肘-前腕
肘頭骨折
ちゅうとうこっせつ
01.傷病名の一般的説明
肘頭とは、尺骨(前腕部の小指側の骨)の上頭部のことで、この部分を骨折することです。肘頭部へ直接外力が加わった場合や、肘の屈曲時に上腕三頭筋の筋力により骨の一部が裂離して生じます。事後に変形性肘関節症を生じることもあります。
02.必要な検査等
X線撮影により確認でき、徒手整復とギブスによる固定で元に復しますが、転位(もとの位置からずれること)が大きい場合などでは、手術が必要になります。神経・靱帯などの軟部組織が損傷している場合もあるので、MRI撮影や神経学的検査、関節鏡検査、筋委縮などの検査も必要な場合があります。
肘関節脱臼
ちゅうかんせつだっきゅう
01.傷病名の一般的説明
脱臼とは、外力によって関節が生理的運動範囲(関節可動域)以上の動きを強制され、関節端の一方が関節包を破って関節面の正常な相対関係を失ったものをいいます。関節面の一部が互いにまだ接触しているものを不全脱臼または亜脱臼といい、関節面がまったく接触していないものを完全脱臼と呼びます。上腕動脈・正中神経・尺骨神経の損傷を合併することもあり、事後に変形性肘関節症を生じることもあります。
02.必要な検査等
脱臼はX線撮影で確認でき、徒手整復により元に復します。ただし、症状によっては、手術が必要な場合もあります。
変形性肘関節症
へんけいせいちゅうかんせつしょう
01.傷病名の一般的説明
肘関節の骨や軟骨が変性・摩耗したために、患部の痛みや運動制限、腫脹を起こす疾患で、肘関節の骨折や脱臼、靱帯損傷の後などに生じます。また、中年以上の方、肘を酷使する職業従事者、スポーツ選手にも多くみられます。
02.必要な検査等
感染症との区別のためMRI撮影や関節液検査を行います。また、断層撮影、CT、関節造影も必要となります。筋委縮や神経麻痺の有無を検査するため、各種神経学的検査や神経伝達速度検査が必要な場合があります。
肘部管症候群
ちゅうぶかんしょうこうぐん
01.傷病名の一般的説明
肘関節内側に走る尺骨神経が圧迫されることにより、尺骨神経の支配領域である薬指、小指にしびれや知覚鈍磨、握力の低下を生じさせるもので、 変形性肘関節症が原因となることが多いです。
02.必要な検査等
運動麻痺や感覚麻痺が生じている個所の分布を確実に捉える事が必要です。筋委縮の有無を確認するため、腕の周囲計の測定も必要です。筋電図検査により、神経の麻痺が確認できますので、筋電図検査は必須です。
橈骨頭骨折、橈骨頸部骨折
とうこっとうこっせつ、とうこつけいぶこっせつ
01.傷病名の一般的説明
前腕の親指側の骨を橈骨といいますが、橈骨の肘に近い方の先端部(橈骨頭)又はその下のくびれた部分(橈骨頸部)を骨折することをいいます。肘をまっすぐ伸ばした状態からさらに外側に力がかかった場合(過伸展)に生じやすい骨折です。肘頭骨折や内側側副靱帯損傷を合併することも多くみられます。
02.必要な検査等
X線撮影で比較的容易に所見が得られますので、早期のX線撮影を行う必要があります。肘内側の圧痛・皮下出血がある場合には、X線ストレス撮影を行います。また、靱帯などの軟部組織が損傷している場合もあるので、MRI撮影や神経学的検査、関節鏡検査検査、筋委縮などの検査も必要な場合があります。
橈骨・尺骨骨幹部骨折
とうこつ・しゃっこつこっかんぶこっせつ
01.傷病名の一般的説明
前腕骨は親指側の橈骨と小指側の尺骨の2本で1つの機能をもっていますが、この骨の幹部に強い外力や捻れが加わって骨折することです。診断書に前腕部骨幹部骨折と記載されることもあります。神経や血管を損傷していることも多く、指先のしびれや運動麻痺がおこることもあります。
02.必要な検査等
X線撮影で容易に判明し、多くはギブス固定などの保存的療法で治癒しますが、プレート等での固定のための手術が必要な場合もあります。神経・血管を損傷している場合も多いので、MRI撮影や各種神経学的検査、筋委縮、神経伝達速度検査などの検査が必要な場合があります。
Monteggia骨折
もんてぎあこっせつ
01.傷病名の一般的説明
橈骨頭脱臼を伴う尺骨骨幹部骨折をいいます。外力などで尺骨が折れることで筋肉が引っ張られ、橈骨頭が脱臼するものです。折れた骨が神経や血管を損傷することで、指先にしびれや麻痺が生じたり、知覚が鈍磨することもあります。
02.必要な検査等
X線撮影で容易に判明し、多くはギブス固定などの保存的療法で治癒しますが、プレート等での固定のための手術が必要な場合もあります。神経・血管を損傷している場合も多いので、MRI撮影や各種神経学的検査、筋委縮、神経伝達速度検査などの検査が必要な場合があります。
Galleazzi骨折
がれあっちこっせつ
01.傷病名の一般的説明
橈骨骨幹部骨折に伴い尺骨頭の背側の脱臼を生じたものをいいます。ちょうどMonteggia骨折と逆のメカニズムで発症することから、逆Monteggia脱臼骨折ともいわれます。
02.必要な検査等
X線撮影で判明しますが、肘関節のX線撮影を行わないと、尺骨頭の脱臼を見逃しがちなので、注意が必要です。血管や神経などの軟部組織が損傷している場合もあるので、MRI撮影や神経学的検査、関節鏡検査、筋委縮などの検査も必要な場合があります。成人の場合、保存療法では回復しがたく、手術が必要になります。整復が不十分な場合、回内・回外制限を生じることがあります。
橈骨遠位部骨折
とうこつえんいぶこっせつ
01.傷病名の一般的説明
橈骨の遠位(手に近い方)骨幹端部から骨端部の骨折です。骨折の種類によって様々な分類方法がありますが(主に人名で分類されます)、交通事故により生じることが多い、Colles(コレス)骨折とSmith(スミス)骨折を取り上げます。なお、両者は、手の甲側に外力が働いた場合(遠位骨端の背側転位:Colles骨折)、手のひら側に外力が働いた場合(遠位骨端の掌屈転位:Smith骨折)で異なります。手根不安定症や手根管症候群を続発することがあります。 Colles骨折(これすこっせつ): 橈骨の遠位骨幹端部から骨端部の骨折で、手のひらを地面について骨折した場合など、手の甲側に外力が働いた場合(遠位骨端の背側転位)におきる骨折です。側面から手を見ると、フォークを裏返したような変形をきたします。
Smith骨折(すみすこっせつ): 橈骨の遠位骨幹端部から骨端部の骨折で、手の甲部に車両が衝突した場合など掌側に外力が働いた場合(遠位骨端の掌屈転位)におきる骨折です。屈筋腱に影響するため、不安定性が強くなります。
02.必要な検査等
運動麻痺や感覚麻痺が生じている個所の分布を確実に捉える事が必要です。筋委縮の有無を確認するため、腕の周囲計の測定も必要です。筋電図検査により、神経の麻痺が確認できますので、筋電図検査は必須です。
Volkmann拘縮
ふぉるくまんこうしゅく
01.傷病名の一般的説明
腕の骨折等による腫脹やギブス固定などにより血管が圧迫され、血流が阻害されることで、前腕以遠の筋肉や神経が壊死し、その結果、指や腕が固まってしまったり(拘縮)、関節が変形したりします。初期症状では、痛み・脈拍喪失・高度の腫脹・水疱形成・知覚異常などが生じます。組織内圧測定により確定診断を得ます。初期症状が発生した場合、血行改善をはかりますが、症状が改善されない場合、筋膜切開術での手術が行われます。筋肉が壊死した場合の完全な回復を図る治療法は現在のところありません。手根管症候群を発症することもあります。
02.必要な検査等
組織内圧測定により確定診断を得ます。初期症状が発生した場合、血行改善をはかりますが、症状が改善されない場合、筋膜切開術での手術が行われます。筋肉が壊死した場合の完全な回復を図る治療法は現在のところありません。手根管症候群を発症することもあります。
橈骨神経麻痺
とうこつしんけいまひ
01.傷病名の一般的説明
橈骨神経は、頸神経5番から8番及び胸神経1番から伸びる上肢の伸筋すべてを支配する神経です。肘から中枢部で神経の損傷を受け麻痺が生じると、肘や手の伸展が不能になり、手を持ち上げられない状態(下垂手・かすいて)を生じることがあります。また、手の甲の親指と人差し指の付け根付近が支配領域ですので、橈骨神経に損傷等があると、この部分の感覚を失います。上腕骨骨幹部骨折、肘関節周囲の骨折、手関節橈側(親指側)の外傷などにより生じます。
正中神経麻痺
せいちゅうしんけいまひ
01.傷病名の一般的説明
正中神経は、頸神経5番から8番及び胸神経1番から伸びる前腕や母指の屈筋を支配する神経です。この神経に損傷・圧迫等があると、母指や人差指に感覚麻痺が生じたり、曲げにくくなることがあり、ひどい場合は、母指球筋が委縮しいわゆる「猿手(さるて)」が出現することがあります。手根管症候群により多発し、また、上腕骨顆上骨折により生じることもあります。
02.必要な検査等
運動麻痺や感覚麻痺が生じている個所の分布を確実に捉える事が必要です。筋委縮の有無を確認するため、周囲計の測定も必要です。筋電図検査により、神経の麻痺が確認できますので、筋電図検査は必須です。
尺骨神経麻痺
しゃっこつしんけいまひ
01.傷病名の一般的説明
尺骨神経は、頸神経8番及び胸神経1番から伸びる母指球筋(親指の付け根のふくらみ部)以外の手指の屈筋を支配する神経です。楽器演奏で重要な小指側の筋肉を支配するので、別名音楽家の神経とも呼ばれます。この神経に損傷・圧迫等があると、MP関節(指の付け根の関節)の過伸展とIP関節(指の関節)屈曲が起こり、鷲の爪のような鷲手(わして)が出現します。肘部菅症候群、上腕顆上骨折、腕骨内上顆骨折、変形性肘関節症などで生じることがあります。
02.必要な検査等
運動麻痺や感覚麻痺が生じている個所の分布を確実に捉える事が必要です。筋委縮の有無を確認するため、腕の周囲計の測定も必要です。筋電図検査により、神経の麻痺が確認できますので、筋電図検査は必須です。