目に見えない障害だからこそ

高次脳機能障害とは、脳に損傷を受けたことにより、認知、記憶、思考、注意の持続等、
「高次脳機能」に障害が生じた状態のことをいいます。

交通事故によって脳に外傷を負った方の中には、一見普通に見えても、交通事故の前と比べて、
記憶力や集中力が低下したために勉学や仕事に支障が出たり、感情のコントロールができなくなったために
人付き合いが上手くいかなくなったりする方がいらっしゃいます。

脳は多彩な機能をもっていますが、その内、認知、記憶、思考、注意の持続等の人間らしい脳の働きを「高次脳機能」と呼び、脳に損傷を負い、この「高次脳機能」に障害が生じた状態を高次脳機能障害といいます。
高次脳機能障害の特徴は、他の病気と違って、一見正常に見えるため、
周りの人が気づきにくいところにあります。

高次脳機能障害の特徴

思い当たる症状があったらすぐに受診を。

  • 以前に覚えていたことを思い出せない
  • 新しいことを覚えられない
  • 疲れやすくなり、すぐに居眠りするようになった
  • 気が散りやすく、飽きっぽくなった
  • 話が回りくどくなった
  • 複数のことを並行してできなくなった
  • 気分が変わりやすくなった
  • 怒りっぽくなった など

認定基準について

交通事故の場合、後遺障害の重さが1から14までの等級で評価されます。
高次脳機能障害の場合には、
1級から9級に該当し、以下のような基準で等級が認定されます。

認定基準
第1級 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
第2級 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することが出来ず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことが出来ても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことが出来ないもの
第3級 自宅周辺を一人で外出出来るなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全く出来ないか、困難なもの
第5級 単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習出来なかったり、環境が変わると作業を継続出来なくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことが出来ないもの
第7級 一般就労を維持出来るが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことが出来ないもの
第9級 一般就労を維持出来るが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの

後遺障害として
認められるためには


1自賠責の基準は厳しい

自賠責の後遺障害認定において、高次脳機能障害が後遺障害として認められるには、次の条件を満たす必要があるといわれています。

  • 初診時に頭部外傷の診断があったこと
  • 頭部外傷後に重い意識障害が6時間以上あったか、軽い意識障害が1週間以上継続したこと
  • 診断書に、高次脳機能障害、脳挫傷、びまん性軸索損傷等の記載があること
  • 診断書に、高次脳機能障害を示す典型的な症状の記載があり、知能検査、記憶検査等の神経心理学的検査で異常が明らかとなっていること
  • 頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳質拡大・脳萎縮が確認されたこと

しかしながら、②の意識障害や⑤の画像上の異常がない場合でも、脳が損傷を受けていると考えられる場合は多く、自賠責の基準は形式的過ぎるといわれています。このような場合には、裁判で後遺障害として認めてもらえるよう戦うほかありません。
自賠責で後遺障害として認められることが望ましいですが、裁判になる場合に備えて、十分な資料を準備しておく必要があります。

2専門の病院を受診する

高次脳機能障害はこのように複雑な病気であることから、脳神経外科、整形外科のみならず、神経心理学、リハビリテーションにも精通した専門の病院で診断を受ける必要があります。
厚生労働省は、高次脳機能障害に関して、支援の拠点となる機関を設けているので、これらの機関を利用するのが望ましいです。
詳しくは厚生労働省の公式サイトをご検索ください。

3画像を撮影する

交通事故の被害に遭った方に、高次脳障害の典型的な症状が現れた場合には、すぐにMRIを撮影しましょう。医師は難色を示すかもしれませんが、事故から時間が経てば経つほど、異常を発見するのが難しくなることがあります。まずは、画像を撮影しましょう。
もっとも、ただ画像を撮影すればよいというものではありません。少なくとも1.5テスラ以上の精度の高いMRIを撮影してください。画像を撮影して、異常が発見されれば、それである程度説明がつきますが、異常が発見されないこともあります。
先ほど、画像上、異常がない場合でも脳が損傷を受けている場合があるというお話をしましたが、そのほかに、受傷直後には損傷が画像に表れないケース(例えば、びまん性軸索損傷)もあります。
この場合、約3ヶ月から6ヶ月後に画像を撮影すると、脳室という脳の部位が拡大していることがありますので、注意が必要です。

4神経心理学的な検査をする

脳がつかさどる機能には、知能、言語、記憶力など様々なものがありますが、どの機能の検査が必要かによって、実施する検査が異なります。知能の検査が必要な場合には、知能テストであるWAIS-R、長谷川式簡易痴呆スケールがよく用いられており、記憶力の検査が必要な場合には、記憶検査であるWMS-R、三宅式記銘検査などがよく用いられます。
他にも多くの検査があります。ここでは、長谷川式簡易痴呆スケールを例として挙げます。長谷川式簡易痴呆スケールは、日本で広く使用されている認知症の検査方法で、以下の9の設問から構成されます。30点満点で、20点以下の場合には、認知症の疑いがありとされています。
高次脳機能障害にも応用されている検査なのです。

5リハビリに通う

リハビリに通っていなければ、高次脳機能障害であることを示す客観的な資料が残っていきません。定期的にリハビリに通うことが、基本的なことでありながら、実はもっとも大事なことです。

6後遺障害診断書を作成してもらう

リハビリに通うのは大事ですが、リハビリに長く通えばよいわけではありません。リハビリにも限界があるので、リハビリがその効果をあまり発揮しない時期が訪れます。この場合、後遺障害が残ったことになるので、適切な時期に後遺障害として診断してもらう必要があります。
ところで、後遺障害診断書は、後遺障害を認定してもらうに当たって、一番大事なものです。
この記載がずさんだと、後遺障害が残ったにもかかわらず認められない、あるいは、後遺障害の重さが軽く評価されるという事態が起きてしまいます。
また、後遺障害診断書のほかにも、神経系統の障害に関する医学的意見、日常生活状況報告といった重要な書類を作成する必要があり、この記載方法も重要になってきます。
お医者さんは、患者さんの症状を改善するための治療やリハビリには熱心ですが、治療にとっては意味を持たない診断書等の作成に関心を示してくれないことが多いです。
後遺障害を適切に評価され、適切な損害賠償を受けるには、専門家による適切なアドバイスが求められるといえるでしょう。

認定のポイント

思い当たる症状があったらすぐに受診を

高次脳機能障害を負った被害者が、事故前の仕事を継続していた場合、就労を維持できるのであるから、5級以上は認められないのではないかと考えられがちです。しかし、5級の認定基準を見てください。就労の維持に職場の理解と援助を欠かすことが出来ないものと書いてあります。一見、就労を維持できていたとしても、職場の理解と援助によるものであれば、5級は認定されるのです。であれば、我々はそのことを証明しなければなりません。

目に見えない後遺障害を証明

高次脳機能障害は目に見えません。例えば、記憶力が低下したといっても、周りの人には分かりません。しかし、メモを取らなければ記憶できない人はどうでしょう。その積み重ねたメモは記憶できないことの何よりの証拠ではないでしょうか。
自賠責で後遺障害として認められないようなケースでは、裁判でこういった細かなことを積み重ねていくしかありません。

交通事故と高次脳機能障害についてもっと詳しく

サリュの無料相談

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case 01

約8000万円の示談提示を裁判で1億9000万円に増額。

[被害者]Aさん(小学生)

Aさんは、道路を横断しようとしたところ、Aさんに気付くのが遅れた加害車両に衝突されてしまい、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、左上腕骨骨折、右下肢骨折等の重傷を負いました。
その後Aさんは、1年以上に亘って治療を続けたものの、高次脳機能障害、嚥下障害、構音障害、排泄機能障害、四肢体幹失調等の後遺障害が残存してしまい、自賠責保険において、後遺障害等級1級の認定を受け、相手方保険会社より8000万円強の示談案の提示を受けました。
Aさんのご両親は、相手方保険会社から提示を受けている8000万円の示談額が妥当なのか不安を抱き、ご相談にお越しになられました。

サリュのサポート

解決方法のご提案

今回の事故は、Aさんにも幾分かの過失が認められてしまう事案でした。そこでサリュは、Aさんのご両親に人身傷害補償特約が契約の保険に付帯しているか否かの確認をお願いしました。確認の結果、Aさんが人身傷害補償特約に加入していることが判明したため、サリュは、Aさんの過失分の損害についても補償されるよう、人身傷害補償特約保険金を先に受領した後に、加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起する方法をご提案させて頂きました。

訴訟手続

Aさんは、人身傷害補償特約保険金7000万円を受領後、予定どおり加害者に対して訴訟を提起しました。訴訟の中では、Aさんの将来介護費用が大きな争点となり、サリュは、Aさんのご両親の実際の介護状況を詳細に聞き取り、その介護内容や必要性を強く主張しました。
その結果、裁判所からは、当初の示談案における介護費用の約3倍の介護費用を和解案として提示しました。その他損害費目についても大幅に増加し、人身傷害補償特約保険金7000万円の他に、1億2000万円を加害者が支払う旨の和解が成立しました。
サリュへ依頼する前の賠償提示額である8000万円が、最終的に、合計1億9000万円に増加しての解決を迎えることができました。

最終解決

8000万円強
1億9000万円
(人身傷害補償特約含む)

case 02

高次脳機能障害、左片麻痺で後遺障害等級2級を獲得し、1億4500万円で示談。

[被害者]Kさん(20代、女性)

Kさんは、原動機付自転車で走行中、側道から進入してきた自動車に衝突され、びまん性脳損傷の重傷を負いました。
Kさんのご両親は、後遺障害等級認定手続や、その後の賠償問題について不安を抱き、サリュへご相談にお越しになられました。

サリュのサポート

後遺障害等級認定手続

Kさんは、若くして交通事故の被害に遭われ、長期の入院治療を余儀なくされたのみならず、びまん性脳損傷による高次脳機能障害、左片麻痺の重い後遺障害が残存することとなってしまいました。
本件は、後遺障害等級認定前からのお手伝いでしたが、サリュの適切なアドバイスの下、適切な準備をすることで、無事、適正な後遺障害等級2級が認定されました。

成年後見人選任申立

Kさんには、重い高次脳機能障害が残存したため、成年後見制度を活用するのが妥当な事案でした。サリュでは、加害者に対する賠償交渉等に先立って、成年後見人選任申立についても、併せてお手伝いさせていただきました。

示談交渉

Kさんのご両親は、長期に亘るKさんの入院付添や、その後の通院付添、日常生活における介助をされていました。また、将来に亘ってKさんの介護をする必要もありました。
サリュは、ご両親と打合せを重ね、Kさんに発生した慰謝料や逸失利益等は勿論、ご両親の入通院付添費、介護のために必要な自宅改造費、将来にわたる在宅介護費用、介護にあたるご両親の苦労に対する損害等、可能な限りの請求を相手方保険会社に対して行いました。
示談交渉の席では、相手方にも弁護士が就き、相手方は、将来介護費用や逸失利益等についてかなりの減額交渉をしてきました。厳しい交渉となり、訴訟に至る可能性が十分にありました。この点、サリュでは、解決手段についてもKさんのご意向を尊重し、ぎりぎりまで粘り強く交渉を続けました。
訴訟で判決まで至った場合に見込まれる遅延損害金や弁護士費用の額も視野に入れた粘り強い交渉の結果、Kさんは、自賠責保険金を含めて1億4500万円の示談金を獲得することができました。

case 03

後遺障害異議申立てで12級から9級に。賠償金が12倍に。

[被害者]Gさん(30代、女性)

交通事故の被害に遭われたGさんは、脳挫傷の傷害を負い、自賠責保険において12級の後遺障害等級が認定され、任意保険会社からは289万円の賠償提示がなされていました。
しかし、事故後Gさんには、料理が得意だったのに作る気がしない、家族に辛くあたってしまう、職場でも集中力が低下している、いらいらが募ったりする等の症状が生じており、家庭や職場で困ることが増えていました。
そこで、将来のことについて不安を感じたGさんは、「自分の後遺障害は12級が妥当かどうか、任意保険会社から提示された賠償金は妥当かどうか」を確認されるために、サリュへご相談にお越しになられました。

サリュのサポート

後遺障害異議申立

ご相談時にGさんの症状等をお伺いしたサリュは、Gさんには高次脳機能障害の症状が現れている可能性が極めて高いと判断し、高次脳機能障害専門病院で、知能検査、記憶検査、脳受容体シンチグラフィー等の諸検査を受けていただくようお願いいたしました。これら検査結果から、Gさんの症状が高次脳機能障害を原因とする所見が獲得できたため、ドクターの新たな意見書、日常生活の状況がわかる書面等を添付し、自賠責保険へ後遺障害異議申立を行いました。
結果、Gさんの後遺障害等級は、高次脳機能障害として9級が認定されました。

示談交渉

後遺障害異議申立に続いて、示談交渉を行いました。交渉を重ねた結果、当初Gさんが提示を受けていた示談額の約12倍となる、3600万円での示談が成立しました。

事故と死亡の
因果関係を立証

後遺障害12級
示談提示298万円
後遺障害9級
示談提示3600万円

case 04

高次脳機能障害をサリュが立証し、約3000万円の賠償金を獲得。

[被害者]Tさん

Tさんは、通勤中に青信号に従い、交差点の横断歩道を徒歩で横断中に、この交差点に右折で進入してきた自動車から衝突され、脳挫傷、骨盤骨折、脊椎骨折、腓骨骨折等の重傷を負いました。Tさんが重傷を負われたため、今後のことに不安を抱かれたご家族が、交通事故後すぐに相談に来られました。

サリュのサポート

豊富な実績に基づく
今後のご説明

ご相談時、Tさんは治療中でしたが、負われた傷害から残存しうる後遺障害の内容、程度、その場合の賠償金見込額を分かりやすくご家族にご説明させていただきました。

後遺障害
認定手続

Tさんは治療により徐々に症状が回復し、交通事故から約1年後には、複視や骨折による痛みの症状を主に訴えておられ、それら症状での後遺障害認定をご希望されました。
しかし、サリュでは、Tさんに高次脳機能障害が残存している可能性を考え、Tさんのご家族にTさんの日常生活を丹念に聴取したところ、高次脳機能障害での後遺障害等級認定も行わなければならないとの判断に至りました。
そこで、日常生活常況報告書をご家族との連携のもと作成するなど、高次脳機能障害の後遺障害等級認定で必要となる資料を収集し、後遺障害等級認定手続を行いました。
結果、高次脳機能障害で9級の後遺障害等級が認定され、その他の障害と併せて、併合8級が認定されました。

示談交渉

サリュは、Tさんの後遺障害による具体的症状を聴取し、実際の労働や家事への影響などを細かく示談交渉の時点から主張していくことで、相手方に逸失利益を出来る限り認めさせる方針を採用しました。当初は、相手方保険会社も強硬な姿勢を見せていましたが、サリュは、訴訟も辞さないとの構えで交渉を継続しました。
結果として、ほとんどの損害項目について裁判基準に近い金額で示談することができました。

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