• 部位別の傷病

大腿

下肢における絞扼性神経障害

01.傷病名の一般的説明

絞扼性神経障害とは、絞扼点(関節近傍の解剖学的に狭く、移動性の少ない抹消神経に障害を受けやすい部位)に限定的に生じる抹消神経障害です。上肢に比べて下肢は抹消神経障害が生じることは少ないですが、下肢であっても骨折後の変形、筋の破格、腱滑膜の炎症などを原因に抹消神経障害が生じるといわれています。

02.必要な検査等

レントゲン、CT、MRI画像の撮影、エコー、針筋電図が有意となります。神経障害が生じている原因についても明らかにする必要があることは当然ですが、外側大腿皮神経の障害の場合、しびれ、知覚異常、疼痛、筋力低下、Tinel様徴候などをきちんと後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。総腓骨神経の障害の場合、下垂足や圧痛が生じていることを記載してもらう必要があります。深腓骨神経の障害の場合は筋委縮を、浅腓骨神経の障害の場合は知覚障害を忘れないように後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

大腿骨骨頭骨折

01.傷病名の一般的説明

ほとんどの場合が,股関節後方脱臼に伴って大腿骨骨頭が骨折します。股関節後方脱臼に伴って生じるため,股関節後方脱臼と同じく,臨床症状としては,下肢短縮,屈曲,内転,内旋位をとります。また,骨頭壊死,坐骨神経麻痺が生じる場合もあります。

02.必要な検査等

まずは,骨盤正面のレントゲン画像を撮影し,脱臼方向の確認,骨折の有無を確認します。その後,骨折の程度,骨片の大きさを確認するためには,CT画像が有意となってきます。また,骨頭壊死を確認するため,経過観察中にMRI画像や骨スキャンを撮影します。

大腿骨頚部(内側)骨折

01.傷病名の一般的説明

大腿骨の一番上の球形の部分(骨頭)のすぐ下の細くなっているところの骨折を指します。骨癒合しづらい部位で、偽関節になることもあります。また、骨頭壊死にいたることもあるなど、慎重な治療が必要です。

02.必要な検査等

レントゲン画像が有意な立証方法です。

大腿骨転子部骨折

01.傷病名の一般的説明

大腿骨転子部骨折は、大腿骨頸部骨折とは異なり関節包外側の骨折であるため、骨癒合は比較的良好です。臨床症状としては,転位(骨のずれ)が無い場合は,大転子部の圧痛と股関節の運動痛の他には所見が乏しいのが一般的です。骨折が大きく転位している場合は,骨折側の下肢は短縮し,外旋します。

02.必要な検査等

多くの場合,レントゲン画像により骨折の有無が判断されます。

大腿骨転子下骨折

01.傷病名の一般的説明

大腿骨転子下部は、大腿骨の小転子(大腿骨のうち、太腿付け根側にある骨の膨らみのことです)から足のつま先側に向けて5センチメートルの範囲を言い、この部位を骨折した状況を大腿骨転子下骨折といいます。若年層の場合は大きい外力が加わって生じますが、高齢者の場合は比較的小さな外力で生じることもあります。交通事故の場合、他部位の合併損傷も生じることが少なくなく、股関節の可動域制限が残存する可能性もあるなど、重傷といえます。また、人工骨頭置換術が行われた場合、人工骨頭の耐用年数は限界があるので、将来の治療費(人工骨頭の再置換術の費用)を請求できるように準備が必要です。

02.必要な検査等

レントゲン撮影が有意です。

大腿骨骨幹部骨折

01.傷病名の一般的説明

大腿骨骨幹部(大腿骨のおよそ真ん中周辺部分をいいます)が骨折した場合、痛み、大腿部の著明な腫脹などが生じます。合併損傷を伴うことが多く、稀にコンパートメント症候群が生じることもあります(コンパートメント症候群とは、筋膜と骨で閉鎖された区域の内圧が上昇し、結果、機能障害を生じたものをいいます。コンパートメント症候群が発生したまま放置すると、コンパートメント内の筋壊死と神経麻痺が生じ、決して軽視できない重病です)。

02.必要な検査等

レントゲン撮影が有意です。

小児の大腿骨骨幹部骨折、顆上部骨折

01.傷病名の一般的説明

小児の場合、成人に比べて仮骨形成が早く、回復能力が高いことが特徴ですが、骨端線にかかる骨折では骨の成長障害、変形をきたす可能性があります。治療方法は保存的治療が原則ですが、骨折の状況に応じて手術療法が行われることもあります。なお、小児の場合、治療の際に親御さんの付添が必要となることが多く、この場合は付添看護費の請求を忘れないように注意すべきです。

02.必要な検査等

レントゲン撮影が有意です。

大腿骨遠位部(大腿骨顆上、顆間、顆部)の骨折

01.傷病名の一般的説明

大腿骨骨遠部骨折は、大腿骨の膝側付近の骨折をいいます。若年層の場合は強い外力が加わった場合に生じますが、高齢者の場合は比較的弱い外力が加わっても生じることがあります。大腿骨骨遠部骨折は、大腿骨の真ん中周辺が骨折した場合と異なり、膝関節の可動域制限が生じやすい点が特徴です。膝窩動脈損傷を伴った場合、脚部の切断もありうる重大な傷病です。

02.必要な検査等

レントゲン撮影が有意です。

大腿四頭筋の断裂

01.傷病名の一般的説明

大腿四頭筋は、大腿部の外側広筋、太腿直筋、内側広筋、中間広筋(太腿の膝上周辺、身体の前側に位置する筋肉です)をいいます。筋腹部、筋腱移行部を損傷することが多く、筋断裂端の膨隆や断裂部の陥没を触診して所見を得ます。

02.必要な検査等

損傷の部位、程度を立証するためにはMRI画像の撮影が有意です。とくに、大腿四頭筋の不全断裂で伸展力が維持されている場合、単なる皮下組織の断裂と判別するため、MRIにて画像所見を獲得する必要があります。

ハムストリングの断裂

01.傷病名の一般的説明

ハムストリングとは、膝の裏柄及びその周辺部分に位置する、大腿二頭筋、半膜様筋肉、半腱様筋の総称です。交通事故でハムストリングが断裂するケースは多くありませんが、外力が加わったことにより膝関節伸展と同時に股関節屈曲が強制され、反射的に筋収縮が生じてハムストリングの断裂に至るといわれています。

02.必要な検査等

大腿四頭筋の断裂と同様、MRIが有意な検査方法となります。