後遺障害の異議申し立てのすべて|認定を覆すための全プロセス解説

「障害の自覚症状はあるのに、後遺障害が認められなかった」

「後遺障害が認定されず非該当になってしまった」

「思っていたよりも低い等級と認定されてしまった」

このようなケースで悩んでいる交通事故被害者は多くいらっしゃることでしょう。

後遺障害の認定を受けられなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益が認められず、損害賠償金の金額が低くなってしまう可能性が高くなります。そのため、「何としても後遺障害の認定を勝ち取りたい」「より高い等級の認定がほしい」という方がほとんどでしょう。

「後遺障害の異議申し立て」とは、後遺障害の認定結果に納得していない場合に、再審査を依頼することをいいます。

しかしながら、この「異議申し立て」の成功率は13%と低いので準備が非常に大切となります。

そこでこの記事では、「後遺障害の異議申し立てとは何か?」という基本的な情報から、異議申し立て方法、異議申し立てを成功させるポイントまで詳しく解説していきます。

後遺障害の異議申し立てを成功させ、希望通りの障害認定を獲得したい方は、ぜひこの記事を味方にして最後までお読みください。

この記事の監修者
弁護士 馬屋原 達矢

弁護士法人サリュ
山口県弁護士会

【略歴】
2005年 4月 早稲田大学法学部 入学
2008年 3月 早稲田大学法学部 卒業(3年卒業)
2010年 3月 早稲田大学院法務研究科 修了(既習コース)
2011年  弁護士登録 弁護士法人サリュ入所
【著書・論文】
交通事故案件対応のベストプラクティス(共著:中央経済社・2020)等
【獲得した画期的判決】
【2015年10月 自保ジャーナル1961号69頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の足首の機能障害等について7級という等級を判決で獲得
【2016年1月 自保ジャーナル1970号77頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責非該当の腰椎の機能障害について8級相当という等級を判決で獲得
【2017年8月 自保ジャーナル1995号87頁に掲載】(交通事故事件)
自賠責14級の仙骨部痛などの後遺障害について、18年間の労働能力喪失期間を判決で獲得
【2021年2月 自保ジャーナル2079号72頁に掲載】(交通事故事件)
歩道上での自転車同士の接触事故について相手方である加害者の過失割合を7割とする判決を獲得

1. 後遺障害の異議申し立てとは

まずは「後遺障害の異議申し立て」とは何か、正確にどういうものか理解していきましょう。

後遺障害の異議申し立てとは、保険会社の「後遺障害等級認定」の結果に納得がいかない場合に、再審査を求める手続きのことをいいます。

具体的には、以下のような2つのケースが、異議申し立てを行う具体的な場面となります。

①後遺障害に該当するはずなのに、該当しない(非該当)と判断されてしまった場合
 例:しびれや痛みなどが残っているのに、第14級の認定も出なかった

②期待していた等級の認定が出なかった場合
 例:第12級の障害を自覚しているのに、第14級と認定されてしまった

期待している後遺障害等級が出なければ、加害者や保険会社に請求できる損害金が少なくなったり、障害者手帳や年金などの支給がもらえなかったりと、さまざまな弊害が出てしまいます。

なぜ認定されなかったかを冷静に分析して、認定される余地がありそうならば異議申し立てをすることをおすすめします。

ただし、納得できないからという理由だけで、やみくもに異議申し立てをおこなっても、結果を覆せないことがほとんどです。後遺障害等級認定は、申請者が提出した書類をもとに客観的に判断されるものであるため、同じ書類を提出しても結果は変わらない可能性が高いからです。

実際に、後遺障害の異議申し立ての成功率は13%程度とかなり低めの数字になっています。

損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2022年度版)」によると、2021年度の後遺障害の専門部会において、審査件数11,604件のうち等級変更があったのが1,509件でした。

後遺障害の異議申し立てを成功させるには、前回の後遺障害認定結果を覆すような客観的な証拠が必要になります。

2. 後遺障害の異議申し立てが成功しやすい5つのケース

後遺障害の異議申し立てが成功する(等級が変更される)確率は13%程度であり、一度下された後遺障害認定を覆すのは簡単なことではありません。

そこで、後遺障害の異議申し立てが成功しやすいケースがどのような場合か、詳しく解説していきます。

後遺障害の異議申し立てが通るのは、受け取った認定結果をくつがえす材料がある場合となります。

例えば、以下のように、前回は提出できていなかった書類を提出できる場合は、異議申し立てが通る可能性が高まります。

・交通事故との因果関係を明らかにする客観的な証拠を出せる
・認定に必要な追加検査を行って提出できる
・前回は提出していなかった新たな医証(診断書・意見書など)を提出できる 

逆に、やみくもに「納得いかないから」と、前回と同じ内容で異議申し立てを行っても、結果が変わることはありません。

後遺障害認定は「書面審査」が基本となるため、後遺障害診断書や画像診断の結果、カルテ、医師の意見書など、申請者が提出した書面をもとに、その症状がどの等級に該当するか判断されます。

そのため、いくら自覚症状があっても、その症状が書面から伝わらなければ、後遺障害として認定してもらうことはできないのです。

また、交通事故との因果関係が認められない場合には、新たに交通事故との因果関係を明らかにできる証拠を提出するのが有効です。

上記のような追加の証拠を提出できる場合には異議申し立てが成功する可能性があるでしょう。

後遺障害の内容によっては、MRI・CTなどの検査資料によって病態を明らかにしない限り、後遺障害として認定されないものもあります。

このようなケースに該当する場合には、必要な追加検査を行って証拠として提出することで、異議申し立てが成功する可能性があります。

※ただし、交通事故から時間が経てば経つほど、交通事故との因果関係が疑われてしまうため、追加検査は迅速に行う必要があります。

後遺障害認定に協力的な医師の力を借りられる場合にも、後遺障害の異議申し立ての成功率を上げることができるでしょう。

後遺障害認定には医師の証明書がとても重要ですが、協力的ではない医師やMRIやCT撮影を扱っていない医師に書いてもらった場合、記載内容の不備が起こりやすくなります。認定に必要な要件を熟知していないために、必要な情報が書かれていなかったり、必要な検査を受けなかったりするからです。

そのような医師に書いてもらった診断書では、初回の後遺障害認定が下りないのも必然です。

一方で、後遺障害の認定要件を熟知している医師の協力を得られれば、異議申し立てが成功する確率は高まります。

自分だけで異議申し立てを進めるのではなく、後遺障害認定の異議申し立てに強い弁護士に依頼することで、異議申し立ての成功率を上げることができるでしょう。

なぜならば、後遺障害認定に強い弁護士は、「思うような認定結果を得られなかった理由は何か」「医師にどのように書いてもらう必要があるのか」「認定に必要な検査はどれか」を熟知しているからです。

場合によっては、弁護士から協力医を紹介してもらい、認定要件を満たした後遺障害診断書を作成することも可能です。

知識や実績が豊富な弁護士に依頼することで、異議申し立てに通りやすいポイントを押さえて、手続きを進めることができます。

3. 後遺障害の異議申し立ての流れ6ステップ

ここからは早速、保険会社から通知された「後遺障害等級認定」の内容について異議申し立てをする方法について、6ステップで解説していきます。

後遺障害の異議申し立てをする場合には、まずは前回の後遺障害認定の結果を確認します。

▼第14級9号が認定された例

その時に、前回は後遺障害等級認定を「事前認定」と「被害者請求」のどちらかで受けたかも確認してください。

【事前認定と被害者請求の違い】


事前認定(加害者請求)

加害者側の任意保険会社に後遺障害診断書を提出し、加害者側の任意保険会社がその他の書類を準備してくれる方法

被害者請求

被害者が診断書や他の書類も用意して、加害者側の自賠責保険会社に直接、後遺障害等級認定の申請をする方法

加害者側の保険会社に一任した場合は「事前認定」、自分で書類を用意して申請した場合は「被害者請求」で後遺障害申請を受けていたと判断できるでしょう。

次に、異議申し立てをどちらの方法で行うかを決めます。

【異議申し立ての方法の選択肢】


初回の申請 異議申し立て方法
「事前認定」で受けていた場合 「事前認定」または「被害者請求」で異議申し立て
「被害者請求」で受けていた場合 「被害者請求」で異議申し立て

 

初回の後遺障害事前認定を「事前認定」で受けていた場合には、「事前認定」での異議申し立てもできますし、「被害者請求」に切り替えて異議申し立てすることも可能です。

一方で、初回の申請で「被害者請求」を選んでいた場合は、異議申し立ても被害者請求で行う必要があります。

どちらの方法で申し立てするか迷う場合には、両者の違いについて以下にまとめたのでぜひ参考にしてください。

【事前認定と被害者請求の異議申し立ての比較表】

 

事前認定による
異議申し立て

被害者請求による
異議申したて

異議申し立てできる人

初回に事前認定で申請した人

初回に事前認定で申請した人
初回に被害者請求で申請した人

申請先

任意保険会社

自賠責保険会社

メリット

被害者の手続き的な負担が少ない

等級認定された場合、結果受領と同時に、等級に応じた保険金を受け取れる

「事前認定」の方が手間は少ないメリットがありますが、「被害者請求」の方が被害者側で重要書類を準備できるなどコントロールできる利点があります。当法人で後遺障害のの異議申し立てを行う場合には、「被害者請求」で行うこととしています。

異議申し立てに必要な客観的な証拠となる追加書類を用意します。前述した通り、新たな証拠となる追加書類がなければ、異議申し立てをしたところで結果が変わる可能性はほとんどありません。

前回の認定結果が書かれた通知書を見て、何が足りていなかったのかを分析し、必要となる追加書類を見極めて準備することをおすすめします。

例:検査所見が足りないために後遺障害が認められなかった→検査結果を追加書類として提出するなど

詳しくは「6. 後遺障害認定の異議申し立てを成功させるポイント」もご覧ください。

追加書類を用意できたら、異議申立書を作成して手続きを進めていきます。

事前認定の場合は、異議申立書だけを作成して相手方の保険会社に送付します。被害者請求の場合には、異議申立書とその他書類を用意して、自賠責保険会社に直接送付します。

なお、前述した通り、異議申し立てが認められるためには、初回の申請で不足していた新たな情報や証拠などが必要となります。しっかりと準備をしてから異議申し立てを行うようにしましょう。

※異議申し立ては何度でも行えますが、結果が届くまでには時間がかかりますので、準備を整えてから手続きを進めるのがおすすめです。

3-3で送付した異議申し立てに対して、損害保険料率算出機構の中にある「自賠責保険調査事務所」という場所で再審査が行われます。事前認定の場合も被害者請求の場合も、再審査は同じ機関(自賠責保険調査事務所)にて行われることになります。

異議申し立てが合った場合には、通常の後遺障害等級認定よりも慎重かつ客観的な判断を行うために、外部の専門家(弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者など)が審議に参加して審査が行われます。

異議申し立てを申請してから再審査が終わるまでの期間は、だいたい2~4カ月程度を見ておきましょう。事案によっては半年以上になるケースもあります。

再審査が終わると、異議申し立ての結果が通知されます。

被害者請求で異議申し立てをして等級認定された場合には、自賠責分の後遺障害慰謝料・逸失利益が結果通知と同じ時期に振り込まれます。

自賠責基準の後遺障害の等級に応じた慰謝料については、以下の記事もぜひ参考にしてください。

後遺障害慰謝料【交通事故】等級相場・計算方法・もらい方を解説

4. 後遺障害の異議申し立てに必要な書類

後遺障害の異議申し立てに必要な書類は、必ず提出が必要な「異議申立書」と、任意で提出する「新しい情報が書かれた書類」の2点です。

異議申立書は、事前認定の場合も被害者請求の場合も、必ず提出すべき書類です。

事前認定の場合には、初回の後遺障害等級認定の結果通知とともに異議申立書の書式が送られてくるので、それを利用して作成しましょう。

被害者請求の場合には、異議申立書の決まった書式がないため、次の5章を参考に作成してください。

新しい情報が書かれた書類は、提出は任意ですが、初回の後遺障害等級認定の内容を覆すためにとても重要な書類となります。

異議申し立てで任意提出する新書類の例
・新たな後遺障害診断書
・医師の意見書(医師に作成を依頼)
・カルテ・CTやMRIなどの検査画像や所見(病院から入手)
・神経学的検査などの新たに受けた検査の結果(病院から入手)
・実況見分調書、事故車両や事故現場の写真など、事故の状況を示す資料
・日常生活状況の報告書(家族に記載してもらう)
・被害者本人の陳述書(日常生活で困っている内容などを本人が記載)

初回の後遺障害等級認定を覆して等級を認定してもらうためには、医学的資料の追加提出が効果的です。

詳しいポイントについて、このあと詳しく解説していきます。

5. 異議申立書の書き方

ここからは、後遺障害等級認定に対する異議申立書の書き方について解説していきます。

4章で解説した通り、被害者請求で異議申し立てをする場合には、異議申立書の決まった書式がないため、自分で用意する必要があります。

ここでは、当事務所が異議申し立てをする際に使っているフォーマットを基に、異議申立書に記載すべき内容を解説していきます。

文書のタイトルです。この例では、自動車損害賠償責任保険に対する異議申立書なので、「自動車損害賠償責任保険 後遺障害等級認定に対する異議申立書」としています。

記載例
自動車損害賠償責任保険
後遺障害等級認定に対する異議申立書

異議申立書を作成した年月日を記載します。

記載例
令和6年2月14日

被害者請求の異議申し立ての場合は「自賠責保険会社の名称」を書きます。事前認定の場合は、任意保険会社の名称となります。

記載例
〇〇保険株式会社 御中

申立人の住所・氏名・連絡先を記載します。代理人が申立書を作る場合には、代理人の住所・氏名・連絡先を記載します。

記載例
〒000-000 東京都新宿区X-XX-XX  新宿 太郎 電話番号03-XXXX-XXXX

どの事故についての異議申し立てか特定できるよう、事故の被害者・事故年月日・ 自賠責保険の証明書番号を記載します。

記載例
過日、通知のあった下記交通事故の被害者にかかる後遺障害の等級認定について、次のとおり異議申立てを行う。

被害者   新宿 太郎
事故年月日 令和5年10月11日
証明書番号 XXXXXXXX

事故年月日や証明書番号は、交通事故証明書に記載があるので、それを転記しましょう。

なぜ異議申し立てをするに至ったのかを簡潔に述べます。どの通知に対して異議を唱えるのか、通知書に書かれた年月日を記載した上で、申し立てに至った経緯を書きましょう。

記載例
第1 異議申し立ての主旨
令和6年1月5日付「自動車損害賠償責任保険お支払不能のご通知」において、において、上記被害者の「頚椎捻挫後の頚部痛、頭部痛」「腰椎捻挫での腰部痛」といった神経症状(以下、これらをまとめて「本件症状」という。)は非該当との認定結果であったが、被害者に残存する本件症状は自賠法施行令別表第二14級9号に該当すると考える。

自賠責保険の認定基準や認定要件を踏まえた上で、前回の認定理由に対して新たな添付資料の内容をもとに異議申立ての理由を組み立てて説明します。

記載例
第2 異議申立の理由

1 本件事故により被害者に加わった衝撃が大きいこと
本件事故態様は、被害車両が交差点に青信号で直進進入した際に、対向車線で右折待ちをしていた加害車両が直近右折を行い、被害車両の前面部に衝突したというものである。本件事故による衝撃の大きさは被害車両の損傷状況からも裏付けられる。被害車両の前面部は大きく破損しており(別添資料1 事故車両写真)、その修理内容は左Fr サイドメンバー(フレーム)および右Frサイドメンバー(フレーム)という車体の骨格部の修理を含むものであり、その修理金額は●●万●●●●円と高額である(別添資料2 見積書・・・・・・・)。

以上のように、本件事故態様及び被害車両の損傷状況からすれば、本件事故により被害者の頚部及び腰部に相当強度な衝撃が加わったことが明らかであり、本件症状の残存が裏付けられる。

2 治療経過から症状の一貫性が認められること
被害者は、本件事故直後から症状固定時に至るまでの●カ月間で、●●総合病院、●●医院に合計●●日通院し、その間、一貫して、本件症状を訴え、リハビリ等の治療をしてきたものの、本件症状は改善されなかった。
・・・・・・・
以上にように、症状の一貫性が認められる。

3 画像上の所見が認められること被害者については、MRI画像上、C3/4/5間に変性進行が認められ、L4/5間に左後方突出が認められる。これらは、本件事故後の本件症状の発生と、慢性化の原因になっている。

4 ・・・・・・

5 ・・・・・・

結論として、どのような後遺障害認定等級がふさわしいのかをまとめて記載します。

記載例
第3 結論
以上の通り、本件事故の衝撃の大きさ、治療状況、画像上の所見に鑑みれば、神経系統の障害を他覚的に証明するとまではいかないにしても、障害を合理的に説明することは十分可能である。したがって、被害者に残存している本件症状は、自動車損害賠償保障法別表第二14級9号に該当する。

以上

6. 後遺障害の異議申し立てを成功させるポイント

ここからは、後遺障害の認定における異議申し立てを成功させるポイントについて、具体的に解説していきます。

前述した通り、後遺障害についての異議申し立てを行った場合の成功率(等級変更を成功させた割合)は、わずか13%程度に留まっています。

「やみくもに異議申し立てを行っても成功しない」という前提で、しっかりと対策する必要があります。

異議申し立てを成功させるためには、後遺障害認定の結果が通知されている書面を精査し、希望の結果が得られなかった理由をしっかりと分析することが何よりも大切です。

後遺障害の認定結果を通知する書面を用意して、内容を確認してみてください。

①非該当の場合:認められなかった理由が記載されている
②後遺障害等級に認定された場合:その等級に認定した理由が記載されている

内容に不備があったのか、必要な検査が不足していたのか、必要な添付資料が足りなかったのか、認定されなかった理由を分析してみましょう。

理由を分析できたら、「どのような添付資料を用意すれば認定に有利かどうか」を考えます。

例えば、後遺障害に非該当する理由として「画像から異常所見が認められないため」と書かれていたら、所見が認められるような画像を新たに提出することで、後遺障害を認定してもらえる可能性があるでしょう。

また例えば、「症状を裏付ける所見に乏しい」という理由が書かれているならば、その症状を裏付ける医師の意見書や診断書、検査結果や画像、日常生活の報告書を用意するなどが考えられます。

できれば、本人や家族が用意する報告書だけではなく、医師や医療機関による客観的な資料を用意するのが効果的です。

もし、この分析する工程が難しいという場合には、後遺障害の異議申し立てに強い弁護士に相談するのがおすすめです。

ここまでで分析した内容に従って、それらを立証するための追加書類を用意しましょう。

以下に、希望の障害認定が出ないケースとしてよくある理由と、異議申し立てで提出すると効果的な追加書類の例を紹介します。

【異議申し立てで提出すると効果的な追加書類】


認定されなかった理由 異議申し立てで用意すべき追加書類の例
画像所見が認められなかった ・異常箇所が分かりやすい診断画像
・より精度の高いMRI、CT画像
・異常箇所に印をつけて分かりやすくした画像
症状を裏付ける所見に乏しい ・症状を客観的に診断した医師の意見書・診断書・カルテ
・異常が分かる診断画像・所見(MRI・CT・レントゲンなど)
・追加の検査結果(神経学的検査、電気生理学的検査など)
交通事故と残った症状との因果関係が明らかではない ・事故の大きさや損害がわかる実況見分調書や供述調書
・交通事故との因果関係について記載した医師による意見書
日常生活や仕事への影響が大きくない ・生活や仕事への重大な影響について記載した後遺障害診断書
・家族による日常生活報告書

また、判定に必要な情報が記されていない場合も、適切な後遺障害認定が下りないケースがあります。

例1:醜状跡があるのに、醜状の欄に記載がない場合
例2:可動域制限があるのに、可動域の記載がない場合
特に、自賠責保険の可動域制限等の機能障害の認定は、原則として自動値ではなく他動値を考慮して等級該当性を判断します。自動値のみの記載だと、認定されない場合があります。
例3:聴力障害があるのに、聴力測定の結果が記載されていない場合

こうした不備がなかったかどうか、どうすれば異議申し立てが通る可能性があがりそうかを考えて、追加書類を用意しましょう。

自分では難しいという場合には、後遺障害の異議申し立てに強い弁護士に依頼するのがおすすめです。

7. 後遺障害の異議申し立てが成功した事例

後遺障害の異議を申し立てて等級が変更されるのは「わずか13%」と、決して高くない数字です。そんな中、異議申し立てで等級変更を成功させた事例を3つ紹介します。

成功事例の中から、自分のケースに活かせるポイントを見つけてぜひ参考にしてみてください。

ロードバイクで道路左端の路肩を直進していたDさんは、右後方から自動車の左ミラーが背中に当たって転倒をし、右肘骨折の怪我を負ってしまいました。事故後約7カ月にわたって継続的に治療を受けたものの、右肘に痛みが残った状態で症状固定となりました。しかし相手方任意保険会社による事前認定の手続きでは非該当と判断されてしまいました。賠償額は140万円の提示がありました。

Dさんの相談を受け、サリュではまずは顧問医検討を行い、右肘部のMRI画像を確認しました。すると、右肘関節部に不正癒合があり、Dさんの症状を裏付ける所見であるとわかりました。後遺障害診断書に限定的に記載されてしまった自覚症状についても、Dさんの生活や仕事での支障を文書で記載していただき、異議申立の添付資料として提出をしました。

医学的所見の確認、事故の大きさ、Dさんが感じている痛み等、ひとつずつ主張し、異議申立を行った結果、非該当から結果を覆すことができ、右肘部の痛みに対して、12級13号の後遺障害が認定されました。最終的な賠償額も、事前提示の140万円から、自賠責保険金を合わせて約1500万円と増額することができました。

事例366:後遺障害診断書の不利な記載でも諦めず、異議申立。賠償額約140万円の提示から、後遺障害12級認定、賠償額約1500万円を獲得した事例。

自動車を運転中、赤信号待ちのため停車していたところ加害車両に追突され、頚椎捻挫の怪我を負ったSさん。約6カ月間通院治療を行ったものの首の痛みなどの症状が残存したため、自賠責保険に後遺障害申請手続きを行いましたが、結果は「非該当」でした。

サリュは、物損資料などから事故によりSさんの頚部に加わった外力が相当強いことを明らかにしつつ、経過診断書等から症状の一貫性や治療内容等を確認・分析するとともに、顧問医(整形外科医)にMRI画像などを入念に精査してもらい症状の残存を裏付ける医学的所見を得た上で、異議申立書を作成。その結果、頚部の神経症状で14級9号の後遺障害が認定されました。

通院慰謝料や後遺障害慰謝料なども裁判所基準相当額の金額を獲得し、無事に示談で事件を終えることができました。

事例369:後遺障害非該当から14級9号を獲得。賠償金も裁判所基準相当額回収に成功

自動車を運転していたBさんは、信号機の矢印信号に従い右折しようとしたところ、赤信号を無視して進入してきた対向直進車に衝突され、首や左肩の打撲・捻挫の怪我をしました。事故後半年にわたって継続的に治療を受けたものの、首の痛みや肩の痛みが残ったまま症状固定となってしまいました。

後遺障害について相手方任意保険会社による事前認定の手続きが行われましたが、症状を裏付ける所見に乏しいことなどから「非該当」と判断されました。また賠償額も約35万円と低い金額の提示でした。

Bさんの相談を受け、サリュではまずは顧問医の検討を行い、左肩部のMRI画像を確認しました。すると、左肩関節部の筋肉の腱に断裂像が確認でき、Bさんに残る症状と一致する所見と分かりました。事故が物件事故の扱いであったため事故状況がわかる記録が入手できませんでしたが、事故の大きさを主張するべく、車の修理内容にも着目し、異議申立を行いました。

その結果、非該当から結果を覆すことができ、首と左肩に14級9号の後遺障害が認定されました。賠償金も約200万円を獲得することができました。

事例359:事前提示非該当、賠償額約35万円の提示。物件事故でも諦めずに、異議申立をし、後遺障害14級認定と賠償額約200万円を獲得した事例

後遺障害認定についての異議申し立ての事例について、さらに多くの事例を見たい方は、解決事例をご覧ください。

8. 異議申し立てを成功させるには弁護士・医師の協力が不可欠

ここまで解説した通り、後遺障害の異議申し立てを成功させるためには、以下の2つのポイントがとても重要となります。

①なぜ認められなかったのかの理由を的確に分析すること
②認めてもらうために必要な新証拠を用意できるかどうか

このポイントを押さえて異議申し立ての勝率を上げるためには、医師と提携するなどして医療知識を集約している弁護士の協力が欠かせません。

後遺障害の認定は1件1件、そのケースごとに判断されるものなので、「どうすれば希望通りの認定結果を得やすくなるか」を的確にアドバイスするのは容易なものではありません。

しかしながら後遺障害認定の申請や異議申し立ての実績が十分にある弁護士ならば、「このケースならばこういう資料で補えそうだ」「あの検査を追加で行うのが良さそう」など有利になりそうなポイントを見つけることができます。

また、後遺障害診断書は、医師なら誰でも書けるものではありません。後遺障害の審査に乗り気ではない医師に記入を丸投げしてしまうと、障害認定に必要な情報が伝わりにくい診断書になってしまうケースもあるのです。

医師に悪気がなくとも、自賠責が重視している検査が抜けているなどの不足があれば、認定を逃してしまうことがあります。そのため、医師が後遺障害診断書を適切に記入できるよう、後遺障害の証明の観点から医師に診断書の作成の依頼ができる弁護士の協力が重要です。

できれば、当事務所(弁護士法人サリュ)のように、提携している顧問医師と連携を取りながら、異議申し立て人の希望に最大限寄り添ってくれる弁護士を探すのがおすすめです。

また、サリュの顧問ドクターによるサポートのページもぜひ参考にしてください。

まとめ

本記事では「後遺障害認定の異議申し立て」について解説してきました。最後に、要点を簡単にまとめておきます。

後遺障害の異議申し立てとは

・後遺障害等級認定の再審査をしてもらう手続きのこと
・成功率は13%程度とかなり低め

後遺障害の異議申し立てが成功しやすい5つのケース

①認定結果をくつがえす材料がある場合
②新しい証拠を追加で提出できる場合
③必要な追加検査を行って提出できる場合
④後遺障害認定に協力的な医師の力を借りられる場合
⑤後遺障害に詳しい弁護士に依頼する場合

後遺障害の異議申し立ての流れ6ステップ

STEP1:前回の後遺障害認定の結果を確認する
STEP2:事前認定・被害者請求どちらの方法で異議申し立てするか決める
STEP3:必要な追加書類を用意する
STEP4:異議申立書を作成して送付する
STEP5:再審査が行われる
STEP6:異議申し立ての結果が通知される

後遺障害の異議申し立てを成功させるポイント

認定結果通知書の「認定されなかった理由」を精査する
新たにどのような資料があれば認定に有利か見極める
異議申し立てで提出する追加書類を用意する

後遺障害の異議申し立ては何回でもやり直しはできますが、時間が経つほどに事故との因果関係を疑われてしまう可能性も高くなってしまいます。

異議申し立てを決意したら、スピーディーに、そしてできるだけ成功率を上げるために、交通事故に強い弁護士や医師の協力を仰ぐことをおすすめします。