ・自動車・バイクが関わらない事故の場合 ・事業用の自動車など、弁護士特約を使えない車両による事故の場合 ・親や配偶者など、近しい親族が相手の事故の場合 ・自然災害などによる事故の場合 ・事故の後で弁護士特約に加入した場合 |
弁護士特約が使えないケースを判断するポイントは主に2つです。
弁護士特約が使えるか見分けるポイント | |
加入している保険の契約内容 | 弁護士特約が使えないケースが書かれている |
弁護士特約に加入したタイミング | 事故よりも前に加入していないと使用できない |
これらの基準をもとに、自分のケースでは本当に使えないのかどうか、確認してみてください。
1-1.自分に大きな過失がある事故の場合
自分に大きな過失がある事故では、弁護士特約は使えないケースが多いです。
特に、下記のような重大な過失や、故意によって引き起こした事故では基本的に弁護士特約は使えない契約になっています。
・「運転中のスマホの操作」「大幅な制限速度オーバー」などの過失が大きい事故 ・無免許運転 ・飲酒運転 ・薬物を摂取した状態での運転 |
こういったケースでは、弁護士特約は使えません。
1-2.自動車・バイクが関わらない事故の場合
自転車対人の事故や、自転車対自転車などの、自動車やバイクが関わらない事故では弁護士特約は使えません。
なぜなら、弁護士特約は、基本的に車両やバイクとの交通事故で損害が生じたときに利用できるものだからです。
ただし、加入している弁護士特約が日常生活事故型と呼ばれる、利用範囲が広いものの場合は、自転車事故などもカバーの対象となります。
自分が加入している保険の弁護士特約の内容をご確認ください。
1-3.事業用の自動車など、弁護士特約を使えない車両による事故の場合
事業用の自動車を業務で運転していた時など、保険会社の契約で弁護士特約を使えない車両による事故が起こったときにも弁護士特約は使えません。
業務用の車両が仕事中に事故を起こした場合、自動車保険ではなく、労災保険で解決すべきと考えられているからです。
事故を起こした車両や、タイミングによっても使えないということに注意しましょう。
1-4.親や配偶者など、近しい親族が相手の事故の場合
親や配偶者など、親族が相手の事故の場合にも弁護士特約は使えません。
なぜなら、家族間で起こった事故については、家庭内の問題として処理されるため、対人賠償保険の対象にならないからです。
以下のような関係性の場合、基本的には弁護士特約は使えません。
・被保険者の配偶者 ・被保険者の父母 ・被保険者の子供 ・被保険者またはその配偶者の同居の親族 ・被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子 |
例えば、
「子供が駐車のため、駐車区画に進入したところ、その区画内に立っていた父に気づかず 、ぶつかってしまった」
などのケースでは、自動車保険、弁護士特約ともに利用できないので気をつけてください。
1-5.自然災害などによる事故の場合
一般的に、自然災害などによる事故も弁護士特約の対象外となります。
下記のような天変地異で起こった事故については、基本的に弁護士特約は使えません。
・地震 ・台風 ・噴火 ・洪水 ・津波 |
また、戦争や暴動などで起こった事故も基本的には補償の対象外です。
1-6.事故の後で弁護士特約に加入した場合
事故の後で弁護士特約に加入した場合、特約を使うことはできません。
弁護士特約は、加入後に起こった事故が対象となるものです。
そのため、事故が起きた後に急いで弁護士特約をつけても、利用の対象外となります。
2.「使えない」と言われても諦めないで!本当は弁護士特約が使えるケース3つ
ここまでで、弁護士特約が使えないケースを紹介しました。
しかし、それに当てはまらないにも関わらず、保険会社などから「弁護士特約は使えません」と言われてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、
「自分のケースでは弁護士特約は使えない」
と思い込んでしまっている方もいらっしゃいます。
ここではそんな方々に向けて、使えないと思っても本当は使えるケースを3つ紹介します。
「使えないかも」と諦めず、内容を確認してみてください。
2-1.過失割合が10:0のもらい事故の場合
過失割合が10:0のもらい事故の場合、弁護士特約は問題なく使えます。
過失が0の事故の場合、自分が加入する保険会社に介入してもらうことはできません。
そのことから、保険会社が提供する弁護士特約も使えないのでは?と誤解をされることがあります。
しかし、弁護士特約はもらい事故など、過失がない事故に向けて、保険会社の代わりに弁護士が交渉できるようにするために金銭的な補償をするものなのです。
「過失がない=保険会社のサービスは一切使えない」
と思い込まず、安心して弁護士特約を使ってください。
2-2.加害者と被害者の加入している保険会社が同じ場合
加害者と被害者の加入している保険会社が同じ場合、弁護士特約が使えないと思われることがありますが、そんなことはありません。
同じ保険会社に加入していても、問題なく特約が使えます。
むしろ、同じ保険会社内で解決しようとすると、保険会社が損をしないために、被害者への補償が少なくなるケースがあります。
被害者が泣き寝入りをしないためにも、このようなケースではなおさら、客観的な立場から支えてくれる弁護士への相談をお勧めします。
2-3.保険会社に「軽傷だから使わないほうがいいですよ」などと言われた場合
契約内容で明確に使えないわけではないのに、
「軽傷だから使わないほうがいいですよ」
「弁護士が介入すると長引いて大変になりますよ」
などと保険会社から言われることがあります。
保険会社からそう言われると、
「自分のケースでは弁護士特約は使えない・使わないほうがいいのか」
と思ってしまいますが、これらも多くの場合では問題なく弁護士特約を使えます。
保険会社は被保険者が弁護士特約を使うと、数十万~300万円程度の弁護士費用を負担することになります。
その経済的な損失を避けるために、被害者に向けて「使わないほうがいいですよ」と伝えることがあるのです。
実際にそう伝えられた時の対処法については、3.交通事故で保険会社に「弁護士特約は使えない」と言われたときの対処法で詳しくお伝えします。
3.交通事故で保険会社に「弁護士特約は使えない」と言われたときの対処法
この記事ではここまでで、弁護士特約が使えないケースと、本当は使えるケースを紹介してきました。
しかし、実際に保険会社から
「お客様の場合は使わないほうがいいですよ」
「このパターンでは弁護士特約は使えませんよ」
などと言われたとき、それが本当に使えないのか判断するのは難しいですよね。
ここからは、「弁護士特約が使えない」と言われた時に、本当に使えないのか確認するための方法を4ステップでお伝えします。
・【STEP1】保険の契約内容を確認する ・【STEP2】使えない理由と根拠を示してもらう ・【STEP3】他に加入している保険や家族が加入している保険の契約を確認する ・【STEP4】弁護士に相談する |
この手順に沿って、本当に自分が弁護士特約を使えないのかどうか、確認してください。
3-1.【STEP1】保険の契約内容を確認する
弁護士特約が使用できるか確かめるときに最初にすることは、保険の契約内容を確認することです。
まずは、自動車保険など、弁護士特約が付帯した保険の約款(保険の条件が記されたもの)を確認してください。
約款は、保険に加入した時に冊子や書類の形で交付されたり、保険会社のサイト上で閲覧できるようになっていたりします。
この約款の中で、弁護士特約が使えないケースに当てはまっていないかどうかをチェックしてください。
3-2.【STEP2】使えない理由と根拠を示してもらう
加入している保険の約款で問題がなかった場合、保険会社の担当者に、
「なぜ使えないのか、理由と根拠を教えてください」
と問い合わせてみてください。
2-3.保険会社に「軽傷だから使わないほうがいいですよ」などと言われた場合でもお伝えした通り、保険会社は極力弁護士特約を使わせたくないと考えている可能性があります。
また、担当者が利用範囲を誤解して、使えないと思い込んでいる場合もあります。
そのため、「なぜ使えないのか」という理由を明確に問い合わせることで、保険会社側が根拠なく利用を断ることができなくなります。
3-3.【STEP3】他に加入している保険や家族が加入している保険の契約を確認する
自分が加入している保険に問い合わせづらい、問い合わせても明確な答えがもらえなかったという場合には、他に加入している保険や、家族の保険を確認するのも一つの手です。
弁護士特約は加入者の家族も対象となっていることが多いので、もし家族が別の保険で加入していたら、そちらの特約を使うことができます。
意外なところでは、クレジットカードの付帯サービスに弁護士特約がついていることもあります。
自分や家族が加入している保険のサービスを見返して、適用できるものがないか確かめてみてください。
3-4.【STEP4】弁護士に相談する
「自分ではどうしてもわからない」
「保険会社とやりとりしても言いくるめられてしまう」
そんな方は、弁護士に相談しましょう。
「弁護士特約が使えるかわからないのに、弁護士に相談していいの?お金はかからない?」
そう心配になる方もいらっしゃるかと思いますが、相談だけであれば無料の弁護士事務所も多くあります。
それぞれの事故のケースに応じて、弁護士に依頼するべきかどうかや、弁護士特約が使えるかどうかなど、細かい相談にも乗ってもらえるので、悩んだらプロに相談してみましょう。
4.【過失がない・通院が必要な怪我をした】そんな時は弁護士特約が使えなくても弁護士に相談して
「弁護士特約が使えないなら、弁護士費用で損するから依頼しないほうがいい」
そう考えてしまう方もいますが、少し待ってください。
過失がない場合や、通院が必要な怪我をした場合などでは、弁護士特約がなくても費用倒れの心配なく弁護士に依頼できる可能性が高いです。
・もらい事故で過失がない、もしくは過失割合が低い ・継続的な通院や入院が必要な怪我をした ・後遺障害が残った |
上記のようなケースでは、弁護士に依頼することで示談金が増額する可能性が高いため、弁護士特約に加入していなくても弁護士に依頼したほうが受け取れる金額が大きくなることが多いです。
このような場合は、弁護士に依頼せずにいると不当に低い慰謝料や治療費で済まされてしまい、本来手にできるはずだった示談金が受け取れない場合があります。
弁護士特約が使えなくても安心!弁護士法人サリュへご相談ください |
私たちサリュは、交通事故の被害者弁護に特化した弁護士事務所です。 「交通事故の被害に遭った方に、これ以上苦しんでいただきたくない」 そんな思いで、これまで2万件以上の交通事故を解決して参りました。 サリュでは、被害者の方が金銭的な負担から弁護士への依頼をあきらめなくてもいいよう、弁護士特約に加入されていない方が安心して相談できるようサービスを整えております。 費用倒れが起きるリスクがないか、相談の段階でしっかりとご説明し、安心して依頼していただけるようにしています。 また、弁護士費用は完全後払いなので、「すぐにお金が準備できない…」という方にもご利用いただけます。 交通事故に遭って不安な気持ちや、怪我の治療や後遺障害に悩む気持ち。 すべて、サリュにご相談ください。 |
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5.まとめ
この記事では、交通事故で弁護士特約が使えないケース・使えるケースそれぞれについてや、使えないと言われた時の対処法を解説してきました。
内容のまとめは以下のとおりです。
◯交通事故で弁護士特約が使えないのは保険の約款で使用できないと定められているケースで、主に下記のようなケースが当てはまる。
・自分に大きな過失がある事故の場合 ・自動車・バイクが関わらない事故の場合 ・自然災害などによる事故の場合 ・事業用の自動車など、弁護士特約を使えない車両による事故の場合 ・親や配偶者など、近しい親族が相手の事故の場合 ・事故の後で弁護士特約に加入した場合 |
◯弁護士特約を使えないと思っても、下記のようなケースでは実は使用できる。
・過失割合が10:0のもらい事故の場合 ・加害者と被害者の加入している保険会社が同じ場合 ・契約上での縛りがないにも関わらず、保険会社に「軽傷だから使わないほうがいいですよ」などと言われた場合 |
◯「弁護士特約を使えない」と言われたら、下記のステップで対処する。
・【STEP1】保険の契約内容を確認する ・【STEP2】使えない理由と根拠を示してもらう ・【STEP3】他に加入している保険や家族が加入している保険の契約を確認する ・【STEP4】弁護士に相談する |
◯「過失がない」「通院が必要な怪我をした」という場合は、弁護士特約が使えなくても弁護士に相談・依頼したほうがいい。 以上の内容を、交通事故で弁護士特約が使えないと思ったときの参考にしてください。