バイク事故で腕・足を切断したら?交通事故被害者が受けられる賠償を解説
バイク事故で腕や足を切断してしまった場合、被害者はどのような賠償を受けることができるでしょうか。
バイク事故は、車に乗車中の事故と異なり、身体に重大な傷害を負うことが多いです。大きな怪我を負った場合、発生する損害額も大きくなることから、適切な賠償金を支払ってもらえるように、正しい知識を得ておくことは重要です。
今回は、バイク事故で腕や足を切断してしまった方やその家族に向けて、賠償手続きで知っておくべきことを解説しました。ぜひ最後までご覧ください。
交通事故解決件数 1,100件以上
(2024年1月時点)
【略歴】
2014年 明治大学法科大学院卒業
2014年 司法試験合格
2015年 弁護士登録、弁護士法人サリュ入所
【獲得した画期的判決】
【2021年8月 自保ジャーナル2091号114頁に掲載】(交通事故事件)
【2022年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準上巻(赤い本)105頁に掲載】
会社の代表取締役が交通事故で受傷し、会社に営業損害が生じたケースで一部の外注費を事故と因果関係のある損害と認定した事例
【弁護士法人サリュにおける解決事例の一部】
事例333:弁護士基準の1.3倍の慰謝料が認められた事例
事例343:相手方自賠責保険、無保険車傷害保険と複数の保険を利用し、治療費も後遺障害も納得の解決へ
事例323:事故態様に争いがある事案で、依頼者の過失割合75%の一審判決を、控訴審で30%に覆した
目次
1 バイク事故で腕や足を切断する原因
(1)バイク事故は腕や足に重傷を負いやすい
バイク事故は、自動車同士の事故に比べ、同じ事故態様でも重傷になりやすいです。これは、生身の体に直接衝撃が加わるためであり、特に手足については、自身の車両と相手方の車両の間に挟まれたり、事故の衝撃で飛ばされている間に地面との摩擦などによって大きく損壊する場合があります。
(2)腕や足のケガで切断しなければならない場合とは
事故によって手足に重傷を負うと、血管の損傷・重度の骨折・壊死・大量の出血などの理由から、生命を救う唯一の方法として、その手足を切断せざるをえないことがあります。
例えば、壊死(細胞組織が死ぬこと)が進行するとその部位から感染が全身に広がる可能性があるため、感染症の拡大やさらなる壊死の進行を防ぐために行われることがあります。あるいは、重傷による大量の出血や循環不全を防ぐために、手足を切断することで体内の血液を保持し、生命維持を試みることもあります。
つまり、手足を切断しなければならないということは、それだけ被害者の身体が非常に深刻な状況であることを指しているのです。
2 腕や足を切断したときの損害賠償請求の項目
腕や足を切断するような大きな事故にあった場合、以下のような項目の損害賠償を請求していくことができます。
(1)入通院慰謝料
「怪我を負わされたことや入通院を余儀なくさせられたことへの被害者の精神的苦痛」に対する賠償です。傷病名、入通院期間によって金額は異なります。また、慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)があり、どの基準を使用して慰謝料を算定するかによって、支払われる慰謝料の金額は大きく異なります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
(2)通院交通費
入通院の際に発生した交通費。
公共交通機関やタクシーを利用した場合にはその実費部分、自動車を利用した場合には、距離に応じてガソリン代を請求できます。
(3)付き添い費
被害者の入通院にご家族の方など(近親者)が付き添った場合、付き添い費の請求が可能です。
入院の場合、近親者の付き添いは1日6,500円、職業付添人(看護師や介護福祉士の資格を持った専門職)による付き添いは実費部分の請求となります。また、通院時の近親者の付き添いは1日3,300円の請求となります。
なお、入院・通院どちらの付き添いの場合も、必ず認められるというわけではなく、医師の指示があった場合やお怪我の程度、被害者の年齢等から必要であると判断される場合に限りますのでご注意ください。
(4)介護費・義肢などの装具・介護器具費
手足を切断したことにより生活が不自由となってしまった被害者の介護を行うにあたり発生する費用。職業付添人あるいは近親者による介護費用や、介護ベッド、車いすなどの介護器具費などがあります。
また、手足を切断した場合には、義手・義足などの費用も請求することができます。
全てのケースで認められるわけではなく、こちらも付き添い費用と同様に、必要性や相当性を証拠とともに丁寧に主張し、保険会社を納得させる必要があります。そのため、請求を行う場合には交通事故に詳しい弁護士へ依頼することをおすすめします。
※義手・義足などの装具、介護器具費、介護雑費などは、一度購入した後、経年等により形が変化し作り直さないといけなくなったり、耐用年数の関係で買替や再作成が必要になりことが多いです。 そのため、将来の買い替えを考慮して請求する必要があります。 また、義手・義足などの装具の交換時に発生する治療費、再手術費用なども考慮して、あらかじめ請求する必要があります。 |
(5)将来治療費
何らかの治療行為をしないと症状が悪化してしまう場合など、医師によって必要性が認められる場合には、将来発生する治療費を請求することができます。
(6)休業損害
交通事故による怪我で仕事が出来ないことにより生じた収入の減少に対する賠償。会社員・自営業者・家事従事者など、被害者の職業により計算方法が異なります。
(7)後遺障害逸失利益
被害者の身体に後遺障害が残り労働能力が減少した結果、将来発生すると考えられる「収入の減少」に対する賠償。
通常は、
事故前年度の年収×労働能力喪失率×就労可能年数に対応したライプニッツ係数
で計算されます。
後遺障害逸失利益について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:後遺障害等級9級の慰謝料の適正な相場は?交通事故被害者側専門の弁護士が解説
(8)後遺障害慰謝料
「後遺障害が残ったことで将来にわたり受け続ける日常生活における不利益、精神的苦痛」に対する賠償。手足を切断した場合の具体的な後遺障害等級については次項でご説明いたします。
3 腕や足を切断したときに認められる後遺障害と労働能力喪失率
交通事故により、腕や足を切断した場合、切断した手足の本数や位置に応じて、後遺障害が認定される可能性があります。
また、「逸失利益」の算定時に用いられる労働能力喪失率も、認定される後遺障害の等級によって異なります。
それぞれの場合における後遺障害等級と労働能力喪失率は以下のとおりです。
(1)腕を切断したときに認められる後遺障害
等級 |
労働能力喪失率 |
要件 |
第1級3号 |
100% |
両上肢をひじ関節以上で失ったもの |
第2級3号 |
100% |
両上肢を手関節以上で失ったもの |
第4級4号 |
92% |
1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
第5級4号 |
79% |
1上肢を手関節以上で失ったもの |
(2)足を切断したときに認められる後遺障害
等級 |
労働能力喪失率 |
要件 |
第1級5号 |
100% |
両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
第2級4号 |
100% |
両下肢を足関節以上で失ったもの |
第4級7号 |
92% |
両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
第4級5号 |
92% |
一下肢をひざ関節以上で失ったもの |
第5級5号 |
79% |
一下肢を足関節以上で失ったもの |
第7級8号 |
56% |
一足をリスフラン関節以上で失ったもの |
4 交通事故で腕や足を切断した際の解決のポイント
(1)適切な後遺障害が認定されているか
これまで説明してきたように、腕や足を切断した場合に認定される後遺障害は様々です。
後遺障害の認定を受けるためには、加害者側の自賠責保険へ申請を行う必要があり、申請方法はいくつかあります。ご自身で申請を行うこともできますし、加害者側の保険会社にて申請を行う(「事前認定」と言います。)方法もあります。しかし、いずれにしろ、申請に必要な書類や添付したほうがいい資料などが不足していれば、本来認定されるべき後遺障害が認定されないこともあります。
(2)必要な賠償が認められているか
仮に、適正な後遺障害が認定されたとしても、その後遺障害を前提として、適正な賠償金が算定されているかどうかは、また別に検討が必要です。
弁護士基準の慰謝料で算定されているか、
後遺障害逸失利益の算定は、適切に算定されているか、
介護費用・介護器具費・将来治療費などが漏れなく算定されているか
など、ひとつひとつの賠償項目を吟味して、不足がないかどうか、確認する必要があります。
(3)弁護士に相談した方がいい理由
適正な後遺障害の認定を受けるために書類を整えることや、賠償項目を吟味して保険会社と交渉したりすることは、いずれもご自身(もしくはご家族)ですることが可能です。とはいえ、上記のとおり、適正な後遺障害の認定を受けること、必要な賠償を獲得することは決して簡単な事ではありません。
経験や知識が豊富な弁護士からアドバイスを受けることは決して損にはなりませんので、ご自身(もしくはご家族)で対応される前に、交通事故案件の経験が豊富な弁護士へ相談することをお勧めします。
4 弁護士法人サリュの解決事例
事例337:後遺障害併合11級の認定を獲得し、逸失利益を満額回収した建設会社経営者
事例278:画期的!裁判で、交通事故によるストレスが関節の機能障害7級相当として現れた転換性障害を認定させる
事例234:訴訟を提起し、賠償金が114万円から2000万円に増額!
事例325:加害者の保険会社から後遺障害認定について知らされず、依頼後の申請で10級が認められる