身体の自由を奪われ
苦しんでいる方へ

ある日突然、交通事故にあわれ、身体の自由を奪われてしまった方々。
賠償はどうすればよいのか、これからの生活はどうなるのか、不意に立たされた窮地に精神的にも追い詰められ苦しんでいる方をサリュは全力でお守りします。

脊髄損傷とは

脊髄損傷の特長

そもそも脊髄とは

脊髄の図

脊髄とは、延髄と呼ばれる脳幹の下方組織の続きとして、頭蓋骨に続く脊柱の中央を上下に貫く脊柱の中に入っている白色の紐状の束となっている器官であり、脳と共に中枢神経を構成しています。この中枢神経が、体と脳を繋ぐ役割(神経伝達機能)を果たしているため、脊髄が損傷されると脳から体(又は体から脳)への信号が上手く送れなくなり、麻痺を代表とする症状を発症することになります。神経は、上方から下方へと流れていますので、上方の脊髄を損傷すると、損傷した箇所以下の神経支配領域に麻痺などの症状を残すことになります。また、脊髄損傷は直接的な症状だけでなく多くの合併症を発症しやすい傷病でもあります。
脊髄を損傷する機序(メカニズム)としては、主に脊柱に強い外圧が加えられることが挙げられますが、交通事故のエネルギーは相当なものになることも多く、脊髄損傷の原因の多くを交通事故が作っている状況です。

脊髄損傷による症状と分類

一般に、脊髄損傷は、損傷の程度によって「完全損傷」と「不完全損傷」に分けられ、
症状の現れる部位により「四肢麻痺」、「対麻痺」、「片麻痺」、「単麻痺」に分けられます。

損傷の部位による分類

  • 完全損傷
    完全損傷は、脊髄が横断的に離断されることにより神経伝達機能が完全に断たれることをいいます。完全損傷の場合には損傷部位以下の機能が完全に麻痺します。
  • 不完全損傷
    脊髄が横断的に離断されているわけではないけれども損傷しているという状態であり、この場合でも麻痺を含む様々な症状を発症することになります。

症状の程度による分類

  • 四肢麻痺

    頚髄を損傷することによって両上肢両下肢及び骨盤臓器に麻痺や機能障害を残す状態のこと

  • 対麻痺

    胸髄、腰髄、仙髄、馬尾の損傷によって両下肢及び骨盤臓器に麻痺や機能障害を残す状態のこと

  • 片麻痺

    脊髄を損傷したことにより、片方の上肢・下肢に麻痺や機能障害を残す状態のこと

  • 単麻痺

    脊髄を損傷したことにより、1つの上肢・下肢に麻痺や機能障害を残す状態のこと

脊髄損傷の診断

  • 1高位診断

    脊髄損傷による麻痺の範囲は、脊髄損傷の生じた部位(高位)によって異なります。たとえば、頚髄が損傷されると四肢麻痺が生じ、第2腰髄から上が損傷されると、下肢全体が完全に麻痺したり、不完全麻痺になります。また、脊髄の最下部(第3仙髄以下)が損傷した場合には下肢の麻痺は生じないものの、肛門周囲の感覚障害や尿路障害が生じます。
    このように脊髄は、どの高さの部分で損傷を受けたかによって、発現する運動障害や感覚障害の範囲が定まるので、MRI、CT等による画像診断だけでなく、臨床所見等を併せて損傷の部位(高位)を診断します。

  • 2横断位診断

    脊髄損傷は、脊髄の全断面にわたって生じた場合と、いずれか半側又は一部に生じた場合とによって、その症状が異なるので、この点における診断(横断位診断)も重要です。
    前者の場合は、障害部位から下方の感覚脱失又は感覚鈍麻が、運動麻痺とほぼ同じ範囲に生じます。
    後者のうち、脊髄の左右半側を損傷した場合には、損傷した半側の下肢の運動障害及び感覚障害のほか、他の側の温痛障害等が生じます(ブラウン・セカール症候群)。頚髄を中心性に損傷した場合には、下肢よりも上肢に重い麻痺が生じます(中心性脊髄症候群)。脊髄の前部半側を損傷した場合には、損傷部位より下位の両上肢で運動及び痛覚の消失をきたしますが、後部脊髄の機能である振動覚等には影響が及びません(前脊髄症候群)。

診断方法

  • 画像診断
    骨の傷害や脱臼がある場合、まず単純X線検査によって傷害部位を診断することになりますが、脊髄損傷が疑われる場合には、CTやMRIを撮影して具体的な脊髄の損傷部位が診断されます。
    脊髄損傷ではこれらの画像が最も重要な診断根拠となります。画像では明確に損傷しているかどうか分からない、という場合には、次の神経学的検査や電気生理学的検査を補助的に用いることで診断を行うことになります。
  • 神経学的検査
    神経学的検査は、上肢・体幹・下肢の知覚障害、筋力麻痺の範囲、腱反射の異常などから脊髄損傷の起きている範囲と程度を調べる検査です。
    具体的には、四肢の動きや感覚障害の有無・レベルの検査、深部腱反射、膀胱や肛門括約筋機能などの検査を行い、脊髄や神経根の損傷による麻痺の有無・程度を念入りに確認します。
  • 電気生物学的検査
    脊髄損傷の診断法として、脳・脊髄誘発電位、筋電図といった電気生理学的検査が行われることがあります。神経刺激による異常生身を観測し、脊髄の病巣の有無・部位などを確認します。

脊髄損傷の後遺障害

交通事故による脊髄損傷について、自賠責は、その症状の程度に応じて1級から12級までの後遺障害等級を定めています。具体的には、別表第1の1級1号、2級1号、別表第2の3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号の7つの等級の認定可能性があります(4級や6級などの他の等級には、脊髄損傷症状に該当するような要件が定められていません。)自賠責の後遺障害等級は、労災が定める後遺障害等級や認定基準を流用しているのですが、脊髄損傷について該当する等級は「神経系統の機能又は精神の障害」という項目で括られています。当該項目について認められる等級が上記の等級なのですが、その症状の程度を表す表現として、労災も自賠責も次のような表現で区別しています。

脊髄損傷症状の該当する等級と
その症状の程度
第1級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの
第2級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの
第3級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの
第5級 極めて軽易な労務にしか服することができないもの
第7級 軽易な労務にしか服することができないもの
第9級 通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの
第12級 通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの

一般的な「神経系統の機能又は障害」という項目については、第12級より軽度のもの、として第14級が定められていますが、脊髄損傷が認められる場合には原則として他覚的所見によって裏付けられているはずですから、他覚的所見が無い神経症状であることを意味する14級の認定は行われません。逆に14級が認定されたとすれば、自賠責は当該被害者の後遺障害を脊髄損傷とはみなしていないと言ってよいでしょう。このような場合に異議申立を考えるのであれば、他覚的所見を示す検査結果や画像所見があるか、あるとしてそれを適切に指摘できるか、ということがポイントとなります。

慰謝料と労働能力喪失率

交通事故の損害賠償においては、自賠責で認定された後遺障害等級が非常に重視され、基本的にはその認定された後遺障害等級に応じて、後遺障害慰謝料や労働能力喪失率が算定されます。これは、脊髄損傷の場合でも同じです。
交通事故による後遺障害慰謝料には、自賠責基準、任意保険会社基準、裁判基準の3つの基準がありますが、以下の表では、自賠責基準と裁判基準(赤い本基準)を紹介します。
労働能力喪失率とは、後遺障害が残存しなければ将来得られたであろう利益(逸失利益)を算定する際に用いられる概念であり、後遺障害等級に応じて定められた労働能力の喪失の程度を表すものですが、現実の収入減を問題としないため、一種のフィクションであるといえます。ただし、現実には、逸失利益は基本的に「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間」という計算式で算定されますので、このフィクションが逸失利益の算定に大きな影響力を持つことになります(もちろん、逸失利益全体の判断としては、現実の収入減等も加味されて算定されることになります。)
以下は、脊髄損傷で認定されうる後遺障害等級と、慰謝料(自賠責基準と裁判基準)、労働能力喪失率をまとめた表です。

等級別にみた慰謝料と労働能力喪失率の程度
等級 要件 自賠責基準
慰謝料
裁判基準
慰謝料
労働能力
喪失率
第1級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常時介護を要するもの 1600万円 2800万円 100%
第2級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要するもの 1163万円 2370万円 100%
第3級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの 829万円 1990万円 100%
第5級 極めて軽易な労務にしか服することができないもの 599万円 1400万円 79%
第7級 軽易な労務にしか服することができないもの 409万円 1000万円 56%
第9級 通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当程度に制約されるもの 245万円 690万円 35%
第12級 通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの 93万円 290万円 14%

脊髄損傷の後遺障害等級判断基準

脊髄損傷の後遺障害等級の判断基準を更に具体的にいえば、次の通りです。
脊髄の損傷による障害は、次の7段階に区分して等級を認定することとなります。

後遺障害等級の判断基準
第1級 脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの
  • 高度の四肢麻痺が認められるもの
  • 高度の対麻痺が認められるもの
  • 中程度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
  • 中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
  • 中程度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要するもの
    例:第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の高度の対麻痺、神経因性膀胱障害及び脊髄の損傷部位以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形等が認められるもの
第2級 脊髄症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの
  • 中程度の四肢麻痺が認められるもの
  • 軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
  • 中程度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
    例:第2腰髄以上で損傷を受けたことにより両下肢の中程度の対麻痺が生じたために、立位の保持に杖又は硬性装具を要するとともに、軽度の神経因性膀胱障害及び脊髄の損傷部以下の感覚障害が生じたほか、せき柱の変形が認められるもの
第3級 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、労務に服することができないもの
  • 軽度の四肢麻痺が認められるもの
    (上記(イ)のbに該当するものを除きます。)
  • 中程度の対麻痺が認められるもの
    (上記(ア)のd又は(イ)のcに該当するものを除きます。)
第5級 脊髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの
  • 軽度の対麻痺が認められるもの
  • 一下肢の高度の単麻痺が認められるもの
第7級 脊髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの 一下肢の中程度の単麻痺が認められるものが該当します。
例:第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の中程度の単麻痺が生じたために、杖又は硬性装具なしには階段をのぼることができないとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの
第9級 通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの 一下肢の中程度の単麻痺が認められるものが該当します。
例:第2腰髄以上で脊髄の半側のみ損傷を受けたことにより一下肢の軽度の単麻痺が生じたために日常生活は独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いとともに、脊髄の損傷部位以下の感覚障害が認められるもの
第12級 通常の労務に服することはできるが、脊髄症状のため多少の障害を残すもの 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すものが該当します。また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるものも該当します。
例:軽微な筋緊張の亢進が認められるもの
例:運動障害を伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢にわたって認められるもの

脊髄損傷に付随する障害について

外傷などにより脊髄(第2腰椎以下の脊柱内の馬尾神経が損傷された場合も含みます。以下同じです。)が損傷し、対麻痺や四肢麻痺が生じた場合には、広範囲にわたる感覚障害や尿路障害(神経因性膀胱障害)などの腹部臓器の障害が通常認められます。また、脊柱の変形や運動障害(以下「脊柱の変形等」といいます。)が認められることも多いです。
このように、脊髄が損傷された場合には複雑な諸症状を呈する場合が多いのですが、脊髄損傷が生じた場合の障害等級の認定は、原則として、脳の身体性機能障害と同様に身体的所見及びMRI、CT等によって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度により障害等級を認定することとなります。
ただし、脊髄損傷に伴う胸腹部臓器の障害や脊柱の障害による障害の等級が麻痺により判断される障害の等級よりも重い場合には、それらの障害の総合評価により等級を認定することとなります。
なお、脊髄損傷による障害が第3級以上に該当する場合には、介護の要否及び程度を踏まえて認定することとなります。

麻痺症状を発症

  • 身体的所見およびMRI、CTによる裏付け
  • 胸腹部心臓やせき柱の障害が麻痺の等級より重い場合は…
    胸腹部心臓やせき柱の症状も含め総合評価
  • 障害が3級以上に該当の場合…
    介護の要否・程度で総合評価

等級を認定

Check補足解説

  • 1

    脊柱に外力が加わることにより、脊柱の変形等が生じることがあるとともに、脊髄の損傷が生じた場合には、麻痺や感覚障害、神経因性膀胱障害等の障害が生じます。このため、脊髄の損傷による障害に関する認定基準は麻痺の範囲と程度に着目して等級を認定するものとなっていますが、各等級は通常伴うそれらの障害も含めて格付けしたものです。

  • 2

    脊髄は、解剖学的には第1腰椎より高位に存在し、第2腰椎以下には存在しませんが、第2腰椎以下の脊柱内の馬尾神経が損傷された場合においても、脊髄の損傷による障害である下肢の運動麻痺(運動障害)、感覚麻痺(感覚障害)、尿路機能障害又は腸管機能障害(神経因性膀胱障害又は神経因性直腸障害)等が生じることから脊髄損傷に含めて運用されています。また、広義の脊髄損傷には馬尾神経損傷が含まれます。
    なお、脊髄の最下部(第3仙髄以下)の損傷では、下肢の運動障害は生じないが、馬尾神経が損傷された場合には、脊髄そのものとしては第3仙髄以下が損傷されたに過ぎない場合でも下肢の運動障害が生じることがあります。

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賠償はどうするの?

交通事故により脊髄損傷を負った場合の損害賠償の費目は、傷害部分(治療による損害)と後遺障害部分(後遺症に基づく損害)とに大きく分かれます。
傷害部分は、治療費、入院雑費、通院交通費、休業損害、通院慰謝料などがあり、後遺障害部分は、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益・将来介護費などがあります。
脊髄損傷を負った場合に特に問題になる損害は、住宅改造費、自動車改造費・介護車両代、将来介護費、将来治療費・将来手術費などです。

住宅改造費

交通事故により脊髄損傷を負い車椅子生活を余儀なくされ、車椅子を使えるよう自宅の段差を解消したり、器具を購入したり、浴室やトイレを介護用に改造したりする必要がある場合、後遺障害の程度や生活環境等を考慮して、身体機能を補うために必要かつ相当な限度で、賠償が認められます。
自宅が改造に適さず、新たに介護用住宅を建設する必要性がある場合は、通常住宅の新築費用と介護用住宅の新築費用の差額のみ、といった算定がなされ、同居家族も便益を受ける場合などは一定金額が減額される可能性があります。
同様に、新築ではなく介護に対応した他の賃貸住宅に転居するという場合、原則的には、転居費用のほか、通常住宅と介護用住宅の家賃の差額のみが損害として認められます。

自動車改造費・介護車両代

交通事故により脊髄損傷を負い車椅子生活になり、自動車を改造する必要がある場合、自動車改造費については、住宅改造費と同様、後遺障害の程度や生活環境等を考慮して、身体機能を補うために必要かつ相当な限度で、賠償が認められます。
新たに介護用自動車を購入する場合は、購入費用全額ではなく、原則的には、通常の自動車と介護用自動車の差額のみが損害として認められます。

将来介護費

交通事故により脊髄損傷を負い症状固定後も自宅もしくは病院に於いて親族や職業介護人の介護が必要な場合は、将来介護費が認められる可能性があります。職業人介護の必要性やその費用、近親者介護料の金額については、後遺障害の内容・程度、常時介護か随時介護など介護の実態、介護する親族の有無や就労状況などが考慮されます。
原則としては、「年額(1年あたりの評価額)×症状固定時の平均余命に対応するライプニッツ係数」で計算されます。年額については、職業人介護の必要性が認められればこれを雇うのに必要かつ相当な実費、近親者介護であれば日額8000円が一応の基準とされています。ただし、具体的な介護の程度、介護時間、介護者の負担の重さ等により、日額8000円から増額されることもあります。
また、必ずしも、職業人介護と近親者介護の二者択一になるというわけではなく、例えば、被害者が若年の場合、介護にあたる近親者の就労可能年数(67歳まで)は近親者介護前提の介護料、その後は職業人介護前提の介護料で算定する場合や、近親者が就労している場合は、平日のみ職業人介護前提の介護料、休日は近親者介護前提の介護料、といった算定方法を採用する場合もあります。
さらに、近年、一回の支払で賠償する「一時金賠償」に対して、例えば1月に一回のように定期的に連続して支払う定期金賠償という賠償方法を認める民事訴訟法117条が新設され、それ以後定期金賠償を採用する判決も出てきています。

将来治療費・将来手術費

交通事故により脊髄損傷を負い治療しなければより悪化する状況が発生した場合や、症状固定後も自宅の介護体制が整うまで入院が必須だった場合や、症状固定後も定期的な検査が必要で、将来新たな手術が必要になる可能性がある場合は、その必要性に応じて将来治療費や将来手術費が認められる場合があります。

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生活はどうなるの?

交通事故により脊髄損傷の傷害を負われた方は、お仕事を休まざるを得なくなり、復帰できるかもわからない状況に置かれてしまいます。他方で、交通事故被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることができますが、交通事故後にすぐに賠償金を支払ってもらえるわけではありません。損害額が確定するのは、交通事故からかなり時間が経ってからです。
まずは、損害額が確定するまでの生活費等をどのように捻出するのかを考えなくてはなりません。以下では、交通事故により脊髄損傷を負われた方の生活費等についてご説明します。

当面の生活費について

交通事故により脊髄損傷の傷害を負われた方の当面の生活費を捻出する方法としては、人身傷害保険・搭乗者傷害保険、損害賠償金の仮払い、生命保険、労災保険、傷病手当金、所得補償保険、仮渡金、生活保護、借入れ、(民間の)医療保険が考えられます。

  • 1人身傷害保険・搭乗者傷害保険

    交通事故被害者又はそのご家族の方がご加入の保険から支払われる保険金です。交通事故の被害に遭った場合に治療費や慰謝料等が契約内容に従った金額で支払われます。ただし、人身傷害保険・搭乗者傷害保険の保険金は、約款上、被害者の方に生じた損害を全て填補できるほどの金額ではないことが通常です。それでも、人身傷害保険・搭乗者傷害保険は、交通事故被害者に過失があったとしても約款上定められた金額が支払われますので、被害者の方の過失が大きい場合に加害者に損害全額を賠償してもらえないときに、足りない部分を補填してもらえるという点で有用です。もちろん、交通事故加害者が無保険であり、かつ資力がなく、被害者に損害賠償をできない場合にも有用です。

  • 2損害賠償金の仮払い

    交通事故被害者は、相手方に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有していますが、その損害額が確定するのは、示談をする時か、裁判で判決を受けた時(正確には、口頭弁論終結時が基準になります。)です。しかし、交通事故から示談や判決までには長期間かかることが多いことから、損害額が確定する前に、相手方から休業損害や慰謝料の一部を仮に支払ってもらうことができる場合があります。特に、お仕事ができないことで収入源を失ってしまった場合等には、生活のために休業損害の仮払いをしてもらうのが一般的です。

  • 3生命保険

    約款の内容によりますが、被害者の方が亡くなっていない場合であっても、ご加入の生命保険から保険金の支払いを受けることが考えられます。生命保険金は被害者の方が払い込んだ保険料の対価ですから、生命保険金をもらったとしても、生命保険金は損害額から控除されません。したがって、交通事故被害者は、交通事故加害者から損害賠償金を取得し、かつ生命保険金を取得することができます。

  • 4労災保険

    お仕事中又は通勤中・帰宅中に交通事故にあった場合、労災保険から損害の填補を受けることができます。労災保険は、自賠責と異なり、休業補償全額が支払われるわけではありませんし、補償される範囲が自賠責より狭いですが、自賠責のように120万円という上限がないので休業補償や治療費を打ち切られることがないこと、認定された後遺障害等級が7級以上であれば年金が支払われること、過失減額がないこと、等大きなメリットがあります。

  • 5傷病手当金

    傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。その支給額は、病気や傷害で休業した期間、1日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額です。
    ただし、事業主から報酬の支給を受けた場合や、同一の傷病により障害厚生年金を受けている場合等の事情がある場合には、傷病手当金の支給額が調整されます。

  • 6所得補償保険

    被害者の方が所得補償保険にお入りであれば、その保険から休業損害についての填補を受けることができます。所得補償保険から休業損害の賠償を受けるのと同時に、加害者からも休業損害の賠償を受けるという二重取りはできませんが、所得補償保険金が休業損害額を上回る場合であっても、休業損害額が控除の対象になり、他の損害項目から控除することはできません。したがって、実際の休業損害を上回る所得補償保険金の支払いを受けた場合には、実際の休業損害以上の填補を受けることができるということになります。

  • 7仮渡金

    加害車両が自動車の場合、自賠責保険が適用されます。症状の程度や治療経過に応じて、自賠責保険から被害者に対して40万円、20万円、5万円が仮に支払われます。あくまで仮払いですので、最終的に自賠責保険からもらえる金額から差し引かれてしまいますが、当面の治療費や生活費に充てるという意味では有用です。

  • 8生活保護

    資産や援助してくれる親族もなく、また仕事をすることできずに最低の生活費がない場合には生活保護申請をして、国から生活費の支給を受けることができます。ただし、交通事故被害者は、生活保護の申請時に、相手方に対して損害賠償請求権という財産を有していることになるので、後日、相手方から損害賠償金を受け取ると、それ以降は支給停止となり、かつ、それまで国から受け取っていた生活保護の受給金を返還しなければなりません。
    それでも、事故直後に治療費や生活費に充てる金銭を取得できるという点で大きなメリットがあります。

  • 9借入れ

    独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が、交通事故被害者に対して生活資金貸付業務を行っています。ただし、交通事故被害者で生活費に困っている方一般を対象にしたものではなく、かなり利用できる場面が限定されています。

  • 10(民間)医療保険

    地方公共団体が行う国民保険や、企業が加入する国民保険組合等に医療保障がありますが(公的医療保険)、これらで補償しきれない費用を補償するために民間の医療保険があります。民間の医療保険の内容は様々ですが、入院費用、手術費用、通院費用等で保険金が受けられます。当面の生活費というよりは、当面の治療費に関係するものですが、負担しなければならない治療費が少なくなれば、それだけ生活費に回すことも可能になりますから、やはり当面の生活に寄与する制度といえます。

将来の生活費について

交通事故により脊髄損傷の傷害を負われた方の将来の生活費を捻出する方法としては、
損害賠償金、障害年金、労災年金、が考えられます。また、生活の補助として、身体障害者認定も受けるべきです。

  • 1損害賠償金

    示談又は裁判で確定した損害賠償金を交通事故加害者に支払ってもらうことで、まとまった金額を獲得することができます。その金額は、認定される後遺障害等級によって大きく金額が変わってきます。

  • 2障害年金

    病気やけが(傷病)で一定の障害の状態になった時に受給要件を満たしていれば、公的年金から「障害年金」が支給されます。障害年金は、認定される等級(後遺障害等級とは別のものです。)によって支給される額が変わってきます。
    厚生年金又は共済年金1級か2級の後遺障害等級が認められれば、障害厚生年金又は障害共済年金と併せて障害基礎年金(国民年金に基づくもの)の支給も受けることができます。

  • 3労災年金

    上述の通り、労災保険では、後遺障害等級が7級以上であれば、労災保険から障害年金が支払われます。
    ただし、労災保険による障害年金と併せて障害厚生年金や障害基礎年金の支給を受ける場合、労災年金による障害年金との調整として労災年金による障害年金が減額されます。具体的には、障害厚生年金と障害基礎年金の両方の支給を受ける場合には27%、障害厚生年金のみの場合は14~17%、障害基礎年金のみの場合は12%の労災年金の減額となります。

  • 4身体障害者認定

    積極的に金銭の交付を受けられるものではありませんが、生活を支える意味がありますので、ご紹介します。

    1)税金面のメリット
    所得税、住民税、自動車税、個人事業税、贈与税等での優遇が受けられます。
    2)医療費助成
    お住まいの市区町村により異なりますが、医療費の自己負担部分が少なくなります。
    3)その他
    補装具等の交付、交通機関の運賃割引、公共施設の入場料割引、住宅改造費の補助、自動車改造費の補助、自動車運転免許取得費補助、駐車禁止除外の標章の交付、NHK放送受信料減免、携帯電話会社の料金割引、JPの青い鳥郵便葉書の無償配布、非課税所得の利用等での優遇が受けられます。

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年間相談数2,000件以上、後遺障害認定実績3,000件以上。サリュの解決事例をご紹介。

case 01

ご家族の思いを考慮し、適正な賠償金を獲得

Aさん(高校生)自動車と衝突し、両下肢麻痺

Aさん(高校生)は、アルバイト帰りに自転車で道路を走行中、直進してきた自動車と衝突し転倒し、第4胸椎脱臼骨折、胸髄損傷により両下肢麻痺等の重傷を負いました。後遺障害1級1号の認定を受け、相手方保険会社からの示談提示があったものの、その内容に疑問を持ち、ご家族がサリュにお越しになりました。

サリュの対応

サリュでは、交通事故によって脊髄損傷(胸髄損傷)という重大な障害を負った十代の若者が、今後、その障害を一生抱えて生きていかなければならないという事実を重く受け止め、ご家族とご本人様に対し、しっかりとした賠償を求めていくことをお約束しました。
まず、相手方保険会社の示談案を検討したところ、当初の相手方保険会社からの提示額では、将来治療費、将来通院交通費、将来通学交通費、近親者慰謝料が計上されていないなど、かなり少なく見積もられていました。また、重度後遺障害であるため、これまでに支払った費用もかなり高額かつ費目も多岐にわたるため、計算はかなり煩雑なものとなりましたが、担当弁護士、スタッフが一丸となって調査と計算をすすめました。また、ご本人の現状も確認、検討のうえ注意深く損害額を算定し、相手方保険会社との交渉をすすめ、ご本人とそのご家族に有利な金額を引き出すことができました。また、サリュの調査の結果、Aさんの父親が人身傷害保険に加入しており、Aさんの交通事故であっても、父親加入の同保険からも支払いが受けられることがわかりました。人身傷害保険は、被害者に過失がある場合、本来、加害者側から支払いを受けることができない過失部分の損害を全額回収できる可能性があります。本件でも、Aさんに過失があったため、人身傷害保険を先行して請求することでAさんの過失部分の損害を含めた全損害額を回収することができる状況でした。しかし、Aさんのご家族が加入する人身傷害保険会社は、ご家族にその内容をきちんと説明していませんでした。
そこで、サリュは、約款を確認したうえで人身傷害保険金の請求をすることにしました。人身傷害保険会社との調整は、損害賠償請求権の代位の範囲という専門的な論点を巡り難航しましたが、最高裁判所において既に一定の結論が出されていることを担当弁護士は丹念に説明し、何とか適正な金額を引き出すことができました。

結論

結果としては、Aさん自身の過失割合部分についても人身傷害保険金によってカバーされ、相手方からの賠償もふくめてAさんの損害について最大限の補償を受けとることができ、Aさん及びご家族にも喜んでいただけました。
交通事故においては、相手方保険会社のみならず、ご自身の加入されている保険会社であっても、必ずしも適切に対応するとは限りません。特に脊髄損傷のような重度後遺障害の場合には、言われたまま支払われる場合と弁護士に依頼した場合では、得られる金額に大きな差が生じることも考えられます。
ご家族が大変な障害を負われたなかで、専門知識を持つ保険会社と交渉することは一筋縄ではいきません。まずはお気軽にお問い合わせください。

case 02

素因減額の割合を20%から10%へ

Kさん(62歳・女性・兼業主婦)交通事故後に頚椎後十字靭帯骨化症が判明

Kさん(62歳・女性・兼業主婦)は、原動機付自転車に乗って信号のない交差点を通過していたところ、左側から交差点に進入してきた自動車に衝突され、転倒しました。この交通事故で、Kさんは、中心性脊髄損傷・骨盤骨折の大怪我を負いました。また、この時Kさんが、頚椎後十字靭帯骨化症(OPLL)であったことが判明しました。
Kさんは、8ヶ月にわたる長期間の入院と定期的な通院リハビリを行いましたが、症状は改善せず、四肢の痺れが残存し歩行時にもふらつきが出るなど、日常生活に大きな支障が出ました。Kさんは、体が元に戻らないならせめて適正な後遺障害の認定を受けたいと思い、症状固定前からフルサポートしてくれるサリュに依頼しました。

サリュの対応

サリュは、Kさんの的確な後遺障害診断書診断書作成をサポートし、自賠責保険に被害者請求の手続きを行いました。その結果、Kさんの後遺障害は、請求時の狙い通り5級2号と認定されました。脊髄損傷の場合には、後遺障害診断書だけでなく他の書類も作成していく必要があり、その一つ一つの意味とポイントを熟知している必要があります。サリュでは、それらの点を丁寧にサポートすることで適切な等級認定に繋げています。その後、サリュの担当弁護士は示談交渉を行いましたが、相手方は、Kさんに元々OPLLがあったから症状が悪化したとして、20%の素因減額を主張してきました。
素因減額は、もともとお身体に障害などの疾患(これを素因と言います)があった方が交通事故に遭われた際に問題となります。というのも、交通事故によって生じた被害者の治療費や後遺障害などは、素因がなければ、もっと治療費も低額に収まり、また後遺障害も重篤化しなかった可能性があります。素因減額は、これに着目して、交通事故によって生じた損害は、被害者の素因も影響を及ぼしているとして、賠償額を素因の程度に応じて減額するという理論です。一般的に裁判でも、被害者にOPLLがある場合は、20%から30%さらに骨化の程度によっては50%の素因減額がされる可能性があります。

結論

サリュは、確かにKさんはOPLLであったが、今回の交通事故以前に自覚症状が全くなく今回の交通事故に遭わなければ、このまま症状が出なかった可能性があること、バイクで転倒し相当強度の外力が加わったこと、Kさんは自宅を改造(バリアフリー化)しなければならないほど日常生活に大きな支障が出ていること等、Kさんの気持ちを酌んで粘り強く交渉しました。その結果、素因減額の割合を10%で食い止めることに成功しました。
その上で、休業損害や入通院慰謝料及び後遺障害慰謝料、そして逸失利益について、当方が主張した裁判所基準のほぼ満額を相手方に認めさせ、最終的には賠償金約2700万円を回収することができました。
Kさんは、後遺障害診断書作成からフルサポートしてくれたこと、そして何よりOPLLに関して、自分の気持ちを酌んで粘り強く交渉してくれたことにとても満足してくださいました。

case 03

事前の医師面談でスムーズに等級を獲得

Sさん(50代後半・女性・専業主婦)事故により2年間に渡る投薬治療

Sさん(50代後半・女性・専業主婦)は、ご主人が運転する自動車に乗車中、加害車両(自動車)に追突され、頚部を負傷しました。Sさんは、今回の交通事故直後から頚部痛や四肢のしびれ等の症状を訴え、投薬治療等を続けましたが、症状は改善しませんでした。そこでSさんは、交通事故から約1年後、頚椎椎弓形成術(頚椎拡大術)という手術を受けました。それでもSさんの症状は劇的には改善しないまま症状固定の診断を受けました。

サリュの対応

Sさんの治療期間は約2年間に及びました(保険会社からの治療費支払いは交通事故後約1年の時点で打ち切られました)が、途中、サリュは医師面談を行い、主治医から長期間の治療を必要とする理由(脊髄の圧迫所見が認められ、これを除くために上記手術が必要であったこと、術後少なくとも1年間の経過観察が必要であることなど)を聴取していましたので、症状固定のタイミングについて迷うことはありませんでした。
サリュが、被害者請求を行った結果、頚髄症状について9級10号が認定されました。

結論

サリュは、全治療期間を前提にSさんの損害額を計算し、示談交渉に臨みました。相手方からは脊柱管狭窄等を原因とする素因減額の主張が予測されましたが、交渉の結果、素因減額を考慮することなく約2200万円支払い(自賠責保険金を含む)での示談解決となりました。
Sさんは、現在でも症状が完全になくなったわけではありませんが、サリュのおかげで、心配していた今後も必要となるはずの治療費等が示談金から捻出できると安心していただけました。

case 04

休業損害を有利に、ほぼ請求額通りの解決

Tさん(53歳・男性・自営業)中心性頚髄損傷と診断

Tさん(53歳・男性・自営業)は、タクシーに乗車中に追突され、中心性頚髄損傷と診断されました。
両手手指から両手関節にかけて痛みと痺れが出現し、仕事を約3ヶ月に渡り休業せざるを得ませんでした。保険会社が休業損害について、実際の収入をベースにして計算をしなかったこと等に不満を感じ、サリュに相談にいらっしゃいました。

サリュの対応

受任後、まずは適切な等級認定が必要だと考えたサリュは、自賠責保険に等級申請し、狙い通り12級13号を獲得することができました。
続く示談交渉では、休業損害や後遺障害逸失利益を計算する際の基礎収入が争点になりました。通常、交通事故前1年間の年収が基礎収入として採用されることが多いのですが、Tさんの年収は年度によってばらつきがあり、たまたま交通事故前1年間の年収が落ち込んでいました。相手方は当然のように、事故前年のものを使うべきだと主張してきましたが、サリュは、交通事故前3年間の平均年収を基礎収入とすべきであると主張し、賠償金額がなるべく高くなるように交渉を進めました。

結論

交渉の結果、交通事故前3年間の平均年収を基礎収入として認めさせたほか、一般には賠償が認められにくい仕事で利用したタクシー代、Tさんが入院していたときの配偶者の付添看護料なども含め、既に支払われていた自賠責保険金224万円にプラスして、サリュが請求した金額のほぼ満額である577万円で示談が成立しました。
Tさんは、サリュがお手伝いしたことで、無事に後遺障害等級が認定されただけでなく、損害額についても休業損害を含めて、正当な金額が評価されたことにとても喜んでくださいました。

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