後遺障害12級とは?認定基準や他の等級との違い、賠償金相場を解説

「保険会社から後遺障害12級じゃないかと言われたけど、自分の後遺障害は12級であってるのかな」
「12級に認定されたら、どんなメリットがあるの?」
交通事故による怪我の治療をしていく中で、後遺症が残るリスクを感じているあなたは、このように考えていませんか?
後遺障害12級は、事故による後遺障害の症状が日常生活や仕事に一定の支障を与える場合に認定されるものです。
具体的には、以下のような症状が当てはまります。
【神経症状】痛みやしびれが残った│12級13号 【変形障害】骨が明らかに変形している│12級5号・12級8号 【関節の機能障害】腕や脚の関節が正常に動かない│12級6号・12級7号 【その他】眼・歯・耳・手指・足指・醜状などの障害 |
後遺障害12級に認定されると、後遺障害慰謝料等の賠償金を受け取ることができます。
しかし、適切な賠償を受け取るには、正確な診断書の作成や、認定のための手続きが欠かせません。
ご自身にとって、本当に12級が適正な等級なのか納得した上で、必要な準備を漏れなく進められるように、この記事では以下の内容を解説します。
この記事でわかること |
・後遺障害12級がどのような状態を指すのか具体例がわかる ・同じような症状で他の等級に認定されるケースの、認定基準の違いがわかる ・後遺障害12級の認定を受けた場合に受け取れる慰謝料や逸失利益の相場がわかる ・後遺障害12級を獲得するために今からやるべきことがわかる |
後遺障害12級に認定される可能性があるあなた自身が、今後どのように行動すればよいのかを具体的に説明しています。
ぜひ、今後の動きの参考にしてください。

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(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
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目次
1.後遺障害12級とはどのような障害?
後遺障害12級に認定される可能性のある症状は、具体的には以下の1〜14号に当てはまるものとなります。
【後遺障害12級に認定される後遺障害の症状】
等級 | 後遺障害 |
第12級 | 1 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 4 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの 5 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの 8 長管骨に変形を残すもの 9 一手のこ指を失ったもの 10 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの 11 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの 12 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの 13 局部に頑固な神経症状を残すもの 14 外貌に醜状を残すもの |
ここでは、むちうちや骨折などで比較的よく見られる、以下の3つの症状を中心に解説を行います。
また、その他の症状については、【その他】眼・歯・耳・手指・足指・醜状などの障害で解説します。
1-1.【神経症状】痛みやしびれが残った│12級13号
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
交通事故の影響で怪我をした後、体の一部に痛みやしびれが残ることがあります。
これらの症状は、神経症状として、12級13号に認定される可能性があるでしょう。
交通事故では、むちうちや骨折などの後遺障害として、このような症状が残るケースが見られます。
ただし、痛みやしびれなどの症状で12級を獲得するには、レントゲン画像などの医学的な証拠が十分そろっている必要があります。
自覚症状だけでは認定は難しいので、注意してください。
このような神経症状が残った場合、日常生活で以下のような影響が生じる可能性があります。
【日常生活への影響】
・手や足などを動かすと痛みが生じ、細かい作業が難しくなる ・長時間の立ち仕事や歩行が困難になる ・痛みが日常生活の質を低下させ、睡眠や集中力に影響を与える |
1-2.【変形障害】骨が明らかに変形している│12級5号・12級8号
12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨(肋骨)、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
※長管骨…腕や脚の長い骨。大腿骨(太ももの骨)や上腕骨(腕の骨)などが当てはまる。
骨折した骨がうまく癒着(骨同士がくっつくこと)せずに骨が正常な形に戻らないことがあります。交通事故では、肩鎖関節脱臼により肩付近の骨が浮き上がった状態になることで認定されるケースが多いです。
このような症状は、変形障害として、12級5号や8号として認定される可能性があるでしょう。
ただ、変形はレントゲンで確認できるだけでは認定が難しく、目視で見たときに明らかに変形がわかる状態でないと12級の認定とはなりません。
変形障害が残った場合、日常生活で以下のような影響が生じる可能性があります。
【日常生活への影響】
・見た目へのコンプレックスが生じる ・着替えなどの動きが難しくなる場合がある |
1-3.【関節の機能障害】腕や脚の関節が正常に動かない│12級6号・12級7号
12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
交通事故や骨折の影響で、腕や脚の関節が正常に動かなくなることがあります。
・関節部分が損傷すると、周囲の筋肉や靭帯が硬直し、可動域(関節の動きの範囲)が制限されることがある ・関節内で炎症が続いた場合や骨折後の癒合が不完全な場合も、関節の動きに障害が残る要因となる |
これらの症状は、関節の機能障害として、12級6号や7号に認定される可能性があるでしょう。
ただ、関節の機能障害12級の認定には、医師による可動域検査で制限が数値化されることが必要です。具体的には、怪我をした側の関節の可動域が、怪我をしていない側の関節の可動域と比較して、4分の3以下になった場合、12級に認定されます。
また、画像所見等、可動域制限が残ることについての客観的な裏付けが必要です。長期間、関節を動かさなかったことによる拘縮が合理的に認められる場合や、関節内の骨折(脛骨高原骨折等)の場合に認定されやすいです。
症状があることで日常的な動作への影響が明確であることも重要ですので、医師に自覚症状を伝えることも大切です。
関節の機能障害が残った場合、日常生活で以下のような影響が生じる可能性があります。
【日常生活への影響】
・洋服の着脱や靴の履き替えが難しくなる ・自転車や車の運転が困難になる ・重い物を持つ、階段を昇るなどの日常動作が制限される |
1-4.【その他】眼・歯・耳・手指・足指・醜状などの障害
12級の認定にはその他に、眼・歯・耳・手指・足指・醜状などに症状が残ることで認定を受けられる可能性があります。
それぞれの症状について、どのようなものが当てはまるのか、簡単に解説します。
1-4-1.【眼の障害】12級1号・12級2号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級1号 | 一眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの | 負傷していない眼と比較して、ピント機能が2分の1に低下した |
12級2号 | 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの | まぶたを開いても、まぶたで瞳孔領が隠れてしまう |
片目のまぶたや眼球に障害が残った場合、12級1号・12級2号に認定される可能性があります。
【日常生活への影響】
・運転や細かい作業が困難になる ・日常的に目を酷使する作業(パソコン業務など)で負担が増す ・片眼のみの視力低下でも、奥行き感覚が鈍り、転倒リスクが高まる |
1-4-2.【歯の障害】12級3号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級3号 | 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの | 7本以上の歯に入れ歯、差し歯、ブリッジ治療を行った |
交通事故による怪我で歯を負傷し、7本以上の歯に歯科補綴(歯の欠損や喪失を人工物で補う、入れ歯などの処置)を行った場合、12級3号に認定される可能性があります。
【日常生活への影響】
・食事の際に噛みづらさや違和感が残る ・入れ歯などのメンテナンスが必要になり、費用や手間がかかる |
1-4-3.【耳の障害】12級4号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級4号 | 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの | 耳の軟骨部分の2分の1以上を失った |
耳の軟骨部分を欠損した(怪我や治療で失った)場合、12級4号に認定される可能性があります。
また、耳の欠損は外見の著しい醜状障害として、7級12号に認定される可能性もあるでしょう。
どちらに当たるのかは、症状などをもとに医師・弁護士などの専門家に相談した上で判断してください。
【日常生活への影響】
・見た目に違和感が残り、コンプレックスを感じる ・ピアスなどの装飾品を楽しめなくなる |
1-4-4.【手指の障害】12級9号・12級10号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級9号 | 一手のこ指を失ったもの | 片手の小指を第一関節~第二関節の骨で切断した |
12級10号 | 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの | 片手の人差し指、中指、薬指のいずれかの骨の半分以上を失った |
片手の小指を失った場合などは12級9号、片手の人差し指、中指、薬指のいずれかが使えなくなった場合には12級10号に認定される可能性があります。
※欠損した指の本数が多い場合には、さらに重い等級の認定となる可能性もあります。
【日常生活への影響】
・ペンや箸を持つのが難しく、日常生活が困難になる ・ボタンを留めるなどの、細かい作業が難しくなる ・スマートフォンやパソコンの操作が今まで通りできなくなる |
1-4-5.【足指の障害】12級11号・12級12号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級11号 | 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの、又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの | ・片方の人差し指が根元から無い ・片方の人差し指を含んだ2本の指が根元から無い ・片脚の中指、薬指、小指の3本の指が根元から無い |
12級12号 | 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの | ・親指の第一関節から2分の1を失った ・親指以外の4本の指が第一関節までで切断された ・親指以外の4本の指の第二関節の可動域が半分になった |
特定の足の指が使えなくなったり、欠損したりしてしまった場合、12級11号・12級12号に認定される可能性があります。
【日常生活への影響】
・立つときや歩行時のバランスが取りづらくなる ・立ち仕事などで疲れを感じやすくなる ・欠損がある場合、見た目や機能の問題で履ける靴が限られてしまう(サンダルやヒールのある靴などが履けなくなる) |
1-4-6.【醜状障害】12級14号
認定される症状の定義 | 具体的な症状の例 | |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの | 顔や頭に見た目でわかる大きさの傷跡や手術跡が残った |
醜状障害とは、交通事故による怪我の傷跡や手術跡が残ってしまう後遺障害のことを指します。
12級14号では、日頃から露出する顔や頭などに大きな傷が残ってしまった場合、認定を受けられる可能性があるでしょう。
ただ、髪の毛などで隠れる傷跡や、小さく目立たない傷については12級の認定の対象にはなりません。
【日常生活への影響】
・外見にコンプレックスが生じる ・化粧などがしづらくなる ・モデルなど、仕事によっては影響が生じて怪我をする前と同じように働けないことがある |
2.後遺障害12級とその他の等級との症状の違い
後遺障害等級は、交通事故で生じた後遺症の程度に応じて細かく分類されています。
同じような症状でも、症状の重度などによって等級が異なることがあり、その違いによって受けられる補償の金額も大きく変わります。
ここでは、12級に認定される症状の中でも、他の等級になる可能性があるものについて、12級と他の等級とでどのような差があるのかを解説します。
2-1.【神経障害】むちうち等で痛みやしびれが残った場合の12級と14級の違い
むちうちや骨折などの怪我で、痛みやしびれが残った場合、12級、もしくは14級に認定される可能性があります。
それぞれ、どのような基準で認定されるのかというと、以下のような違いがあります。
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
具体的に等級の差がどのような要素で生じるのかというと、主に、以下のような点によって判断されます。
12級13号 | レントゲンやMRIなどで他覚的な所見が認められ、医学的・客観的に症状が残っていることを証明できる |
14級9号 | 12級に認定されるほどの他覚所見はないものの、自覚症状が一貫して継続していて、症状が続いていることを医学的に説明できる |
このように、むちうちなどの神経症状で12級の後遺障害等級の認定を受ける場合には、その交通事故によって生じた病態が画像所見などの客観的な証拠により証明されていることが重要になります。
証拠が不十分な場合は14級の認定となり、慰謝料や逸失利益などの賠償金の金額が下がる可能性があるので、注意しましょう。
2-2.【変形障害】骨が明らかに変形している場合の12級・8級・7級の違い
骨折などの影響で手足の骨がうまくくっつかず、変形した場合、12級、8級、7級のいずれかの認定を受けられる可能性があります。
それぞれの等級については、以下のような基準で認定されています。
【手足の変形障害】
12級8号 | 長管骨に変形を残すもの |
8級 | 1上肢に偽関節を残すもの1下肢に偽関節を残すもの |
7級 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
12級に該当するかどうかは、偽関節の有無(関節ではない部分でぐらぐらと曲がってしまったりするような状態)が大きく影響すると考えられます。
2-3.【関節の可動域制限】関節などがうまく動かせない場合の12級と10級の違い
骨折などの影響で手足の関節がうまく動かせない、関節の可動域制限が生じた場合、12級、もしくは10級の認定を受けられる可能性があります。
それぞれの等級については、以下のような基準で認定されています。
【肩・手首・肘の関節の可動域制限】
12級6号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
10級10号 | 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
【股関節・膝関節・足関節の可動域制限】
12級7号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの |
10級11号 | 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの |
少しわかりづらい書き方になっていますが、12級と10級の認定の基準の差は、関節の可動域(動かせる範囲)の制限範囲によって異なります。
12級 | 関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている |
10級 | 関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている |
この可動域は自己判断で申請するのではなく、病院で指定された検査を受けて、測定する必要があります。
5.自覚がなくても後遺障害12級より重い等級の可能性もあるでも解説しますが、12級程度の症状だと思っていても、それより重い等級の認定を受けられる可能性もあります。
自身の症状に対して適正な等級を獲得するためにも、同じような症状であっても、等級に差が出る可能性があるということを知っておいてください。
3.後遺障害12級の認定をされると受け取れる可能性のある賠償金
交通事故で後遺障害12級に認定されると、以下のような賠償金を受け取れる可能性があります。
・後遺障害慰謝料(後遺障害の症状が残ってしまった心理的な負担への補償) ・逸失利益(将来的な収入などへの影響に対する補償) |
後遺障害の認定を受けることで、交通事故による怪我の後遺障害に対して、金銭的な補償を受けられるのです。
もし12級に認定された場合、どの程度の賠償金を請求できるのか、それぞれの相場について詳しく解説します。
3-1.後遺障害12級の後遺障害慰謝料の相場は94万円~290万円
後遺障害12級の後遺障害慰謝料の相場は94万円〜290万円です。
なぜ同じ等級であってもこのように金額が異なるのかというと、後遺障害慰謝料の金額を計算する際の計算基準によって、慰謝料の相場が異なるからです。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
後遺障害慰謝料の計算基準には、「弁護士基準」「任意保険基準」「自賠責基準」という3つの基準があります。
後遺障害12級に認定された場合、後遺障害慰謝料の相場が、自賠責基準では94万円、弁護士基準で290万円と、3倍近くの差が出る可能性があることを知っておきましょう。
一般的に、相手の保険会社が提示してくる金額は、自賠責基準か、任意保険基準で計算した最低限のものであるケースがほとんどです。
そのため、被害者は「保険会社の提示する慰謝料の金額が必ずしも正しいわけではない」ということを知った上で、正当な金額を獲得できるように行動する必要があります。
後遺障害慰謝料についての詳しい解説や相場は、以下の記事で解説しているので、こちらも参考にしてください。

3-2.後遺障害12級の逸失利益は年齢や年収などの要素で異なる
後遺障害12級の後遺障害逸失利益の相場は、年齢や年収などの要素で異なります。
なぜなら、逸失利益の計算は以下のような計算式で計算されるからです。
【逸失利益の計算式】
1年あたりの基礎収入✕労働能力喪失率✕労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 |
後遺障害12級に認定された場合、労働能力喪失率14%、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から67歳までの期間と設定されるケースが多いです。
たとえば、以下のようなケースでは逸失利益は約1285万円となります。
【35歳男性・年収450万円の場合】
450万円×14%×20.389=約1285万円 |
ただし、同じ等級でも症状によって労働能力喪失率が異なる可能性があります。具体的な金額は事例によって異なるので、注意してください。
詳しい計算方法や金額の例については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

後遺障害等級の認定にデメリットはない!症状が残っているなら申請すべき |
後遺障害等級の認定をすることに対して、デメリットがないか心配で躊躇する方がいますが、その心配はありません。 以下のようなデメリットを不安視する方がいますが、これらはまったく当てはまらないので、安心してください。 ・障害者手帳が発行される→別の制度なので、障害者手帳は発行されない ・生命保険に加入できなくなる→後遺障害の認定は保険の加入に直接的な影響はない ・家族や会社に知らされる→本人以外に勝手に通知されることはない 基本的に認定を受けることでデメリットはないため、後遺障害に対する補償を受けるためにも、申請をするようにしましょう。 |
4.後遺障害12級を獲得するためにやるべきこと
後遺障害12級に認定されるためには、適切な手続きと準備が必要です。
症状が残っていても、証拠や記録が不足していると認定が難しくなることがあります。
ここでは、認定を目指すために必要な具体的な行動を3つ解説します。
・画像検査などを行い客観的な証拠を残す ・症状が一貫して続いていることを医師に伝えカルテなどに残してもらう ・医師が症状固定と判断するまで、最低でも6か月以上通院する |
4-1.画像検査などを行い客観的な証拠を残す
1つ目にやるべきことは、画像検査などを行って、客観的な証拠を残すことです。
後遺障害の認定には、痛みやしびれといった主観的な症状だけでなく、客観的な証拠が求められます。
レントゲンやMRIなどの画像所見は、後遺障害が残っていることを客観的に証明する材料になります。
特にむちうちなどで神経症状が残っている場合、画像所見が不足していると、12級の認定が難しく、14級になってしまう可能性が高まるでしょう。
認定された等級が下がると、獲得できる賠償金の金額も低くなってしまいます。
後遺障害の症状を客観的に証明するためにも、治療中から医師に相談し、必要に応じてMRIなどの検査をしてもらうようにしましょう。
4-2.症状が一貫して続いていることを医師に伝えカルテなどに残してもらう
次にやるべきことは、症状が一貫して続いていることを医師に伝えカルテなどに残してもらうことです。
症状が続いていることを記録しておくことは、後遺障害の認定において重要になります。
症状が途切れているように見えると、「治ったのではないか」と判断され、症状が軽視される可能性があります。
特に痛みやしびれなどの自覚症状は、医師が見ただけでは確認できないため、診察のたびに正確に報告する必要があるでしょう。
これらの記録が不十分だと、症状があることを十分に証明できず、申請の結果が非該当となったり、等級が低くなったりする可能性があります。
継続的な症状の記録を残すことが、正当な等級の獲得に重要です。
診察時には、痛みやしびれの程度、頻度、具体的な影響を正確に医師へ伝えることを心掛けましょう。
4-3.医師が症状固定と判断するまで、最低でも6か月以上通院する
3つ目のやるべきことは、医師が症状固定と判断するまで、最低でも6か月以上通院することです。
交通事故の後遺障害の認定は、一般的に通院期間が6か月以上ある場合に行われます(例外もあります)。
そのため、通院期間がそれよりも短いと、軽い怪我だったと判断され、認定を受けられない可能性があるのです。
また、相手の保険会社が「症状固定の時期です」と連絡をしてくることがありますが、症状固定を決めるのは保険会社ではありません。
医師の判断を前提とし、医学上一般的な治療行為をしても改善傾向がみられない状態が「症状固定」です。
ですから、もし保険会社がそのように連絡をしてきたとしても、医師と相談し、症状に改善傾向があったり、他の治療方法が存在する場合には治療を続けるようにしましょう。
正当な等級に認定される可能性を高めるためにも、できれば、医師と相談しながら6か月以上の通院を行いましょう。
5.自覚がなくても後遺障害12級より重い等級の可能性もある
「保険会社や医師から12級に認定されるんじゃないかと言われた」
「自分でネットで調べて12級くらいかなと思った」
そのような場合でも、12級よりも重い等級に認定される可能性があります。
なぜなら、後遺障害の認定は、さまざまな要素が重なって行われるため、正当な等級かどうかを判断するのは難しいからです。
保険会社は補償金額を小さくするため、後遺障害について過少に伝えてくる可能性があります。
また、医師は医療の専門家ではありますが、後遺障害の認定についての知識がないことも多く、正当な等級を誤認していることもあるでしょう。
そのような情報に惑わされず、自身の症状に対して、本当に12級が適切なのかどうかを判断してください。
正当な等級の判断については、ケースによって異なり、専門的な知識が必要になるため、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
専門家に相談することで、等級の認定について適切なアドバイスを受けられます。
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6.実は12等級より重い後遺障害だった事例2つ
後遺障害等級12級に該当すると考えていても、実はさらに高い等級の可能性もあるとお伝えしましたが、さらに言えば、
「一度申請したら12級の結果が出た」
というケースであっても、本当に後遺障害12級が適正な結果であるとは限りません。
実際に、後遺障害12級の結果に対して疑問を持った被害者の方が、さらに重い後遺障害等級の認定を獲得した事例を2つ紹介します。
6-1.1度目の申請では非該当だった足首の可動域制限が認められて併合9級を獲得した事例
どんな事故 | バイクで走行中、渋滞で停車中の車のドアが突然開き、衝突して転倒 |
怪我の内容 | 左大腿挫滅創、左下肢動脈損傷、左下腿皮膚剥脱創、左踵骨解放骨折の怪我 |
1度目の申請 | 瘢痕(傷跡)に対して後遺障害12級 |
異議申立ての結果 | 足首の可動域制限に対して後遺障害10級の認定を受け、瘢痕と併せて併合9級 |
事例62:12級が9級に!後遺障害診断書を作り直して等級アップ!
※等級の併合とは 交通事故による怪我で複数の後遺症が残った場合、それぞれの症状に等級が認定され、併合して(複数の等級を合わせて)等級が繰り上げられること。 併合の際の等級の繰り上げにはルールがある。 ・5級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を3つ繰り上げる ・8級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を2つ繰り上げる ・13級以上の後遺障害が2つ以上ある場合、最も重い等級を1つ繰り上げる ・14級の後遺障害が2つ以上ある場合、いくつ障害があっても14級のまま 【例】・後遺障害12級+後遺障害10級に認定された場合→重いほうの10級を1つ繰り上げ、併合9級となる |
こちらの事例では、1度目の申請時に後遺障害診断書の記載に不備があり、被害者が常日頃感じていた足首の可動域制限について等級が獲得できず、傷跡に対する12級のみの認定になっていました。
そこで、サリュから足首可動域制限に関してきちんと記載された後遺障害診断書を改めて病院で作成していただくようアドバイスを行い、再度申請を行いました。
その結果、足首の可動域制限に対して後遺障害10級の認定を受け、瘢痕と併せて併合9級の認定を獲得できました。
後遺障害診断書の書き方については、医師であっても知識があるとは限らないため、知識と経験のある弁護士へ依頼することが重要です。
6-2.1度目の申請では12級だったが、最終的に併合11級になった事例
どんな事故 | バイクで走行中、右折する対向車に衝突して転倒 |
怪我の内容 | 右第2・3中足骨骨折及び左舟状骨骨折等の怪我 |
1度目の申請 | 右第2・3中足骨骨折後の痛みに対して後遺障害12級 左舟状骨骨折後の左手関節の痛みに対して後遺障害14級 |
異議申立ての結果 | 左舟状骨骨折後の左手関節の痛みに対しても後遺障害12級が認められ、併合11級 |
事例135:異議申立で後遺障害12級が併合11級にUP。依頼者加入の保険会社と交渉し、適正な保険金の支払いを受けた
こちらの事例では、交通事故により被害者が脛骨近位端骨折という重傷を負い、足の痛みについて12級の後遺障害等級が認定されました。
しかし、当初の後遺障害診断書には可動域制限や痛みに関する十分な記載がなかったため、手の痛みについては14級の認定にとどまっていました。
そこでサリュは、レントゲン画像などの治療の経過を改めて確認し、新しい証拠を揃えた上で、異議申立てを行いました。
その結果、左舟状骨骨折後の痛みについても後遺障害12級に該当し、併合11級に該当するとの認定結果を獲得しました。
医学的な証拠が不足していると、症状に対して低い等級の認定になる可能性が高まります。
十分な証拠を揃えることが、被害者が納得できる正当な認定の獲得には大切な要素となります。
7.適切な後遺障害等級の獲得には交通事故対応経験が豊富な弁護士が力になれる
前章でもお伝えした通り、適切な後遺障害等級の獲得には、弁護士などの交通事故対応の専門家の力を借りることが重要です。
弁護士の適切なサポートを受けることで、スムーズに手続きを進め、症状に見合った等級の獲得へと近づくことができます。
なぜ弁護士の力が必要なのかというと、後遺障害等級の認定には、
・症状を客観的に証明する医学的な証拠
・過不足なく書かれた後遺障害診断書
などが必要となるからです。
これらの書類は、医学や過去の認定の事例の知識がないと、適切に揃えるのが難しいのです。
弁護士の手を借りずに、自分で手続きをしようとすると、書類が不足していたり、診断書の内容に不備があったりして、適正な認定が受けられなくなる可能性が高まります。
そのような事態を避け、適正な認定を獲得するためにも、弁護士への依頼が重要となるのです。
8.まとめ
この記事では、後遺障害12級について、症状や慰謝料などの相場、認定を獲得するためのポイントなどを網羅的に解説してきました。
内容のまとめは、以下の通りです。
▼交通事故による怪我での後遺障害では、以下のような症状が比較的よく見られる。
・【神経症状】痛みやしびれが残った│12級13号 ・【変形障害】骨が明らかに変形している│12級5号・12級8号 ・【関節の機能障害】腕や脚の関節が正常に動かない│12級6号・12級7号 |
▼後遺障害等級は、交通事故で生じた後遺症の程度に応じて細かく分類されており、同じような症状でも12級以外の認定を受ける可能性がある。
▼後遺障害12級の賠償金のそれぞれの相場は以下の通り
・後遺障害12級の後遺障害慰謝料の相場は94万円~290万円 ・後遺障害12級の逸失利益は年齢や年収などの要素で異なる |
▼後遺障害12級の認定を受けるためにやるべきことは以下の3つ
・画像検査などを行い客観的な証拠を残す ・症状が一貫して続いていることを医師に伝えカルテなどに残してもらう ・医師が症状固定と判断するまで、最低でも6か月以上通院する |
これらの内容を参考にして、正当な後遺障害等級の獲得に役立ててください。