交通事故の弁護士費用を相手に請求できる場合・できない場合を解説
「交通事故に遭って弁護士に依頼したいけど、費用って相手に請求できる?」
「自分で弁護士費用を負担して、損をすることになったら嫌だ」
交通事故の被害に遭って、弁護士への依頼を考えている方の中には、このような悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から申し上げますと、弁護士費用を請求できるのは訴訟に勝訴した場合のみで、その場合も全額の請求はできません。
また、示談交渉のみの場合にも、請求はできません。
「それじゃあ、弁護士費用は全部自分で負担しなきゃいけないの?」
そう不安になった方もいるかと思いますが、経済的な不安で弁護士への依頼を諦める必要はありません。
相手に請求ができなくても、費用面で損をしない方法がいくつかあるからです。
弁護士へ依頼するかどうかについては、「相手に請求できるか」ではなく、「費用倒れをしないかどうか」で判断してください。
・弁護士特約を利用できる場合 ・弁護士に依頼したほうが賠償額が大幅に増額し、費用倒れのリスクがない場合 |
これらのケースでは、被害者が弁護士費用で損をすることなく、弁護士に依頼することが可能です。
この記事では、弁護士費用を相手に請求できるケースについて解説する他、相手に費用を請求できない場合でも、損せずに弁護士に依頼する方法をお伝えします。
この記事を読むとわかること ・交通事故の弁護士費用を相手に請求できるケースと、請求できる金額の目安が具体的にわかる ・示談交渉などで、相手に費用の請求ができないケースでも被害者が損せず弁護士に依頼できる方法がわかる ・弁護士へ依頼するべきか迷ったときの判断基準がチェックリストでわかる |
この記事の内容を参考にして、弁護士費用の心配なく、交通事故の解決を弁護士に依頼する一歩を踏み出してください。
交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
交通事故被害に遭われたら、できるだけ早期に、交通事故の被害者側専門弁護士に相談することをおすすめします。これは、弁護士のアドバイスを受けることで、もらえる損害賠償金が大きく変わる場合があるからです。
弁護士法人サリュは、創業20年を迎え、交通事故の被害者側専門の法律事務所として累計20,000件以上の解決実績があります。所属弁護士の多くが1人あたり500件~1000件以上の交通事故解決実績があり、あらゆる交通事故被害者を救済してきました。その確かな実績とノウハウで、あなたのために力を尽くします。
相談だけで解決できることもありますので、まずはお気軽に無料法律相談をご利用ください。
目次
1.交通事故の弁護士費用を相手に請求できるのは訴訟した場合のみ
最初にお伝えしましたが、交通事故の弁護士費用を相手に請求できるのは訴訟した場合のみです。
交通事故でよく見られる示談交渉では、請求することはできません。
なぜ、訴訟した場合のみ請求できるのかというと、示談交渉では弁護士への依頼は被害者の任意となっているからです。
そのため、加害者側に支払いの義務はないとされています。
訴訟の場合にも、原則的には弁護士費用は被害者が負担するルールになっています。
しかし、交通事故の損害賠償請求のような加害者の不法行為に基づく事件のケースでは、例外的に弁護士費用を加害者に請求できるのです。
弁護士費用を請求するには、訴訟を提起する際に、訴状に記載する必要があります。
裁判所が判決を出した結果、勝訴して訴状の内容が認められれば弁護士費用を相手に支払わせることができます。
裁判で判決ではなく和解した場合、調整金として弁護士費用相当の金額を受け取れることが多い |
訴訟では判決の前に、裁判所から和解案が提示されます。 その場合は弁護士費用として請求する形ではなく、調整金という形で提示されることが多いです。 判決の結果請求できる金額よりも若干少なくなることが多いですが、他の部分が納得できる場合、和解を選んでも問題ありません。 |
また、「訴訟でないと弁護士費用が請求できない」=「示談にすると損」というわけではありません。
後ほど詳しく解説しますが、訴訟の場合であっても、弁護士費用を全額請求できるわけではありません。
3-2. 相手に請求できなくても弁護士に依頼すべきケースもあるで紹介する通り、示談の場合であっても弁護士に依頼することで、結果的に手元に残る賠償金が増額することも多くあります。
弁護士に依頼するかどうかは「弁護士費用を相手に請求できるかどうか」ではなく、
「自分の手元に残るお金が減額するか、増額するか」という観点で判断してください。
2.訴訟では賠償額の10%程度の弁護士費用を請求できる
訴訟すれば弁護士費用を相手に請求できるとお伝えしましたが、
「全額請求できるの?」
という疑問を持たれているのではないでしょうか。
相手に請求できる弁護士費用は、裁判所が認めた賠償金額の10%程度が目安となっています。
実費で全額請求できるわけではないので、注意が必要です。
それでは、具体的にどのくらいの金額を請求できるのか、賠償金ごとのケースの例を見ていきましょう。
2-1.訴訟で賠償金が300万円となった場合
訴訟で賠償金が300万円ほどになるのは、たとえば
「頸椎捻挫(むちうち)で後遺障害等級14級に認定される」
程度の事故の場合です。
賠償金が300万円の場合、賠償金、請求できる弁護士費用、実際にかかる弁護士費用は下記のようになります。
【賠償金が300万円だった場合に請求できる弁護士費用の相場】
賠償金 | 300万円 |
請求できる弁護士費用 | 30万円 |
実際にかかる弁護士費用 | 63万円※ |
※着手金10万円、成功報酬が経済的利益の16%、実費・日当が5万円の場合(税抜)
相手に請求できる弁護士費用は、実際にかかる弁護士費用の半分程度となります。
2-2.訴訟で賠償金が2000万円となった場合
訴訟で賠償金が2000万円ほどになるのは、たとえば
「高次脳機能障害で後遺障害等級7級に認定される」
程度の事故の場合です。
賠償金が2000万円の場合、賠償金、請求できる弁護士費用、実際にかかる弁護士費用は下記のようになります。
【賠償金が2000万円だった場合に請求できる弁護士費用の相場】
賠償金 | 2000万円 |
請求できる弁護士費用 | 200万円 |
実際にかかる弁護士費用 | 260万円※ |
※着手金10万円、成功報酬が経済的利益の11%+20万円、実費・日当が10万円の場合(税抜)
この場合、請求できる金額が大きくなるため、自己負担額は小さくなりますが、それでも全額請求はできないので注意してください。
依頼する弁護士事務所によって金額は異なりますが、基本的に、相手に請求した弁護士費用のみで実費を賄うのは難しいケースがほとんどとなります。
3.交通事故の弁護士費用は示談の場合は相手に請求できない
ここまで、訴訟になった場合の弁護士費用について説明してきましたが、交通事故では訴訟までは起こさず、示談交渉で解決するケースが多いでしょう。
その場合の弁護士費用も請求したい、と思う方もいるかと思いますが、残念ながら、示談交渉の場合の弁護士費用は相手に請求することはできません。
3-1. 示談の場合に弁護士費用を相手に請求できない理由
「相手のせいで交通事故に遭ったのに、なんで弁護士費用を請求できないの?」
このような疑問を抱えている方は少なくないと思います。
先ほども少し触れましたが、示談交渉では弁護士費用を請求できない理由は、示談の場合は弁護士への依頼が被害者の任意となっているからです。
交通事故が発生した際、加害者側には、交通事故による損害の賠償を行う義務があります。
通院慰謝料や入通院費用、治療費などは、被害者が請求すれば支払う必要があるのです。
しかし、弁護士への依頼については、被害者が任意で選ぶ選択肢となっています。
そのため、慰謝料や治療費などとは違って、加害者側に支払いの義務はないと決められています。
3-2. 相手に請求できなくても弁護士に依頼すべきケースもある
「じゃあ、弁護士に依頼したら損するんじゃない?お金がかかるなら依頼したくない」
そんな風に感じてしまうかもしれませんが、弁護士費用を相手に請求できないからと言って、必ずしも被害者が損をするわけではありません。
弁護士に依頼することで、受け取れる賠償金の金額が増額し、結果的に弁護士費用を差し引いても、最初に相手に提示された金額より高くなるというケースは数多くあります。
例えば、下記の事例では弁護士に依頼したことで、500万円以上示談金が増額しています。
事例345:相手方保険会社の提示額から500万円以上増額し、スピード解決
このようなケースでは、弁護士費用はかかってしまうものの、結果的に手元に残る示談金は増額するような形になります。
「相手に請求できないなら弁護士への依頼はやめる」
とすぐに結果を出さず、賠償金の増額が見込めるかどうかなどを加味して依頼を検討してください。
弁護士特約に加入していれば被害者の自己負担は0円~ |
弁護士(費用)特約は、保険会社が弁護士費用を負担してくれる制度です。 被害者が弁護士特約に加入していた場合、ひとつの事故につき、一般的に300万円までの弁護士費用を保険会社が負担します。 被害者自身が加入していなくても、家族が加入していれば使えるケースも多いので、弁護士への依頼に迷ったときは、ご自身や家族が加入していないか確認してみましょう。 |
4.【費用倒れは大丈夫?】弁護士へ依頼するか迷ったときのチェックポイント
前項で「弁護士費用を差し引いても、最初に相手に提示された金額より手元に残る金額が高くなるケースがある」と紹介しましたが、自分がそれに当てはまるのか不安という方が多いのではないでしょうか。
ここでは、そんな心配を解消するため、弁護士費用がかさんで、最後に手元に残る金額が元々受け取れるはずだった賠償金を下回ってしまう「費用倒れ」のリスクがあるかどうかを、チェックポイント形式でわかるようにしました。
4-1.費用倒れのリスクが低いケース
まずは、費用倒れのリスクが低いケースです。
【費用倒れのリスクが低いケース】
□ | 弁護士費用特約に加入している |
□ | 数か月通院・入院が必要な怪我を負った |
□ | 後遺障害が残った |
このリストにチェックがついた場合、費用倒れのリスクは小さいです。
なぜなら、通院や入院が必要な怪我をした場合や、後遺障害が残るようなケースでは、弁護士に依頼することで賠償金が増額する可能性が高いからです。
受け取る金額が大きくなり、弁護士費用を差し引いても示談金が増額するケースが多いのです。
また、弁護士特約に加入している場合は、自己負担なしで依頼できるため、増額の幅が小さくても被害者が損をすることはありません。
これらに当てはまる場合、ぜひ弁護士への依頼を行ってください。
4-2.費用倒れのリスクが高いケース
次に、逆に費用倒れのリスクが高いケースです。
【費用倒れのリスクが高いケース】
□ | 物損のみの事故だった |
□ | 通院の必要がない軽傷だった |
□ | 被害者の過失割合が大きかった |
このリストにチェックがついた場合は、残念ながら弁護士に依頼しても費用倒れになるリスクが高いでしょう。
なぜ費用倒れのリスクが高いかというと、こういった事故では、弁護士に依頼しても示談金が増額する幅が小さくなるからです。
弁護士に依頼しても増額しなければ、弁護士費用の分被害者が自己負担となり、損をすることになります。
そのため、これらのケースでは依頼はしないほうが損を避けられる可能性が高まります。
もし「自分の事故の場合はどっちだろう?」と迷ったら相談を |
上記の表を見ても判断がつかない、自分で考えてもわからない場合には、 下記の窓口に相談してみてください。 ・公益財団法人 日弁連交通事故相談センター 無料の電話相談 ・法テラス 相談窓口(電話・メール・チャット等) その他、相談のみであれば無料で行っている法律事務所もあるので、そちらに相談するのも有効です。 |
5.弁護士への依頼で費用倒れが心配な方はサリュにご相談ください
「弁護士費用がかかって損をしそう」
「弁護士に依頼しても、結局そんなに変わらないんじゃないの?」
そんな風に考えて、弁護士への依頼を躊躇してしまう方もいるかもしれませんが、交通事故の解決を後悔なく進めるには、専門の知識を持った弁護士のサポートは必須です。
なぜなら、交通事故の対応に慣れた加害者側の保険会社に対して、プロの知識がなくては太刀打ちできず、泣き寝入りになってしまう可能性が高いからです。
相手の保険会社は、基本的に被害者に対し、最低限の補償で済ませようとしています。
その結果、言われるがままに相手の提示した金額で受け入れると、本来得られるはずだった賠償金の半額以下で済まされてしまうようなケースもままあります。
そんな事態を防ぐためにも、交通事故の被害者救済に特化した弁護士に依頼し、事故解決の経験とノウハウでサポートしてもらってください。
6.まとめ
この記事では、交通事故の被害者になってしまったときにすることや、交通事故に関するお金について解説してきました。
内容のまとめは以下の通りです。
◯交通事故の弁護士費用を相手に請求できるのは訴訟して勝訴した場合のみ。
◯勝訴した場合は賠償額の10%程度の弁護士費用を請求できる。
◯示談の場合は相手に弁護士費用を請求することはできない。
◯下記の条件を見て、弁護士に依頼しても費用倒れのリスクがないか判断できる。
費用倒れのリスクが低いケース ・弁護士特約に加入している ・数か月通院・入院が必要な怪我を負った ・後遺障害が残った |
費用倒れのリスクが高いケース ・物損のみの事故だった ・通院の必要がない軽傷だった ・被害者の過失割合が大きかった |
以上の内容を参考に、弁護士費用の心配をせず交通事故の解決を弁護士に依頼してください。