• 部位別の傷病

手-手首

月状骨周囲脱臼
げつじょうこつしゅういだっきゅう

01.傷病名の一般的説明

手の骨を手根骨といいますが、手に一番近いところの骨は、大きく分けて小指側の月状骨と親指側の舟状骨(しゅうじょうこつ)からなります。手の関節に手の甲側の強い力が働くと、月状骨周囲骨骨折や脱臼が生じます。手の強い痛みや腫脹などがみられ、可動域が制限されることもあります。また、月状骨の圧迫により正中神経領域の麻痺やしびれなどの知覚障害を生じることもあります。手根不安定症を続発する可能性が高いです。

02.必要な検査等

X線撮影で判明し、CTによれば詳細な骨傷や位置関係を把握できます。正中神経麻痺が生じることがあるので、各種神経学的検査及び神経伝達速度検査を実施する必要があります。徒手整復を行いますが、手術による固定がなされることもあります。

手根骨骨折
しゅこんこつこっせつ

01.傷病名の一般的説明


手の骨を手根骨といいますが、手に一番近いところの骨は、大きく分けて小指側の月状骨と親指側の舟状骨(しゅうじょうこつ)からなります。
手の平を地面について着地した場合など、手の関節が過伸展した場合に起こります。手の骨折の70パーセント以上のこの骨折が占めます。手関節の鈍痛、運動時痛、可動制限、握力低下などが症状としてみられます。手根不安定症を続発する可能性があります。

02.必要な検査等

X線・CT撮影で判明します。

三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷
さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう

01.傷病名の一般的説明

TFCCは線維軟骨性の円板であり、手根骨と尺骨頭の間にあって、クッションの役割をしていますが、手関節に強いねじれと背屈力(手の甲を反らす力)が加わった場合損傷が発生します。手関節尺側(小指側)の痛みや握力の低下、前腕回旋時の遠位橈尺関節部の痛みが生じます。具体的には、グリップしながら手関節をひねる動作、例えばドアノブを回したりハンドルを切ったりするときにクリックを生じたり、疼痛や引っかかり感が発生します。

02.必要な検査等

MRIや関節鏡検査により判明します。X線撮影では、本症は捉えられません。

手根不安定症
しゅこんふあんていしょう

01.傷病名の一般的説明

手根骨の正常な運動が、手靱帯の断裂や弛緩、手根骨骨折や橈骨遠位部骨折などにより破綻し、手根骨の配列に異常をきたすことです。運動痛、圧痛、可動域制限、握力低下の他、手関節運動時の痛みを伴うクリックが生じることもあります。徒手的整復やギブス固定で治癒しますが、手術が必要な場合もあります。

02.必要な検査等

X線撮影や、関節造影、動態透視などで判明します。

手根管症候群
しゅこんかんしょうこうぐん

01.傷病名の一般的説明

手根管部で、正中神経(せいちゅうしんけい・前腕や親指の屈曲を支配する神経)が圧迫されて発症します。正中神経領域(前腕部や親指)のしびれ、知覚障害、親指球筋の委縮が生じます。親指球筋の委縮が進むと、いわゆる猿手になってしまいます。

02.必要な検査等

知覚検査、徒手筋テスト・偽Tinel徴候テスト等、電気生理学検査、手根管内圧測定、MRIなどで判明します。

中手骨骨折
ちゅうしゅこつこっせつ

01.傷病名の一般的説明

中手骨は、親指では第2関節から、その他の指では第3関節から、手の付け根の関節までの骨を指します。障害を残すことは比較的少なく、血行も良い部位なので骨癒合は早期に生じます。骨幹部骨折では、骨折の態様は、横骨折、斜骨折、粉砕骨折に分かれ、横骨折は直接の外力により生じ、斜骨折は、指に捻れが起こった時に生じます。粉砕骨折では、軟部組織の損傷を伴います。骨頸部骨折は、手を握って強打する時に第5中手骨(小指)に生じ、固定性が悪く整復も困難な場合があります。骨頭骨折は、圧迫による粉砕骨折となるため、治療は難渋します。

02.必要な検査等

X線撮影により容易に判明します。

指基節骨骨折
しきせつこつこっせつ

01.傷病名の一般的説明

節骨は、親指では第1関節から第2関節の間、それ以外の指では第2関節から第3関節までの骨を指します。手指の骨折では比較的多い症状です。治療は、徒手整復を行い、ギブスで固定する方法が一般的ですが、固定性が悪い場合、手術が必要な場合があります。

02.必要な検査等

X線撮影により容易に判明します。

MP関節脱臼
えむぴーかんせつだっきゅう

01.傷病名の一般的説明

MP関節とは、親指では第2関節、それ以外の指では第3関節を指します。基節骨が過屈曲する背側脱臼がほとんどで、人差指の受傷が多くみられます。治療は、徒手整復を行い、ギブス固定する方法が一般的ですが、不安定性を残す場合には、手術が必要な場合があります。

02.必要な検査等

X線撮影により容易に判明します。

PIP関節脱臼骨折
ぴーあいぴーかんせつだっきゅうこっせつ

01.傷病名の一般的説明

PIP関節とは、親指以外の第2関節を指します。中節骨基部掌側に三角骨折ができてその部に残り、他の部位は背側に脱臼する背側型が多くみられます。治療は、脱臼整復後の状態により、保存療法か手術療法に分けられます。

02.必要な検査等

X線撮影により容易に判明します。

指屈筋腱損傷
しくっきんけんそんしょう

01.傷病名の一般的説明

指の屈筋腱(指を曲げる筋肉や腱)は掌側に並んでいますが、損傷の部位によって、8類型に分けられています(アメリカ手の外科学会分類(Kleinert案))。橈骨遠位端骨折や変形性関節症により生じることが多いです。

02.必要な検査等

エコー、MRIにより損傷部位を特定することが肝要です。

指伸筋腱損傷
ししんきんけんそんしょう

01.傷病名の一般的説明

指の伸筋腱(指を伸ばす筋肉や腱)は背側に並んでいますが、損傷の部位によって、8類型に分けられています(アメリカ手の外科学会分類(Kleinert案))。類型により手術方法が異なります。橈骨遠位端骨折や変形性関節症により生じることが多いです。外傷や神経麻痺により特有な指の変形を生じることがあります。癒着が生じることが多く、癒着が起こると関節の可動域制限につながります。

02.必要な検査等

手の単純X線撮影で判明します。また、CTも有用です。手周辺の骨の脱臼を併発していることも多く、また、神経・血管の損傷も発生することがあり、知覚鈍磨・手のしびれ・握力低下が生じる場合もあります。徒手整復及びギブス固定で治癒することも多いのですが、関節の適合が十分得られないような場合は手術により銅線などによる固定術が必要になり、骨の欠損が生じた場合には、骨移植が必要な場合もあります。