股関節骨折による後遺症|受け取れる賠償金や後遺障害等級の重要性
「交通事故で股関節骨折をして、後遺症が残る可能性が高いと言われた」
「股関節骨折で後遺症が残ったら働けないかも……お金を受け取れるのかもわからず不安で仕方ない」
股関節骨折は、以前のように歩けなくなる、重いものが持てなくなるなど、後遺症が残りやすい大怪我です。
後遺症が残る可能性が高いと言われ、これからの生活が不安になるのは当然のことでしょう。
ただ、交通事故で股関節骨折を負い後遺症が残ってしまった場合は、高額な賠償金を受け取れる可能性があります。
治療にかかったお金や仕事を休んだお金はもちろん、後遺症に対する慰謝料や将来得られたはずの収入なども、加害者側に請求できるのです。
股関節骨折による後遺症が残ると受け取れる賠償金項目 | |
治療費 | 診察代、薬代、手術代などの費用 |
入通院慰謝料 | 股関節骨折の治療により入通院した精神的苦痛に対する慰謝料 |
休業損害 | 事故による股関節骨折が原因で仕事を休んだ分の費用 |
後遺障害慰謝料 | 後遺症が残った精神的苦痛に対する慰謝料 |
後遺障害逸失利益 | 後遺症がなければ本来受け取れていた利益(収入) |
股関節骨折で後遺症が残った場合の賠償金額例を、30代男性の例を使って紹介します。
【事故で股関節骨折を負った男性の基本情報】
・30代男性
・入院2ヶ月、通院3ヶ月
・事故前の月給25万円
・事故による股関骨折が原因で60日仕事を休んだ
等級 | 後遺症の程度 | 賠償金例[1] |
8級 | ・人工股関節を入れたが通常の半分以下しか動かない状態 ・股関節が全然動かせない状態 | 約4,000万円 |
10級 | ・人工股関節を入れた状態 ・通常時の2分の1以下しか動かせない状態 | 約2,500万円 |
12級 | ・通常時の4分の3以下しか動かせない状態 ・股関節に頑固な痺れや痛みが残っている状態 | 約1,400万円 |
14級 | ・股関節に痺れや痛みが残っている状態 | 約350~600万円 |
※賠償金に治療費は含んでいません
賠償金に差がありますが、金額を左右するのは、後遺症の重さによって変わる後遺障害認定の等級です。
等級によってもらえる賠償金の金額が変わるため、適切に準備を進めて自分の症状に合う等級を獲得することが何よりも大事です。
後遺症が残るのはつらく悲しいことですが、その分の賠償金を受け取ることができれば、今後の生活の不安を少しでも減らせます。
そこで、この記事では以下について解説します。
この記事でわかること |
・股関節骨折により後遺症が残った場合は賠償金を受け取れること ・股関節骨折で後遺症が残り、賠償金を獲得した方の事例 ・正当な賠償金を得るために準備するべきこと ・股関節骨折をしたあなたが賠償金を得るまでの具体的な流れ |
あなたの後遺症を認めてもらい、正当な賠償金を受け取るために、ひとつずつ準備していきましょう。
交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
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目次
1. 股関節骨折により後遺症が残った場合は症状に応じた賠償金を受け取れる
記事冒頭でもお伝えしたとおり、交通事故で股関節骨折を負い後遺症が残った場合は、後遺症の症状(程度)に応じた賠償金を受け取れます。
賠償金とは |
賠償金とは、加害者が被害者に対して、損害を償うために払うべきお金のこと。 慰謝料は、損害賠償金の一部。 |
以下は、股関節骨折で後遺症が残った方が受け取れる賠償金の項目です。
股関節骨折による後遺症が残ると受け取れる賠償金項目
治療費 | ・診察代、薬代、手術代などの費用 |
入通院慰謝料 | ・股関節骨折の治療により、入通院した精神的苦痛に対する慰謝料 ・金額が上下するポイントは、入通院の期間 【金額例】 入院1ヶ月、通院1ヶ月の場合:77万円 入院1ヶ月、通院3ヶ月の場合:115万円 入院2ヶ月、通院1ヶ月の場合:122万円 入院2ヶ月、通院3ヶ月の場合:154万円 |
休業損害 | ・股関節骨折が原因で仕事を休んだ分の賠償金 ・金額が上下するポイントは、事故前の給与・仕事を休んだ日数など 【計算式】 事故前3ヶ月の給与総額÷稼働日数×休業日数 【金額例】 75万円÷60日×60日=75万円 ※事故前3ヶ月の給与総額が75万円、稼働日数60日、休業日数60日の場合 |
後遺障害慰謝料 | ・股関節骨折の後遺症が残った精神的苦痛に対する慰謝料 ・金額が上下するポイントは、後遺障害認定の等級 |
後遺障害逸失利益 | ・股関節骨折の後遺症がなければ本来受け取れていた利益(収入) ・金額が上下するポイントは、後遺障害認定の等級と事故前の収入 |
上記表の上の3つ(治療費・入通院慰謝料・休業損害)は、後遺症の有無に関わらず受け取れるものです。
後遺症が残った場合は下の2つ(後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益)も受け取れますが、この2つは数百~数千万の差が出やすい傾向にあります。
後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の金額は、後遺症の症状に応じて認定される後遺障害等級によって大きく違ってくるためです。
次の章では、股関節骨折の後遺症が残った場合の賠償金を大きく左右する後遺症の症状と後遺障害等級についてくわしく解説します。
2.【後遺症の症状別】股関節骨折で認定される可能性がある後遺障害等級一覧
先ほどお伝えした通り、股関節骨折で後遺症が残った場合に受け取れる賠償金の額は、後遺症の症状に応じて認定される後遺障害等級によって大きく左右されます。
事故による股関節骨折が原因の後遺症だと認められた場合、後遺障害認定で等級を獲得できるのですが、この等級によって後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益の金額が大きく変わってくるためです。
後遺障害認定と等級について |
・後遺症が事故による怪我だと認めてもらう手続きのことを「後遺障害認定」という ・1~14級まであり、後遺症が重いほど数字が小さくなる ・後遺症が重いほど(等級の数が小さいほど)受け取れる賠償金額も増える ・厳しい審査をクリアしなければ、後遺障害等級は獲得できない |
ここで気になるのは、後遺症が残る可能性がある自分は何級に該当するのか、ということではないでしょうか。
股関節骨折で認定される可能性がある等級は、8・10・12・14級です。
以下に、各等級に認定される主な症状をまとめました。
等級 | 後遺症の症状 |
8級 | 機能障害/動揺関節 【症状例】 ・股関節が全く/ほとんど動かせない ・人工股関節を入れたが通常の半分以下しか動かない ・サポーター(硬性補装具)が常に必要 |
10級 | 機能障害/動揺関節 【症状例】 ・股関節が通常の2分の1しか動かせない ・人工股関節を入れた ・サポーター(硬性補装具)が頻繁に必要 |
12級 | 機能障害/変形障害/動揺関節/神経障害 【症状例】 ・股関節に動かしづらさを感じる(通常の4分の3しか動かせない) ・裸の状態で見てわかる程度に変形している ・サポーター(硬性補装具)が必要な時がある ・股関節が頻繁に脱臼する ・股関節に頑固な痺れや痛みが残っている |
14級 | 神経障害 【症状例】 ・股関節に痺れや痛みが残っている(画像所見はない) |
あなたの症状が何級程度になりそうか、見当がついたでしょうか?
表の上にいくほど後遺症の程度が重いとされ、等級の数字も小さくなっています。
大切なことなので再度お伝えしますが、この等級の数字が小さいほど後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益の金額も大きくなりやすく、結果的に受け取れる賠償金額も高額になります。
等級によって具体的にいくらくらいの後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益が受け取れるのかも、続けて解説するのでこのまま読み進めていきましょう。
3. 股関節骨折の後遺症に対して支払われる後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益の金額例
後遺症の各症状が、後遺障害等級の何級に認定されるのかは大まかにお分かりになったかと思います。
次は、その後遺障害等級ごとに、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益の金額例を見ていきましょう。
以下は、等級ごとの後遺障害慰謝料と、後遺障害逸失利益の金額例です。
等級 | 後遺障害慰謝料 ※弁護士基準 | 後遺障害逸失利益 ※35歳男性の例 | 後遺障害逸失利益 ※55歳男性の例 |
8級 | 830万円 | 5,138万円 | 3,226万 |
10級 | 550万円 | 3,083万円 | 1,935万 |
12級 | 290万円 | 1,599万円 | 1,004万 |
14級 | 110万円 | 571万円 | 358万 |
※金額は、あくまで参考です。
後遺障害逸失利益は、後遺障害等級に加えて、
・年齢
・事故前の収入
・労働能力がどのくらい減ったか
などによっても、金額が上下します。
(このため35歳男性と55歳男性の金額例に差が出ています)
こうした金額例を踏まえて、
「人工股関節を入れ、後遺障害10級が認定された55歳男性」
の場合、賠償金全体ではいくらくらい受け取れる可能性があるかも一例として挙げておきます。
【55歳男性・後遺障害10級の場合(例)】
治療費 | 〇円 ※入院や手術、診察代(実費) |
入通院慰謝料 | 154万円 ※入院2ヶ月、通院3ヶ月の場合 |
休業損害 | 75万円 ※事故前3ヶ月の給与総額が75万円、稼働日数60日、休業日数60日の場合 |
後遺障害慰謝料 | 550万円 |
後遺障害逸失利益 | 1,935万円 |
総額 | 2,714万円 |
今回の場合は、治療費・入通院慰謝料・休業損害・後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利をあわせて、約2,600万円の賠償金をもらえる可能性があると予想できます。
参考:国土交通省 自賠責保険・共済の限度額と補償内容、障害等級表(上肢・手指及び下肢・足指)
あなたが受けた痛みや苦しみに対して適正な金額の賠償金を受け取れるよう、こうした金額感を押さえておきましょう。
4. 【ケース別】股関節骨折で後遺症が残った方の賠償金獲得事例
股関節骨折で後遺症が残れば賠償金がもらえることや、等級ごとの金額例を紹介しました。
ここでは、実際に股関節骨折で後遺症が残った方が、どのくらいの賠償金を獲得できたのか、当弁護士事務所サリュで実際にあった事例を紹介します。
怪我の状態や等級などを見て、自分と似たケースがあれば、賠償金額を参考にしてみてください。
※今回紹介する事例で獲得できた賠償金は、弁護士が介入した結果受け取れた金額です。弁護士を通さない場合は、同じ等級でも賠償金額が減る可能性があります。
4-1. ケース1:【賠償金1,635万円】後遺障害10級の方
賠償金額 | 1,635万円 |
後遺障害等級 | 10級:人工股関節を入れた状態 |
怪我 | 右大腿骨頚部骨折 |
Kさんはバイクで走行中、十字路の交差点で左折してきた自動車に衝突され、右大腿骨頚部骨折を負いました。
治療をしたにもかかわらず、Kさんは人口股関節を入れることになってしまいます。
その後申請した後遺障害認定では、10級を獲得できました。
サリュの弁護士は、加害者側に正当な休業損害や将来の治療費などを請求。
最終的に、自賠責保険や労災の補償をのぞいて、1,635万円の賠償金で示談が成立しました。
4-2. ケース2:【賠償金1,900万円】後遺障害12級・40代の方
賠償金額 | 1,900万円 |
後遺障害等級 | 12級:股関節に動かしづらさを感じる(通常の4分の3しか動かせない) |
怪我 | 右大腿骨頚部内側骨折、右大腿骨骨幹部骨折、左肩関節脱臼 |
Aさんはスクーターで交差点付近を走行中、反対車線から右折してきた自動車に衝突されて、右大腿骨頚部内側骨折や右大腿骨骨幹部骨折などの大怪我を負いました。
約3年間治療を続けましたが、右足の関節が動かしにくくなってしまったAさん。
後遺障害認定を申請した結果、右足の関節の症状で後遺障害12級を獲得できました。
その後、サリュの弁護士は、Aさんが股関節骨折の後遺症によって仕事に支障が出ていること、以前のように日常生活を送れなくなったことを、加害者側に示談交渉で主張。
その結果、最も高額な基準で算出・請求した賠償金1,900万円で、和解することができました。
4-3. ケース3:【賠償金1,200万円】後遺障害12級・20代の方
賠償金額 | 1,200万円 |
後遺障害等級 | 12級:頑固な痛み・痺れが残っている等 |
怪我 | 大腿骨開放骨折 |
Mさんは自転車で走行中、交差点で自動車と衝突し大腿骨開放骨折を負いました。
2ヶ月以上入院して治療しましたが、Mさんには大腿骨骨頭壊死や股関節の神経症状の後遺症が残ってしまいます。
Mさんは就職が決まっていましたが、事故による怪我のせいで就労意欲が低下。
さらに、重い後遺症が残ったにも関わらず、後遺障害等級は14級という結果だったのです。
サリュの弁護士は、等級を覆すために後遺障害認定の異議申立をして、12級を獲得。
その後も逸失利益の金額に納得がいかなかったサリュの弁護士は訴訟を起こし、最終的に1,200万円で示談成立となりました。
5. 正当な賠償金を受け取るための後遺障害等級を獲得するには事前準備が重要
股関節骨折で後遺症が残った場合、どのくらいの賠償金を受け取れる可能性があるのか、イメージしていただけたでしょうか。
実は、後遺障害等級を獲得し、事例のような金額を受け取ることは簡単ではありません。
12級だと思っていたのに14級だった、等級を獲得できると思っていたけれど非該当だった、などの結果になる人は意外と多いのです。
あなたの症状に当てはまる正当な後遺障害等級を獲得するには、以下のような事前準備が必要です。
後遺障害等級の獲得に必要な事前準備 |
・股関節骨折を証明する検査結果や、画像による証拠を集める ・事故による股関節骨折で後遺症が残ったことを証明できる後遺障害診断書を用意する |
股関節骨折の影響で歩きにくい、動かしにくいと感じても、それを医学的に証明できなければ、後遺症があると認めてもらえません。
これらをおこなわずに後遺障害を申請し、等級が下がれば、あなたが受け取れるお金は大幅に減ってしまいます。
このように、正当な後遺障害等級を獲得するには、事前準備が重要なのです。
6. 股関節骨折による後遺症が残った方が賠償金を受け取るための6STEP
股関節骨折による後遺症で正当な賠償金を受け取るには、後遺障害等級を獲得するためにしっかり準備することが大事だと、理解していただけたはずです。
しっかり準備をして賠償金を受け取るためには、以下のステップのとおりに進み示談交渉につなげる必要があります。
【ステップ1】治療やリハビリに専念する 【ステップ2】後遺症を証明する証拠を残す 【ステップ3】適切なタイミングで症状固定の診断を受ける 【ステップ4】後遺障害診断書を作成してもらう 【ステップ5】後遺障害認定を申請し等級を獲得する 【ステップ6】加害者側と示談交渉をする |
ここでは、ステップごとに具体的に何をすればよいのか解説します。
重要なポイントも紹介するので、賠償金を獲得するために着実に進めていきましょう。
6-1. 【ステップ1】治療やリハビリに専念する
これから本格的に治療を開始する方、現在治療中の方は、医師の指示に従いながら治療やリハビリに専念しましょう。
なぜなら、少しでも後遺症が残らないようにすることが、何よりも大事だからです。
股関節骨折は、早い時期のリハビリが重要です。
しっかり治療とリハビリを受けて、「これ以上治る可能性がない状態まで治療を続けたけれど、後遺症が残ってしまった」と証明することが、等級の獲得に影響します。
股関節骨折を負って治療やリハビリに専念する際に重要なポイントは、6ヶ月以上治療を継続することです。
治療期間が短すぎたり、途中で治療を辞めたりすると、しっかり治療を受けなかったから後遺症が残ったと認識され、賠償金を減らされる恐れがあります。
ただ、人工関節や人工骨頭を挿入した場合は、治療期間が6ヶ月未満でも問題ありません。
6-2. 【ステップ2】後遺症を証明する証拠を残す
治療を受けるなかで、後遺症を証明する証拠を残しましょう。
なぜなら、4章でも解説したとおり、後遺症を証明する証拠を集めることが、後遺障害等級の認定に影響を与えるからです。
後遺症があることを医学的に証明できなければ、いくら「痛い」「動かない」と伝えても、本当かどうかを判断してもらえません。
そのため、
・MRIやCTなどの精密検査を受ける
・可動域制限の検査を受ける
などをして、後遺症を証明する証拠を残してもらいましょう。
精密検査を受けていない方、可動域制限の検査を受けていない方は、医師に検査を受けたいことを伝えてみてください。
6-3. 【ステップ3】適切なタイミングで症状固定の診断を受ける
次に、適切なタイミングで主治医に症状固定の診断を受けます。
症状固定とは |
これ以上症状が改善する見込みがない状態のこと。 治療終了を意味する。 |
症状固定のタイミングによって治療期間が決定し、その時点で治療費や入通院慰謝料の金額が決まります。
症状固定の時期が早すぎると、大したことがない怪我だったのではと疑われ、賠償金を減らされるケースもあるのです。
そのため、もし保険会社に症状固定を促されても、治療が必要な状態なら言いなりになる必要はありません。
症状固定は受け取れる賠償金額に影響するものなので、主治医と相談しながら適切なタイミングで診断を受けましょう。
6-4. 【ステップ4】後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定の診断を受けたら、後遺障害認定の申請準備をはじめます。
主治医に、股関節骨折による後遺症が残ったことを証明する「後遺障害診断書」を作成してもらいましょう。
後遺障害診断書とは |
後遺障害認定に必要な書類のこと。 これをもとに、専門機関が等級を決定する。 |
後遺障害等級は、後遺障害診断書の内容で審査されるものです。
そのため、これまでの治療経過や現在の状態、出ている後遺症についてなど、くわしく記載する必要があります。
また、なかには等級の獲得に不利になる可能性のある、書くべきではない内容もあるので注意してください。
股関節骨折の後遺症を証明する後遺障害診断書の内容 | |
書くべきこと | ・治療経過やリハビリの内容 ・関節の可動域の制限 ・痛みやしびれの程度 ・精密検査の結果(画像) ・将来的に手術が必要になる可能性 など |
書くべきではないこと | ・回復する見込みがあると思われる内容 ・今回の事故とは関係ない症状や病歴 |
あなたの主治医が、交通事故に詳しくない・後遺障害診断書の正しい書き方を知らない、といったケースもあるでしょう。
そのため、後遺障害診断書の作成を主治医に任せきりにするのではなく、法律と医療の知識がある弁護士に相談することをおすすめします。
6-5. 【ステップ5】後遺障害認定を申請し等級を獲得する
後遺障害診断書を作成してもらったら、後遺障害認定を申請して結果を待ちます。
申請方法は、後遺障害認定に有利な証拠を自分で集めて提出できる、被害者請求を選びましょう。
後遺障害認定で等級が決まるまでの流れは、以下のとおりです。
後遺障害認定の申請から等級決定までの流れ(被害者請求) |
後遺障害診断書や必要な書類や証拠を自分で用意する ↓ 加害者の自賠責保険に書類や証拠を提出する ↓ 自賠責保険が内容を確認し、調査会社に書類を提出する ↓ 調査会社による審査がおこなわれ、等級が決定する |
加害者の自賠責保険に提出する書類や証拠とは、
・後遺障害診断書
・CTやMRIの画像結果
・主治医の意見書
・事故状況証明書
などです。
提出したら、あなたは等級が決定するまで待つだけです。
等級が決定するまでの期間は1~2ヶ月程度ですが、場合によってはそれ以上かかることもあります。
後遺障害認定を申請し等級を獲得する手順は、「後遺障害認定で納得の結果を得るための重要知識と手順【弁護士解説】」の記事でもくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。
6-6. 【ステップ6】加害者側と示談交渉をする
後遺障害等級を獲得したら、加害者側との示談交渉が始まります。
一般的な流れを、以下にまとめました。
示談交渉の流れ |
加害者側から示談金(賠償金)が提示される ↓ 納得いかない場合は交渉する ↓ 双方が示談内容(賠償金や過失割合など)に納得したら示談書にサインする ↓ 示談成立 ↓ 賠償金が振り込まれる |
示談開始~成立までの期間は、スムーズにいけば1ヶ月程度です。
交渉が長引いたり、訴訟を起こしたりする場合は、1年以上かかる場合もあります。
7. 股関節骨折の後遺症が残った場合は交通事故の被害者側専門の弁護士に相談すべき
股関節骨折で後遺症が残った場合、どのような流れで賠償金を受け取れるのか、イメージしていただけましたか?
ただ、これらをすべて一人でおこなうのは大変そうですよね。
股関節骨折の後遺症が残り、今後に少しでも不安を感じているなら、交通事故の被害者側専門の弁護士に相談するべきです。
交通事故の被害者側専門の弁護士に依頼すれば、5章で紹介した2~6ステップをすべてサポートしてもらえます。
弁護士のサポート |
【ステップ2】後遺症を証明する証拠を残す →弁護士が、受けるべき検査や集めるべき画像などを主治医に伝える 【ステップ3】適切なタイミングで症状固定の診断を受ける →適切ではないタイミングで症状固定の診断が出ないよう、弁護士がアドバイスをする 【ステップ4】後遺障害診断書を作成してもらう →弁護士が、診断書の内容に不備がないか確認したり、主治医に修正を依頼したりする 【ステップ5】後遺障害認定を申請し等級を獲得する →弁護士が、後遺障害認定の申請書類を集めたり手続きの準備をしたりする 【ステップ6】加害者側と示談交渉をする →弁護士が、あなたの代わりに加害者側と交渉する |
実際、治療や後遺障害認定の申請、保険会社との交渉などを、あなたひとりで行うことも不可能ではありません。
しかし、知識がない状態でおこなうと、正当な後遺障害等級や賠償金をもらえない可能性が高くなります。
一方、弁護士のサポートを受け、正当な賠償金を受け取れれば、働けない期間の収入を気にすることなく、治療や手術、リハビリに専念できます。
そのため、基本的には交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
メールで無料相談する方は、下記をクリックしてください。
8. まとめ
この記事では、股関節骨折で後遺症が残った方がどうするべきなのか、受け取れる賠償金や、賠償金の獲得に必要なことを紹介しました。
【股関節骨折で後遺症が残ったら受け取れる賠償金項目】
・治療費 ・入通院慰謝料 ・休業損害 ・後遺障害慰謝料 ・後遺障害逸失利益 |
【股関節骨折で後遺症が残ったら認定される等級】
等級 | 後遺症の症状 |
8級 | 機能障害/動揺関節 【症状例】 ・股関節が全く/ほとんど動かせない ・人工股関節を入れたが通常の半分以下しか動かない ・サポーター(硬性補装具)が常に必要 |
10級 | 機能障害/動揺関節 【症状例】 ・股関節が通常の2分の1しか動かせない ・人工股関節を入れた ・サポーター(硬性補装具)が頻繁に必要 |
12級 | 機能障害/変形障害/動揺関節/神経障害 【症状例】 ・股関節に動かしづらさを感じる(通常の4分の3しか動かせない) ・裸の状態で見てわかる程度に変形している ・サポーター(硬性補装具)が必要な時がある ・股関節が頻繁に脱臼する ・股関節に頑固な痺れや痛みが残っている |
14級 | 神経障害 【症状例】 ・股関節に痺れや痛みが残っている(画像所見はない) |
【後遺障害等級を獲得するために必要な準備】
・股関節骨折を証明する検査結果や、画像による証拠を集める ・事故による股関節骨折で後遺症が残ったことを証明できる後遺障害診断書を用意する |
【股関節骨折による後遺症が残った方が賠償金を受け取るステップ】
【ステップ1】治療やリハビリに専念する 【ステップ2】後遺症を証明する証拠を残す 【ステップ3】適切なタイミングで症状固定の診断を受ける 【ステップ4】後遺障害診断書を作成してもらう 【ステップ5】後遺障害認定を申請し等級を獲得する 【ステップ6】加害者側と示談交渉をする |
股関節骨折による後遺症は、歩けなくなる、以前のように日常生活を送れなくなるなどの、重いものが多いです。
スムーズに等級を獲得することが納得いく賠償金の受け取りにつながるため、弁護士の力を借りながらしっかり準備していきましょう。
そうすることが、安心して毎日を過ごすことにつながります。