• 後遺障害

上下肢以外の⾻の変形

上下肢以外の骨の変形について

上下肢以外の脊柱や、鎖骨、肋骨、肩甲骨などの変形についてご説明します。

脊柱の変形障害

解剖学上、脊柱とは頭側の環椎(第1頚椎)から尾側の尾骨までの骨の連なりの柱を指します。
脊柱は、上から順に頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個の椎骨がそれぞれ椎間板を挟んで連なっており、第5腰椎の尾側に仙骨と尾骨がついています。
しかし、障害等級表上の脊柱の障害は、頸部および体幹の指示機能ないし保持機能およびその運動機能に着目したものであり、これらの機能を有していない仙骨および尾骨については脊柱に含まないという扱いになります。
ただし、仙骨については、骨盤骨の一部でもあるので、仙骨の障害は骨盤骨の障害に含めて扱われます。
また、脊柱のうち、頚椎(頚部)と胸腰椎(胸腰部)とでは主たる機能が異なっていることから、障害等級の認定に当たっては、原則として頚椎と胸腰椎は異なる部位として取扱い、それぞれの部位ごとに等級を認定します。
脊柱の障害については、障害等級表上変形障害及び運動障害について、次のとおり等級が定められています。

等級 変形障害 運動障害
6級 脊柱に著しい変形を残すもの 脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級
(変形障害は相当等級)
脊柱に中程度の変形を残すもの 脊柱に運動障害を残すもの
11級 脊柱に変形を残すもの

脊柱の変形障害は、上記のとおり「脊柱に著しい変形を残すもの」(6級5号)、「脊柱に中程度の変形を残すもの」(8級相当)、「脊柱に変形を残すもの」(11級7号)の3段階に格付けされていますが、この3段階は、下記のとおりの認定要件に基づいて、6級が2パターン、8級と11級がそれぞれ3パターンに分かれています。

等級 後彎の程度 側彎の程度
(コブ法)
椎体高減少椎対個数 前方椎体高の減少の程度
6級5号 脊柱圧迫骨折等により2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの (前方椎体高の著しい減少)
減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上であるものをいう。
6級5号 脊柱圧迫骨折により1個以上の椎体の前方椎体高が減少しているもの (前方椎体高の減少)
減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計の差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものをいう。
コブ法による側彎度が50度以上となっているもの
8級2号 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し後彎が生じているもの (前方椎体高の減少)
減少したすべての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものをいう。
8級2号 コブ法による側彎度が50度以上あるもの
8級2号 環椎または軸椎の変形・固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合を含む)により次のいずれかに該当するもの。このうち、(a)および(b)については、軸椎以下の脊柱を可動させずに(当該被災者にとって自然な肢位で)、回旋位または屈曲・進展位の角度を測定する。
(a)60度以上の回旋位となっているもの
(b)50度以上の屈曲位または60度以上の進展となっているもの
(c)側屈意となっており、レントゲン写真等により、矯正位の頭蓋庭部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
11級7号 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン写真、MRI、CTなどの画像により確認できるもの
(変形の度合い問わず)
11級7号 脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く)
11級7号 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

①認定のポイント

後彎度と側彎度の判定方法について脊柱の変形障害は、原則として、変形した椎体の前後の椎体高の比較による椎体高の減少度(後彎度)やコブ法による側彎度を測定して評価します。それぞれの測定方法は下記のとおりです。

<後彎度の判定>

変形した椎体の前方の椎体高の合計(ア+イ+ウ)と、変形した椎体の後方椎体高の合計(カ+キ+ク)の差Xが、後方椎体高の1個あたりの高さY((カ+キ+ク)÷3)以上、ないしはYの50%以上であること。

<側彎の判定/コブ法による>

コブ法とは、レントゲン画像から脊柱の側彎の角度を計測するものです。上下の側彎カーブの変曲点において、頚側は椎体の上縁、尾側は下縁で線を引き、角度を求めます。

鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨の変形

鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨または骨盤骨に著しい変形を残すものは、12級5号として認定されます。

<認定のポイント>

上記にいう「著しい変形を残すもの」とは、裸体になったときに、変形や欠損が明らかに分かる程度のものに限定されており、レントゲン写真によってはじめてその変形が発見しうる程度のものはこれに該当しません。

① 鎖骨・肩胛骨

鎖骨・肩胛骨は、正中面にて左右に分かれているため、それぞれ左右別々の骨として取扱います。

② 肋骨

肋骨は、左右対称に12の骨によって構成されていますが、後遺障害等級認定においては、全体を一括してひとつの後遺障害として扱います。
1本が変形した場合も複数が変形した場合も、取扱は同じになります。

その他体幹骨の障害

「その他体幹骨」とは鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨、骨盤骨(仙骨を含む)のことを指しますが、ここでは特に骨盤骨の変形について取り上げます。
骨盤骨の変形には、おもに、①骨折による変形②事故により受傷した他の部位の手術のために、骨盤骨の一部を採取して移植したことによって変形が生じた場合(腰椎固定術のために採骨術が行われた場合)があります。

部位と障害の内容 等級
体幹 脊柱 別項 12級5号
その他体幹骨 鎖骨、胸骨、肋骨、肩胛骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの

<ポイント>

「著しい変形を残すもの」とは、裸体になったときに、変形が明らかにわかるもの。レントゲン写真等によってはじめて変形がわかるものは該当しません。採骨による変形の場合も同様です。